こんにちは、浜松市はりを刺さない鍼灸師の佐野です。
機能性ディスペプシア(以下:FD)と診断された方の中には、胃が締め付けられるようにキューっと痛むといった胃痙攣(けいれん)症状が主体の方がいます。
胃痙攣とは胃を構成している筋肉が過剰に緊張することで、痙攣部位(みぞおちが多い)に痛みが出ます。未成年~若年層の方のFDに見られ易い症状です。
今回は胃がきゅーっと締め付けられるような痛みが出る(胃痙攣)機能性ディスペプシア(FD)について一緒に考えていきたいと思います。是非、最後までご一読ください。
結論:痙攣部位への血流を増やすと改善することが多い
FDと診断されていて、胃痙攣を起こしている方の多くは、食後にキューっと胃が締め付けられるような痛みが出て、しばらく痛みが続いてから徐々に痛みは減少して来るものの、少し軽くなってきたぐらいの時間帯にまた食事の時間が来てしまい、食事をとると再度痛みが出てくるという状態で、結果的に1日中痛みがある方が多いです。
24時間ずっと痛いというよりは、食事をきっかけに痛みが増すことが多い為、食後からだいぶ時間が空けば痛みが落ち着いて、違和感だけになる方もいます。
胃もたれやゲップが多いなどのFDの症状はあまり見られないことが多く、症状の主体が締め付けられるような胃痛です。
このような胃痙攣を主体としたFDは血流が不足している部位への血流をはりで改善させてあげることで、症状が改善されやすい傾向があります。
原理的には何らかのストレスを受けて交感神経が刺激されると、交感神経による作用として胃への血流を減少、胃を収縮させる反応が起こる為、原理的に症状が悪化しやすくなります。
また、胃の痛みそのものが生物的ストレスとなり、交感神経を刺激してさらに胃への血流を低下させるという負のループが形成されてしまうと、何年間も食事をとるたびに痛みが出るという状態が継続することになってしまいます。
胃は4つの血管により栄養されている
胃は腹腔動脈といってお腹の中心をとおっている太い血管から枝分かれした4本の動脈から栄養をもらうことで活動しています。
左右にそれぞれの動脈があり、胃の中心付近から枝が伸びている右・左胃動脈。
胃を取り囲むように枝が伸びているのが右・左胃大網動脈です。
臨床的には4本すべての血流が悪くなっているわけではなく、いずれか一本または複数の動脈のさらに細かくなった毛細血管の枝の一部の血流が低下してしまうことで、部分的に胃痙攣を起こしているような症例が多いです。
例えば、左胃大網動脈の枝の一部の血流が悪い場合は、左の肋骨の際周辺に痛みが集中するといった具合です。
鍼灸で痛みが出ている周辺を刺激することで、反射によって血流を戻すことが出来ると痛みが改善することが多いです。
食後に痛みが出やすい理由
食後に痛みが出やすいのは、血液を十分にもらえていない部分の動きだけが悪いにも関わらず、胃に食べ物が入ってきて胃を動かす命令が自律神経の方からだされると、無理に動こうとした結果として胃の筋肉が攣ってしまう為と考えられます。
胃は平滑筋という筋肉で構成されているため、厳密には横紋筋である骨格筋とは違いますが、筋肉である為、血流が不十分な無理な負荷をかけると攣りやすくなってしまうのは同じだと考えられます。
FDの特効薬として知られるアコファイド(アコチアミド塩酸塩水和物)は、胃の動きに関わる神経伝達に問題がある場合に有効なお薬ですが、血流不足(エネルギー不足)で胃が動けなくなっている場合には効果を発揮しずらいお薬です。
胃への血流低下はなぜ起こるのか?
臨床をしていても、胃への血流低下がなぜ起こって胃痙攣を起こすようになったのか?を特定できることはほとんどありません。
今のところ、若年層のやせ型の方に多いことから、もしかすると胃腸の血管の形成時に流れが滞りやすいような形状が存在するのかもしれません。
FDは瀑状胃(胃の上部が拡張した形状)の方に起こりやすいとの報告もあり、胃の形状そのものが特殊な可能性もあります。
鍼灸院では胃の形状を調べたり、胃の血管造影検査を行うことが出来ない為、当院では原因を特定することが出来ていません。
遺伝や成長期の栄養の偏りによって内臓の成長に悪影響を受けている可能性もあります。
冷たいものの飲食は控える
胃は冷やされてしまうと動きが悪くなりやすいことが知られています。
アイスを食べた後からFDが始まるなどわかりよい場合はよいのですが、実際にはそこまで因果関係を疑える症例は多くありません。
一応、アイス・かき氷、冷えた飲み物の摂取がきっかけになっている可能性がある為、常温~60℃以下のものを口にするほうが良いです。
どうしても冷たいものが食べたいときは、あらかじめ60℃程度のお湯をある程度飲んで胃の温度を上げたうえで、冷たいものを食べ、食べ終わってから再度60℃程度のお湯を飲んで胃を冷やさない食事法を心がけましょう。
長期化してしまう理由
胃への血流低下がなぜ起こるのかは不明ですが、胃への血流低下が起こると、胃の動きに異常があることで脳へ胃の異常を知らせる情報が伝わり、それを脳では生物的ストレスとして処理します。
また、胃痛そのものが生物学的ストレスとなります。
生物的ストレスを受けると身体はストレス反応を引き起こして、交感神経が刺激されます。
交感神経が興奮すると交感神経は胃に対して、胃の血管を収縮させて血流量が低下し、胃の運動が低下します。
その結果として、胃痙攣を誘発しやすくなるのです。
胃への血流低下による胃運動の異常、胃痙攣が誘発されたことによる痛みによって、再び交感神経が興奮します。
自律神経を介して胃への血流が戻りにくくなるような負のループを形成してしまうのです。
胃の血流が悪いことで起こっている胃痙攣の場合は、この負のループを断ち切ることが改善に必要なことになります。
交感神経の刺激によって胃への血流低下が引き下げられる負のループを断ち切る目的で抗不安薬を処方されている方もいますが、抗不安薬に胃への血流改善を行う効果までは期待できないため、何となく痛みがマシといった効果にとどまることが多いです。
胃の血流を自分で戻すことは可能か?
当院では胃への血流改善を刺さないはりで胃の血管を拡張させるように刺激することで改善しています。
近くにそのような鍼灸院があれば良いのですが、ない場合には自力で改善する方法がないか?について検討が必要になるかと思います。
当院へ来院された方ははりを行なってしまうため、実際に改善した経験はありませんが、原理的に可能性として最も高い方法が、横隔膜を大きく動かす呼吸法を丁寧に何度も行い続けることで、改善が可能な可能性があります。
胃は横隔膜のすぐ下に存在するため、横隔膜を大きく下に下げた呼吸を行うことができれば、横隔膜を使って胃をマッサージしているのと同じです。
横隔膜によるマッサージによって胃の血流が再開されてくれば、改善の可能性が高まります。
まとめ
胃が締め付けられるようにキューっと痛む機能性ディスペプシアは、胃痙攣による痛みであることがあります。
痙攣している部位の血流を何らかの方法で増やすことができれば、改善することが多い症状です。
このようなタイプの方は、食後に胃痛がひどくなり、時間をおくと少しずつ胃の痛みが軽減されてくる傾向があります。
よくなってきたタイミングで次の食事時間が来てしまうと、1日中痛いと言った生活になってしまうことがあります。
ゲップや胃もたれといったFDに特徴的な症状はあまり見られないことが多いです。
胃は4つの血管によって血液を受け取って活動していますが、4つの血管のいずれかの枝からの血流が悪くなっているようです。
このタイプの胃痛はFDの治療薬であるアコファイドが、原理上効きずらい傾向があります。
なぜ、胃への血流低下が起こってしまうのかはわかっていませんが、胃の形状や胃への血管形成に何か特殊性があるのかもしれません。
自律神経を介して、負のループが形成されてしまうと、長期化しやすくなってしまいます。
胃への血流改善ができれば、比較的改善されやすいのですが、近くに胃への血流を改善可能な鍼灸院がない場合には、腹式呼吸を試してみると良いかと思います。
当院での改善を希望される方は、機能性ディスペプシアをご覧ください。
遠方で当院への来院が難しいけれど、心身の問題について相談したい方はオンラインカウンセリングをご利用ください。