休みの日は朝起られる、元気になる起立性調節障害は仮病ではない
結論:登校しなくてはいけないというプレッシャーが自律神経に悪影響を与えて、平日は体調が悪い。
学校がある日とない日(学校に行かなくて良い休日と学校へ行かなくてはいけないとわかっていて休んでいる状態)では心理的なプレッシャーが異なります。
起立性調節障害は何らかの(物理的・化学的・生物的・社会心理的)ストレスが影響して発症する疾患です。
何らかのストレスはその子によって異なる為、そこが起立性調節障害の難しさでもあります。
心理的な問題が一切なく純粋に起立性調節障害による生物学的ストレス(体調不良)だけが原因で学校へ行けていない子供は、体調が良い日や午後になって回復してくるとすぐに学校へ行きます。
体調が良い日は友達と会いたいなどの理由で、積極的に学校へ行きたがる子供が多いです。
鍼灸や整体を行って体調を整えるだけで学校へ戻れるようになる子供はこのタイプの子供です。
しかし、家や親から離れることに抵抗(分離不安)があったり、学校に行くことに対して何らかの抵抗感をもっている(必ずしも自覚できるわけではない)子供は、何らかの心理的な問題を抱えていることがあります。
午後になって体調が回復しても学校へ行かなかったり、学校が終わる時間にならないと体調が回復してこないなどの子供は何らかの心理的な問題を抱えている可能性があります。
適応障害と病態が似ており、休みの日の方が気持ちが楽な為、体調が良く、学校がある日は本当は行かなくてはいけないというプレッシャーがかかる為、自律神経が悪影響を受けて体調が悪くなります。
仮病ではなく本当に体調が悪いのです。
学校へ行こうとすればするほど行けなくなる
「明日こそは学校へ行く!」そう宣言していたのに、翌朝になると起きられない。起きられても「やっぱり行かない」ということはよくあることです。
人の心は○○しなくてはいけないと目標を意識しすぎると緊張して思ったような行動がとれなくなります。
例えば水を入れたコップを運ぶことを考えてみてください。
「絶対にこぼさないで運んでください」といわれれば、緊張して手が震えますから結果的にこぼしやすくなります。
「こぼしてもいいので運んでおいてください」といわれると、リラックスして運ぶことができますから結果的にこぼさずに運べる場合が多くなります。
緊張するというのは、すなわち自律神経のバランスを崩すようにプレッシャーをかけている状態です。
起立性調節障害も自律神経の疾患ですから、ストレス(プレッシャー)がかかっている状態になれば状態が悪くなりますし、ストレスが少なければ状態が改善しやすくなります。
学校に関連した心理的ストレスがかかっている場合には、学校へ本当は行かなくてはいけないというプレッシャーがかかる為、学校がある日は体調が悪くなるのです。
不登校の進行期でも同じ症状が出るため、起立性調節障害なのか不登校の自律神経症状なのかを正確に見分けることは正直難しいですが、不登校とは学校へ行けないストレス原因の割合が異なります。
不登校と起立性調節障害で休みの日は起きられる原因の差
不登校の進行期による体調不良と起立性調節障害で休日は起きられる子供の差は、ベースラインの健康レベルに関係があります。
コップの水に例えて説明させて頂きます。下の図のように水があふれた状態が体調不良が引き起こされた状態だと考えてみてください。
不登校の子供は学校へ行こうとすること自体が非常に強いストレスを与えることになり、休日は普通の子供と同じレベルで元気になります。
学校のある日は強いストレスを受けることになる為、体調が悪くなります。
しかし、起立性調節障害の子供の場合は、休日でも症状が出るか出ないかのすれすれのところで生活している子供が多いです。
その為、休日でも頑張りすぎて体力を消耗しすぎたり、叱られる、天気が悪い、睡眠不足などのストレスを受けると体調不良が誘発されます。
休日に他のストレスの影響からも体調不良が誘発されるのが起立性調節障害の体調不良です。
その為、休日は起きられる起立性調節障害の子供の場合は、ベースラインの体調不良を改善できれば、比較的スムースに学校へ復帰することが出来ます。
体調不良が続いている状態で、見分けることが難しい為、体調不良が出ている場合には決めつけてかからないことが大切です。
まずは学校がある日でも体調が安定すること
今すぐにでも学校へ通えるようにしたい!という親御さんの焦る気持ちはわかります。
しかし、学校へ通うことが困難になる中程度以上の起立性調節障害は標準治療(病院の治療)を受けても、約半数の子供は早くても1年ぐらいは復学までに時間がかかる疾患です。
元の状態に戻っていくためには、遠回りなようですが、段階を踏んでいくことが大切です。
学校へ行かなくてはいけない。というプレッシャーで体調が崩れているようであれば、そのプレッシャーをまずはコントロールできるようになることが大切です。
「学校は行ってもいいし、いかなくてもいい」
本人がそのぐらいの気持ちでいられるようになると、平日でも無理に学校へ行こうとしなければ体調が良い状態が維持しやすくなります。
注意したいのは、体調が戻ったからといって登校刺激をしないことです。
体調が回復しても、「学校へ行かなくてはいけない」という気持ちが強くなったり、周囲の人から「学校は行かなくてはいけない」とプレッシャーをかけられるとれば再び体調不良が再発してくることがあります。
休日に遊びに出かけることは悪いことではない
学校へ行けていないのに、休日は遊びに出かけるのはちょっと・・・という親御さんの気持ちもわかりますが、休日の体調が良い日にもかかわらず、外出して動き回ることをしないと体力がどんどん低下していきます。
起立性調節障害は血圧維持ができないことで階段を上っただけで動悸がしたり、息が上がったりして本人もショックを受けるほど体力が著しく低下する疾患です。
重度の子供は平日・休日関係なくベッドから体を起こすことだけでも相当に辛い状態になり、運動すると動悸がしたり、場合によっては脳貧血を起こして気絶してしまいます。
起立性調節障害の改善には運動が効果的だという研究報告も多い為、なるべく体力を落とさないことが大切なので、休日だけでも元気なのであれば思いっきり体を動かして体力維持に努めることが大切です。
親子のコミュニケーションは十分ですか?
不登校でも起立性調節障害でも、学校へ行けなくなると不安にならない子供はいません。
そうした不安を直接親御さんに話さない子供も多いです。不安を感じないようにあえて飄々としている場合もあります。
子供は不安を口にしなくても親御さんにただ話を聞いてもらうことが出来ると、自分は大切にされている、愛されている、守られていると感じて安心します。
アドバイスをせずにただ話を聞いて共感してあげてください。学校へ行けていないことについて神妙に話をする必要はありません。
子供ですから当然間違ったことを話していたりしますが、子供の感情体験を聞いてあげることそのものが子供の安心感を育てます。
そもそも話を聞けていない、話を聞いているけれど家事をしながらなど「ながら」になっている。
子供が求めていないアドバイスをしたり、共感が少ないなど、子供が寂しさを抱えてしまうようなコミュニケーションをとっていないか振り返ってみましょう。
社会構造が変化して共働きでないと生活していけない、教育資金が賄えないので、なかなか親子の時間が取ることが難しいのは親御さんのせいではありません。
人間は社会性の動物の為、他者から大切にされていると感じることはとても大切なことです。
特に成長期の子供は親から大切にされているという感覚を与えられることで、心身が健全に発達していきます。
子供が親に大切にされていると感じるのは、欲しがるものを買い与えてくれることではなく、子供の話を手を止めて自分の為に時間を使って向き合ってくれたという体験です。
ゲームやスマホにハマっている子供の多くは親子のコミュニケーション不足から親に話しかけることをやめてしまっている状態にある事が多いです。
スマホをいじる時間をコミュニケーションに当てましょう
起立性調節障害のストレスの原因の一つで見逃せないのが、ゲームやスマホの長時間使用(1日1時間以上)による、脳の過覚醒と脳活動の抑制です。
ゲームやスマホはアルコール、ギャンブル、麻薬・覚せい剤を使用した際に活性化する報酬系を刺激するように設計されています。その為、依存性があります。
子供の脳は元々報酬系に対して脆弱なうえ、親子のコミュニケーションで心が満たされていない子供は、特に依存症になり易くなります。
報酬系は交感神経を刺激する為、夜眠れない、朝起きられない、血圧の維持が出来ないといった自律神経系に負荷がかかり起立性調節障害を発症していることが少なくありません。
ただ単にスマホやゲームを取り上げるだけでは意味がありません。
子供が物理的にスマホやゲームをしている時間が少なくなるように会話の時間や一緒に料理や掃除をするなど共同作業を行う時間を増やしていって下さい。
心が満たされると同時に自然とスマホやゲームへの依存度が減るようにしていきましょう。
まとめ
休みの日は起きられたり、元気な場合は仮病ではありませんが心理的ストレスが起立性調節障害の原因の一因になっていることがあります。
学校がある平日に学校を休んでいても体調不良が出なくなることからまずはスタートすることが大切です。
休日に元気になるのであれば体力維持の為にもどんどん外に遊びに活かせた方がメリットが大きくなります。
心理的ストレスで比較的多いのは親子のコミュニケーション不足とそこから来るデジタル機器への依存症になっている場合があります。
親子のコミュニケーションが十分に取れないのは社会構造的な問題もあり、親御さんが悪いわけではありません。
しかし、その部分を改善していくことが子供の起立性調節障害を改善していくことにつながっていくことがあります。
当院での改善をご検討の方は不登校、起立性調節障害をご覧ください。
遠方で来院が難しいけれど、カウンセリングを受けたいという方はオンラインカウンセリングをご利用ください。