ワンオペ育児・シングルの子供は不登校・起立性調節障害になり易い?

ブログをご覧頂きありがとうございます。浜松市はりを刺さない心身堂鍼灸院の佐野です。

お子さんが不登校や起立性調節障害になった際、私のせいで不登校・起立性調節障害になったのではないか?と自分のことを責めてしまいがちです。実際、臨床ではシングル・ワンオペ育児のご家庭のお子さんが不登校や起立性調節障害の症状で来院されるケースは多いですが、本質的なところは一人親だからという理由ではありません。

今回はワンオペ育児やシングルで子育てをされている方の子供が不登校や起立性調節障害になり易いのか?関係ないのかについて一緒に考えていきたいと思います。是非、最後までお読みください。

結論:複雑な要素が絡んでいるので一概にそれだけではない

ワンオペ育児をされている方やシングルで子育てをされている方のお子さんが自律神経症状を出して当院へ来院されることは傾向としては多いです。

施術と一緒に生活習慣を改善していくことが大切なのですが、大人の手が足りないために改善させる方法がわかっても生活習慣に落とし込めないジレンマに陥ることが多々あります。

人間の子育ては生物界でトップレベルに人の手が必要で、手間がかかります。

他の動物の子供は生まれてすぐに自分で立ち上がりますが、人間の子供は自分で立ち上がるのに1年近くもかかるのです。

そのうえ、脳が未発達の為、周囲の大人から適切な外的な刺激(養育)を受けることで社会への適応能力を持つように成長していきます。

この適切な外的な刺激を与えるのは周囲の大人になりますが、その主な役割を担うのは親御さんであることが多くなります。

親御さんにも個性があるため、子育てに向いた遺伝的な性格特性(攻撃性が低く、外交的で、寛容な性格など)と良い子育て方法を自身の親から学ぶことができたのかどうか?によって、子育てが得意な人、苦手な人に分かれてしまいます。

子育てには体力も必要になるため、肉体的に弱いという特性を持っている親御さんにとっては、子育ての難易度はそれだけでも急激に高まります。

かつては親兄弟が一緒に集団で子育てを行うことで、子育てが苦手な親でも子育てが得意な人の力を借りながら、子供に適切な外的な刺激を与えて子供を育てることができました。

体力がない親御さんであっても、集団の中から労働力を提供してもらうことで子育てをすることが可能でした。

しかし、社会構造の変化に伴い子育てを行う集団の規模は小さくなり、祖父母の子育てへの関与が減っただけでなく、子育てをしながら経済的にも働いて稼がなくてはいけないというさらに人手をとられてしまうような社会構造へと変化しました。

そこに子供自身の遺伝的な特性として発達障害やその傾向などがもともとの社会への適応性として影響する為、育てやすい子供、育てにくい子供といった具合に問題が絡み合っています。

子供に発達障害やその傾向が低いという前提であれば、適切な養育を受けた子供は、ある一定水準以上(子供の遺伝的な特性により上下する)の安心感を子供が感じながら成長することで、社会への適応性が高くなります。

社会への適応性をうまく獲得できずに小学校、中学、高校と次第に複雑になる人間関係への変化についていけず、環境への適応性が低いため不登校やストレスから自律神経症状(起立性調節障害を含む)へと発展してきてしまうことになるのです。

子供が安心感を感じながら成長する為には、周囲の大人が見守り、受容的に子供に接していくことが求められますが、大人がやった方が早い事でも子供に失敗の経験を積ませるためにあえて失敗させるなど、非常に多くの人の手と手間がかかります。

その点で、大人の人数が圧倒的に少なくなりがちな、ワンオペ育児やシングルの子育ての家庭環境では、物理的に人手不足からくる手間をかけられない事態に陥りやすく、その結果として不登校や起立性調節障害になり易いように見えてしまうのです。

人間の子育ては複数の大人が助け合うように進化している

私達に最も近い霊長類であるチンパンジーは出産から子育てを母親だけが担当します。

しかし、人間の子育ては共同養育が基本で、これは厳しいサバンナで生き残って子孫を残していくためには皆で協力して子育てをする必要があったからです。

また、私達人間は生理的早産であるといわれています。

これは二足歩行を始めたことで骨盤が狭くなってしまい、ある程度まで成熟した状態での出産をすると子供が産道を通ってくることが出来なくなってしまうからです。

生理的早産になることで、一人で立ち上がるまでに生理的未熟児状態の子供にかかる手間はさらに増大しました。

しかし、これを大人の数という人海戦術で対応してきたのが人間です。

ワンオペ育児やシングルという問題以前に、健全な家庭を築いて夫婦で協力していても2人で子育てを行うことからして、既に生物学的にはかなり無理があることをしているのです。

人間の子育ては人の手がかかります。生物学的な観点からいえば、一人で働きながら行える方がむしろおかしいと考えた方が良いのです。

また、複数の色々な大人が子供に関わることで、子供は色々な大人がいることを知り、異なるパターンでコミュニケーションをとる方法を学び、適応性を高めていきます。

デジタル機器で子供の興味を他へ逸らすことの弊害

少し前に「スマホ子守り」が話題になったことがありますが、大人の手が足りない状況で子供の世話を行うとどうしても、スマホで動画を観させて大人しくさせておく、ゲームを与えて大人しくさせておく。

その間に家事をこなしたり、仕事をこなしたりという、「子育ての効率化」をせざるを得ない状況がやってきます。

大人の手が足りないという状況から考えれば、スマホで動画を観させて熱中させておけば、外で一人で遊ばせておくよりも安全です。

この際にスマホやゲームを与えなければ、親御さんに子供はかまってもらおうと必死になって注意を引き付けようとしてきます。

注意を引けなければ、机をひっくり返したりなどの問題行動を起こして気を引く、その結果さらに仕事が増えるという状態を引き起こされるぐらいならスマホやゲームを渡しておきたくなるのは当然です。

小さい時は物を壊したりですみますが、思春期に入ってくると親から自立したいという気持ちと、かまってもらいたいという気持ちが入り混じり、身体も成長してきます。万引きしたり、喧嘩したり、学校へ行かなくなったりといった問題行動に代わってきます。

子供がコミュニケーションを求めるのは、親御さんに自分が受け入れられているという感覚を養い、コミュニケーションを学び、コミュニケーションを通じて感情のコントロール方法を学ぶ時期だからです。

しかし、スマホやゲームは報酬系といって麻薬・覚せい剤やアルコールなどを摂取したときと同じ人間の快感を主る部分に作用する為、他人とのコミュニケーションよりも、のめり込みます。

スマホやゲームで子供の気を簡単に逸らすことが出来るのは、報酬系を刺激することが出来るからです。

肝臓に害を与えないだけで未成年者にアルコールを与えるのと脳内の反応はかなり近いものがあります。

小さい時の子育てコストの節約は大きくなってから借金となって清算を迫られる

子供は親や周囲の大人から大切にされている、愛されている、受け入れられているという感覚を感じながら育つことで適切な社会性を身につけていきます。

しかし、そういった感覚を獲得できないまま成長していった際に、外交的に発散するタイプであれば喧嘩や万引きなどの問題行動、内向的に発散しようとした際には不登校のような状態になって表れることになります。

特に内向的なタイプはスマホを渡しておけば大人しくしていることも多いため、気が付くとスマホ依存症の状態になっている場合があります。

自己肯定感が低く、不安感を感じている為、不安感から逃れる為にスマホによって報酬系を刺激するという負のスパイラルによってスマホ依存に陥っていくという事態になります。

小さい時に何気なく効率化の為に見せていたスマホが自己肯定感の低下を招いている可能性もあり、思春期には不登校、素行不良、引きこもり、大人になってから精神疾患へかかりやすいなど成長してからも悪影響を与え続けることがあります。

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八方ふさがりになる子供たち

デジタル機器は長時間使用すると、睡眠に悪影響が出て昼夜逆転の生活になり易くなります。

しかし、デジタル機器をやめると今度は不安な感情に支配されてしまう為、デジタル機器を手放せなくなってしまいます。

このような状態にならないように、スマホを与える際には細心の注意が必要ですが、デジタル機器が脳に与える悪影響についてはすべてが解明されておらず、今まさに子供たちを使って人体実験中といった感じになってしまっています。

スマホ依存症になる前に手を打つことが基本ですが、依存症になってから治療を行うとさらに多くの大人の手を必要とします。

昼間に学校へ行けない為、やることもなくなるとデジタル機器を使って暇つぶしをする、大人がそばにいて寄り添う必要があります。親も仕事に行けなくなってしまう為現実的ではありません。デジタル機器を使っていないか管理する必要もあります。

ワンオペ育児やシングルのご家庭で、元々人手が足りないことが原因で子供がスマホ依存に陥っている為、このような方法は物理的に不可能なことが多く、不登校や起立性調節障害で自律神経症状で困っているけれど、何をすれば治るのかはわかっても、治せないという八方ふさがりな状態になります。

より多くの大人を子育てに巻き込もう

大きな視点で見れば、子育てを親御さんだけに任せるようになった社会構造の変化が子育ての人手不足を引き起こし、子供に適切な養育を行えない環境を作り出していると言えます。

あなたがワンオペ育児だからとかシングルだからということではありません。

そうはいっても、社会構造の変化をさらに変化させるのは政治の力や社会の価値観の変化なども必要になる為、こちらの方からアプローチしていくことは現実的ではありません。

現在の社会構造の中で個人で出来ることは子育てにより多くの大人をどうやれば巻き込むことが出来るのか?が重要になってきます。

ご両親や近所の方、友人などはもちろん、ベビーシッターや社会福祉なども積極的に活用していくことが大切です。

まとめ

不登校や起立性調節障害のなり易さは、直接的にシングルやワンオペ育児になっている事とは関係性はないと考えられます。

複雑な要素が絡んでいますが、一番の問題は社会構造の変化によって子育ての人手不足が関わっていると考えることが出来ます。

子育ては非合理の塊のような対応を求められるため、人手不足から効率よく子育てを行うことが問題を引き起こしやすくしている要因です。

子供自身が発達障害やその傾向を持っている場合には、親御さんの努力で何とかなる問題でないこともあります。

人間の子育ては複数人の大人で子供を育てる共同養育が基本ですが、現在の子育て環境はチンパンジーのような単独養育になっている為、元々養育環境に無理があります。

苦肉の策としてデジタル機器を利用すると今度は依存症の問題に悩まされることになり、依存症になるとそこから立ち直らせるための人手がない為、い治療法がわかっても治せないという事態が起こってきます。

予防が基本ですが、社会構造を変化させることは難しいため、個人でより多くの大人を子育てに巻き込む努力が大切になります。

当院での改善をご検討の方は不登校起立性調節障害をご覧ください。

遠方で来院が難しいけれど、カウンセリングを受けたいという方はオンラインカウンセリングをご利用ください。

心身堂鍼灸院院長
この記事を書いた人
鍼灸師 佐野 佑介

静岡県浜松市中央区和地山で自律神経専門のはりを刺さない心身堂鍼灸院を開業。
自身も26歳の時にパニック障害から自律神経症状に苦しんだ経験を持つ。
2012年に独立開業。
国家資格 はり師(148056号)・きゅう師(147820号)
医薬品登録販売者試験 合格

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