起立性調節障害・不登校でスマホばかりしているが、取り上げて(没収)いいのか?

ブログをご覧頂きありがとうございます。浜松市はりを刺さない心身堂鍼灸院の佐野です。

起立性調節障害や不登校で学校へ行けておらず、毎日ずっとスマホばかりいじっているのを、そのままにして良いのか、取り上げた方が良いのかは親御さんとしては悩まれる方が多い問題です。

学校へ行かず、自宅学習もしていないと時間を持て余すのでスマホやゲームをする時間がやはり伸びていく子供は多いです。

今回は起立性調節障害や不登校の子供にスマホを使い続けさせて良いのかについて一緒に考えていきたいと思います。是非、最後までお読みください。

結論:元から1日1時間未満の使用に制限付きで与えましょう

起立性調節障害や不登校で、体調不良もある子供の場合は、出来ることも限られてしまうので、スマホやゲームばかりやっていても多めに見たくなる親御さんは多いです。

自律神経の症状がひどい場合には、スマホをいじったりゲームする気力もなくなるので、そういった場合であれば、特別制限をかける必要も取り上げるということも基本的には必要ありません。

しかし、ある程度体調が安定して、学校へはいけないけれど家にいる分には普通の生活が出来ているという状態になってきたあたりからは、スマホとの付き合い方について制限をかけ始める必要があります。

私自身も医療者としては最初のうちはスマホやゲームの制限をかけることに対しては消極的でした。

特に子供との信頼関係がしっかりできていない段階で制限の話をすると、子供に敵だと思われてしまう為、改善の足かせになるからです。

しかし、起立性調節障害や不登校の子供を何人も診させて頂き、スマホやゲームが脳へ及ぼす影響について理解を深めるうちに、いきなり制限はかけないものの、少しずつスマホやゲームをやめさせていくことは必要だと考えるようになりました。

未成年者のデジタル機器の使用目安は1日1時間未満

スマホは2009年ぐらいから急激に普及が進みました。

東北大学教授で医学博士の川島隆太先生はスマホが脳へ与える影響を研究されて研究からわかったことを書籍にまとめてわかりやすく解説してくれています。

研究でわかってきていることは、未成年者(18歳未満)の子供のデジタル機器(TV、PC、スマホ、タブレット、ゲーム機)の使用時間は1日1時間未満にすることを推奨されています。

もちろん、子供によってはデジタル機器に対する抵抗性が高い子供と低い子供がいますが、平均的な子供であれば1日1時間以上使用すると、脳に悪影響が出て集中力の低下、メンタルヘルスの悪化(鬱っぽい気分や不安になり易い)、コミュニケーション能力の低下、認知能力の低下、記憶力の低下がおこることがわかっています。

特に驚きなのは、デジタル機器の使用時間が1日1時間未満で、自宅学習しない子供の学力と1日3時間以上使用するが自宅学習を2時間以上する子供の成績が、1日1時間未満の自宅学習しない子供の方が良いということです。

これは、そもそも学習した努力そのものがリセットされていることを示しています。

実験でMRIで脳をスキャンして、2年後に再度同じ子供のMRIで脳のスキャンをした際に、デジタル機器の使用時間が1時間未満の子供の脳は正常に発達していたのに対し、3時間以上の子供の脳は2年前の脳の状態と同じで成長が止まっていることがわかっています。

スマホをちょっと使わせるぐらい・・・。と軽く考えてしまいがちなのですが、脳の発達を止めてしまうほどの悪影響があるのには驚きです。

学習や記憶力だけの問題に治まらず、睡眠障害やメンタルヘルスの悪化といった健康へ悪影響を与える問題も引き起こす為、一番良いのはスマホを与える段階で使用時間を1時間未満に制限したうえで子供に渡すことが大切です。

しかし、ある程度一度使わせてしまい依存状態にしてしまった後から危機感を覚えて制限をかけたくなるという場合には非常に困った状態になります。

子供の脳は脆弱な為、基本的に自己管理できない

デジタル機器は快楽を感じさせるドーパミンの分泌を引き起こして報酬系を刺激します。

ドーパミンの分泌を引き起こす行為の多くは依存症を引き起こします。例えば、アルコール依存症、ギャンブル依存症、性依存症などがそうです。

適切な距離で付き合うことが出来れば問題ありませんが、未成年者に対して飲酒やギャンブルが禁止されているのは、ドーパミンに対して脳が抵抗できない脆弱性があるからです。

子供の脳は節度を持って付き合う為に必要な前頭葉が発達途中の為、自己管理能力が不十分で、大人よりも簡単に依存症に陥ってしまいます。

デジタル機器の使用は少なくとも成人するまでは、ある程度は親が管理することが大切です。

不安感をごまかすためにスマホ依存に陥る

学校へ行けないことに対して不安を感じている子供は多いですが、親子関係が悪い、友人とコミュニケーションがうまく取れない(合わせることは出来るけれど本音が言えないなど。)

元々コミュニケーションに問題を抱えている子供の方がスマホ依存になり易い傾向があります。

デジタル機器を使ってドーパミンが出ていると、報酬系が刺激されるため不安感や低い自己否定感をごまかすことが出来ます。

精神疾患を持っている方がアルコール依存症に陥りやすいのと同じ原理なのですが、ドーパミンによって報酬系が刺激されている間は不安感から解放されます。

お酒を飲んで嫌な気分から解放されるのと脳内で起こっている反応は基本的には同じです。

そして、報酬系への刺激が止まると不安感が出てくるため、またデジタル機器を触る(アルコールを飲む)といったことを繰り返します。

そして、報酬系を刺激され続けていると不安感を鎮めるのに重要な前頭葉の働きが低下する為、不安感をより感じやすくなります。

不安感を感じるから再びデジタル機器によってドーパミンを分泌させて不安感を和らげるという流れを繰り返して、依存症へなっていきます。

脳が未発達な為、デジタル機器に対して脆弱であるだけでなく、学校へ行けない、親に理解してもらえていない感覚がある、信頼できる友人がいないなど心を安定させるコミュニティがしっかりしていないことが基盤にあって、不安をごまかすためにデジタル機器を使用してどんどん状態を悪化させていくという構図です。

可哀想だから許してあげたい親心に注意

学校へ行けない不安感や辛さを少しでも和らげてあげたいという気持ちになるのは親として自然なことです。

しかし、その不安感や辛さをごまかすためにドーパミンの分泌を促すデジタル機器を使用せさせることは辞めてください。

デジタル機器を使わせるということは、不安感や辛さをごまかすために、肝臓へのダメージがないだけで飲酒を許していることと基本的には同じです。

子供のストレスを解放させたくてデジタル機器の制限を解除してしまう親御さんは多いですが、デジタル機器の長時間使用そのものが脳へストレスをかけてしまうのでそれでは意味がありません。

子供のストレスを何とかするのであれば、子供との時間をより多くとることを優先しましょう。アドバイスをせずに話を聞いて共感する、興味のあることについて話を聞く、一緒に何か活動するなど、スキンシップをとる、抱きしめるだけでもオキシトシンというホルモンが分泌されます。

オキシトシンには不安感やストレスに対する抵抗性を高める作用があります。

トランプやボードゲームなどアナログなもので一緒に遊ぶのも良いです。単に取り上げるのではなく、親子の交流時間を増やすことでデジタル機器に費やす時間を間接的に管理するようにしていきましょう。

依存症は病気である

既に依存状態にある子供の場合は、デジタル機器を取り上げると激しく抵抗します。これは依存症という病気の状態だからです。

アルコール依存症の人はお酒を飲めないとイライラして、攻撃的になったり、場合によってはお酒を手に入れる為に盗む、暴力をふるうなどあらゆる手段でお酒を手に入れようとします。

依存症とはそういう状態です。

依存症に既になっていて、スマホを取り上げられた子供は親に対して攻撃的になりますし、暴れて家の中のものを破壊する、親御さんに暴言や暴力をふるうこともあります。

本人の人格ではなく、依存症からの離脱症状の為ある程度の期間デジタル機器から遠ざけることが出来れば、このような攻撃的になる症状は消えていきます。

しかし、デジタル機器を与えればすぐに攻撃性は消えて再びデジタル機器に熱中する為、なかなか踏み切れません。

親子関係が良くない場合は特に、どう子供と向き合っていいのかわからないという問題を親御さん自身が抱えていることが少なくありません。

また、シングルやワンオペで育児をされている場合には依存症から脱却させるために莫大な労力と時間、体力をそもそも捻出することが難しいこともあります。

依存状態になっているのならまずは理論武装

最初からスマホを与えない、最初から制限をかけるのが一番良いのですが、依存状態に既になっているとそう簡単にはいきません。

無理に取り上げれば離脱症状から、親御さんに攻撃的になり、親子関係がさらに悪くなってしまってさらに孤立してしまい、その不安感からさらにスマホにハマるという最悪の状態に陥るケースもあります。

離脱症状は暴れたり、イライラする以外にも、ドーパミン不足からうつ病のように気分が沈み込んで動けなくなるなどの症状が出ることもあります。

依存症から脱却していく時にどのようなことが起り得るのかを、まずはしっかり理論武装して勉強することから始められることをお勧めしています。

家庭の中は安全であっても、快適である必要はない

起立性調節障害や不登校で学校へ行けないという状態であれば、家の中の安全を確保してあげることがとても大切です。

学校へ行けていなくても、両親や他の家族が愛してくれて、認めてくれて、受け入れていてくれるという感覚を感じることは大切です。

しかし、家の中が娯楽であふれてしまっていると、学校へ行ったり、リアルな形での社会へのつながりをまた取り戻そうとするモチベーションは下がってしまいます。

家の中でスマホをポチポチしていれば、快楽を与えてくれるドーパミンを簡単に分泌させることが出来るのですから、わざわざ、自分のことを否定するかもしれない人と付き合ったり、嫌でもブロックしてバイバイできるネット上の人間関係のほうが楽です。

家の中で時間を持て余して暇だからこそ、何か楽しいことを探したり、自分で工夫しようとしたり、人と関わりたいという欲求も出てきます。

これが一人で家の中でいて不安で不安でということであれば、これはやはり人のつながりが希薄になって孤独を感じているということですので、まずはそちらを改善することが大切です。

まとめ

1日の使用時間が1時間未満にコントロールできているのであれば、取り上げる必要はありません。

デジタル機器を使用することで脳の発達に悪影響が出るだけでなく、メンタルヘルスや睡眠(自律神経)への悪影響が発生します。

子供の脳はデジタル機器使用によって分泌されるドーパミンから得られる快感に対して脆弱な上、自己管理する脳の部位が未発達の為自己管理は元々難しい。

学校へ行けていない場合には、不安感をごまかすために依存症に陥りやすくなります。

依存症は病気の為、離脱症状で一時的に攻撃的になったり、体調不良になったりすることを知っておいてください。

まずは、依存症とデジタル機器が脳へ与える影響について本で勉強しましょう。
家庭内は安全で守られているという感覚が必要です。しかし、娯楽にあふれて快適である必要はありません。

家の中で暇でつまらないからこそ、工夫しようとしたり、人と変わりたいと感じる意欲も出てきます。

当院での改善をご検討の方は不登校起立性調節障害をご覧ください。

遠方で来院が難しいけれど、カウンセリングを受けたいという方はオンラインカウンセリングをご利用ください。

心身堂鍼灸院院長
この記事を書いた人
鍼灸師 佐野 佑介

静岡県浜松市中央区和地山で自律神経専門のはりを刺さない心身堂鍼灸院を開業。
自身も26歳の時にパニック障害から自律神経症状に苦しんだ経験を持つ。
2012年に独立開業。
国家資格 はり師(148056号)・きゅう師(147820号)
医薬品登録販売者試験 合格

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