
ブログをご覧頂きありがとうございます。浜松市はりを刺さない心身堂鍼灸院の佐野です。
うつ病・不安障害(パニック障害)・自律神経失調症で病院を受診して抗うつ薬(SSRI)を使用するようになってから症状が落ち着いて調子が良くなってきたのに、薬を増やされてしまった。
治したいけれど薬への抵抗感はあるので、なるべく増やさずに治していきたいと思っていて、体調も良くなってきているのに処方量が増えてショックを受けられる方も多いです。
今回は調子が良くなっても抗うつ薬(SSRI)が増えていく理由について、一緒に考えていきたいと思います。ぜひ最後までご一読ください。
結論:調子が良くなってきている時の抗うつ薬(SSRI)の増量は順調に治療が進んでいる証拠でもある。
抗うつ薬(SSRI)は比較的副作用が出やすい薬です。
その為、通常は効果が出ない量のごく少量から投与を始めて、薬に体が慣れてきたところで徐々に投与量を増やしていくお薬です。
その為、薬に身体を慣らす為の投与量、軽い効果でとりあえず症状を落ち着かせるための投与量、しっかりと治す為に必要な投与量といった感じで、投与量によって狙っている効果が異なります。
投与量によってなぜこのような変化が出るのか?は完全に解明されているわけではありませんが、現在考えられている抗うつ薬(SSRI)の効果について、理解しているとむやみやたらに増量しているわけではないことがわかりますので、一緒に勉強していきましょう。
抗うつ薬(SSRI)の作用とは?
SSRIは選択的セロトニン再取り込み阻害薬と呼ばれるお薬で、レクサプロ、セルトラリン、パキシル、ジェイゾロフトなどがあります。
すごく簡単に言えばSSRIの作用は神経伝達物質のセロトニンを増やすお薬です。
セロトニンの分泌量を増やしてセロトニンを増やしているのではなく、セロトニントランスポーターというセロトニンを神経細胞に回収するトンネルの入り口に蓋をして邪魔(阻害)することで、セロトニン量を増やしています。
SSRIを投与するとBDNFが増える
SSRIはセロトニントランスポーターに蓋をしてセロトニンの回収を阻害することでセロトニンの量を増やすと考えられています。
それだけではなく、SSRIを投与すると脳内ではBDNF(脳由来神経栄養因子)というタンパク質が増加することがわかっています。
BDNFは神経細胞の新生・再生を促進する作用のあるタンパク質だと考えられています。
うつ病・不安障害(パニック障害)・自律神経失調症は長期間のストレス反応により、多量に分泌されたコルチゾールが長期間脳内にとどまることで神経細胞に損傷を与えた結果発症していると考えられています。
その為、BDNFが増えることで神経細胞の新生・再生が促進されて病気の改善効果が得られると現代では考えられています。
BDNFは運動やある種の食品でも増加することがわかっていますが、セロトニンの増加がどのようなメカニズムでBDNFを増加させているのかはよくわかっていません。
研究データを基に最適な方法が考案されている
医学における薬の用法容量は、医学的な研究データを統計処理して決定されています。
例えば、症状が軽くなってきた段階ですぐに投与量を減らしていくパターンと症状が軽くなっても投与量を増量していくパターンの両方の治療成績(その後の治癒率や再発率)などを統計的に比べて、より治癒率が高く再発率が低い方法が現在一般的に行われている投与のパターンです。
現在一般的に行われているSSRIの投与パターンは、ある一定の量(薬によって異なる)までは調子が良くても投与量を増量していき、その状態でしばらく投与を継続したのちに、徐々に減薬していくというパターンです。
つまり、治療が順調に進んでいけば、投与量は増量していくのが普通なのです。
症状が落ち着いているから増やさずに減らしていきたいと考えられるお気持ちはわかりますが、多くの人へ、そのパターンで治療を行った場合に治癒率の低下と再発率が高いことがわかっている為、なるべく良くなる確率が高い方法を医師は提案してくれているのです。
投与量を増やさないとどうなる?
投与量を増やさない場合には投与量を増やした場合と比べて、同じ治療期間をとっている場合であれば治癒率が低く、再発率も高くなります。
実際、パニック障害は感覚的に症状が良くなっているという根拠で投薬をやめてしまうケースが多いことから、高い再発率が報告されています。

このような違いがなぜ起こるのか?を原理的に考えると、投与量が少ないとBDNFの増加が十分起こらず、神経細胞の新生・再生が不十分な為、しばらくすると再発してきてしまうのではないか?と考えることが出来ます。
少量で症状自体は改善しても、薬がない状態でも安定して体調が良い状態を維持するほどの回復の手助けとしては弱い可能性があります。
SSRIの投与量を下げる時とは?
SSRIの投与量を下げるパターンは主に二つです。
順調に治療が進んで十分な投与期間を維持したのちに、断薬に向けて徐々に減薬していく段階に入った時。
もう一つは、SSRIの投与による副作用が強く出てしまったときです。
SSRIは元々投与開始時や投与量増加時に副作用が出やすいことが知られています。
通常は多少の副作用であれば我慢して1週間ぐらいそのまま飲み続けていると副作用が落ち着いてきて薬の効果だけが得られるようになってきます。
しかし、強めの副作用が出てしまってこのまま投与を継続することが厳しい場合には、一旦投与量を減らして(投与開始時の場合は投与を中止)副作用を落ち着けるという方法をとることがあるようです。
最適な投与量で治療しても再発することがある
原則的には最適な投与量で治療をしていった方が、再発率は低く抑えられます。
しかし、薬で行えるのは神経細胞の修復の手伝いまでであり、完全に元通りには戻りません。
当たり前ですが発病前に何らかの強いストレス反応が長期間繰り返されてきたことが原因で神経細胞が破壊されて病気になってしまっている場合には、その原因を生活から取り除く必要があります。
心理ストレスが強い、仕事が忙しすぎる、生活リズムが乱れている、食事に問題がある、運動習慣がないなど、ストレス反応を引き起こしたり、ストレス反応を鎮める作用がある生活全般の見直しを行っていかなければ、発病前の状態に神経細胞が回復したとしても、同じ負荷をかければ時間の問題で再発します。
しかし、精神科や心療内科ではそこまで細かなケアは時間的に難しいので、原因となった生活に対するアドバイスをくれる専門家の協力を得ることも大切です。
まとめ
うつ病・不安障害(パニック障害)・自律神経失調症の治療でSSRIを使用し始めて体調が良くなってきているのに、処方量が増やされるので、良くなっているのに何で増やされるの?と疑問に思われる方も多いです。
治療が順調に進んでいる場合、SSRIの投与量は三段階程度に分けて増量していくのが基本的な治療パターンになるので、処方量が増えていても心配する必要はありません。
SSRIはセロトニンを神経細胞の中に回収するセロトニントランスポーターに蓋をして、シナプス間隙にあるセロトニン量を増やすお薬です。
セロトニンが増加するだけでなく、BDNFという神経細胞の新生・再生を促進すると考えられているタンパク質を増加させる作用がある事もわかっています。
BDNFが増えることで損傷を受けた神経細胞が新生・再生されて治癒効果を発揮していくと考えられています。
統計的に効果が出始めてからもSSRIの投与量を増やしていく方が治癒率が高く、再発率が低いため治療が順調であれば投与量は最大容量まで増やす使い方をすることが多いです。
投与量を抑えると治癒率が低下したり、再発率が上昇する為、通常は良くなった投与量から減らしていくことはありませんが、副作用が強い場合には検討されます。
SSRIで行える治療は神経細胞の修復までで、同じような負荷をかければ再度神経細胞が破壊されて再発します。
同じような負荷をかけない生活習慣や生活環境の改善を同時に行っていくことが大切です。
当院での改善をご検討の方はうつ病、パニック障害、自律神経失調症をご覧ください。
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