起立性調節障害の原因が発達障害(神経発達症)やグレーゾーンの可能性
結論:起立性調節障害を誘発するストレス原因が神経発達症やグレーゾーンからくるストレスのケースは少なくない
起立性調節障害は何らかのストレスが自律神経に悪影響を与えて血圧の維持が出来ないことを主体とする病気です。
ストレスの原因として神経発達症(発達障害:DSM5より名称が神経発達症に改定)やグレーゾーンによるストレスから誘発されていることがあります。
神経発達症はASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠陥・多動症)、LD(学習障害)など、以前は発達障害と呼ばれていたものです。
グレーゾーンの多くは神経発達症と診断できるほど、大きな能力の凸凹がなく日常生活に支障はない状態です。
しかし、適応するために我慢したり、一生懸命努力していることがありそれがストレスとなって起立性調節障害の原因になることがあります。

神経発達障害のグレーゾーンの子供は適応は出来るけれど、ストレスを受けやすい
神経発達症のグレーゾーンとは?
神経発達症の傾向がある程度あるものの、診断基準を満たさない為、神経発達症という確定診断が下されないのが、神経発達症のグレーゾーンです。
現在は神経発達症の概念をスペクトラム(連続体)として考える為、誰にでも多少の神経発達症の傾向はあります。
より神経発達症に近い人、より平均に近い人といった感じで連続的になっていて程度に違いがあるという考え方です。
神経発達症の子供でも周囲の大人に気が付かれずに高校生ぐらいまで普通の子供と同じように生活している場合もあります。(本人は凄いストレスを受けながら社会適応の為に努力をしています。)
ストレスが過剰になった段階で体調不良が出てきて、神経発達症が見つかるというケースも珍しくありません。

神経発達障害ははっきり区別できるものではない。正常でも日常生活が大変な子供はいる。
グレーゾーンは、神経発達症の傾向を強く持っていても正常範囲内の為、正常と診断されます。
神経発達症の子供ほどではありませんが、普通の環境での日常生活で苦労しやすい(ストレスを受けやすい)のです。
このストレスが起立性調節障害の引き金になってしまっている場合があります。
神経発達症・グレーゾーンの子供が持つ苦しさ
神経発達症と診断がおりている場合には、学校側もある程度出来ないことがあっても、寛容にしてくれるなどの対応が可能ですが、そうでなければそういった特別待遇は学校側も行いずらいという背景があります。
神経発達症が見落とされているお子さんとグレーゾーンのお子さんは同じような境遇に置かれていることになります。

本人なりに一生懸命やっても報われない
グレーゾーンの子は能力の凸凹がありながらも無理をすれば出来てしまうことが多いです。
例えば忘れ物が多いという特性を持つ子では、チェックリストを作って、何度も何度も忘れ物がないか、脅迫的にチェックを行えば忘れ物を減らすことが出来ます。
しかし、チェックリストを作る。何度も何度もチェックするという神経に負担がかかる作業を繰り返し行う必要があります。
ちょっとした気のゆるみで、忘れ物をしてしまったりするため、神経に負担をかけて疲れ果てた上に失敗して自己嫌悪になってしまいやすいのです。
日常生活を無難に送るだけでも、平均的な人よりもより緊張した状態で日常生活を送り、神経系に負荷をかけて生活を送る為、神経疲労を起こしてしまっている(疲れてしまっている)ことが多くあります。
睡眠リズムが乱れやすい
神経発達症の子供は睡眠のコントロールが難しく50%ぐらいの子供が睡眠障害を持っているといわれています。
神経発達症と診断される子供に睡眠障害が多いということは、当然グレーゾーンの子供の中にも睡眠障害になり易い子供がいるということになります。
起立性調節障害の子供がなる睡眠障害は睡眠相後退症候群(体内時計が後ろにずれてしまい、眠るのが遅くなって起きられない。)ことがほとんどです。

小さい時から眠るのが苦手など睡眠に問題を抱えている場合がある。
しかし、神経発達症の子供は不規則睡眠・覚醒リズム障害(体内時計がバラバラになり易い)になりやすいことも指摘されています。
小さい時から体内時計を揃えられないことが続き、その結果、睡眠負債が溜まって起立性調節障害を発症しやすくなる可能性が高くなります。
当院で参考にしている特徴
グレーゾーンであっても神経発達症の検査を受けてみて、実際にどのような能力の偏りがあるのかを調べることは重要です。
神経発達症の方が実践する対処方法が参考になります。
社会に適応するという部分にストレスが発生してくるので、自分は何が苦手で何が得意なのかを理解し、「皆と同じ事は難しい」ことを受け入れたうえで、どう社会に適応していくのかという工夫の模索をしていくことが大切になってきます。
当院では以下のことを参考に、社会の適応のしずらさや適応の工夫を考えていくことが多いです。
芸術系に興味が強い
絵、音楽、演劇、数字、テクノロジーなど芸術系や数学、テクノロジーなどに興味が強い子は、感受性が豊かであったり、興味が狭い範囲にとどまっている傾向があります。
感性や興味関心が平均的な人と異なる為、日常でも他者とのコミュニケーションに苦労しやすい(雑談が苦痛で、話を合わせる為に苦労する)傾向があります。
幸い現代はインターネットが発達したことで、同じような感性を持った人たちとつながりやすい環境がある為、複数のコミュニティを持つことで居場所を作ってあげることが出来ます。
何度も同じことで注意を受ける
片付けするように言ったのに、出来ない。
何度も同じことで注意を受ける。
楽しくなるとやらなくてはいけないことを放り出してしまう場合には、その原因がどういった理由によるものなのかをよく聞いていくことが大切です。
親側からすると、やる気がないとか、親を尊敬していないから言うことを聞かないと思いがちですが、能力的に言われたことを理解できていない、記憶を保持できない、感情のコントロールが苦手なことが多くあります。
基本は子供の世界観からどのようになってそのような行動につながったのかを聞いて理解しようとする姿勢が大切です。
時間/予定の管理能力
時間管理や予定管理が苦手ではないか?または、逆に物凄く厳密に時間を守りすぎる傾向があります。
時間を守れないことで何度も叱られる場合には、時間の管理能力が低い可能性があるので、「時計を見なさい!」という指導よりも、スマホのリマインダー機能を利用する、生活をパターン化してその通りにこなすなど、自分で管理するのではなく道具やルーティンワークにすると比較的時間管理を行えるようになることがあります。
時間をしっかり守ろうとする子供の場合、予定時間よりかなり早く到着するように行動していることが多く、その為に時間のロスが大きいため他のことをする時間が減ってしまいます。
同時並行処理が苦手
ワーキングメモリといって、一時的に記憶しておく容量が小さい子の場合は、人の話を聞きながらメモを取る、複数の作業を同時にすることが苦手です。
聞くという作業をすると書けなくなり、書いていると聞くことが出来なくなります。
座学の授業などはその典型なので、ノートを書く場合には先生の話は聞くことが出来ませんし、先生の話を聞いているときはノートは書けません。
その他にも、食べながら会話をするなど、○○しながら別の○○ということが苦手な場合があります。
劣等感を抱きやすい
こういった能力の差があるので、同級生と比べて同じことをするのに手間取ったり、説明を1度聞いただけでは理解出来なかったりなど、周囲と比べてうまくいかない経験を何度もすると、劣等感を抱きやすくなります。
そこで、自分は人よりもできないのだから、人の倍努力しなくてはいけないと考えて、物凄い努力をした結果、神経疲労を起こしてしまいやすくなります。(過剰適応といいます。)
自分の無理のない範囲で出来ることをやっていけばいい。
出来ないことが悪いことではないという価値観を身につけると適度な努力が出来るようになっていきます。
人間関係の距離感が取りにくい
いつもいじめの対象になってしまったり、仲間外れになってしまったりと、対人トラブルが発生しやすいタイプの子もいます。
特定の人とは仲良くできますが、それ以外の子とはあまり深く関われなかったりする場合があります。
コミュニティの中の暗黙のルールのようなことを雰囲気から察することが苦手で、どういうルールがあるのかを一つ一つ教えて覚えていく必要があります。
まとめ
・神経発達障害やそのグレーゾーンである場合に、過剰適応でオーバーワークになり、起立性調節障害を発症する子供がいる。
・神経発達障害の検査を専門医に受けたうえで、傾向や困りごとがないのか、グレーゾーンではないかも一緒に考えていく。
・神経発達障害の場合は50%ぐらいが元々睡眠障害になり易いことがわかっている。
・一番は専門医から神経発達障害であるのか、もしくはその傾向があるのかを調べてもらうことが大切ですが、当院ではその傾向がある子供が持つ特徴を参考にしています。
当院での改善をご検討の方は起立性調節障害をご覧ください。
遠方で来院が難しいけれど、お子さんについて相談したい方はオンラインカウンセリングをご利用ください。