こんにちは、浜松市はりを刺さない鍼灸師の佐野です。子供が突然朝起きられなくなり、起こしても起きない。学校へ行けない日が増えておかしいと思って病院へ連れて行ったところ起立性調節障害と診断された。
親としては、私達の育て方に何か問題があったのではないか?と考えられることも多いかと思います。
今回はそんな起立性調節障害は親のせいなのか?のホントのところについて一緒に考えていきたいと思います。ぜひ最後までご一読ください。
結論:子育ての問題である症例もある
医療現場では、起立性調節障害は自律神経の不具合による身体疾患とされていますので親の育て方の問題ではないので親御さんは自分を責めないでください。という声掛けを行うのが標準的です。
実際にはり施術を行うだけで元気になっていって、すぐに朝起きられるようになり、毎日学校へスムーズに登校する症例もあります。
起立性調節障害は何らかのストレスが原因で自律神経に負担がかかって発症する疾患ですから、例えば先天的に肩こりになり易い子が、肩こりの身体ストレスが原因で発症しているのであれば肩こりが原因なので改善してあげれば問題なく元気になっていきますし、その場合は子育ての問題ではなく、生まれつき肩こりになり易い体質の問題です。
同じように睡眠障害が原因で起立性調節障害になっている場合には、睡眠障害を改善していくことで起立性調節障害の症状が改善していきます。
しかし、肩こり、過労(習い事や勉強の過剰)、睡眠障害、不摂生などの身体的ストレスを解消しても起立性調節障害が改善してこない場合には、別に起立性調節障害を引き起こしている原因が存在します。
そのストレスの原因は学校、友人、先生、集団生活、勉強、家庭内など至る所に原因になりうる可能性は存在します。その為、原因の一つとして子育てが原因ではないと断言することもできません。
それでも、医療現場で起立性調節障害を
自律神経の不具合による身体疾患だから親の育て方の問題ではない
とあえて断言することが多いです。
なぜなら、ただでさえ子供が学校へ行けなくなって追い詰められている親御さんをさらに心理的に追い詰めてしまうと親御さんが心理的に潰れてしまって、子供のサポートをすることが出来なくなる危険性を回避したいというのが理由としては一番大きいからです。
また、親子関係に原因を発症させやすい親御さんは自尊心が傷つきやすい心の問題を元々持っていることも多い為、子育てになにか問題があるかもしれませんと医療者が指摘することで、医療者に否定されたと感情的になってしまい信頼関係の構築が難しくなり、あの先生は信頼できないと医療者が親から敵対視されてしまって子供にアプローチできなくなるなどの問題が出やすいからです。
前述したように身体ストレスが原因になることも多いので、お子さんが起立性調節障害だからと無条件に自分の子育てを責める必要はありません。
しかし、起立性調節障害を引き起こしたストレス原因を少しでも減らすために、親子関係を見直すこと自体に一定の意味はあります。
起立性調節障害になり易い子育て
ここでは起立性調節障害の原因になりうる子育てについてご紹介させて頂きます。
子育てが起立性調節障害の原因になる場合に直接的なものと間接的なものの二つがあります。
直接的なものは、子供にとって家庭が絶対的な安全・安心な状態が保たれていない場合です。
家庭内が安全・安心な環境になっていないと子供は常に気を張っていなくてはいけない状態になり、それがストレスで起立性調節障害を発症しやすくなります。間接的な原因は、親子関係から学ぶコミュニケーションにあります。
子供は家庭内でコミュニケーションの基本を学び、そこで学んだコミュニケーションを使って学校などの外の社会へと適応していきます。
一般的には授乳者(通常は母親)と自分という1対1の関係性から始まり、そこに授乳者のパートナー(通常は父親)の存在がはいって1:2になり、そこへ兄弟や祖父母、親戚などが加わり、その後、他の家の子供やその親との関係性といった感じで、一番最初に学んだ授乳者との1対1のコミュニケーションをベースにしながら徐々に複雑な人間関係を学んでいきます。
ここで重要なのは、この世に生まれて最初に出会う他者(母親になることが多い)との間で結ばれる人生最初の人間関係がその子のコミュニケーションのベースを形成する点です。
ここでストレスを受けやすいコミュニケーションのベースを形成してしまった子は、その後も対人関係でストレスを抱え込みやすくなります。
そういったコミュニケーションのベースが不安定なことが原因のストレスにより起立性調節障害を引き起こすことがあります。
乳幼児期に愛着が形成される
生まれてから1歳半ぐらいまでに愛着の形成がされると考えられています。
愛着とは、子どもが特定の他者に対して持つ情愛的な絆をさします。簡単に言えば自分は受け入れられているという無償の愛です。
親からの無償の愛によって子供は人間に対する基本的信頼感を獲得し、その信頼感をベースに対人関係の構築や心の発達が行われていきます。
具体的には常に見守られていると感じられること、不安や恐怖を感じたら親がすぐに守ってくれること、子供の感情に親がすぐに適切な反応を示してくれること(共感的応答)などがあります。
愛着形成が上手くいかないと、その後の人間関係に大きく影響し、学校の人間関係でストレスを感じやすくなってしまいます。
それが思春期ごろになって、自我形成が始まると自分が他者からどのようにみられているのかという脳の機能の発達と同時に、同年代の子供も同じような脳の変化が現れ人間関係が複雑化していきます。
その人間関係の複雑化についていけず、そのストレスから起立性調節障害を発症してしまいます。
また、家庭内で冷戦が続いているなど家庭内の人間関係が不安定であったり、お世話を嫌々行われる、泣いているのを怒鳴りつけたりして恐怖で子供を制するなどの環境で育った、放置されていた場合にはさらに愛着形成が上手くいかず、人間に対して基本的な信頼が出来なくなってしまいます。
その結果、何かあっても相談できない。否定されるのではないかと感じて自分の意見が言えないなど、自分でもなぜかわからないけれど人間関係に苦しむ基礎が出来上がり、ストレスを受けやすい心が形成されます。
夫婦の子育て方針の不一致や夫婦の不仲
父親、母親のそれぞれの教育方針が異なると、片方の言うことを聞くと片方の言うことを破ることになります。
この状態はダブルバインドといわれ、子供にとってはどちらの話を聞いてもどちらかに対して申し訳ない気持ちを持つ状態であり、心理的に負荷が大きい状態です。
例えば、父親は子供のうちはなるべく多く遊ぶことが大切だから友達と遊ぶことに時間を使うように言っていても、母親は友達とゲームばかりするな、遊んでばかりいるなと叱るなど、両親の教育方針が真反対の方向へ向いているなどがそうです。
両親の教育方針が一致していても、気分によって言うことが変わることもダブルバインドを形成します。「あなたの好きにしていいよ」といいながら「スマホ、ゲームをやめなさい」という矛盾した態度も子供を混乱させます。
また、夫婦喧嘩が頻繁に発生していて、家の中にいても安心できなかったり、夫婦喧嘩こそないものの、夫婦がお互いに無視しあっている冷戦状態も子供の心(脳)の発達に悪影響を与えます。
このような不適切な養育のことをマルトリートメントと言いますが、マルトリートメントを受けた子供の脳をMRIで撮影すると、変形して発達することがわかっています。
また、子供に対して両親どちらかが妻や夫、祖父母など他の家族の悪口を言うなど、家庭内での自分のポジションを有利にするために、子供を自分の味方に引き込む行為は、気が付かずに精神的な虐待をしてしまっていることになりますので注意が必要です。
親の情緒が不安定で、意見が変わりやすい
親の情緒が不安定な場合もダブルバインドが発生しやすくなり、子供は家庭内に安心感を得ることが出来ません。
親の言われたとおりにしていたのに1時間前とは違うことを言われて叱られる。
ちょっとしたことで、怒り出す、泣き出す、機嫌が悪くなる、嫌な顔をする、不安がる、心配な顔をするなどがそうです。
親がうつ病、不安障害(パニック障害、全般性不安障害、不安神経症)などの疾患を持っており安定していなかったり、発達障害の傾向がある場合にも同様のストレスが子供にかかります。(状態が安定していれば疾患を持っていても問題はありません。)
子供は親のことが大好きです。
ですから、親に嫌われないように、好かれるように、親が喜ぶように一生懸命努力していますが、情緒が不安定な親の機嫌を取るために自分自身の感情を押し殺して親のご機嫌を取るように生活していると、ストレス過多になり起立性調節障害を発症しやすくなります。
また、そういった他人の顔色を常に窺うというコミュニケーションがベースになるので、他の対人関係でもストレスを抱えやすくなります。
自分のことを自分で決めさせてもらえない
小さい時は親が代理で判断してあげる必要はありますが、命に関わらないことは徐々に子供の意思で判断させることで失敗しながら、子供は判断力を高めていきます。
しかし、失敗しないように先回りして答えを教えてしまったり、子供が成長しているにもかかわらず何もできない小さい子供というイメージのまま子育てしていると、あれこれ口うるさく親の判断を子供に押し付けてしまいがちです。反骨精神の強い気質の子であれば親に対して自分で判断できることを伝えてきてくれますが、大人しい性格や優しい性格の子は親に反抗しません。
ご飯食べなさい、勉強しなさい、片付けなさい、時間を守りなさい、早く寝なさい、ゲームばかりやめなさいなどの生活上の指示だけでなく、○○はこれが好きだからこれにしておきなさい。こっちにしておいた方がいいんじゃない?など食べるものや着るものの好みまで本人に代わってすべて意思決定してしまったり、誘導したりすることの弊害を自覚する必要があります。
子供は自分は何も決めさせてもらえない状態が続くと
どうせ何を言っても自分の意見など聞いてもらえない、自分がダメだから口うるさく言われる
と、自分の自己肯定感を失い、無力感を強くしていきます。
自己肯定感が低く、無力感が強い子供がストレスを抱えやすい心を形成していきます。
失敗しないように先に口出ししてしまう
子供は失敗を積み重ねることで様々なことを学んでいきます。
しかし、子供が失敗しないように、恥をかかないように、嫌な気持ちにならないようにと、親があらかじめうまくいく方法をアドバイスしてしまうと子供にとっての学びの機会を奪うことになります。
失敗体験には2つの意味があります。
一つは実際に失敗することとその失敗から立ち直る(リカバリー)する過程で、何がいけなかったのか、どうしていけばいいのか問題を見つける力との改善する為に思考する力を学びます。
もう一つは、致命傷以外はやり直すことが出来るということです。自分や他人の体や命に関わることは親が止める必要がありますが、それ以外の失敗はやり直すことが出来ます。
異性に振られた、受験に失敗した、テストの点が悪かった、そういった失敗や挫折は生きていれば誰の身にも降りかかることですが、失敗した経験が少ない子は心理的に打たれ弱い為、すぐに自分の存在意義を見失ってしまったり、失敗するのが嫌だからと挑戦することを最初からあきらめてしまいます。
そして完璧思考に陥りやすくなってしまい、自分・他人の失敗に対しての寛容さも少ないです。
人はミスもするし、失敗もしますが、アドバイスをして失敗を避けさせることは、失敗はいけないことだ、失敗は危険なことだ、失敗は怖いことだと子供に刷り込んでいってしまいます。
完璧思考・失敗回避型の子供のメンタルはちょっとした失敗をきっかけに簡単に崩壊してしまいます。
親の不安を解消することが目的化している
子供が学校へ行けなくなると、勉強が遅れて進学が大丈夫なのだろうか、子供の将来が不安になるのは親として当然の気持ちです。
しかし、子供にかける言葉、行動、態度が親の不安を解消することが目的になっている場合には今すぐやめてください。
「今日の体調どう?」という何気ない会話も気遣いであるなら問題ありませんが、親が安心したいから聞いているのであれば、体調を子供に聞いてはいけません。
起立性調節障害になるお子さんはとても敏感です。親が自分のことを気遣っての言葉なのか、親が安心したいから聞いているのかぐらいはすぐに見破ります。
親が自分が安心したいから聞いているだけだと感じると、自分には本当に自分のことを理解しようとしてくれる存在はいないと感じます。
過干渉または無関心
親自身が過干渉や期待をかけられて育った場合には子供に対して無関心に、逆に無関心な子育てをされた場合は過干渉になり易くなります。
どちらも子供の心の成長にはよくありません。
自分の親が行った子育てが自分が嫌だった記憶があるため、自分がして欲しかった子育てを自分の子供にしようとしてしまうのです。
自分が愛情をあまり受けられなかったから、自分の子供にはたくさんの愛情をかけて育てたいと思って子育てするのですが、それが過干渉になります。
親が自分に期待したり過保護な愛情をかけてきたために、もう少し放っておいて欲しかった。自分のことを自分で決めたかったなどの想いが強いと放任主義になろうとして無関心になります。
大切なのは子供がどういう子育てを望んでいるかであって、親がどういった子育てをしたいのかではないということです。
親としての周囲の評価が気になってしまう
子供がいい子に育てば親としての評価が上がり、子供が悪い子に育てば親としての評価が下がる。
子どもの出来・不出来=親の評価のような感覚は大なり小なり感じられている方も多いかと思います。
特に親の自己肯定感が低い方の場合は、自分の自己肯定感を子供で代用してしまう場合があります。
しかし、思ったように子供が出来ないと自分がダメだと自己否定的な感覚になるため、過度に口うるさくしてしまいます。
その結果、子供が上手く出来ないことを攻め立てたり、他の子と比べてダメだとしかりつけたり、良くなって欲しい(実際は自分がダメだという感情から逃れたい)という大義名分のもとに、しつけを通り越して人格を否定するような言葉を子供に言って、子供を思い通りに動かそうとしてしまっていることもあります。
子供の出来が親の通信簿だという価値観の方は確かにいますが、子供の出来不出来は遺伝的な要因も強く受けるので、そういった価値観に合わせないことが大切です。
子供に尽くしているのだからわかってほしい
毎日子供のために、家事に育児に仕事に頑張っている親御さんも多いと思います。
しかし、一生懸命頑張っていても、親の心子知らずという言葉があるように、親の愛情や苦労は子供にはなかなか通じず、子供は無頓着に勝手なふるまいをするものです。
残念ですが、親の愛情や苦労を子供が理解するのは子供自身が親になったときです。
子育て中は子供が親に子供の気持ちを受け止めてもらう期間です。子供が親の気持ちを理解する期間ではありません。また、親自身が自分の親の愛情や苦労を理解する期間でもあります。
子供に対して、こんなに私達は頑張っているんだからあなたももっと頑張りなさい!あなたの為にこんなに苦労しているのだから、少しは理解しなさい!など、子供に親の気持ちを理解してもらおうとしないでください。
子供に親の気持ちを理解してもらうよう求めるのは子供にはあまりにも酷です。
子育てが原因になる場合には親自身の心の問題を解決
子育てが起立性調節障害の原因になってしまう症例の場合は、根底的には親自身の心の問題が関係していることが多くあります。
子供とどう接するのが正解ですか?という、どういう言葉をかければいいのかなどの正解に意識が向きがちですが、子供が苦しんでいる原因は親と情愛的な絆を築けておらず、心の交流が出来ていないことにあります。
子供のありのまま、そのままを受け入れて、見守り、寄り添い、なだめ、そのままを愛してあげることです。
そうはいっても、親自身が愛着の問題を抱えていると、途中で怒りが沸き上がってきてしまったりするのは仕方がないことです。
ですから、子供を治す前に自分が抱えている心の問題と向き合っていくことが必要になります。どうすればよいのかわからない場合には専門家の力を借りることも大切です。
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