広場恐怖症(ひろばきょうふしょう)を自力で治すことは可能か!?

こんにちは、浜松市はりを刺さない鍼灸師の佐野です。

会議、集会、電車、飛行機、渋滞、高速道路、エレベーター、歯医者、美容院、人混み、ショッピングモール、閉鎖空間など、自分の自由にならない環境で、動悸、息苦しさ、冷や汗、意識が遠のく感覚、貧血症状などが出てきてしまうのが広場恐怖症です。

多くがパニック障害の後に2次疾患として広場恐怖症を発症することが多いのですが、普通に生活していたのに突然発症される方もいらっしゃいます。

普段は全く症状が無いため、自力で何とかしたいと思われる方も多い為、今回は広場恐怖症を自力で治すことは可能なのか?について、一緒に考えていきたいと思います。是非、最後までご一読ください。

結論:広場恐怖症を自力で治すことは原理上は可能ですが、簡単ではありません

会議、集会、電車、バス、飛行機、渋滞、高速道路、橋、トンネル、エレベーター、歯医者、美容院、人混み、ショッピングモール、閉鎖空間、公共の場所や人々が多く集まる場所での異常な恐怖感、動悸、息苦しさなどが出てしまうと、日常生活に支障をきたします。

日常の中で出来ないことが増える為、会食恐怖症とも近い悩みを抱えやすくなります。

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パニック障害から広場恐怖症になってしまう場合はパニック障害の延長として捉えることが出来ますが、ある日突然、運転中にパニック発作に襲われあれ?なんで?という状態から突然広場恐怖症が始まってしまう方もいます。

パニック障害との大きな違いはトリガーとなる状況がある程度限定されており、トリガーから離れればけろっとよくなってしまう点です。

多くの方がパニック発作を体験して最初は訳が分からず、インターネットで調べていくと自分が広場恐怖症であることを知ります。

治し方を調べていて、暴露療法にたどり着くのですが、結構間違った方法で実践して悪化させたり、トリガーとなる状況から距離を置いて生活してしまうことで、広場恐怖症の症状が自分では気が付かない間に悪化していることがあります。

しかし、パニック発作を引き起こすような状況にさえならなければ、いたって普通の生活を送ることが出来る為、何とかごまかしながら生活し、精神科・心療内科やカウンセラーといった専門家にかからずに自力で治そうとされる方も多いです。

当院のような鍼灸院に来られる方は、病院へ抵抗感を抱いている方も多いですが、自分の力だけでは改善が難しいということでご相談されます。

広場恐怖症を自力で治すことは原理的には可能ですが、専門家の力を借りるのに比べると非常に時間がかかるうえに、間違った知識で実践していくと悪化させてしまうこともあるので注意が必要です。

広場恐怖症になる原因

前述した通り、多くはパニック障害からのパニック発作から始まり徐々に広場恐怖症へと症状が変化していく方が多いです。

しかし、例えば、運転中に急に動悸が始まってびっくりして車を止めたらすぐに治まり、怖いながらもなんとか運転してその日は帰宅。

何だったんだろうと考えながらそのまま生活しているうちに、時々急に運転中に動悸が出るようになり、自分が運転中(もしくは渋滞や橋など特定の状況)にパニック発作を起こしていることに気が付くようになります。

運転中にパニック発作を起こしていることに気が付いてからは、次第にトリガーとなる状況になることが怖い為、運転を避けるようになったり、橋を渡らなければいけないところは運転を代わってもらうなど生活が制限されていきます。

臨床的には、過去の恐怖体験や養育期に自由にさせてもらえなかった体験など、感情を抑圧された期間があった方が、形を変えてトラウマ化してしまっている場合に発症しやすい傾向があります。

また、日々の生活環境や生活習慣も広場恐怖症の発症に影響を及ぼします。

過度のストレスや長時間労働、育児、不規則な生活、飲酒やカフェインの摂取などは神経系に負担をかけ、広場恐怖症を引き起こすきっかけになることがあります。

恐怖を感じている時に脳で何が起こっているのか?

私達の脳は生命に危険が及ぶ状況に置かれると即座に反応します。

それは「戦うか逃げるか」の逃走・闘争反応と呼ばれるもので、元々は捕食動物に遭遇してしまった際に生き残るための生存本能のシステムとして組み込まれている警報装置です。

広場恐怖症はこの逃走・闘争反応命に危険が迫っていないにもかかわらず、脳が外界の情報を誤認して命に危険が迫っていると体の中の警報装置を鳴らしてしまうことから発生します。

この反応は急激に交感神経を高めて、戦うか逃げるかをしやすくするために、心拍数を増加させ、呼吸を速め、発汗を促します。

こういった身体的な症状と一緒に、不安感や恐怖感を感じさせることで逃走する行動や攻撃する行動をとるように感情を誘導します。

警報装置が変なタイミングでなり始めることが広場恐怖症の病態と言えます。

脳科学の観点から見ると、広場恐怖症は脳の情報処理のエラーです。通常であれば、危険がないことを認識した時点で不安感や恐怖感は鎮静化されるようにできていますが、そのシステムが正常に機能していません。

恐怖と不安は、脳の異なる部分が互いにどのように相互作用するかに大きく依存しています。広場恐怖症に関係する脳の場所で代表的なのは以下の3つがあります。

  1. 扁桃体: 恐怖と不安の感情を引き起こすために最初に活動する重要な場所ですが、広場恐怖症の方はこの部分が興奮しやすい状態になっていることが知られています。また、扁桃体が興奮した状態の時に感情的な記憶が強化されるため、恐怖に関連する記憶がより強く記憶に残りやすくなります。
  2. 海馬: 記憶の形成と取り出しに関与している部分で、過去の危険な体験をより強く記憶するようにできています。その為、パニック発作を経験した方はその恐怖感がどのような状況で起こったのかをより強く記憶し、その状況を避けるように働きます。
  3. 前頭前皮質: 前頭前皮質は扁桃体の興奮を鎮める役割がありますが、この部分の機能が低下すると、危険がないとわかっていながら感情を抑制することが出来なくなってしまいます。これが広場恐怖症で危険ではないとわかっているのに、感情だけが動いてしまう理由です。

身体的アプローチと心理的アプローチ

広場恐怖症を治すためには、脳科学的な視点からの身体的アプローチと心理的アプローチの両方が必要になってきます。

身体的アプローチは脳が誤作動を起こしにくくする下地を作っておく上で重要になります。心理的アプローチは脳の使い方を学習させるものですが、学習とは神経ネットワークの再構築です。

神経ネットワークを再構築するには、脳へ十分な栄養と神経細胞の機能を高めておくことが大切で、それが身体的アプローチです。

一方、心理的アプローチは、広場恐怖症の根底にある神経の使い方のパターンを改善するためのものです。

身体的な問題だけで神経の機能低下から一時的に神経の誤作動が起っている場合には身体的アプローチだけでも改善されることがあります。

しかし、神経のネットワークに変化が起こってしまい、広場恐怖症の症状が出やすい神経ネットワークに組み変わってしまっている場合には、再度神経ネットワークを組みなおす必要があり、その場合に心理的なアプローチが必要になります。

身体的アプローチ

脳と体のコンディションを整える

広場恐怖症を克服するためには、平時からリラックスできる状態、自由にリラックスモードに入れるように自分自身の体調を整えることが重要です。

適度な運動、質の良い十分な睡眠、規則正しい生活習慣は脳と体のコンディションを整えます。

また、アルコールやカフェインといった刺激物の摂取を避けることで神経細胞に負担をかけないことも大切になります。

また、首こりや肩こりは脳へ血液を送る血管を圧迫して脳への酸素や栄養の供給を低下させてしまいますし、内臓の不調は脳が必要とする栄養の消化吸収を邪魔してしまいます。

通常であれば、鍼灸・整体・薬物治療などでこのコンディションを整えることになりますが、自力で改善する場合には、ご自分である程度自分の身体へアプローチする方法を勉強し、実践する必要があります。

栄養学的アプローチを行う

神経細胞間の情報の伝達は、神経伝達物質によって行われていますので、その原料となる栄養素や原料を神経伝達物質へ変換するために使われる栄養素の不足は神経細胞の適正な興奮と抑制に悪影響を与えます。

一般の方は少しイメージしずらいことが多いですが、食事は感情の動きにかなりダイレクトに影響しています。

栄養バランスの良い食事は、神経細胞の機能を向上させ、不安感を軽減します。

心理的アプローチ

広場恐怖が発生する条件を特定する

広場恐怖症は人によって、パニック発作を引き起こすトリガーとなる状況が異なります。比較的よく見られる状況が、会議、集会、映画館、電車、バス、飛行機、渋滞、高速道路、橋、トンネル、エレベーター、歯医者、美容院、人混み、ショッピングモール、閉鎖空間、公共の場所や人々が多く集まる場所といったものになります。

しかし、車の運転中に起こりやすい方でも、赤信号で止まるのが苦手な人もいれば、渋滞でソワソワしてきてしまう方、隣に誰かいるのが苦手な方など、苦手な状況が微妙に異なります。

何によって引き起こされるのかといったトリガーを正しく理解することが重要になります。

これは、症状を引き起こす条件を知ることで、改善すべき目標が明確になっていくからです。何となく苦手ではなく、細かく条件を変えながら自分が何に反応しているのかをまずは知ることが大切です。

トラウマ体験や間違った認知が存在していないか過去を振り返る

広場恐怖症は、過去のトラウマに由来することがあります。

通常はパニック障害がから来るパニック発作がそのトラウマのきっかけになり易いのですが、そうではない方もいます。

例えば、幼少期にお腹が痛いにもかかわらず、授業中にトイレに行くことは「自己管理が出来ていない証拠だ!」というような教育方針の下で育った方などは、必死でトイレを我慢するなど、我慢癖が付いていることがあります。

広場恐怖症は飛行機や電車など、確かに自分の自由が効かないという場面に起こりやすいのですが、会議や映画館、美容室などいざとなればいつでも席を立って自由に外に出られる(物理的に拘束されているわけではない)状況にもかかわらず、「出られない」と感じている方が多いです。

このような思い込みは小さい時から行動を抑制されてきた方に多くみられる特徴で、「出来るけれどやらない」という正しい認識ではなく、「出来ない、やってはいけない」と間違った認識をしている方が多いです。

そういった、過去の恐怖体験やトラウマ、歪んだ認知を持たれている場合にはその過去に気が付き向き合って解消することが必要になります。

認知行動療法を行う

認知行動療法は、広場恐怖症を克服するうえで最も有効な方法の一つです。

次に紹介する暴露療法も認知行動療法の一部になります。

前述したように、自分がどのような場面で広場恐怖症の症状が出てくるのかを認識して、その状況が危険だと感じるような自分の思考や感情、行動のパターンを理解し、それを変えるための方法を学んでいくことで、広場恐怖症を改善していきます。

認知行動療法では、まず、自分が恐怖を感じる状況やその時に抱くイメージや思考を書き出し、その次に事実に基づいているかどうかを検討していきます。

そして、不適切な思考や行動のパターンを変える方法を実践していきます。

正しく暴露療法を行う

暴露療法は、自分が恐怖を感じる状況に自分自身をゆっくりと慣れさせる方法です。

認知行動療法的に言えば、危険な状況ではないことを意識して、危険な状況ではない場合にとる行動を事実を優先して行動するという方法です。

広場恐怖症の改善には特に有効な治療法ですが、段階を踏んで徐々に暴露させていくことで慣らしていきますので、単純に辛い状態のまま我慢することではありません。

辛い状況に身を置いてひたすら我慢されている方がいますが、これはトラウマ体験を強化しているだけなので、かえって広場恐怖症を悪化させていってしまいます。

どのぐらいの状況に自分は耐えられるのかといったなるべく客観的な情報をもとにどのぐらいの強度の暴露を行うのかを決めて実行していくことが大切です。

専門家に近いレベルでの知識の習得とセルフでのアプローチ技術の習得が必要

広場恐怖症を自力で治すためには、専門的な知識と自己管理の技術が必要です。

自分自身の身体を十分にケアするアプローチを自分で行えるようになるだけでも、技術の習得に何年もかかってしまいます。

私自身は元々施術技術を自分が持っていたことで、パニック障害から出てきた広場恐怖症の改善は比較的容易でしたが、ゼロから自分の身体に自分で施術してケアする技術を身につけることはそれだけでもとても大変です。

心理的アプローチに関しても、まず理論や何のためにやっているのか、どこに気を付ける必要があるのか?など何冊もの専門書を読みながら少しずつ実践していく必要があります。

専門家のアドバイスをもらいながらであれば、適時必要な知識を説明してもらい、間違って実践しているところは修正してもらいながらやっていくことが出来るので、広場恐怖症の改善に不必要な専門知識まで身につける必要がありませんし、間違っている場合にはスグに指摘してもらえます。

専門書を読むために基本的な心理学の知識を学ぶ手間なども必要がありません。

また、心理的アプローチは一人で取り組むと主観が入ってしまいかえって悪化させてしまうこともあります。

まとめ

広場恐怖症は、自力で克服することが可能ですが、軽度でない限りは将来的に職業にするぐらいの知識や技術を習得する努力が必要になります。

しかし、決して不可能なことではありません。

実際、私自身もそうでしたが、不安障害やうつ病の治療が病院の治療ではうまくいかず、頼れる専門家とも出会うことが出来なかった方が、必死で勉強して何年もかけて克服してきて、その経験を活かして現在は同じような苦しみに悩まれている方のサポートをする専門家として活動されている方もいらっしゃいます。

専門家の力を借りれば数ヶ月程度で改善できる状態なのに、自力で治すことに固執して何年もかかって限りある人生の時間を浪費することが果たして正解なのか?といわれると難しい問題ではあります。

自力で治すというのは、沖縄まで旅行に行きたいがために、飛行機や長距離の航海が可能な船舶免許を取るような行為に近いと言えば近いことを理解した上で取り組まれるのが良いと思います。

当院での改善をご検討の方は広場恐怖症をご覧ください。

遠方で来院が難しいけれど、生活習慣や改善についてや心理的アプローチ法について相談したい方はオンラインカウンセリングをご利用ください。

心身堂鍼灸院院長
この記事を書いた人
鍼灸師 佐野 佑介

静岡県浜松市中央区和地山で自律神経専門のはりを刺さない心身堂鍼灸院を開業。
自身も26歳の時にパニック障害から自律神経症状に苦しんだ経験を持つ。
2012年に独立開業。
国家資格 はり師(148056号)・きゅう師(147820号)
医薬品登録販売者試験 合格

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