ブログをご覧頂きありがとうございます。浜松市はりを刺さない心身堂鍼灸院の佐野です。
2月に入って花粉が飛び始める時期になると、花粉症の方にとってはつらい時期ですよね。どうにかして花粉症を何とかしたい!と思われる方も多いかと思います。
自律神経に問題を抱えていると原理的には花粉症の症状が悪化しやすくなります。
今回はそんな自律神経と花粉症との関係性と改善について一緒に考えていきたいと思います。是非、最後までお読みください。
結論:自律神経を整えると花粉症は改善されるが完治はしない。
自律神経は免疫系と深い関わりがあり、例えばストレス反応(交感神経刺激)によって分泌されるコルチゾールというホルモンは免疫細胞の活動を抑制する作用があります。
コルチゾールを人工的に生成したお薬がステロイド剤で、非感染性の炎症を抑える際に使用されます。
また、風邪を引いた際に自律神経の体温調節中枢の命令により、発熱しますが発熱によって免疫細胞の活動が活性化することが知られています。
花粉症は本来は人体に無害であるはずの花粉に対して、人体に有害と判断する抗体を作り出し、免疫細胞が花粉に反応して攻撃する(免疫反応を引き起こす)ことで発症する病気です。
抗体が作られると、花粉の形を免疫系が記憶している為、花粉が体内に入ってきたらすぐに体から取り除くための免疫反応を引き起こします。
結果的にこれがつらい花粉症症状を引き起こすことになるのですが、花粉症の場合は抗体が自然に消失することは珍しい為、花粉が免疫細胞についている抗体にくっつきにくいように阻止抗体を獲得するか、炎症反応自体を和らげる必要があります。
その為、治療法としては大きく二つの方向性があります。
一つは、阻止抗体を獲得する減感作療法。わずかな量ずつ体に花粉を投与することを長期間続けることで、花粉症の原因となる抗体を阻止する抗体を体に作り出す治療法です。
簡単に言えば花粉に体を慣れさせる方法です。
もう一つは免疫反応が起こった後の炎症を軽減する方法です。一般的なのはステロイドを用いて免疫反応を抑制することで、花粉が体内に入ってきたときの免疫反応(炎症)を小さくすることで花粉症の改善を目指します。
自律神経を整えることは、薬を使った免疫抑制とは異なりますが、免疫反応を適正に調節することで過剰反応を抑えるという、免疫細胞を抑制するに近い方向での改善法となります。
いずれの方法でも、花粉を外的とみなすという抗体そのものが消失するわけではありません。
抗体がなくならない以上、免疫学的に考えると根本的に治る(完治)ということは考えにくいのが事実です。
しかし、免疫系もまだすべてが解明されているわけではない為、時々、突然全く花粉症症状が出なくなったという方もいらっしゃいます。
なるべく薬を使いたくないという方にとっては自律神経を整える事で花粉症を軽減していくことは有効です。
安定して長期の効果が得られ易い減感作療法
現段階で人類が獲得している花粉症の治療法で一番効果が高いのが減感作療法だと考えられます。
非常に少量の花粉を人為的に投与して、徐々に量を増やしていくことで花粉に対する抗体を阻止する抗体(阻止抗体)を作り出し、免疫反応の発生そのものを抑制する治療法です。
花粉に対する抗体そのものが消えるわけではありませんが、原理的には最も完治に近い効果を得ることが出来る治療法です。
しかし、この減感作療法にも弱点があります。
効果そのものは治療開始後3か月ぐらいで実感できるのですが、阻止抗体を安定させるためには長期間の治療が必要になる点です。
再発のリスクを可能な限り下げるための治療期間は3年以上は必要で、4年~5年が望ましいとされています。
花粉が飛散する花粉症シーズン以外も花粉を投与し続ける必要があるため、数年間継続することが出来れば非常に効果的な治療になります。
花粉に悩まされていない期間も継続的に通院し、薬の投与を継続する必要があるため、相当強い花粉症症状に悩んでいないと、継続するモチベーションを保つことが難しいかもしれません。
頑張って1~2年治療を継続して、症状が軽くなると薬を飲んでいなくてもしばらくは花粉シーズンになってもよい状態が維持できてしまう為、治療費ももったいないと考えるようになったり、通院が面倒に感じられるなど、中断してしまう誘惑の多い治療法です。
喉元過ぎれば熱さを忘れるという言葉がありますが、つらい症状がなくなっても治療を継続できる方はごく少数です。
免疫反応を軽減して症状改善を行う
花粉が体内の中に入って、免疫反応が引き起こされると体内では炎症が発生します。
この炎症が鼻水・目のかゆみ・のどの痛み・だるさ・発熱などの花粉症の症状を引き起こします。
免疫反応を軽減することで、炎症が軽くなると花粉症の症状は軽くすることが出来ますが、免疫反応の強弱は様々な要因が複雑に絡み合って決定されます。
薬物治療は免疫系全体を薬によって抑制することで、効果を発揮しますが、抑えて欲しくない免疫系の働きまで抑制してしまう為、ステロイドホルモンを作っている副腎や薬物の代謝にかかわる肝臓・腎臓への負担。副作用についても考慮した適切な治療を受けることが大切です。
漢方薬も肝臓や腎臓への影響があり、肝機能を低下させることもあるので、安全な体に優しいお薬というわけではない点には注意が必要です。
自律神経を整えたり、栄養療法での改善といった自然療法は効く人には劇的に効果を発揮します。
薬物治療と違い副作用や内臓への負担という面では極端な栄養療法を行わなければあまり問題になることはありません。
しかし、その人の免疫系の暴走がなぜ起こっているのか?によって何を行うのが効果的なのかが異なるため、効果にばらつきやすいという特性があり、同じことをすれば全員に効果があるというわけではありません。
自律神経を整える事で改善するタイプの花粉症
自律神経の乱れが特に強く影響しているタイプの花粉症では、睡眠の質や感情の波、心理ストレスに連動して花粉症症状に波が出やすい傾向があります。
同じ量の花粉が飛んでいたとしても、調子が良い日と悪い日があるということです。
また、下の写真を見て花粉をイメージしただけで鼻がむずむずするなど、実際に花粉と物理的に接触していないにもかかわらず、花粉症症状が出る場合も多いのが自律神経系の花粉症の特徴です。
自律神経系の花粉症の場合、心理療法(花粉のイメージに慣れる)で改善する場合もあります。
花粉症の症状の多くは顔がほてったような状態になることが多いです。
これは顔に血液がたまっていることを表すのですが、鍼灸施術などで頭部へたまった血液を体のほうへ誘導することで、症状を緩和することが出来ます。
鍼灸を行うと花粉症の症状の改善が起こるのは、自律神経が整いやすくなるという鍼灸の特性と、肩こりを改善すると頭に血液がたまった状態を解消できるため、頭に血液がたまらず、症状自体が軽くなるからです。
比較的すぐに効果を実感しやすいのですが、肩こりの再発やストレスなどを受けるとすぐに症状がぶり返しやすいという特徴があります。
腸を整えて免疫系を整える改善法
免疫細胞の80%は腸に存在しており、腸と免疫系には非常に深い関係があります。
下痢や便秘になりやすい、食物繊維の少ない食生活など、腸内環境の悪化が花粉症を悪化させることが広く知られています。
R-1が有名ですが、ヨーグルトなどを食事に取り入れることで乳酸菌をとると腸内環境が整い、免疫系を強化することが知られています。
また、腸内環境が整うと自律神経系の働きもよくなる為、花粉症症状自体を和らげるにはとても有効な方法だといえます。
年間を通じて油に気を付ける
免疫反応にかかわる油は2種類あります。それがω-6脂肪酸とω-3脂肪酸です。
どちらも必須脂肪酸なので、食事から取り入れることが必要なのですが、現代人の食事ではω-6脂肪酸が過剰摂取状態にあるといわれています。
ω-6脂肪酸は炎症を促進する油。
ω-3脂肪酸は炎症を鎮静化させる油です。
ω-6脂肪酸の多い食事をしていると炎症がひどくなりやすい為、花粉症症状が重くなりやすい傾向にあります。
その為、ω-6脂肪酸は調理用油に多く含まれますが、例外的にオリーブオイル、ハイオレックタイプのひまわり油・紅花油・菜種油はω-9脂肪酸が主成分なので、炎症を促進しない調理油です。
ω-3脂肪酸は主に青魚に多く含まれるDHAやEPAになります。
原理的にはω-6脂肪酸になる油の摂取を減らし、青魚を多く食べるようにすると花粉症症状が改善しやすくなります。
また、ω-3脂肪酸には脳の機能を高める作用があるため、自律神経を整える事にも役立ちます。
基本は花粉へ触れることを減らす
花粉症への対処にはいろいろなアプローチ法がありますが、基本である花粉へ触れないようにマスクや防護眼鏡をすることがとても有効です。
炎症が起こってしまうとそれにより鼻の通りが悪くなり、呼吸が乱れる。炎症反応自体が人体にストレスとなり自律神経を乱すことになります。
自律神経が乱れると免疫系が暴走しやすくなる為、さらに花粉症がひどくなるという悪循環に陥りやすくなります。
いろいろな治療法がありますが、花粉を吸いこんだり、目に触れる機会を減らすことが一番効果的なのは事実です。
しかし、完全に花粉を防ぐことは難しい為、もし触れても軽い炎症で収まるように自律神経を整えるアプローチを併用しておくと比較的楽に花粉症シーズンを乗り切ることが出来るので、減感作療法を4年も続けられないという方は検討するのもよいと思います。
まとめ
自律神経は免疫との関係性が深い為、自律神経に問題を抱えている方は花粉症が悪化しやすい傾向にあります。
自律神経を整える事で花粉症の症状が改善されることは珍しいことではありませんが、花粉に対しての抗体を無効にする効果があるわけではありません。
現代の科学においては減感作療法によって花粉に対しての抗体を阻止する阻止抗体を獲得する方法が最も完治に近い治療法になります。
しかし、減感作療法は効果が表れるまでの期間が3ヵ月程度ではあるものの、阻止抗体が安定するまで最低3年程度は花粉症の症状のあるなしに関わらず、花粉の飛散しない期間も含めて治療を継続する必要があります。
鍼灸などを用いて自律神経を整える事でも免疫系の過剰反応を改善して花粉症症状を改善する効果が期待できます。
薬などに比べて副作用の心配が少ないというメリットが得られる一方、原因に合わせた処置が必要になるため適合する方には劇的な効果を発揮しますが、効きずらい方もいらっしゃいます。
その他、免疫に働きかける方法として栄養療法が効果的になりますが、長期間の食事管理が重要になります。
3年間継続して減感作療法を行うことが難しい方は、色々なアプローチ法はありますが、炎症反応を抑える療法と花粉に触れないようにするという基本的な対策を行うことで対処していくのが、現実な選択肢になることもあります。
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