人前で話せない・人前で話すと緊張してしまうので苦手は病気?

ブログをご覧頂きありがとうございます。浜松市はりを刺さない心身堂鍼灸院の佐野です。

人前で話をしようとすると手足が震える、動悸がする、手汗がひどい、声が震える・裏返ってしまう、赤面、眩暈、気が遠のく感覚など、会社などで大勢の人の前で話をする機会があるけれど、毎回とても苦しくなってしまうというご相談は少なくありません。

医学的には社交不安障害がもっとも近い疾患としてあげられます。社交不安障害には様々なパターンがありますが、心理療法によって改善が可能な疾患です。

今回は人前で話せない・話すのが苦手な原因と改善方法について一緒に考えていきたいと思います。是非、最後までお読みください。

結論:徐々に慣らしていく段階的暴露療法で改善していけます

人前で話をすると過度に緊張してしまうと、人前で話をするということを考えただけでも怖くなってしまいますよね。

勇気を出して友人や家族に相談した方でも、人前で少し話をするだけなのになんでそんなに緊張するの?と周囲の人からは不思議がられて理解してもらえないということもあり、一人で抱え込んでしまっている方も多い疾患です。

人前で話すという限られた条件下以外ではいたって元気であったり、陽気にふるまっている人も多いので、自分でもなんでこうなってしまうんだろうと悩みが深くなりやすくなります。

元々人前で話すのが苦手だったり、緊張しやすかったりということが子供の時からあればまだ自分は人前で話すのが苦手なのだと受け入れやすい傾向はあります。

しかし、以前はそれほど緊張しなかったのにだんだん緊張するようになってきてしまったというように元々緊張せずに人前で話が出来ていたのに、緊張感がどんどん強くなってきてしまっている場合には、なんでこんな風になってしまったんだと自分を責めて余計に辛くなってしまいます。

このように以前は人前で普通に話が出来ていたのにもかかわらず、徐々にもしくは急に緊張するようになってしまった場合には、脳の機能に何らかの問題が生じている可能性がある為、脳の機能を再び高めることをしていくことで改善する可能性が高いといえます。

その中でも代表的な者は暴露療法が心理療法としては最も有効です。適切に暴露療法を行っていくことで人前で話をしても過度な緊張を緩和していきす。

インターネットで暴露療法のことを知って自分で暴露療法を行って失敗して悪化して持ってくる方も多いので、正しく暴露療法を理解して行っていくことが大切です。

自分で管理できれば自力での改善も可能ですが、適時専門家の力を借りながら改善を進めていくことをお勧めします。

心の問題ではなく、脳の問題

人前で話せないのは自分が弱いからだと心の問題として考えてしまいがちですが、全く違います。このような症状は脳の機能が正常に機能していないことによって生じてくる問題です。

自分の心が弱いからだと自分のことを責めてしまうと、そのストレスから余計に脳の機能が低下してしまうので、病気に対する正しい認識から始めていくことが大切です。

まずはあなた自身の脳で何が起こっているのかを学んでいきましょう。

人前に出た時にストレス中枢がすぐに興奮している

あなたが人前に立って話を始める際に、緊張してしまうのは脳内の視床と呼ばれる部位でストレス中枢が興奮することから発生するからです。

ストレス中枢が興奮すると交感神経が刺激されて、心拍数があがり、呼吸が早まり、発汗が促されます。声を調整する声帯筋は副交感神経が支配している為、交感神経が高まると声がかすれたり、裏返りやすくなったりといった声が出しずらくなる症状も出てきます。

脳の解剖

脳の解剖

また、視床(ストレス中枢)から副腎に交感神経を高めるホルモンの分泌を促す命令が出されて、副腎からはコルチゾール、アドレナリン、ノルアドレナリンといったホルモンが分泌されます。

この時に分泌されるコルチゾールは交感神経を刺激するだけではなく、脳の扁桃体と呼ばれる部分に作用して、不安感、恐怖感、焦燥感などの感情を引き起こします。

つまり、人前で話している最中の嫌な感情はこのコルチゾールが扁桃体を興奮させることによって引き起こされています。

これが人前に出た時にあなたが緊張してしまって上手く話せなくなってしまう原因です。

人前で話すと緊張する、話すのが苦手を改善していくにはこの一連の流れをストレス反応といいますが、この流れを弱めることで改善していくことが出来るのです。

ストレス反応を先に止めるor鎮める

改善のカギになるのは、ストレス反応をどうコントロールできるようになっていくのかにかかっています。

方法としては大きく二つあり、1つはストレス中枢の興奮を避けさせる方法、もう一つは起きてしまったストレス反応をコントロールする事です。

実際にはどちらかだけを行うというよりも、両方行っていく方が効果が高いですが、冒頭でご紹介した暴露療法はストレス中枢の興奮を慣れさせることで起こりにくくさせようとするアプローチになります。

ストレス反応を起こしにくくする方法

ストレス反応を起こしにくくするには、刺激に神経を慣れさせるという方法(暴露療法)と交感神経のレベルを予め低下させておく、オキシトシンの働きを高めるという3つの方法があります。

刺激に神経を慣れさせる方法

人前に出るという刺激を受けた時にストレス反応が起こってしまう為、人前に出るという刺激を段階的に何度も継続して神経に慣れさせることで、ストレス反応を起こりにくい状態を作っていく方法です。

暴露療法になりますが、いきなり辛いレベルの人前に出るのではなく、なるべく少人数の若干緊張する人数の前に立って話をするということからスタートしていきます。

最初のうちは緊張しますが、慣れてくるとその人数では緊張しなくなってくるため、そうなってきたらまた少し人数を増やして話をする練習を繰り返していきます。

大切なのは緊張したまま行うということと、緊張しすぎるほどの人数の前に出るという無謀な暴露療法を行わないでください。

無理な暴露療法は心的外傷を誘発して症状を悪化させることがあるので、なるべく少しずつ行っていくことが大切になります。

少し緊張するぐらいの人数の前で話をする→緊張しなくなるまでその人数で何度も練習を繰り返す→緊張しなくなってきたら少し緊張するぐらいの人数に増やす

といった流れを繰り返して、最終的に自分が大丈夫になりたい人数まで増やしていきます。

交感神経のレベルを予め低下させておく

日頃から交感神経が高い状態になっていると、感覚器が鋭く働くようになり、外部からの刺激に対して過敏になります。その結果、ストレス反応が誘発されやすすい状態になります。

慢性的にストレス反応を起こしている方は、音、光、匂い、痛みなどに敏感になります。他人からの視線や表情の変化にも敏感になる為、人前に出た時にそのような情報を多く認識してしまいより、ストレス反応を引き起こしやすい状態となります。

食事・睡眠・運動などの生活習慣が基本となりますが、全身の筋肉がこわばっていると脳は身体が緊張状態にあると認識すると交感神経を興奮させる指令を全身に送りやすくなります。

その為、鍼灸や整体などで予め筋肉の緊張を緩めておくということが、ストレス反応を引き起こしにくい状態につながります。

オキシトシンの働きを高める

オキシトシンは人との絆やつながりを感じた際、スキンシップや会話によって分泌されるホルモンです。

オキシトシンにはストレス反応を抑える作用があることが知られています。

小さい時の養育環境が悪いとオキシトシンの働きが悪くなることがわかっており、不安障害、うつ病、自律神経失調症の方の中にはマルトリートメント(不適切な養育)を受けたことでオキシトシンの働きが悪く、平均的な生活をしているにもかかわらず、ストレスから病気になってしまうことがあります。

子供時代に戻ってやり直すことは出来ませんが、人との会話や受容的なパートナーや友人などとの関わり合いを通して、オキシトシンの働きが改善する場合もあります。

また、スキンシップを良くとることでオキシトシンの分泌が誘発されますので、人との関わりの中からオキシトシンの働きを高めていくことも改善に役立ちます。

ストレス反応を鎮める方法

ストレス反応が誘発された際に、ストレス反応が過剰にならずに抑えることが出来るようになることも重要です。

人前で話をする際に緊張状態がコントロールできなくなることが恐怖や不安感をより強くし、それによってさらにストレス反応が引き起こされるといった悪循環が発生するからです。

しかし、緊張状態になったとしても自分でその状態から脱出できるようになれば、話し始めた際は緊張したけれどだんだん落ち着いてくるといった感じで、人前で話す時に多少緊張はするもののずっとつらいという状態ではなくなっていきます。

良いストレスによってストレス耐性を上げる

ストレス反応はストレス中枢が興奮したときに引き起こされますが、短期的且つ適切な強度のストレスはストレス耐性を高めることがわかっています。

暴露療法も適切な強度に落としたストレスをかけるという意味ではストレス耐性を高める療法でもあります。

短期的且つ適切な強度のストレスは必ずしも人前に出て話をするだけで鍛えられるわけではありません。

例えば運動は不安感を改善する作用があることが知られています。科学的なエビデンスがまだ少ないのですが、サウナや水浴びなどの寒冷刺激も適切な強度で行えば原理的にはストレス耐性を上げる作用があります。

お風呂上りに水を浴びるなど、ちょっとしたことだけでもストレス耐性は高まりますので、毎日やっていくうちに、気が付くとすぐにストレス反応が治まりやすい肉体に変化していきます。

ストレス反応を鎮めるテクニックを身につける

緊張状態を和らげるための技法は数多く存在します。

呼吸法を用いたり、姿勢を利用した方法や逆説思考、ACTなどの心理テクニックなど、自分に合った不安感や緊張感を和らげるテクニックを身につけることでストレス反応が起きてからでも、緊張を鎮めることが出来るようになる場合があります。

こういった技法と暴露療法を組み合わせることで、だんだん人前に出ても緊張していきにくくなり克服できるという方法も存在します。

人によってどの技法がより効果的なのか、そもそもそういったテクニック的な対処法ではストレス反応を鎮めることが困難な原因で起こっている場合もあるので、他の改善法と並行して行っていくことが大切です。

セロトニン量を増やして扁桃体の過剰興奮を抑える

脳内で分泌される神経伝達物質であるセロトニンは自律神経の働きを整え、扁桃体の興奮を適正に抑える作用があると考えられています。

脳科学のレベルで考えると人前で過度に緊張してしまう原因は脳内のセロトニン不足が関わっているのではないか?と考えられています。

脳内のセロトニン量を増やすことで不安感をコントロールできるようになるというのも対処法としては有効になります。

セロトニンを増やす方法
こんにちは、浜松市はりを刺さない鍼灸師の佐野です。 幸せホルモンとして有名になったセロトニンですが不足すると自律神経失調症、うつ病、適応障害、不安障害(パニック障害、全般性不安障害)などの原因になります。 サプリを試したり、ネットに書かれて...

まとめ

人前で話せない・話すのが苦手で緊張があまりにも強くなってしまう場合には社交不安障害の一種で改善が可能な疾患になります。

自分でもなぜこのように緊張してしまうのかわからない為、心が弱いと思って攻めてしまいますが、脳の働きが悪くなって出てくる症状なので、自分を責める必要はありません。

段階的暴露療法が最も一般的な治療法になりますが、緊張するのをひたすらに耐える療法だと勘違いして行ってしまうと失敗の原因です。

失敗するだけでなく、症状を悪化させてしまうこともあるので、専門家の手助けを受けながら正しい暴露療法を行っていくことが大切になります。

人前に出た時にストレス中枢が興奮することで、過剰な緊張状態に入ってしまう状態です。

改善にはストレス反応を先に止めたり弱めたりする方法と鎮める方法がありますが、両方を組み合わせていくとより効果的です。

ベースは暴露療法にはなりますが、運動療法などを行うことで脳内にセロトニンが多い状態で行っていくとより効果的ですので、正しい暴露療法をしつつ生活習慣全般を改善していくことが大切になります。

当院での改善をご検討の方は社交不安障害をご覧ください。

遠方で来院が難しいけれど、カウンセリングを受けたいという方はオンラインカウンセリングをご利用ください。

心身堂鍼灸院院長
この記事を書いた人
鍼灸師 佐野 佑介

静岡県浜松市中央区和地山で自律神経専門のはりを刺さない心身堂鍼灸院を開業。
自身も26歳の時にパニック障害から自律神経症状に苦しんだ経験を持つ。
2012年に独立開業。
国家資格 はり師(148056号)・きゅう師(147820号)
医薬品登録販売者試験 合格

鍼灸師 佐野 佑介をフォローする
心理・脳科学社会不安障害・社交不安障害・あがり症
広告