こんにちは、浜松市はりを刺さない鍼灸師の佐野です。
子供(小児:15歳以下)でも機能性ディスペプシア(機能性胃腸症 以下:FD)と診断されるケースが少なくありません。しかし、通常FDにはアコファイド(アコチアミド)という副交感神経を刺激して胃腸の動きをよくする治療薬を用いますが、小児では安全性が十分に確認されていないことから、治療は胃腸薬の他に漢方薬や抗不安薬などを処方されることが多いようです。
今回は薬の制約があってFDの治療が行いにくい小児のFDについて、一緒に考えていきたいと思います。是非、最後までご一読ください。
結論:大人の機能性ディスペプシアほど典型的ではないことが多い
大人のFDの発症には胃腸炎や暴飲暴食、ストレスを受けて胃の不調を感じている生活をしていたなどがきっかけになる事が多いです。
しかし、小児の場合は親御さんが食事の管理をしている為、暴飲暴食をすることが出来ず、ストレスを受けやすい子供は先に過敏性腸症候群(IBS)になる子供が多いです。
子供のFDの発症は初期に胃の痛みや不快感を親に訴え、徐々にその日数が増えていき、気が付くと毎日胃の不快感や痛み、食事がほとんどとれなくなっていたり、ある日突然胃の痛みが始まってそれから食欲も落ちて食べられないといった感じで大人ほどはっきりとしたきっかけがなく始まることが多いです。
困ったことに不登校や起立性調節障害による自律神経の乱れから来る腹痛と見分けるのが難しい為、FDのきっかけとなる胃腸の不調が出ていたタイミングでは何が原因かを探している状態で、適切な処置が受けずらくなってしまうという問題もあります。
また、通常FDと診断されるには基準として、心窩部(みぞおち)痛、心窩部灼熱感、食後のもたれ感、早期飽満感のどれか1つ以上の症状があって、少なくとも6か月以上前から始まって直近の3か月間にも症状が続いている。そして胃や十二指腸に検査で異常がないことが必要です。
しかし、小児に対して侵襲性の高い検査である胃カメラ検査を行うことは出来るだけ避けたいということもあり、胃カメラ検査をせずに胃腸薬を使用しても改善しない、慢性的に症状が続いている、ピロリ菌検査が陰性、血液検査で炎症反応などが起こっていないなどから推測を元に診断されることが多いです。
続くようなら胃カメラも検討しましょうという形にはなりますが、不登校や起立性調節障害と見分けずらいので何となくFDかなぁ?といった感じではっきり診断されにくいことも多いです。
子供の機能性ディスペプシアは体質?
FDはなり易い人となりにくい人がいると指摘されています。
体質的に胃酸の分泌が多い、粘液の分泌が少ない、胃の形状が特殊などがFDのなり易さと関係しているのではないかと考えられています。
自律神経が主に介在している場合には、スマホやゲームなど長時間姿勢が悪い状態でくて首肩こりがひどくなってそこから胃腸の調子が悪いなど、自律神経失調症に近い理由でFDになっている方は大人も子供も一定数の割合はいらっしゃいます。
子供の場合は食事の管理は親御さんがしている為、大量に油物を摂取することもなければ、当然お酒を飲むわけでもなく、仕事による長期間のストレスがかかる生活をしていることも少ないです。
臨床的にはFD自体になり易い体質を持った子供の胃腸への疲労の蓄積がある程度進行したときに胃腸の限界が来て、突然発症するように見えます。
胃の痛みや不快感を訴える場所が大人と異なることが多い
大人のFDは心窩部から肋骨の際に胃の痛みや不快感を訴えられる方が多く、解剖学的に平均的な胃の位置とほぼ一致します。
胃そのものがこり固まってFDが引き起こされている場合には固まっている部分を直接はり施術で血流を良くして緩めていくことが有効な改善方法になる場合が少なくありません。
しかし、子供のFDの場合、痛みや不快感を訴える位置が臍(へそ)に近い位置(場合によっては臍の位置)に近い場所に痛みや不快感を訴えることが多く、大人よりも下の部位への施術が効果的なことがあります。
鍼灸院では画像検査が出来ない為、推測にはなりますがいわゆる胃下垂気味の子供がFDになり易い可能性があります。
しかし、通常は胃下垂になると胃が膨らむスペースがある為、FDになる前はたくさん食べることが出来るはずですが、FDになっている子供の発病前の食事量を聞くと標準的かむしろ小食気味な子供の方が多い為、胃下垂ではなく別の特異的な形状をしている可能性があります。
胃腸への血液供給に問題がある可能性
腹部への施術を行っていると、腹大動脈周辺への施術を行った際にグルグルっと胃が動き始めて、その後痛みが改善されることが多いです。
胃そのものの平滑筋がこり固まっていることが痛みや不快感の原因にはなっているものの、腹大動脈やそこから分岐する左右の胃動脈の血管の形成に若干の奇形があり、血液供給が不具合を起こしやすい形状をしていることが原因でFDの症状が出ている子供がいる可能性があります。
こう考えると小食傾向があるなどもある程度説明が出来ますが、血管造影をしない限り、このような奇形もわからない為、推測の域を出ませんが、胃そのものと腹大動脈周辺の血管を拡げるようにはりを行うと改善がみられることが多いです。
まとめ
子供(小児)でも機能性ディスペプシアになることは少なくありません。
しかし、大人と異なり不摂生や胃腸炎の後からなるというよりも、生まれつきの体質の方がより大きく影響を与えている可能性があります。
元々FDはなり易い体質が存在すると考えられていますが、子供のFDの場合はよりその傾向が強く不摂生をしていなくてもFDになってしまうケースがあります。
その原因は胃の形状や胃への血流を担う血管の奇形があるのではないかと推測は出来ますが、胃のこりを改善したり、胃への血流を増大させるように血管に対して鍼を行うと改善されるケースがあります。
子供のFDもすべての原因が完全にわかっていない為、100%すべてのFDが居残りの改善や血流改善を行ったり、自律神経の影響を取り除く施術をすれば改善するわけではありませんが、病院での治療方法が限定されるため、鍼灸や整体を試してみることを検討してみても良いでしょう。
当院での改善を希望される方は、機能性ディスペプシアをご覧ください。
遠方で当院への来院が難しいけれど、心身の問題について相談したい方はオンラインカウンセリングをご利用ください。