こんにちは、浜松市はりを刺さない鍼灸師の佐野です。
起立性調節障害は何らかのストレスが原因となることで、自律神経の調節が乱れて発症します。
起立性調節障害の子供と接していると、ストレス原因の一つが、神経発達障害のグレーゾーンが関わっているのではないか?と感じることが多々あります。
今回は神経発達障害とそのグレーゾーンが起立性調節障害とどのように関わっているのかについて一緒に考えていきたいと思います。ぜひ最後までご一読ください。
結論:神経発達障害のグレーゾーンからの起立性調節障害は起こりやすい。
起立性調節障害は様々なストレスが影響して発症しますが、そのストレスの原因として神経発達障害のグレーゾーンであることがあります。
神経発達障害のグレーゾーンとは、神経発達障害と診断されるほど大きな能力の凸凹がなく日常生活に支障はないとされていますが、それでも皆と同じであることを求められる日本の学校教育の中で適応していくのに必要以上にストレスを感じやすいことは確かです。
しかし、自分でもその違和感を上手く表現出来ないためストレスの原因が特定できないで起立性調節障害になっていることがあります。
時間の管理が苦手な子供、複数のことを言うとわからなくなってしまう子供
神経発達障害のグレーゾーンはなぜ存在する?
神経発達障害(ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠陥・多動症)、LD(学習障害))の傾向はあるものの、診断基準を満たさない為、神経発達障害という確定診断が下されない状態です。
現在はスペクトラム(連続体)という考え方になっている為、どこかではっきりと神経発達障害かそうでないかが分かれるという考え方ではありません。
ほとんどの人が、多かれ少なかれ神経発達障害の傾向を持っていますが、より神経発達障害に近い人、より平均に近い人といった感じで連続的になっていて程度に違いがあるという考え方です。
しかし、診断を行う場合にはどうしても診断基準という線で区切らないと、100%医師の主観にたよった診断になってしまう為、神経発達障害の基準を満たしていることを確認して総合的に診断を行います。
その為、より平均に近い人と比べれば平均に近い人を基準に作られている社会では日常生活で苦労しやすい(ストレスを受けやすい)のです。
このストレスが起立性調節障害の引き金になってしまっている場合があります。
神経発達障害のグレーゾーンの子供が持つ苦しさ
神経発達障害のグレーゾーンは医学的には神経発達障害ではないと診断されます。傾向はあるのですが、医学的な基準を満たさないので、診断としては正常とされます。
神経発達障害の診断基準ギリギリで正常という診断を受けた子供の場合には、学校という社会に適応するために、配慮してもらうようになどの免罪符なない為、適応するためにとても苦労を強いられます。
神経発達障害と診断がおりている場合には、学校側もある程度出来ないことがあっても、寛容にしてくれるなどの対応が可能ですが、そうでなければそういった特別待遇は学校側も行いずらいという背景があります。
また、グレーゾーンの子は能力の凸凹がありながらも無理をすれば出来てしまうことが多いです。
例えば忘れ物が多いという特性を持つ子では、チェックリストを作って、何度も何度も忘れ物がないかのチェックを行って、ということをすれば忘れ物を減らすことが出来ます。
しかし、チェックリストを作る。何度も何度もチェックするという神経に負担がかかる作業を繰り返し行う必要があります。
そこまでしても、ちょっとした気のゆるみ(チェックリストが不完全など)で、忘れ物をしてしまったりするため、神経に負担をかけて疲れ果てた上に失敗して自己嫌悪になってしまいます。
日常生活を無難に送るだけでも、平均的な人よりもより緊張した状態で日常生活を送り、神経系に負荷をかけて生活を送る為、神経疲労を起こしてしまっている(疲れてしまっている)ことが多くあります。
基準を引くということの弊害
診断を行う以上はどこかで基準を引かなくてはいけないのですが、この基準を引くことには弊害があります。
身近な例でいうと、今年の3/31生まれと去年の4/1生まれは学年という基準線を引くと同級生です。
しかし、実際には364日とほぼ1年の差があります。体や脳の成長が凄まじい速度で進む子供の1年は大人の1年とは違って、身体能力、知能の成長度合いに大きく違いがでます。
それが小学校に上がった途端に、同じ内容を同じペースで学び同じ基準で運動能力も学力も評価されます。
1学年違うぐらいの心身の差がある子が同じ学年というのは、無理があるのです。
基準を引いてしまうとこれと同じ問題を抱えることになり、神経発達障害かそうでないかという基準線を強引に引いている為、無理が生じやすくなります。
神経発達障害が大変であることは本当
人間は遺伝的に様々な違いを持って生まれてきていますから、平均的な人であっても比べれば能力に差があります。
神経発達障害という名称がついていますが、その能力の差が平均に比べて大きく異なる(劣っている場合もあれば優れている場合もあります)ことで、平均を基準に作られた社会システムの中では適応しずらいのです。
優れていれば良いのかもしれませんが、同じレベルの会話が出来る相手が身近にいない為、ギフテッドなどは孤独を感じることになります。
本来は神経発達障害などと区別せずに、個々の能力や特性に合わせた寛容性を社会の側が持つ方が良いのですし、人類はそうやってずっと繁栄してきました。
そうはいっても、現代の日本の社会はそのように作られていません。
海外の文化の方が性に合う人ももちろんいます。
自分で自分の能力を理解してそれに合わせた環境で生きていくことが大切です。それは神経発達障害の傾向があるなしに関わらず全員に言えることです。
当院では自分の能力の特徴を理解することで対処する方法を一緒に探していくということをしています。
睡眠リズムが乱れやすい
神経発達障害の子供は睡眠のコントロールが難しく50%ぐらいの子供が睡眠障害を持っているといわれています。
神経発達障害と診断される子供に睡眠障害が多いということは、当然グレーゾーンの子供の中にも睡眠障害になり易い子供がいるということになります。
起立性調節障害の子供がなる睡眠障害は睡眠相後退症候群(体内時計が後ろにずれてしまい、眠るのが遅くなって起きられない。)ことがほとんどです。
しかし、神経発達障害の子供は不規則睡眠・覚醒リズム障害(体内時計がバラバラになり易い)になりやすいことも指摘されています。
小さい時から体内時計を揃えられないことが続き、その結果、睡眠負債が溜まって起立性調節障害を発症しやすくなる可能性が高くなります。
当院で参考にしている特徴
神経発達障害の検査を受けてみて、実際にどのような能力の偏りがあるのかを調べることは重要です。
しかし、診断基準に満たないグレーゾーンの子供だったとしても、神経発達障害の傾向があるのであれば、神経発達障害の方が実践する対処方法が参考になります。
社会に適応するという部分にストレスが発生してくるので、自分は何が苦手で何が得意なのかを理解し、「皆と同じは難しい」ことを受け入れたうえで、どう社会に適応していくのかという工夫の模索をしていくことが大切になってきます。
当院では以下のことを参考に、社会の適応のしずらさや適応の工夫を考えていくことが多いです。
芸術系に興味が強い
絵、音楽、演劇、数字、テクノロジーなど芸術系や数学、テクノロジーなどに興味が強い子は、感受性が豊かであったり、興味が狭い範囲にとどまっている傾向があります。
感性や興味関心が平均的な人と異なる為、日常でも他者とのコミュニケーションに苦労しやすい(雑談が苦痛で、話を合わせる為に苦労する)傾向があります。
幸い現代はインターネットが発達したことで、同じような感性を持った人たちとつながりやすい環境がある為、複数のコミュニティを持つことで居場所を作ってあげることが出来ます。
何度も同じことで注意を受ける
片付けするように言ったのに、出来ない。
何度も同じことで注意を受ける。
楽しくなるとやらなくてはいけないことを放り出してしまう場合には、その原因がどういった理由によるものなのかをよく聞いていくことが大切です。
親側からすると、やる気がないとか、親を尊敬していないから言うことを聞かないと思いがちですが、能力的に言われたことを理解できていない、記憶を保持できない、感情のコントロールが苦手なことが多くあります。
基本は子供の世界観からどのようになってそのような行動につながったのかを聞いて理解しようとする姿勢が大切です。
時間/予定の管理能力
時間管理や予定管理が苦手ではないか?または、逆に物凄く厳密に時間を守りすぎる傾向があります。
時間を守れないことで何度も叱られる場合には、時間の管理能力が低い可能性があるので、「時計を見なさい!」という指導よりも、スマホのリマインダー機能を利用する、生活をパターン化してその通りにこなすなど、自分で管理するのではなく道具やルーティンワークにすると比較的時間管理を行えるようになることがあります。
時間をしっかり守ろうとする子供の場合、予定時間よりかなり早く到着するように行動していることが多く、その為に時間のロスが大きいため他のことをする時間が減ってしまいます。
同時並行処理が苦手
ワーキングメモリといって、一時的に記憶しておく容量が小さい子の場合は、人の話を聞きながらメモを取る、複数の作業を同時にすることが苦手です。
聞くという作業をすると書けなくなり、書いていると聞くことが出来なくなります。
座学の授業などはその典型なので、ノートを書く場合には先生の話は聞くことが出来ませんし、先生の話を聞いているときはノートは書けません。
その他にも、食べながら会話をするなど、○○しながら別の○○ということが苦手な場合があります。
劣等感を抱きやすい
こういった能力の差があるので、同級生と比べて同じことをするのに手間取ったり、説明を1度聞いただけでは理解出来なかったりなど、周囲と比べてうまくいかない経験を何度もすると、自分は何もできない、劣っていると劣等感を抱きやすくなります。
そこで、自分は人よりもできないのだから、人の倍努力しなくてはいけないと考えて、物凄い努力をした結果、神経疲労を起こしてしまいやすくなります。(過剰適応といいます。)
自分の無理のない範囲で出来ることをやっていけばいい。
出来ないことが悪いことではないという価値観を身につけると適度な努力が出来るようになっていきます。
人間関係の距離感が取りにくい
いつもいじめの対象になってしまったり、仲間外れになってしまったりと、対人トラブルが発生しやすいタイプの子もいます。
特定の人とは仲良くできますが、それ以外の子とはあまり深く関われなかったりする場合があります。
コミュニティの中の暗黙のルールのようなことを雰囲気から察することが苦手で、どういうルールがあるのかを一つ一つ教えて覚えていく必要があります。
まとめ
・神経発達障害やそのグレーゾーンである場合に、過剰適応でオーバーワークになり、起立性調節障害を発症する子供がいる。
・神経発達障害の検査を専門医に受けたうえで、傾向や困りごとがないのか、グレーゾーンではないかも一緒に考えていく。
・神経発達障害の場合は50%ぐらいが元々睡眠障害になり易いことがわかっている。
・一番は専門医から神経発達障害であるのか、もしくはその傾向があるのかを調べてもらうことが大切ですが、当院ではその傾向がある子供が持つ特徴を参考にしています。
当院での改善をご検討の方は起立性調節障害をご覧ください。
遠方で来院が難しいけれど、お子さんについて相談したい方はオンラインカウンセリングをご利用ください。