ブログをご覧頂きありがとうございます。浜松市はりを刺さない心身堂鍼灸院の佐野です。
パニック障害に困っていて、鍼が良いって聞くけれどどうして鍼をするとパニック障害が良くなるのか?どうして効くの?という疑問を持たれている方も多いのではないでしょうか?今回はパニック障害になり、実際に鍼灸を使って改善してきた経験を交えながら、パニック障害になぜ鍼が効果があるのか?その理由について西洋医学と東洋医学の両面から、一緒に考えていきたいと思います。是非最後までお読みください。
結論:不安感情は脳という臓器の不調
不安感情が抑えられなくなってしまうのは、脳という臓器が正常に機能しなくなった結果です。
その為、脳の機能を取り戻すために身体に鍼を行うことでパニック障害への改善をサポートします。
鍼灸で得られる効果は様々ありますが、基本的にはどこに血流のを増やすのか?の調整が得意なのがはり治療です。
血液には臓器が正常に機能するために必要な、酸素や栄養素が含まれていますし、血流によって臓器に溜まった余分な二酸化炭素や老廃物を回収します。
鍼灸は人為的にどこの血流を増やすのか?を調整することが出来る数少ない療法です。体の中の資源(栄養や酸素)を治したい場所へ集中させることで、その臓器の修復・機能が改善するようにしていきます。
その際にどこに血液を集めるのか?が症状によって異なるだけです。肩こりであれば肩の筋肉ですし、腰痛であれば腰の筋肉です。胃腸の不調であれば胃腸への血流を上げることで改善を図っていきます。
パニック障害も脳という臓器への血流を上げることで改善を図っていくため、鍼灸がパニック障害への効果が期待できるのです。
心の働きは脳によって作り出される
私達の感情をはじめとしたいわゆる『心』は、医学的には脳の働きによって作られていると考えられています。
その為、脳が損傷を受けてしまうと意識を失って植物状態になったり、性格が変ってしまう、感情のコントロールが出来なくなる、理性が働きにくくなるなどの障害が出ます。
また、寝ないなど脳の機能を回復する生活習慣が疎かになると、脳の機能が低下してそれだけでも怒りっぽくなったりするなど、感情も安定しなくなってしまいます。
脳の機能が最低限正常に動く為には、脳が損傷を受けていないことが大前提にはなりますが、脳が活動する為の栄養やエネルギーを生み出すのに必要な酸素が十分脳へ供給されることが重要です。
その為に、まずは脳への栄養や酸素の供給を担っている血流を促すことがとても大切になります。脳への血流は心臓から送り出された血液が、首の前(総頚動脈)と後ろ(椎骨動脈)から合計4本の動脈を通って脳へと送られます。
この動脈の通り道に隣接する筋肉がこり固まってしまったりしていると、血管が物理的に圧迫を受ける為、脳へ送ることが出来る血液量が若干低下します。
その結果、脳が受け取れる酸素や栄養が少なくなり、脳の活動がある程度制限を受けることになります。
しかし、自覚として脳の血流が下がったと自覚できる場合はほとんどない為、多くの場合が脳がコントロールしている自律神経や感情、思考、集中力、判断力の低下といった症状として現れますが、どこから脳の機能が低下しているのかを自分で確認することは難しいです。
また、静脈を通って脳で不要になった二酸化炭素や老廃物の一部が回収されるため、首肩周りのこりはそういった回収の為の静脈の流れも邪魔してしまい、老廃物の蓄積によって脳の機能はさらに低下させることになります。
脳の働きは他の臓器に支えられている
脳はとても面白い臓器で、脳単体ではその機能を維持することが出来ません。例えば、腸内に住む腸内細菌の種類やその割合によって、脳の活動の仕方に変化が出ることがわかっています。
どういうことかというと、脳で神経同士の連絡に使われる神経伝達物質の多くは、腸内細菌がその原料を生産しています。
その為、腸内細菌のバランスが変化してしまうと脳で利用できる神経伝達物質が変化し、それが結果的に脳の活動パターンに変化が生じることになります。
私達は自分の性格だと思っているものであっても、腸内環境が変化すると利用できる神経伝達物質に変化が生じる為、性格が攻撃的になったり、穏やかになったりといった変化も出やすくなります。
また、腸脳相関といって腸と脳は自律神経を介した情報連絡が他の臓器よりもかなり深いかかわりがあることがわかっています。
その為、脳で少しストレスを感じるようなものを見た場合に、腸の働きが悪くなるなどの症状が出やすくなります。(有名なのが過敏性腸症候群です。)
臓器と臓器が情報のネットワークを持っているということは近年少しずつ明らかになってきていますが、まだまだ研究の段階です。
鍼灸には反射を利用したり、直接腹部にアプローチすることで内臓の調子を整える方法が古代から行われてきており、このような内臓からの脳の不調の改善にも効果的に働きかけることが出来ます。
東洋医学では感情を主るのは五蔵
東洋医学では実は脳はそれほど重要視されている臓器ではありません。
東洋医学の主役は肝(かん)・心(しん)・脾(ひ)・肺(はい)・腎(じん)の五蔵(ごぞう)にそれぞれの感情を引き起こす作用があると考えています。
少しややこしいのが、東洋医学の五蔵は機能に名称を付けているだけで、実際の内臓にそういう作用があるという考え方ではない点です。
少しマニアックな話ですが、解体新書を書いた杉田玄白が蘭学の解剖書を翻訳する際に東洋医学の言葉をあてがってしまった為、例えば、東洋医学の肝と西洋医学の肝臓は全く関係がないものなのですが、多くの方にいまだに誤解を与え続けてしまっていて、鍼灸師でも医学の歴史を学んでいないとこの違いをよく理解できずに混同している先生も多いです。
話を戻しますが、東洋医学では肝・心・脾・肺・腎がそれぞれ、怒・喜・思・憂・恐という五情を主っていると考えます。
パニック障害が特に関係するのは、思・憂・恐の感情ですから、脾・肺・腎に関わる経絡のツボを使うと不思議ですが不安感が改善するのです。
ここは東洋医学の面白いところですが、例えば当院ではパニック発作を起こさないかをずっと考えて余計に不安になっている方の場合には、脾の働きを助けるツボに鍼を行うことが多いです。
脾の経絡は足にあるのですが、足に鍼をすると前述した西洋医学的な首周りの筋肉の緊張がしっかり柔らかくなるのです。
当院では東洋医学的なアプローチを行っていますが、評価は西洋医学的な分析と組み合わせて行っています。
東洋医学は理由はよくわからないけれど西洋医学的にも効果が期待できる身体の反応が発生します。
脳の訓練(心理療法)を組み合わせることで再発予防になる
私自身も10年以上前にはなりますが、パニック障害を発症した際には自分で自分の身体に鍼灸をすることで、ずいぶん回復の手助けになりました。
しかし、鍼灸には脳の機能を高めて症状を改善する作用はありますが、思考の癖を修正したり、ストレスがかかり続けているような環境で鍼灸を行っても効果を得ることは出来ません。
基本的な生活習慣を整えられるぐらいの体力の回復や症状を軽くすること、心理療法を行える状態に持ってくるといった点で鍼灸を行うことはパニック障害を改善していくために有効です。
SSRIなどに比べて、副作用なども基本的にはない為、投薬によるリスクを下げて自然な形で改善していきたい方にはお勧めな療法です。
しかし、鍼灸単体では症状自体はよくなるのですが、パニック障害を発症するに至った心理的な問題の根本的な改善は出来ない為、心理療法や生活環境を整備も併せて行ってくれる鍼灸院を見つけることが大切です。
まとめ
パニック障害は脳の機能不全による病気の為、脳という臓器の機能を取り戻すことで症状が改善されやすくなります。
脳は酸素と栄養を多く必要とする臓器の為、脳へ血液を送る4本の血管の通り道にある筋肉のこりは脳への血流を邪魔してしまい、脳の機能を低下させる可能性があります。
鍼灸はどこへの血流を増やすのか?を人為的に引き起こすのが得意な療法です。
脳の機能を取り戻すために脳への血流を改善する施術を行うことがパニック障害の症状を改善させる一つの手助けになります。
また、脳は他の臓器からの手助けがないと正常に機能することが出来ない臓器です。
鍼灸は反射を利用したり、内臓を直接刺激することで他の臓器の機能を高めることにも有効です。
東洋医学では感情は五蔵が司るという考え方があり、そのような考え方を元に鍼灸を行うと、不思議ですが西洋医学的な理屈も一緒に改善されます。
鍼灸を行うことでパニック障害の症状を軽くする効果が期待できますが、根本的には生活習慣と心理的なアプローチが不要になるわけではありません。
しかし、薬物療法と比べると副作用も最小限で自然に良くしていきたい方にはお勧めの療法です。
生活習慣の指導と心理療法も併せて行ってくれるような鍼灸院を探してみることをお勧めします。
当院での改善をご検討の方はパニック障害、全般性不安障害をご覧ください。
遠方で来院が難しいけれど、生活習慣や改善についてや心理的アプローチ法について相談したい方はオンラインカウンセリングをご利用ください。