こんにちは、浜松市はりを刺さない鍼灸師の佐野です。
目覚めた時になんだかそわそわ、不安感が強い、パニック発作で目が覚めるといったご相談をよく受けます。朝は副交感神経から交感神経へ切り替わるタイミングの為、切り替わりが上手くいかないと体調不良が出やすいのですが、不安障害の症状であるパニック発作や不安感が起る方はそれだけが原因ではないことがあります。
今回は、朝起きた時にパニック発作や不安感が出てくる理由と治し方について一緒に考えていきたいと思います。ぜひ最後までご一読ください。
結論: 寝ている間に過換気症候群(過呼吸)や呼吸過多を起こしていることがある
朝、目覚めた時にパニック発作や不安感を感じるという症状はパニック障害などの不安障害を持たれている方には比較的よく見られる症状です。
朝は自律神経が副交感神経から交感神経に切り替わるタイミングなのですが、この切り替えがうまくいかなかったり、眠っている間に食事を摂っていない為、目覚めた時点で低血糖を起こしてパニック発作や不安感を感じる場合もあります。
この記事でご紹介するのは、眠っている間に過呼吸(過換気症候群)や呼吸過多を起こしたことが原因で朝起きてすぐに不安感が強かったり、パニック発作を起こしてしまっている場合についてご紹介させて頂いています。
普段から呼吸過多傾向がある方が、眠っている間に、呼吸をし過ぎて体内の二酸化炭素が不足することでパニック発作や不安感が起こることがありますので、寝ている間に過呼吸にならないようにする寝方の工夫や普段から出来る予防についてご紹介していきます。
呼吸のし過ぎは二酸化炭素不足を起こしてパニック発作や不安感を引き起こす
パニック発作の多くが過呼吸(過換気症候群)による息苦しさを伴うことが多いです。
なぜ過呼吸を起こすと、息しているのに息が苦しくなる理由について詳しく知っている方は案外少ないです。
私達は酸素を取り込み二酸化炭素を吐き出しているわけですから、二酸化炭素は体に不要といったイメージを持たれる方も多いですが、実はとても重要な物質です。
実は二酸化炭素には赤血球から酸素を引き離して細胞に酸素を渡す手助けを行う作用があります。
つまり、二酸化炭素が足りないと酸素が赤血球についた状態のまま全身ぐるぐる回るだけで、肝心の細胞に酸素がなかなか供給されなくなってしまうのです。
細胞が酸欠を起こしている為、酸素が足りないと脳が錯覚し息苦しさを感じさせてさらに呼吸を速めさせるという状態が過呼吸です。
息苦しいパニック発作中にもかかわらず、ゆっくり呼吸をさせる理由は呼気によって二酸化炭素が吐き出される量を減らし、身体の中の二酸化炭素の量を増やすことで、過呼吸状態から回復させるために行います。
寝ている時に口呼吸していませんか?
睡眠中に過呼吸が起っても、自分自身ではなかなか気付きにくい状態になります。また、過呼吸のようにはっきりと息苦しさを感じず、不安感だけが朝起きた時に感じている場合もあります。
寝ている時に自分が口呼吸をしていないかは起きた時に口の中が乾燥していないか?を確認してみましょう。
目覚めた時に口の中が乾燥しているようであれば眠っている間に口呼吸をしてしまっている可能性が高いです。
口呼吸に比べて鼻呼吸の場合は空気が通る穴が狭くなるため、二酸化炭素が不足するほど素早く呼吸をしにくくなります。
寝ている時に口呼吸をしてしまっていると体をほとんど動かしていない為、二酸化炭素の発生量は少ないのに二酸化炭素の排出量は多いということが起り、その結果、過呼吸状態となり、目覚めたタイミングでパニック発作や不安感に襲われることになります。
特に、寝ている時に口を開けて呼吸をしている人は、一度に多くの空気を吸い込み多くの空気を吐きだすことになる為、排出される二酸化炭素の量が多くなり、体内が二酸化炭素不足に陥りやすくなります。
家族と暮らされている方であれば、寝ている時に口呼吸になっていないかを家族に確認してもらうのも良いでしょう。
口呼吸を辞める方法
寝ている時の口呼吸を辞めるための方法はいくつかありますが、もっとも効果的で簡単な方法は口にテープを貼る方法です。
薬局などで専用のテープも販売されていますが、当院ではスポーツ選手が利用しているキネシオテープを細く切ったものをお勧めしています。
若干の伸縮性がある為、どうしても息苦しい場合には口を少しだけ開けて息をすることもできます。口をテープで止める場合には縦に細く一本貼る程度で、強く口を開けば外れるようにして、窒息しないように注意してください。
口を開けない癖をつけることが目的ですので、寝ている途中外れてしまっても気にする必要はありません。徐々に慣れてくればテープを張らなくても口呼吸をしなくなってきます。
鼻炎があるときの対処法
鼻炎がある方の場合は、普段から口呼吸をしてしまっていることも多いです。鼻炎そのものに対する改善が必要ですが、アレルギー薬など必要な処置を行っても鼻詰まりが収まらない方の場合は、よりいっそう鼻呼吸を意識しましょう。
鼻には副鼻腔という空間とつながっているのですが、この副鼻腔では一酸化窒素を生産しています。一酸化窒素は鼻粘膜や気道などを通過する際に炎症を鎮める作用があります。
鼻腔は元々外気に最初にさらされる関係上、ゴミや細菌、ウィルスなどの影響から炎症を起こしやすい為、一酸化窒素によって炎症を鎮める仕組みになっています。
最初は軽い鼻炎でも、息苦しさから口呼吸だけで呼吸をするようになると、一酸化窒素が鼻腔を通らなくなるため、鼻炎が悪化しやすくなり、その結果さらに口呼吸でないと呼吸が出来ない状態となってしまいます。
また、炎症は普段どのような油を摂取しているのかとも深いかかわりがあります。サラダ油やこめ油、ごま油、パンなどに含まれるショートニングなどにはω-6という炎症を活性化する油が多く含まれていますので、鼻炎の方はω-6を多く含む油を食事から減らすことが大切になります。
また、青魚などに含まれるω-3はω-6と逆の働きで、炎症を鎮静化する作用がありますので、ω-3を含む油を摂取することで炎症を鎮める効果が期待できます。
アレルギー性の場合は、鼻うがいなども効果があります。
二酸化炭素を体に溜めると代謝が上がる?
前述した通り体内の二酸化炭素には赤血球から酸素をはがして細胞へ渡す手助けを行う作用があります。そして酸素は細胞内でエネルギーを取り出すのに必要不可欠な物質です。
その為、ある程度の二酸化炭素量が確保された状態になると、原理上は細胞のエネルギー生産が増える為、代謝が上がります。(理科の実験で酸素を増やすとよく燃えるのと原理的には同じです。)
当然、神経細胞も活発に活動する為のエネルギーを得ることが出来るようになるため、脳の活動が正常に働きやすく、不安感情のコントロールや正しい自律神経のコントロール機能が働きやすくなります。
普段の呼吸で二酸化炭素が既に減っている?
寝ている間に過呼吸を起こして目覚めたタイミングで、不安感やパニック発作が起こってしまう方は、普段から体内に留めている二酸化炭素量が少ないことが多いです。
日常的な無意識の呼吸でも呼吸が早い、必要以上に大きな呼吸、口呼吸をしていることで体の中に二酸化炭素があまり留まらない状態で生活していることがあるからです。
その為、少し呼吸が早くなったり、大きな呼吸をしたりするとすぐに二酸化炭素が不足して過呼吸状態になってしまいます。
過呼吸を伴うパニック発作を起こした方が、その後に頻繁に過呼吸やパニック発作を起こしやすくなる原因の一つはこの体内の二酸化炭素量が低下した状態のままで生活していることがあげられます。
二酸化炭素を溜める呼吸法
私達の身体にはどのぐらいの二酸化炭素が体内にあるのかを検知するシステムが存在しています。それが脳幹といわれる部位に存在する呼吸中枢です。
ここで、常に血中の二酸化炭素濃度を分析して、濃度が設定された値よりも増えすぎた際に、スグに呼吸を早めたり、息苦しさをすぐに感じさせるなど、呼吸を促進して二酸化炭素を身体の外へ排出しようとします。
注目したいのは、濃度が設定した値よりも増えすぎたといった、基準が存在することです。
この基準は絶対的なものではなく、訓練によってある程度の濃度になっても呼吸が早くならなかったり、息苦しさを感じなくなります。
つまり、普段から呼吸がゆったりしていて、少し動いただけでは息が上がらない人というのは、呼吸の訓練や運動によって二酸化炭素がある程度の濃度の状態の方がパフォーマンスが良いため、そのまま維持しているのです。
フリーダイビングという一呼吸で極限まで深く潜る競技をされている方や、シンクロナイズドスイミングなど、息を止めた状態が長い競技をされている方は、二酸化炭素を溜めやすくなっています。
過呼吸を起こしずらくするには、二酸化炭素を溜められるようになることなので、簡単に言えば息を止めるという呼吸法や一息を非常に長い時間かけて行う呼吸を訓練することが重要になります。
気功やヨガなどに見られる呼吸法には、息を止めたり、非常に長い時間かけて一呼吸を行う呼吸法が多くありますが、二酸化炭素を身体にため込めるようにするためのトレーニング法として古くから取り入れられていたのです。
まとめ
朝、目覚めたときにパニック発作や不安感を感じる場合、睡眠中に口呼吸をして、過呼吸(過換気症候群)や呼吸過多になった結果である場合があります。
この状態は、寝ている間に口で大きな呼吸をしていることが原因で血中の二酸化炭素が不足してしまうことから発生してしまいます。
二酸化炭素には細胞に酸素を届ける作用がありますが、血中の二酸化炭素が不足すると神経細胞にも酸素が届きにくくなるため、脳が誤作動を起こしてパニック発作や不安感を引き起こしやすくなります。
口呼吸をやめて鼻呼吸をすることや寝る時は窒息しないように顎の力で簡単にはがせる程度の細い口にテープを張るなどの方法が有効です。
また、普段から二酸化炭素の適切なバランスを保つために、ゆっくりした呼吸や息を止めるなどの呼吸も大切になります。
当院での改善をご検討の方はパニック障害をご覧ください。
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