こんにちは、浜松市はりを刺さない鍼灸師の佐野です。
パニック障害の不安症状は薬でコントロールできているのだけれど、このまま薬を飲み続けていっていいのか不安、できれば薬をやめたいというお悩み相談をよく受けます。
パニック障害と薬との付き合い方は多くの方が悩まれる問題です。
今回はパニック障害で薬をやめたいと思った方がお薬をどうやってやめていくのかについて一緒に考えていきたいと思います。抗不安薬でお悩みの方は是非最後までご一読ください。
結論:医師に相談しながら、ゆっくり減薬していくのが基本です
抗不安薬や抗うつ薬は急にやめると反動で体調が悪化することがある薬です。
その為、徐々に薬を減らしていくことが大切ですが、薬の量を決めることができるのは日本では法律的には医師にしか許されていません。
しかし、ある程度は自分で調節してくださいという指示を出される医師も多く、主治医には聞きにくい場合には薬剤師さんに減薬のペースについて、どのぐらいの減薬をしてくのが、推奨されているのか相談して情報をもらうことも大切です。
しかし、絶対に自己判断で勝手にやめず、医師に相談しましょう。
パニック障害に用いられる薬には大きく2種類ある
パニック障害に用いられる薬には抗不安薬(ベンゾジアゼピン)と抗うつ薬(SSRI)という2種類の薬があります。
それぞれ役割が違う為、適切にお薬が使われることが大切です。
抗不安薬
抗不安薬は不安感情や緊張状態を数時間から数日抑える対症療法(症状を一時的に抑える)として用いられる薬です。
即効性があり、副作用も少ないことから最初に処方されることが多い薬です。
多くの人で安定した効果が得られやすいのですが、2週間以上毎日使用すると依存形成をしてしまう為、長期間の使用は行わないようにするようガイドラインで定められています。
しかし、副作用が少なく、即効性があることから医師も処方しやすく、長期間使用して依存形成によりなかなかやめることが出来なくなってしまう方が多いのも抗不安薬です。
ベンゾジアゼピン系抗不安薬一覧
短時間型:グランダキシン・リーゼ・デパス
中間型:ワイパックス・ソラナックス/コンスタン・レキソタン
長時間型:セルシン/ホリゾン・リボトリール/ランドセン・セパゾン
超長時間型:メイラックス
抗うつ薬
パニック障害に用いられる抗うつ薬はSSRIといってセロトニンの再吸収を邪魔することで脳内のセロトニン量を増やすことを目的としたお薬です。
パニック障害は脳内のセロトニン量が低下することで発症すると考えられている為、抗うつ薬を長期間使用し続けることでセロトニン量を増やしていきます。
しかし、全身のセロトニン量が増えてしまう為、使用開始時に副作用が出やすい割に、薬の効果が出てくるまでに2~3週間程度と時間がかかるお薬です。
最初は少ない量から始めて体調の改善具合に関わらず最大容量まで増やし、3ヶ月から半年程度その状態を維持して脳内のセロトニン量を十分増やしてから、徐々に減薬していくお薬になります。
もともと半年から1年程度は使用を継続することを前提に投与を開始する薬の為、体調が良くなってきたとしても通院・投薬を継続することが必要になります。
半年継続してから減薬を開始し、徐々にやめていくタイプのお薬の為、体調が良くなって自覚的には困らなくなった後も継続が必要です。
体調が良いからやめたいと途中で思われる方が多いですが、パニック障害の再発率が60%と高い理由の一部は十分にセロトニン量が増える前に自己判断で通院・投薬をやめてしまうことにあります。
抗うつ薬SSRI一覧
セルトラリン(ジェイゾロフト)
エスシタロプラム(レクサプロ)
パロキセチン(パキシル)
フルボキサミン(ルボックス/デプロメール)
抗うつ薬は症状がなくなってからも飲み続ける理由
症状が安定してしてきて日常生活も問題なく過ごせるようになってくると、何のために通院しているんだろうとか、お薬をそろそろやめたいと考えるのは普通のことです。
しかし、常識的な心療内科医や精神科医であれば症状が良くなってからも変わらずに同じ量の薬を処方し続けます。
調子よくなっているのに、なんで薬を減らしてくれないのだろうと思われる方も多いかと思います。
頓服薬(抗不安薬)と違い、抗うつ薬は脳内のセロトニンを再吸収(分解)を邪魔することで脳内にセロトニンを留めて、セロトニン量を増やす薬です。
その為、ある程度脳内のセロトニン量が増えた段階で症状自体は安定してくるのですが、その段階で薬の量を減らしてしまうと、また症状が出てくるレベルまでセロトニン量が減ってしまい再発がしやすいのです。
例えるなら、借金していた状態から借金を返し終えた状態が、症状が安定してきた状態ですが、予定外の急な出費があればすぐに借金をせざるを得なくなるのと同じで、ある程度までセロトニンを貯金しておきたいというのが現在の薬物治療の基本的な考え方です。
実際に症状がなくなってからも半年から1年ぐらいは、量を減らさずに投薬を継続した方が再発率が低いというデータが出ています。
ある程度のセロトニンの貯金が完了した時点で、ちょっとずつ減薬・断薬に向けて少しずつ始めようというのが薬物治療のオーソドックスなパターンです。
症状がなくなって調子が良くなってからも、十分にセロトニン量が確保されるまでは治療をやめると高確率で再発するのはこういった理由です。
いきなりやめてはいけない理由
SSRIは、セロトニンの再吸収(分解)を邪魔することで脳内にセロトニンを留めておく治療法です。
セロトニン量がある程度多い状態まで投薬を継続し、それから徐々に減薬して多少のストレスが加わっても正常なセロトニン量を維持できるようにする治療法です。
しかし、無症状であることとセロトニン量が十分に確保できた状態はイコールではありません。
SSRIを投薬していると、薬が入った状態に身体が順応する為、突然投薬をやめてしまうと急激なセロトニンの回収の増加、セロトニンの分泌増加が追い付かずにセロトニン量が一気に低下して悪化してしまうことがあります。
これがいわゆる離脱症状というもので、急激な減薬・断薬が引き金になるので、いきなりやめたり、減らしてはいけないのです。
鍼灸などの自然療法での改善の場合は、元から身体に備わっている機能を利用してセロトニン量を増やして正常に近づけていくため、負荷を急激に増やさない限りは、施術を突然やめたからと言って急激に悪くなることはほとんどありません。
投薬治療でも鍼灸でも、セロトニン量を一定レベルに維持できる状態に到達する前にやめると徐々に再発には進んでいきますが、セロトニン量を自分の力だけで維持できる状態まで継続することが大切です。
抗不安薬は2週間以上の連続使用で依存が形成される
抗不安薬(ベンゾジアゼピン)は文献によりばらつきはありますが、2週間から1ヶ月程度使用し続けると、依存が形成されることが報告されています。
その為、通常は抗うつ薬(SSRI)が効いてくる2~3週間ぐらいのタイミングで、毎日飲むお薬から辛い時だけ使用する頓服薬へと用法を変更することが推奨されています。
しかし、不安感が強くてSSRIだけでは症状が抑えられない場合などは医師の判断でそのまま常用させることもあります。
抗不安薬を飲んでいれば症状が抑えられて日常生活への悪影響は抑えられますが、依存が形成されるため、薬物依存症の治療が後に必要となります。
減薬の基本は減らして慣らすを繰り返す
通常の減薬の方法は、減薬を開始してから一定期間はその減薬量を維持します。
その減薬量をある程度の期間維持してもセロトニン量が維持して不調が現れてこなければ、さらに少し減らすといった具合に、減らしてしばらく慣らす期間をおいてを繰り返しながら徐々に減薬して最終的に断薬していきます。
どのぐらいの量を減らしていくのか、その減らした期間をどのぐらいとるのかは、医師の経験や研究報告を参考に決めていくのが一番成功確率が高い「薬をやめる方法」になります。
しかし、ある一定レベルまで減薬すると、どうしても症状が戻ってきてしまう場合には、セロトニン分泌低下となった原因のストレスが現在も抱えたままの状態になっていたり、セロトニンの分泌を促す生活習慣が身についていないことが考えられますので、ストレス環境を取り除いたり、心理的、身体的アプローチでストレスの原因を取り除くことが必要になります。
薬をやめられない場合も存在する
あまり多くはありませんが、何度も強いストレスを長期間受けて、何度も再発を繰り返しているパニック障害の場合には、セロトニンを分泌する神経細胞の数が死滅して減りすぎてしまい、それ以上薬を減らすとセロトニン量が維持できない場合もあります。
その場合は鍼灸など他のアプローチをして細胞の働きを高めれば断薬の手助けになることもありますが、物理的に不可能なレベルまでセロトニン神経の神経細胞が死滅している場合には、薬を一生使い続けていく必要があり、薬をやめるというのが不可能な場合もあります。
そうならないためには、なるべく最初の段階で治療を始めること、途中で治療をやめないこと、再発させないことを徹底して予防することが大切になっていきます。
当院での改善をご検討の方はパニック障害、全般性不安障害をご覧ください。
遠方で来院が難しいけれど、生活習慣や改善について相談したい方はオンラインカウンセリングをご利用ください。