起立性調節障害と不登校は何が違うの?

こんにちは、浜松市はりを刺さない鍼灸師の佐野です。

起立性調節障害と不登校はかなり密接な関係があります。不登校の子供のうち約3~4割ぐらいが起立性調節障害によるものだと考えられているからです。

統計的には約0.8%(100人に1人いるかいないか)の児童が程度に差はあっても、起立性調節障害をもっている考えれらています。

症状だけでみると不登校の子供もストレスから起立性調節障害と同様の症状を出す子供が多く、医師の診断も厳密に起立性調節障害の条件を満たすかどうかで診断される医師と、症状だけ聞いて起立性調節障害と診断される医師がおり、混在しているのが現在の日本の医療現場です。

今回は起立性調節障害と不登校の違いについて、一緒に考えていきたいと思います。ぜひ最後までご一読ください。

結論:起立性調節障害の場合は症状が改善すれば自然に学校へ行けます

子供が学校へ行けない理由は主に以下の4つに分類できます。

  1. 起立性調節障害の症状が邪魔して学校へ行くことが出来ない。
  2. 起立性調節障害の症状と不登校による心理ストレスからの症状で学校へ行くことが出来ない。
  3. 不登校による心理ストレスからの症状で学校へ行くことが出来ない。
  4. 起立性調節障害で学校へ行けない期間が長くなったことで不登校の心理が出てきて学校へ行くことが出来ない。

いずれの場合でも、朝起きられない、頭痛がする、お腹が痛い、めまい、血圧異常というような症状が出てくるのは、共通しており起立性調節障害も必ずしも血圧の異常が出ない正常血圧起立性調節障害もあり、新起立試験で診断基準が設定されているものの、最終的な判断は医師の経験による判断というあいまいさが残ります。

特に不登校による心理ストレスから血圧に乱れが生じるのは、ストレスが加われば血圧に変動が起こるという基本的な人の身体のメカニズムからある程度発生してきてしまう為、起立性調節障害っぽいというあいまいな診断をされることが多いです。

臨床で診させて頂いていて、起立性調節障害だけが原因の子供は症状が改善されれば特別何もしなくても学校へ通いだします。また、来院時点でも1日中体調が悪いという場合を除けば、午後などある程度体調が良くなってきた時間からは積極的に学校へ行くので、学校への戻りにくさもあまりなく社会復帰されていきます。

一方で不登校を併発していたり、不登校がメインの子供の場合は症状が改善してきて普通に朝起きられるようになってきても学校へ行くことは出来ません。

また、午後などある程度体調が良くなった時間でも学校へ行くことが出来なかったり、体調が回復してくる時間が、学校が終わって今から行っても間に合わない時間ぐらいに体調が回復してくる子供が多いです。

しかし、不登校の子供が怠けているというわけではなく、適応障害に近い病態であることが多いので、単純に学校へ行きたくないというわけでもありませんので、もし不登校が原因の体調不良と重なるところがあっても、病気だから今は休むということを優先させてあげることが大切です。

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起立性調節障害も不登校もストレスが加わることで起こる

起立性調節障害も不登校も何らかのストレスが加わり続けたことが原因で起こってきます。

起立性調節障害のストレス原因

起立性調節障害の場合はストレス原因が必ずしも学校、勉強、進路、家庭環境と関係があるわけではありません。

例えば身長が急激に伸びたことで、他の臓器がその成長に追い付いていないことで体調不良を起こしそれが身体的なストレスとなる。

生まれつき肩こりになり易かったり、お腹が弱い、原因不明の睡眠障害といった体調不良のストレスから起立性調節障害が発症してきます。

起立性調節障害自体は何らかのストレスが加わりすぎたことが原因で発症します。

必ずしも学校、勉強、進路、家庭環境がストレス原因となるわけではありませんが、学校、勉強、進路、家庭環境などがストレス原因となっている場合には、起立性調節障害と不登校が併発した状態となります。

その為、体を起こすと脳貧血を起こす、立ち眩み、長時間立っていたりすることが辛い、めまい、頭痛、交感神経が高まって血圧が上がってくるまで体を動かすことが出来ないといった症状が多くなり、新起立試験でも起立性調節障害の条件を満たして診断がおります。

現在かかっているストレスを見つけ出して取り除き、生活習慣を整え、循環器系を鍛えたり、場合によっては身体が成長して循環器系が発達するまで待つことで改善されていきます。

不登校のストレス原因

不登校の場合は学校、勉強、進路、家庭環境などある程度ストレス原因が限定されていることが多いですが、学校の○○が嫌など自分の感情を整理できていない為ストレス原因を自覚できない場合が多く、聞いても答えることが出来ません。

しかし、休むことが決まった瞬間から体調が良くなったり、休みの日は元気になり易かったり、遠足や修学旅行など楽しいイベントの時は参加出来たり、親御さんと喧嘩すると一気に症状が悪化するなど、環境や心理的な要因で体調の波がより大きくなります。

起立性調節障害と併存している場合には、微妙な体調の悪さ(起立性調節障害によるもの)が常にあり、そこに環境・心理ストレスによって良かったり悪かったりが加わるといった感じの症状の出方をすることが多くなります。

適応障害に近い病態で、ストレッサー(ストレス原因)から離れていれば、症状が比較的楽なことが多いのですが、真面目であったり、正義感が強い子供の場合は学校へ行けていない自分を責める為、そちらの心理ストレスがストレッサーとなり、学校へ行っても行かなくてもストレッサーにさらされて休んでも体調不良が継続してしまう場合もあります。

学校が休みなど、ストレッサーから離れていて他の子も学校に行く必要のない状態で、学校が休みの為、学校へ行けていない自分を責める必要もなくなり、ストレッサーの板挟みから解放されて安定します。

不登校の要因による体調不良の場合は、週末、GW、夏休み、冬休み、春休みといった長期休暇中は体調がよいことが多いです。

不登校の進行期への対応を適切に行えると、混乱期に移行し学校へはいけないけれど体調が安定して、さらに混乱期に適切な対応をしていけば、回復期へと移行していきます。(関連記事参照

不登校を適応障害に近い病態として考える

適応障害というのは、置かれている環境にうまく適応できず、ストレスによって心身に悪影響が出て、生活に支障をきたしている状態を指す疾患です。

適応障害の治療はストレッサーから離れた状態で、十分な休養を取らせることで回復してくる疾患です。

十分な休養によって体調不良が改善してきたら、出来ることから少しずつ社会復帰を行っていくというのが、標準的な治療方法になります。

不登校というのは社会や学校への適応が上手くできなかったことで発生してくる為、適応障害にかなり近い病態と考えることが出来ます。

しかし、大人の適応障害は職場でパワハラに合う、人間関係でトラブルがある、過労、忙しすぎて睡眠時間が足りないなど、過度な負担に対して適応できない(自分のストレス耐性を超えた環境への適応が出来ない)だけで、平均的な安全が確保された中での集団生活を送っていく能力を元々持っていることが多いです。

その為、ストレッサーから引き離して、休ませて、環境を整えて徐々に社会復帰という流れで数ヶ月程度で社会復帰できる方が多いです。

適応障害と不登校の違い

大人の適応障害は、集団生活や多少の人間関係のいざこざといった学生時代からの集団生活でかかる平均的な環境負荷であれば普通に適応は出来るけれど、自分と相性が極端に悪い環境に身を置いたことで適応障害を起こすことがほとんどです。

子供の場合もいじめや不適切な指導を行う教師や厳しい部活練習や先輩からの過度な上下関係などに適応できない場合もあります。その場合は無理をさせずに環境を変えることが出来れば急激に回復していきます。

しかし、体調不良になるまで頑張ってしまう子供は根性がないからとか頑張りが足りないからこうなったと考えて、環境を変えることを「逃げる」ととらえて本人が環境を変えることを拒むことが多いです。

部活をやめたり、転校が決まるとすぐに体調が回復し、別の部活や新しい学校へは問題なく通える子も多いですが、なかなか決断できない子供の場合は「部活を続けられない、出席日数が足りなくて同じ学校にい続けられない」という自分の決断ではなく「仕方がなく」という理由が必要な子供もいます。

そういった過度な負荷がかかっている厳しい環境に身を置いている子供の場合は大人の適応障害と同じ対処を行うことで社会復帰していくことが可能です。

特別問題がなさそうな環境に適応できない不登校

不登校の子供の多くが、特別原因になりそうな強い負荷がかかるような厳しい環境にいるわけではないにも関わらず、学校へ行けなくなってしまいます。

そして、本人に聞いてもなんでいけないのかわからないという回答や、はっきりした理由にならないことが多いです。

不登校の問題は複雑で特定の原因で起こるわけではないといわれます。

子供は生まれてから両親と初めての人間関係を結ぶところからすべての人間関係を構築・維持するスキルの習得が始まります。また、性格や思考に強い影響を与える言語は、周囲にいた人の言葉遣いから学習します。

授乳の関係で最初に認識する他者は母親であることが多いのですが、その後父親、祖父母、兄弟といった具合に他者を認識し、人間関係を構築・維持する練習をしていきます。

成長するにしたがって、近い年齢の乳幼児やその両親、保育園や幼稚園の先生といった具合に徐々に人間関係を複雑化していきます。

幼稚園~小学校中学年ぐらいまでは、母親との分離不安を解消することが一つの目標となります。

最初に母親と1対1の人間関係を結んだ際に、母親に確実に守って保護してもらい、共感してもらい、味方でいてもらったというその安心感を確実にしてから、興味を持って母親から少し離れて探索行動をとることで、少しずつ母親と離れても不安になることがなくなります。

しかし、母親へ分離不安(母親と離れると不安になる)が残ってしまっている子供の場合は、常に親が見守って、保護し、共感し、味方でいるという安心感を十分感じられていない場合があります。

分離不安は「安心する→探索行動」をとるという経験によって、母親から離れても不安を感じなくなっていくのですが、この分離不安が残っていると形だけは学校へ行っていても学校にいる間ずっと不安でストレスにさらされた状態になります。

小学生の不登校はこのストレスが重なっていって不登校になるケースが多いです。

気が付かれずにそのまま、中学生や高校生になっている場合には、母親がいないと不安になって安心できない。場合によっては不安障害をこの年齢で発症する場合もあります。

小学校高学年ぐらいからは、脳の前頭葉という部分の発達が進むようになります。

その結果、自分は他者からどのようにみられているのか?という他人からの視点を意識することが出来るようになってきます。

それ自体は年齢による正常な脳の発達段階を経ており、この機能が正常に働くことで社会性を身につけていきます。(他人の評価を気にしなければ犯罪を犯すことにも躊躇がなくなってしまいます。)

この時に「私は嫌われている、○○だと思われている、周りと比べて容姿が○○」など、歪んだ自己認識を他人から見えている自分として妄想してしまうと軽度の社交不安障害の症状が出てきて、これも家の外にいる間はずっと感じるストレスの為、長期的なストレスとなって不登校の原因となります。

また、間違った自己認識をしていることで、他者と信頼を前提とした人間関係の構築・維持が難しくなり、常に嫌われないように気を使いすぎてそれがストレスになったりして不登校の原因になったりする場合もあります。

間違った自己認識は肯定的な言葉をかけられる機会が少なかった子供に多く、いくらそれが妄想であることを伝えてもそのように感じることが出来なくなっています。

不登校の解決が難しいとされる理由

単純な起立性調節障害は、現在のところ治療方法がない身体の不調が身体ストレスとなっている場合でなければ、適切な治療行うことで学校生活へ戻っていくことが可能です。

しかし、不登校の場合にはストレス原因となっている心の発達段階のどこの過程で躓いてしまっているのかを考えながら、不足している経験を補うことで心の成長を後押ししていく必要が出てきます。

年齢・肉体的には成長してしまっている分、本来は幼少期に経験し終わっているプロセスをやり直す必要がある場合には特別な環境を用意することも必要になる場合があります。

小さい時の抱っこされることが少なくて、不安感を抱いている子供の場合、中学生でも高校生でも一旦スキンシップを良くとって安心感を体感させる必要も出てきます。

しかし、中学生以上になって親に甘えたい経験不足の部分と脳の発達に促されて自立心が高まっている部分がせめぎあうようになり、甘える経験をさせることが難しくなることもありますし、親の方ももう〇歳なんだから・・。という気持ちや本当に甘やかして大丈夫なのだろうか?という気持ちもあり十分に経験させることが難しくなる場合もあります。

まとめ

起立性調節障害と不登校は併発しやすいため、両方の可能性を頭の片隅に入れた状態で子供と向き合っていくことが大切です。

起立性調節障害や厳しい環境にいることで不登校になっている場合には、原因となっているストレッサーを取り除くことが出来れば、比較的早く改善していきます。

原因がいまいちわからない不登校になっている場合には、一旦はストレッサーから離して休養させることが必要ですが、成長の過程で本来は経験して獲得する心の発達プロセスを経験していないことがあるので、そのプロセスをもう一度やり直すことが必要になってきます。

当院での改善をご検討の方は不登校起立性調節障害をご覧ください。

遠方で来院が難しいけれど、子供について相談したい方はオンラインカウンセリングをご利用ください。

心身堂鍼灸院院長
この記事を書いた人
鍼灸師 佐野 佑介

静岡県浜松市中央区和地山で自律神経専門のはりを刺さない心身堂鍼灸院を開業。
自身も26歳の時にパニック障害から自律神経症状に苦しんだ経験を持つ。
2012年に独立開業。
国家資格 はり師(148056号)・きゅう師(147820号)
医薬品登録販売者試験 合格

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