ブログをご覧頂きありがとうございます。浜松市はりを刺さない心身堂鍼灸院の佐野です。
暑い時期になると熱中症への注意を当院でも呼びかけることが多いですが、特に元々自律神経を病んでいる方が熱中症になってしまうと回復が非常に難しい状態となります。
自律神経失調症、パニック障害、起立性調節障害などは熱中症になった後の後遺症として出てきてなかなか治らないとのことでご相談を受けることも多いため、今回は熱中症が自律神経にどのような影響を与えて、ひどい後遺症を引き起こしてしまうのかについて、一緒に考えていきたいと思います。是非、最後までお読みください。
結論:細胞レベルのダメージを受けるので回復が難しい
熱中症は体温の急激な上昇を主症状とする疾患ですが、実際に身体へのダメージを与えるのは体温が上昇してタンパク質変性することが原因というわけではありません。
熱中症は体温を下げる際に大量の水分やミネラル(Na)が発汗により失われることで、細胞内と細胞外の水が不足したり、そのバランスが崩れることで発生します。
血液量が大幅に減少して血圧が保てなくなったり、ミネラルのアンバランスから細胞へ必要以上の水が入り込んで細胞内を水びだしにしてしまったり、細胞の水分を血液中に吸い上げてしまい細胞の水分が不足するなど、細胞レベルに大きな影響を与えます。
一度、熱中症になると元の水分・ミネラルバランスに戻るまでに長い時間がかかります。また、水分・ミネラルバランスが元に戻ってから細胞の修復が行われるため数ヶ月から1年程度は回復までに時間が必要になります。
また、重症の熱中症の場合には細胞で大きなダメージを負うことになり、修復不能なレベルで細胞がダメージを受けると後遺症として残り治らなくなることもあるので、予防がとても大切です。
熱中症の3つのタイプ
熱中症では体温の上昇も問題になりますが、それ以上に体温を下げる為に発刊したことで、水分や塩分が不足して起こる脱水が問題になります。
脱水には高張性脱水、低張性脱水、等張性脱水の3つのタイプがあります。名前だけだと難しいので、ここでは便宜的に簡単な名称に置き換えて解説させて頂きます。
水が不足して細胞がカラカラ
水だけが不足すると真っ先に血液の水が不足する為、水の不足を補うために細胞の持っている水を血管の中に吸い上げてしまいます。
つまり、水が不足すると細胞の水分が不足して細胞がしわしわになってしまいます。
塩が不足して細胞がパンパン
塩が不足すると血液の中に水を留めておくことが出来なくなるため、細胞に血液中の水が流れ込んでしまいます。
その結果、細胞がパンパンに膨れ上がってしまいます。塩が不足しているところへ水だけを補充するとこの状態を作りやすくなります。
水分をとっていたのに熱中症になったというのは、このタイプです。
水と塩の両方が不足
一番発生しやすい熱中症で、水と塩の両方が不足したことで血液循環も悪く、細胞も全体的にしぼんでしまいます。
血液循環も悪くなったうえ、細胞でも水分が不足する為、ダメージとしては大きくなります。
水と塩の補給が重要といわれる理由です。
脱水状態は自律神経の神経細胞にもダメージを与える
脱水になると循環血液量の低下、細胞の水分量の過剰・不足が起こります。
血液量が減ると十分な酸素と栄養が全身の細胞に運ばれにくくなってしまいます。
それに加えて細胞の水分量も過剰であったり不足であったりといった状態も引き起こされると、細胞の活動(代謝)が阻害されてしまいます。
脳も神経細胞の集まりですので、循環血液量の低下を受ければ活動が出来なくなってしまいます。
重度の熱中症で意識障害(意識がなくなる)が起こる理由は脳への血液の供給が上手くいかなくなることと、体温が高くなりすぎることで脳が活動しやすい温度を超えてしまうからです。
脳には自律神経の中枢があり、脳への血流量低下が神経細胞への酸素や栄養の供給を低下させることでダメージを与えてしまいます。
このダメージの程度によって、熱中症から回復してもいつまでも自律神経症状が残るようになります。
自律神経の中枢は脳内の中でも、例えば体温の調節などは視床下部で行っておりますが、循環の調節は脳幹で行っているなど、機能局在がある為、障害された部位によって残る自律神経症状がお一人お一人異なります。
血液量は生理食塩水の点滴で比較的短時間で回復する
脱水を起こしてしまっている場合には、すぐに生理食塩水の点滴を開始することで速やかに循環血流量を戻し、生理食塩水のナトリウムを調整することでミネラル不足などの状態も改善することが出来ます。
本来は経口補水液などで脱水を起こしにくい状態をキープした予防が大切ですが、脱水を起こしてしまった際には速やかな対応が必要になります。
熱中症の症状が現れた場合には軽く考えず、病院への受診を検討しましょう。
熱中症は半年から1年ぐらいは時間が必要になる
一度熱中症になると、そこから完全に回復してダメージから回復するまでには、半年から1年ぐらいは水分補給を大目に行い、体温に気を使う生活を継続することが大切です。
体温調節機能が低下する方が多いため、自律神経の回復の為のアプローチを行っても再度熱中症を引き起こしてしまうと一気に元の状態に戻ってしまう為です。
また、熱中症後の症状の回復は、消化管など自律神経だけでなく他の細胞も同時にダメージを受ける為、身体の修復に必要な原材料の消化吸収がスムーズに行われにくくなってしまいます。
細胞自体がダメージを受けている為、代謝する能力が低下しているので原材料を使って修復するという速度がどうしても遅くなるのが熱中症後の自律神経症状の改善の難しさです。
自律神経系がダメージを受けると自律神経症状が出る
脱水により自律神経の中枢やその情報を送ったり、集めたりする神経細胞、自律神経の指令を受けて実際に活動する細胞の機能が低下するとなかなか治りにくい自律神経症状が出てきます。
血圧維持が上手くできなくなる
循環中枢がダメージを受けると、心臓の拍動だけでなく血管を拡張するのか収縮するのかといった血圧を維持するシステムが不安定になり、血圧が維持しずらくなってしまう場合があります。
熱中症になった後から起立性調節障害や起立不耐症になる方は多くいらっしゃいます。
頭痛が残ってしまう
自律神経系が乱されることで交感神経優位の状態が常態化しやすくなると首肩こりがひどくなりやすく、その結果として慢性的な頭痛持ちになってしまうことがあります。
こちらも熱中症になった後からいつまでたっても頭痛だけが残るというケースが多いのですが、他の自律神経症状がなく、頭痛が起こっている場所の循環障害が残っているだけであれば、鍼灸で比較的改善しやすい症状ですが、他の自律神経症状も残っている場合にはダメージが大きく改善が難しいことが多いです。
だるさや倦怠感が継続する
熱中症後、だるさや倦怠感がなかなか抜けなくなる方は多いです。
東洋医学的に胃腸の機能低下による症状の為、胃の活動を高めて睡眠を良くとることで改善を目指しますが、ダメージの程度によってはかなり改善が難しい症例もあります。
交感神経が高まりすぎて不眠や動悸が出る
熱中症は生命にかかわる問題の為、かなり強い身体ストレスがかかります。
非常に強いストレス反応が起こり、強く交感神経が刺激されて交感神経優位な状態が継続してしまい不眠や動悸、不安症状といった症状が出てくる場合もあります。
症状によってさらにストレス反応が引き起こされて、なかなか症状が改善しずらくなってしまいやすい状態になります。
内臓もダメージを受ける為、回復の為の栄養の消化・吸収能力も低下
熱中症は全身の細胞にダメージが及ぶ為、修復に必要な原材料を取り込むための胃腸などの機能も低下します。
胃腸の機能を高めて原材料を取り込みたいのですが、その胃腸を修復するための原材料がなかなか消化吸収できなくなる為、回復が難航しやすくなります。
鍼灸施術などで胃腸への血流を集中させて先に消化吸収能力の回復を優先させることも多いのです。
また、タンパク質の吸収をよくするために予めアミノ酸にまで分解されたサプリメントをとるなども場合によっては必要になります。
完全に回復せず後遺症が残る場合もある
熱中症は全身の細胞にダメージを与える為、いわゆる自然治癒力そのものを低下させてしまいます。
そこまで細胞のダメージが大きくなければゆっくりではあるものの、身体の修復に必要な原材料を取り込むための胃腸の機能改善からはじめて、一つずつ優先順位をつけて修復を促したい場所に血液を集中していくことで改善が見込めます。
しかし、細胞自体の機能がどれだけ血液を送っても修復できないほどのダメージを受けてしまっている場合には後遺症として何らかの残り続けてしまうことになります。
予防が一番大切です。
まとめ
熱中症になると全身の細胞がダメージを受ける為、回復が難しい傾向があります。
熱中症は主に脱水が問題になり引き起こされるため、水分と塩分を十分に補給し、予防を行うことが何よりも大切です。
脱水になると自律神経の神経細胞もダメージを受ける為、熱中症後に自律神経症状に悩まされる方は多いです。
点滴で循環血液量はすぐに回復できますが、経口補水液などで最初から予防することが一番大切になります。
脱水は循環血液量を戻すには短時間で出来ますが、細胞の水分量まで戻すにはとても長い時間が必要になります。
自律神経系がダメージを受けた場合には、熱中症後に治りにくい自律神経症状に悩まされやすくなります。
回復の為に必要な栄養の消化・吸収をする消化器系もダメージを受ける為、回復しずらいのが原因です。
ダメージがあまりにも大きい場合には完全に回復せず、後遺症が残ることもあるので予防を徹底的に行いましょう。
当院での改善をご検討の方は自律神経失調症をご覧ください。
遠方で来院が難しいけれど、カウンセリングを受けたいという方はオンラインカウンセリングをご利用ください。