起立性調節障害・不登校でも遊びには行けるのはなぜ?

こんにちは、浜松市はりを刺さない鍼灸師の佐野です。

起立性調節障害・不登校になり、平日は朝起きられず、昼頃に体調が回復してからも学校へ行けない。でも、遊びに行くことは出来ると親としてはもやもやした気分になってしまうことはあります。

今回はなぜ遊びにならば行けるのかを神経伝達物質の視点から一緒に考えていきたいと思います。是非、最後までご一読ください。

結論:勉強と遊びでは活動に使われる神経伝達物質が違う

起立性調節障害・不登校のお子さんが学校に行けないのに遊びに行ける理由を理解するためには、神経伝達物質という脳の中で神経同士が連絡を取り合う際に使われる化学物質について知ることが一つのヒントになります。

起立性調節障害と不登校は厳密には異なる問題ですが、併発していたり、かなり近い問題を抱えていることも多いため、このページでは起立性調節障害の一部として扱わせて頂きます。

神経伝達物質とは、神経細胞と神経細胞が情報を伝達する為に使う化学物質で、有名なところだとセロトニンが不足するとうつ病や不安障害を引き起こす原因になるということが知られています。

起立性調節障害は血圧に異常をきたす疾患で、血圧を維持するために使われる神経伝達物質であるノルアドレナリンの不足が指摘されています。

ノルアドレナリンは交感神経を刺激して血圧を維持する作用や、嫌なことに対しても意欲を示す(頑張るのに必要)、覚醒を高め集中力を上げ、行動をひきおこす作用があります。

つまり、起立性調節障害の子供が困っている症状(血圧の維持が出来ない、立ち眩みがする、やる気が出ない、頭がぼーっとする、朝起きられない)などの症状の多くがノルアドレナリンの作用が十分に働いていないから起こっている症状と考えることが出来るのです。

勉強の意欲を引き出す神経伝達物質はノルアドレナリン

知的好奇心が高く、勉強そのものがすごく好きという子供の場合は別ですが、大半の子供は何となくみんなやっているから、将来困るといわれているからという理由で自分の中で明確な理由もなく勉強をすることになります。

あまり気乗りしないことに対して集中力を発揮して、困難な事に取り組む時にはノルアドレナリンが重要な役割を果たします。

ノルアドレナリンの作用である覚醒状態に保ち、意欲を保持したり、集中力を高めるといった神経の働きや血圧の維持といった具合です。

起立性調節障害の病態自体は循環動態に問題がある疾患だと考えられていますが、血圧だけですべての症状を説明することが難しいことが多いです。

むしろ起立性調節障害の子供の状態をうまく説明できるのは、ノルアドレナリンがうまく機能していないと考えることの方が病態を無理なくに説明できます。

学校へ行く、勉強をするということが出来なくても、ゲームをする、動画を見るといったことが可能な理由はノルアドレナリン不足と考えると説明することが出来ます。

ノルアドレナリンは本人があまり楽しいと感じないことに対して、やる気を出させたり、活動的にさせる時に働く神経伝達物質だからです。

ですから、ノルアドレナリンを使わないと行うことが難しい、学校へ行く、勉強をするといったことだけが行えないというのは自然なことだと考えることが出来ます。

遊びや楽しい時はドーパミン

一方、遊びや楽しい活動にはドーパミンという神経伝達物質が中心的な役割を果たします。

ドーパミンは、私たちが何かを楽しむときや喜ぶときに脳内で分泌される物質で、「報酬物質」とも呼ばれます。

ドーパミンにも血圧を高めたり、意欲を高める作用がありますが、嫌なことをするときにはドーパミンは分泌されません。

ドーパミンが分泌されると、私たちの心は満たされ、活動のモチベーションが上がります。

遊びや楽しい活動は出来る、体育祭や遠足、修学旅行など楽しいイベントだったら参加できる子が多いのもドーパミンがノルアドレナリンの代わりになっているからだと考えることが出来ます。

起立性調節障害の子供でも、自分が好きな楽しいことをしている時は活動に夢中になり、楽しむことができることが多いのもこのためです。

ノルアドレナリンはドーパミンが変換された物質

実は、ノルアドレナリンとドーパミンはとても密接な関係にあります。

それはノルアドレナリンは、ドーパミンが化学反応を経て変換されたものであるということです。

つまり、ノルアドレナリンの原料はドーパミンなので、ドーパミンの量が増えると、ノルアドレナリンに変換されてその量も増えるという関係にあります。

逆に言えばドーパミンの量が減れば必然的にノルアドレナリンの量が減ってくるということでもあります。

起立性調節障害の子供の中には学校が楽しいとあまり感じていない子供が多いです。その為、今まで頑張って学校に通えていた期間というのは、ノルアドレナリンをどんどん消費して学校へ行っていたことになります。

同じだけドーパミンが出るような楽しいことをして過ごしていればバランスが取れているので起立性調節障害の症状が出てくるとは考えずらいです。

ドーパミンが出るような楽しいことを過ごしていない状態のまま、ノルアドレナリンを大量に消費して、枯渇してきた段階で血圧が維持できない、覚醒出来ないので朝起きられないなどの症状が出てきたと考えれば、今まで学校へ行けていた理由も説明が付きます。

もっと簡単に言えば、楽しいことが少なく、辛いことややりたくないことが多い生活を続けてきた結果と言えます。

起立性調節障害の子供に好きな事だけしてもらう期間が必要

起立性調節障害のお子さんには、まずはドーパミンを増やすことが重要です。

そのために、お子さんには好きなことをする時間が必要となります。

好きなことをするという行動がドーパミンを分泌させ、そのドーパミンがノルアドレナリンに変換されることで、私たちの脳は活動的で覚醒した状態を維持することができます。

つまり、遊びや好きなことを通してドーパミンを増やし、それをノルアドレナリンに変換することで、起立性調節障害のお子さんも学習などの活動を行うことが可能になるわけです。

同時になるべく乗り気でないこと、嫌な事と距離を置いて、ノルアドレナリンを無駄に消費しないということも大切になってきます。

嫌なことをやめて楽しい子をと楽しむということが治療に大切になってきます。

子供らしい子供の生活を送らせてあげることが何よりも大切なのです。

起立性調節障害は怠けているわけではない

ここまでお読み頂いた方であれば、起立性調節障害は決して怠けているわけではないことが理解できたかと思います。

起立性調節障害になるほど、自分の楽しいを我慢し、嫌なことを優先して、率先して頑張ってきた結果起立性調節障害を発症している可能性があるのです。

子供たちの脳内ではノルアドレナリンがうまく作用していない可能性が高く、これが学習や集中が困難になる原因となっています。

しかし、遊びや好きなことに対する意欲がまだ残っているうちであれば、ドーパミンを分泌することが可能で、そのドーパミンがノルアドレナリンに変換されることで、少しずつでも学習などの活動が可能になるのです。

深刻な状態になると楽しいことをやる意欲も低下するといった、どちらかというとうつ病に近い状態になってしまっている場合もあるので、早めに対応してあげることがとても重要になります。

ドーパミン(楽しい事)≧ノルアドレナリン(嫌な事)という生活を送る

ドーパミンとノルアドレナリンのバランスが整うことで、起立性調節障害の子供たちは学習やその他の活動を行うことが可能になります。

ドーパミンが十分に分泌され、その一部がノルアドレナリンに変換されることで、脳の機能が正常に働くからです。

これを生活面に落とし込んで考えると、楽しいことを増やす、嫌なことを減らすといった生活をしばらく送ることの重要性がわかって頂けるかと思います。

遊びにだけ行けるのは、怠けているからでは?と思ってしまいたくなってしまいますが、本人は無自覚であるとしても、身体の機能を取り戻そうとする自己治癒的な反応の一種でもあるのです。

嫌なことに手を付けるのは、楽しいことを十分に行った後、ドーパミンがノルアドレナリンに変換されてくれば自然に可能になってきます。

まとめ

起立性調節障害の子供が学校に行けないのに遊びには行けるのは、脳内の神経伝達物質、特にドーパミンとノルアドレナリンの働きによるものと考えることが出来ます。

好きな事や楽しいことは出来るというのは、単に怠けたいだけでは?という気持ちになってしまいますが、子供の中にある自己治癒をしようとする反応なので、楽しく過ごすことを応援してあげることが大切です。

十分楽しく過ごすということを行っていけば、自然とノルアドレナリンが増えて、勉強に取り組んでみよう学校へ行ってみようといった感情が少しずつですが出てくるようになります。

焦って勉強や学校へ行かせようとする行為は、神経伝達物質から考えるとノルアドレナリンを無駄に消費し、症状を悪化させることにつながります。

子供には遊びや好きなことを通じてドーパミンを分泌させ、それがノルアドレナリンに変換されることで学習などの活動がいずれまた可能になることを理解し、サポートしていきましょう。

当院での改善をご検討の方は不登校起立性調節障害をご覧ください。

遠方で当院への来院が難しいけれど、お子さんの起立性調節障害・不登校について相談したい方はオンラインカウンセリングをご利用ください。

心身堂鍼灸院院長
この記事を書いた人
鍼灸師 佐野 佑介

静岡県浜松市中央区和地山で自律神経・メンタル専門のはりを刺さない心身堂鍼灸院を開業。
自身も26歳の時にパニック障害から自律神経症状に苦しんだ経験を持つ。
パニック障害、広場恐怖症、うつ病などの精神疾患領域と起立性調節障害、機能性ディスペプシア、眩暈などの自律神経疾患の専門の鍼灸師。
国家資格 はり師(148056号)・きゅう師(147820号)
医薬品登録販売者試験 合格

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