こんにちは、浜松市はりを刺さない鍼灸師の佐野です。
自律神経失調症で結構な頻度で発生するのが喉がつまる、異物感、違和感があるという喉周辺の不快感です。
耳鼻咽喉科で喉を調べてもらっても特別何も原因らしきものもなく、漢方薬を処方されることが多い症状です。
今回はなぜ自律神経が乱れると、喉が詰まるのかその原因と対処法について一緒に考えていきたいと思います。喉がつまる、喉の違和感でお悩みの方は、最後まで是非ご一読ください。
結論:迷走神経(副交感神経)の機能低下が喉の詰まりを誘発している
自律神経には交感神経(活動力を高める)と副交感神経(リラックスする)の二つの神経があります。その中でも特に副交感神経としての役割が大きい神経が迷走神経と呼ばれる神経です。
私達の身体は脳→脊髄→末梢神経という流れで情報伝達を行うルートがありますが、これとは別に脳から直接末梢神経へと情報伝達を行う12対ある脳神経のうちの一つです。
顎の奥のあたりから喉、胸、横隔膜、胃腸へ神経の枝が伸びています。自律神経失調症の治療でスーパーライザーなどで狙うことが多い神経です。
神経の走行からもわかるように、喉周辺の筋肉の支配や感覚を脳に伝えたり、声帯筋を調節する神経ですから、迷走神経が正常に機能しなくなることで、喉周辺の筋肉が緊張したり、喉を内視鏡で診てもなにもないはずなのに喉の異物感、つまり感、違和感、声がかすれるなどの症状が出てきます。
迷走神経の働きが低下した原因を取り除くことが出来ると喉に出ている違和感は改善へと向かいます。
鍼灸医学では梅核気として知られている症状
鍼灸医学では梅干しの種のようなものが喉につまっている感覚が出る症状として「梅核気(ばいかくき)」と呼ばれています。古来から喉の違和感を訴えられる方は多かったようです。
鍼灸医学では気の流れのうっ滞によっておこるとされています。
これだと意味が分からないので、現代医学的に言えばストレスを感じたまま我慢しすぎで悶々と過ごしたことで、交感神経過剰になりそれによって副交感神経の働きが抑制されてしまい、結果的に副交感神経線維の多い迷走神経の働きが低下して喉に異物感として感じられるようです。
鍼灸には副交感神経を刺激して交感神経を働きを抑制する作用がある為、喉のつまりなどに対して鍼灸でのアプローチは古来から盛んにおこなわれてきた症状です。
迷走神経の機能低下が起こる原因と対処法
迷走神経の機能低下は何か一つだけのことが原因になっている場合もありますし、複数の原因が複雑に絡まって機能低下を起こしている場合があります。
いずれの場合であっても、原因に合った対処ができれば迷走神経の機能は正常へと近づいていきます。
迷走神経の機能が低下する全ての原因がわかっているわけではありませんが、当院で改善がみられた原因についてご紹介していきます。
ストレスによる機能低下
私達の身体はストレスを受けるとストレス反応を引き起こして交感神経優位な状態となります。
ストレス反応を起こすパターンは、物理的、化学的、生物的、心理的・社会的、ストレス不足の5つがあります。
心理的なストレスや暑さや寒さといった物理的ストレス、身体の痛みや不快症状などの生物的ストレスが長期になるとそのストレスから交感神経優位な状態になります。
それと同時に副交感神経の働きが抑制されます。
通常であれば交感神経優位の症状として、疲れが取れない、不眠、肩がこる、動悸、息苦しさ、胃腸の不調などの症状が出てきます。
因果関係はまだ詳しくわかっていませんが、ストレスの種類が心理的ストレスに当たる言いたいことを我慢しているということでストレスを溜めている方に喉のつまり感や失声症(声帯筋が上手く機能しなくなることで、声が出なくなる)、声がかすれるなどの症状になる傾向があります。
原則的にはまずはストレスの原因から物理的に離れることが大切です。
体の症状が生物的ストレスになっている場合にはそちらを改善することで喉のつまり感、違和感が改善されていきやすくなります。
コリによる迷走神経への血流低下
迷走神経周辺の(首前面の)首の筋肉が緊張した状態が持続してしまい首こりが発生すると、迷走神経に酸素や栄養を供給している血流が血管が圧迫されて低下することになります。
その結果として、迷走神経の働きが悪くなる場合があります。
その場合は、頭蓋骨から出てきた迷走神経が通る場所周辺の筋肉のコリをひとつずつ緩めていくことで、血流の改善を行います。
首はかなりデリケートな神経が集中していることや血圧を測っている圧受容器もあることから、乱暴なマッサージなどでのアプローチは返って危険な場所なので、経験の豊富な先生の施術を受けられる方が安全です。
間違っても自分でゴリゴリもみほぐそうとしたり、ゴルフボールやテニスボールでゴリゴリ刺激しないようにしてください。血圧が急激に下がって脳貧血を起こして倒れることもあります。
コリによる延髄への血流低下
迷走神経は脳から直接出てくる神経であることをお伝えしましたが、脳の延髄と呼ばれる場所から出てくる神経です。
延髄は脳の後方にありますが、椎骨動脈や総頚動脈という脳へ血液を送っている血管からの血液をもらい機能しています。
首前面は総頚動脈と迷走神経の走行が近いことから一緒に施術してしまうことが可能ですが首後面に対してもアプローチすることが大切になります。
迷走神経は総頚動脈からの血流低下の影響を強く受けますが、延髄への血流は椎骨動脈からの血流低下も大きく影響を受けますので、首後面の首こりの改善を行う必要があります。
椎骨動脈は首の骨に空いている穴を通って、頭蓋骨に入る直前に骨の後ろに一度カーブしてから頭蓋骨へ入っていきます。首を通ってくる血管周辺と頭蓋骨と首の骨の境界線付近のこりを緩めることが大切です。
筋肉のアンバランスな緊張によって首の骨がねじれた状態でこり固まっている場合もあります。
最重要な神経が通っていますので、首の施術に精通している先生に施術をお願いされることをお勧めいたします。
栄養不足
神経が正常に機能するためには、栄養バランスの取れた食事が必須です。
神経自体が働く為には常にエネルギー(ブドウ糖)が必要な為、血糖値が安定した状態で維持される必要があります。
また、鉄、ビタミンB群、Cなども神経の働きには欠かすことができません。
神経と神経との間で情報をやり取るするための神経伝達物質はタンパク質が原料となりますので、タンパク質不足も迷走神経の働きを低下させる原因になります。
現在の食事から、徐々にバランスの良い食生活へと変えていきましょう。
生活習慣の乱れ
睡眠不足、夜更かし、昼間に体を動かさないなど、生活習慣の乱れは自律神経全体の働きを悪化させます。
規則正しい生活をするということが基本です。
朝起きて、活動し、夜になったら寝る。
このリズムをしっかり行うことで自律神経が正常に働ける土台が整ってきます。
慢性上咽頭炎による悪影響
口呼吸、風邪、アレルギーなどが原因で、喉と鼻の中間ぐらいの位置で炎症が起きてしまうことがありますが、これが慢性化してしまった場合には慢性上咽頭炎になります。
外気に直接触れる場所であるため軽い炎症は誰でもありますが、正常な範囲を超えた慢性的な炎症が慢性上咽頭炎という状態です。
慢性上咽頭炎は、上咽頭の炎症部に塩化亜鉛を直接塗布する上咽頭擦過療法(EAT:Epipharyngeal Abrasive Therapy)を行うことで改善していきます。
EATを行っている医療機関(耳鼻科)での治療が必要になります。
まとめ
喉のつまり感は迷走神経の機能低下によっておこります。
迷走神経は脳(延髄)から直接出てくる神経であごの奥から喉の前を通って心臓、胃腸へと伸びています。
一部は喉を支配している為、喉の異物感以外にも声がかすれるなどの症状が出る場合があります。
古来から喉に違和感を感じていた人は多いらしく鍼灸の本にも梅核気として記載が残っています。
迷走神経の機能が低下してしまう原因は、ストレスやコリによる迷走神経や延髄への血流の低下、栄養不足、生活習慣の乱れ、慢性上咽頭炎などが考えられます。
原因に合った対策を行っていくことで喉のつまり感を改善していくことが可能です。
当院での改善をご検討の方は自律神経失調症をご覧ください。
遠方で来院が難しいけれど、生活習慣や改善について相談したい方はオンラインカウンセリングをご利用ください。