こんにちは、浜松市はりを刺さない鍼灸師の佐野です。
パニック障害の方の付き添いで来院されたパートナーやご家族の方から、本人とどのように接してあげればいいのか?こういう時はどう声をかけてあげればいいのか?というご相談をよく受けます。
パニック障害自体が良くわからなければ、どう接していけばよいのかわからないのは当然ですので、疾患についての理解を少しずつ進めていきましょう。
今回はパニック障害を実際に経験した私の経験者としての立場からどのように接してあげれば良いのか、一緒に考えていきたいと思います。是非、最後までご一読ください。
結論:プレッシャーをかけずに、適度な距離感で普通に接していきましょう。
パニック障害は突然不安感や恐怖感に襲われる疾患ですが、予期不安や広場恐怖なども併発することが多い疾患です。
しかし、うつ病になったりしない限りは、そこから死につながったり、人格が変化していってしまうような疾患ではありません。
あなたがパニック障害の方のご家族・パートナーであれば、体調が悪そうな姿を見て、何とかしてあげたいという気持ちになるのは自然なことです。
パニック障害・全般性不安障害・うつ病など精神疾患全般に言えることですが、最終的には本人が疾患と向き合い改善していくことが何よりも大切になります。
基本的にプレッシャーをかけるとパニック発作を誘発しやすくなるので、プレッシャーをかけることだけを行わなければ、必要以上に優しくしたり、腫れ物に触るように接する必要もありません。
パニック障害という診断名は医学的には厳密な定義がありますが、実際の医療現場では医学的な定義よりもはるかに幅広く診断名として用いられます。
何の予兆もなく突然、パニック発作に襲われるといった教科書的なパニック障害の場合もあれば、パニック発作を誘発する何らかの条件があってその時にパニック発作が起こりやすい。(厳密には広場恐怖症)
パニック発作自体は現在ほとんど出ることはないけれど、体調不良がパニック発作が出ていない時もずっと続いている(自律神経失調症)など、人によって大きく違います。
根本的な治療には心理療法や生活習慣の改善が不可欠ですが、病院に通院していても投薬しかしていなかったり、本人がカウンセリングや運動療法を拒否していることもあります。
パニック障害になりたての方であれば、改善しやすいのですが、何年もパニック障害に苦しんでいるという慢性化した状態の人もいれば、何度か再発と寛解を繰り返している場合もあります。
また、あなたにいくら支える気持ちがあっても、パニック障害になる方は、もともと自分一人で問題を抱えやすい性格傾向を持っている方も多いため、パートナーに自分の病状を詳しく話したがらない方も多くどう接して良いのかは非常に難しい問題です。
それでも、周囲の人が適度な距離感で支えてあげることで、本人が改善に取り組むための力強いサポートになることは間違いありません。
しかし、距離感が近すぎたり遠すぎたりするとかえって改善を邪魔してしまうことにつながるので、距離感を考えて接するという、人間関係の基本を丁寧に行っていきましょう。
パニック障害を理解しましょう
パニック障害になると、突然もしくは自由に身動き取れないと感じた状況に対して、不安感、恐怖感、動悸、息苦しさなど襲ってくるパニック発作が出るようになります。
健康な方からは理解しずらいとは思いますが、誰しも重要な会議の場で話したり、勝てば優勝、受験などの重要なシーンでは緊張して鼓動が早くなることはあると思います。
その緊張感の時に感じる落ち着かない感覚が頻繁に出て持続していたり、数倍強くなった状態がパニック発作だと想像して頂けると近いと思います。
過呼吸や動悸で動けなくなるパニック発作は、きっかけが全くなく突然発生する場合と、渋滞・バス・電車・美容室・歯医者・人混みなど身動きが取れない特定の状況がスイッチとなってパニック発作が起こる場合(正確には広場恐怖症と言います。)の2タイプがあります。
また、パニック発作が起こっていない時は全く何ともない発作時以外は健康そのもので元気なタイプとパニック発作が起こっていない状態でも自律神経失調症と同じ慢性的な体調不良に苦しんでいるタイプの方がいます。
どちらの場合でも、いつパニック発作が襲ってくるかわからないことにおびえ続けていると、パニック発作が起きるのではないか?と起きるかもしれないという不安感に襲われるようになり(予期不安といいます)、パニック発作時以外も常に不安感を感じるようになっていきます。
外出中にパニック発作を起こしたら・・・と考えて、外出を控えるなどパニック発作を引き起こしやすいシチュエーションを避けるようになっていきます。
不安を避けるためにパニック発作を引き起こしやすいシチュエーションを避けていると、さらに不安感や恐怖感が強くなり、行動範囲がどんどん狭まっていきます。
完全に外出できない状態になってしまうと改善が難しくなりますので、心理療法の介入をなるべく早い段階で行ってあげることも重要です。
不安感に襲われているときは見守る
軽い不安感、焦燥感が出続けている場合には、パニック発作が出ていないときでも、そばにいて欲しい、手をつないでいて欲しい、一人にしないで欲しい、早く帰ってきて欲しいなど、自分の不安感を解消ことに頭がいっぱいになって、あなたに不安感を和らげるために助けて欲しいと訴えてくることもあります。
人間の脳は不安な感情が出てくると、論理を主る前頭葉の働きが低下してしまう為、論理的な思考が出来なくなって、動物的な行動(自分の欲求だけを相手に要求)をとるようになります。
大切な人ですから助けてあげたい気持ちになるのはわかりますが、パニック発作を起こしていない限りは不安感で苦しそうにしていても、相手が求める不安が解消される行為を安易に行わないようにしてください。
誤解しないで頂きたいのは見捨ててくださいという意味ではありません。見守るにとどめて下さいということです。
パニック障害の改善には、湧き上がってきた不安感を「自分の力で不安をコントロールできるようになる」スキルの習得が必須です。
不安が過ぎ去るのをじっと待つ、一人でうろうろしながら過ぎ去るのを待つということも大切な不安のコントロールスキルです。
あなたにとって「そばにいて欲しい」という訴えに答えることはそれほど負担ではないかもしれません。
しかし、そこであなたがそばにいてしまうと自分の力で不安感情に対処する練習を邪魔してしまい、不安感に襲われたらあなたを呼ぶという対処方法を学んでしまいます。
場合によっては「愛しているなら私が不安で苦しいのに何であなたは助けてくれないの!?」と怒りをぶつけられてしまうこともあります。
もう既に何度か不安解消の手助けをしてしまっている場合には、不安に対して自分で対処できるように練習していくことが大切だということを冷静な時に説明して合意をし、徐々に見守るにとどめるようにしていきましょう。
本人が納得できない場合には私達のような専門家から説明を受けることも検討してください。
しかし、黙っていきなり手助けをやめると見捨てられたと勘違いしたり、関係性が悪くなってしまうので必ず話し合ったうえで行いましょう。
不安感をなだめる時は不安を肯定する
パニックになりかけている時には、そこまで不安になる必要がない、危険がないことは本人もわかっていることも多いです。
不安になっている時に、「大丈夫、大丈夫」など、安心させようと声掛けをしたくなりますが、論理的に考えて不安に思う必要がないことを伝えると不安や辛さをわかってもらえなかった、否定されたと感じる場合があります。
不安な感情をなだめる時には、「不安が強くてつらい」といっているのであれば、「不安が強くてつらいよね」とオウム返し+共感して、相手の感情に寄り添ってあげるようにしてあげて下さい。
今、置かれている状況に危険がないのに、感情が付いてこないことに苦しんでいることが多いので、感情が付いてこなくて苦しいことを共感してもらえると落ち着きやすいです。
事前にパニック発作時の対応を教えてもらう
パニック発作が起こってしまった際には、どうして欲しいのかを本人が伝えられる状況にないことがほとんどです。
その為、日頃の体調が安定している時に、パニック発作が起きたらどのように対応すればよいのか?どのように対応して欲しいのかを確認しておきましょう。
パニック発作は長くて30分程度で必ずおさまります。
パニック発作時は苦しさのあまり我を忘れて、救急車を呼ぶようお願いされますが、救急車を呼んでも到着して搬送先を探しているときには落ち着いてきます。
また、パニック発作を起こしている自分を見られることに対して抵抗感がある人が多いので、人目のつかないところに移動させて大人しくさせてあげるということも大切です。
「頓服薬を財布の中に入れてあるから飲み物と薬を直ぐに取り出して渡してほしい」など、予めどのような対応をしておけばよいのかを確認しましょう。
不安の予防と治療
不安感を解消する行動はその後、不安を増強することがわかっています。例えば買い物に出かける行為が不安で出来ないなどがそうです。
不安が強いと外に出たがらなくなることがあります。不安だから外出しないでいると不安感や恐怖感がどんどん強くなって、外出が出来なくなっていってしまいます。
その場合は買い物に出かける・出かけないという二択ではなく、辛くならない範囲まで出かける(買い物出来ずに帰ってきても問題ありません。)ことが予防と治療になります。
不安がすごく強い場合には、玄関まで行く、靴を履く、玄関の扉を開ける、玄関の外に出るなど、苦しくなり過ぎない範囲、しかし、ある程度の落ち着かない感じや不安感は出る程度の小さな小さな外出の手順を行うだけでも行うようにしましょう。
辛いなら何もしなくてもいいよ。と甘やかすのはパニック障害を悪化させてしまいますので、体調不良が続いている場合でなければ、怖くても不安な感情を鎮める練習をさせることが大切です。
パニック発作時にはゆっくり呼吸をするよう促す
パニック発作が出ているときは、過呼吸(過換気症候群)になっていることが多くあります。
呼吸を早くしすぎることで息苦しくなったり、交感神経が刺激されて動悸がさらにひどくなります。
ゆっくり吐いて、ゆっくり吸うように
「ゆっくり吐いてー、ゆっくり吸ってー」
となるべく落ち着いて呼吸のタイミングを声掛けしてあげて下さい。
体が冷えていたり、逆に暑すぎると呼吸が早くなりやすいので、部屋の温度や服を調整しましょう。
どんなにひどいパニック発作でも数分から数十分、長くても30分程度で必ずおさまります。
過呼吸を頻発している場合には、日頃からの予防も大切です。
過呼吸を起こしている場合には紙袋を口に当てさせるという方法(ペーパーバック法)が昔は行われていましたが、必ずおさまる発作を鎮めるのに、窒息の危険性が高まる袋を使う方法はリスクの方が高いとのことで、現在は落ち着くまで自然に待つことが推奨されています。
不安に向き合うことは大切なこと
人間の心は不安から逃げれば逃げるほど不安感が強くなる特性があります。
不安なことから目を背けるほどに強い不安に襲われます。
逆に不安なことを怖いながらもしっかり観察できるようになると、不安はコントロールできるようになってきます。
パニック障害を克服していくうえで周囲の方のサポートは必要ですが、辛そうな姿を見るのが辛くて不安をコントロールする練習の邪魔になるような手助けをしすぎにならないよう注意してください。
心理的プレッシャーをかけなければ、基本的には普通の人と接するのと同じで問題ありません。
不安と向き合うのをじっと見守ってあげて下さい。
当院での改善をご検討の方はパニック障害をご覧ください。
パートナーがパニック障害でどのように接していけばよいのかわからず相談したい方はオンラインカウンセリングをご利用ください。