起立性調節障害に整体・鍼灸は効果がない?

起立性調節障害に整体・鍼灸は効果がない?

結論:効果がある・ないという研究がないので、科学的にはわからない。

整体・整骨・鍼灸などの代替療法に起立性調節障害を改善する効果が本当にあるのか?については科学的に効果があるともないとも証明がされていません。

病院での起立性調節障害の治療をはじめて1ヶ月以上たつけれど、あまり変化がなく、自費の代替療法を試してみようか迷われている方の参考になるように書かせて頂いています。

なるべくポジショントークにならないよう客観的にわかっていることについて書かせて頂いております。是非ご一読ください。

日本小児心身医学会は否定的な声明を発表している

日本小児心身医学会のHPに起立性調節障害(OD)に対する整骨や整体などの代替療法の効果についての声明が、出されています。

日本小児心身医学会は医学中央雑誌等による過去の文献検索を行ったところ、現時点(2018年5月)で、整骨や整体などの代替療法がODの本質的病態を改善するとした科学的根拠(エビデンス)はなかった。
すなわち、これらの代替療法について的確な研究デザインによって明確なエビデンスのある研究報告がこれまでに存在しないからである。

一般社団法人 小児心身医学会より引用

簡単に説明すると「科学的根拠と呼べるほどレベルの高い研究が今までされたことがないから、代替療法が起立性調節障害に効くのかはわからない。」という意味です。

研究されていなくてわからないので、とりあえず効果がわかっている治療を行ってくださいという立場のようです。

なぜ研究されないのか?

通常医学的な効果の研究は大学や研究機関によって行われますが、研究には研究費が必要です。

整体・整骨・鍼灸業界は製薬会社や国のような巨大なスポンサーが研究費を出して、大規模な研究が行われることがありません。

これは市場規模が小さく、スポンサーが出てくるようなビジネスモデルをしていないことが原因です。

また、起立性調節障害に限らず、整骨・整体・鍼灸などの代替療法は西洋医学のように画一的な方法(同じ薬を投与するなど)の条件を揃えることが難しいので、研究対象として不向きという問題があります。

代替療法は施術を行う際に身体の状態(筋肉の緊張状態など)を触れて確かめながら施術していくので、同じ人に対する施術でも毎回同じ施術になりません。

また、人によっては刺激する場所や強さを変える為、科学的な研究で不可欠な条件を揃える(全く同じ施術を行う)ことができません。

大規模に研究を行ったとしても科学的根拠(エビデンス)の信頼性が低いものになります。信頼性が低くなることがわかっている研究を好んで行う研究者はいません。

また、製薬の世界のように、研究しても経済的な利益が発生しない事(薬の売上が上がって製薬会社の利益になる)から、研究されないかされたとしても資金の制限から小規模な研究にとどまってしまいます。

効果があったとしても、”科学的根拠(エビデンス)はなかった。”という状態は今後も続くと思われます。

否定的な立場をとっているが根拠があるわけではない

研究されていて科学的根拠(エビデンス)がないということは、効果がないということの証明になります。

代替療法が起立性調節障害の改善効果があるかどうかについては検証されたことがないから、わからないというのが現状です。

効果があるともないともどちらにも明確な科学的根拠がないのです。

なぜ否定的なのか?

心身医療学会の構成員は医師臨床心理士で構成された組織です。

より科学的な立場をとるのであれば、しっかりとした検証を行って、それを根拠に声明を出すべきです。

組織の意見は構成員の所属に影響を受けるので、起立性調節障害の治療に新たな参入者が現れることに対して、研究が不十分なのでわからないという立場ではなく、否定的な立場になるのは仕方ないのかもしれません。

代替療法は起立性調節障害に効果がないのか?

私も起立性調節障害に対してアプローチを行っているぐらいなので、起立性調節障害が改善される症例に出会います。

しかし、100%の症例に効果があるわけではありませんし、鍼灸単独の効果なのかはわかりません。

当院の場合は生活習慣や栄養療法、心理療法も組み合わせる為、施術単独の効果なのか、他のアプローチによって改善したのかは証明できません。(生活習慣のちょっとした問題が原因の可能性もあります。)

起立性調節障害の概念そのものもあいまい

当院でも起立性調節障害と診断されたお子さんを多く診させて頂いていますが、小児科で診断を受けている場合でも、医師によって診断基準にばらつきがみられるのを良く感じます。

起立性調節障害の症状ではない足に力が入らなくなって立てない子供に、朝起きられない症状と血圧の異常があれば起立性調節障害と診断する。

逆に血圧の異常はなくても、朝起きられなければ血圧正常型の起立性調節障害と診断するなど、カウンセリングの段階で診断が正しいのか疑問を感じることも少なくありません。

親御さんにお話を伺うと病院では「起立性調節障害かなぁ?」ぐらいの説明をされていることも多いです。疑いぐらいではっきり診断されないことも多いです。

施術を行っていくと、検査では血圧異常が残っていても起立性調節障害の症状だけ(朝起きられない、頭痛、腹痛、立ち眩みなど)が消失して日常生活に復帰する症例にも多く出会います。

基本的には自律神経の乱れに起因して循環器系に問題が生じて、血圧が維持できないことで起きられない、頭痛、腹痛、だるさ、不眠などの症状が出てくる疾患と定義されます。

しかし、血圧異常がそのままでも元気に過ごせるようになる子供も少なくない為、起立性調節障害という概念自体がまだ未成熟な病名である感が否めません。

病名の概念が未熟な状態では、その病名に対して効果があるのかないのかを評価することそのものが、意味を持ちません。

まとめ

起立性調節障害に対して、整骨・整体・鍼灸などの代替療法に改善効果がある・ないといった評価ができるような研究がなされていない為、効果の有無については「わからない」のが現状です。

代替療法を取り巻く環境から考えると、効果の有無については今後も研究されることが期待できない為、今後も効果がある・ないということが科学的根拠に基づいて評価されるようになることはないと考えられます。

起立性調節障害の病名についての現在の医学的な知識そのものもまだまだ未熟な面がある為、今後病気そのものの研究が進めば、代替療法が効果的なケースと効果が全くないケースについてもわかってくる可能性があります。

最終的にはお子さん自信と親御さんがよく話し合ってどのような治療を行うのかを決定していくことが大切だと思います。

当院での改善をご希望の方は起立性調節障害をご覧ください。

遠方で通院が難しいが、起立性調節障害について相談されたい方はオンラインカウンセリングをご利用ください。

心身堂鍼灸院院長
この記事を書いた人
鍼灸師 佐野 佑介

静岡県浜松市中央区和地山で自律神経・メンタル専門のはりを刺さない心身堂鍼灸院を開業。
自身も26歳の時にパニック障害から自律神経症状に苦しんだ経験を持つ。
パニック障害、広場恐怖症、うつ病などの精神疾患領域と起立性調節障害、機能性ディスペプシア、眩暈などの自律神経疾患の専門の鍼灸師。
国家資格 はり師(148056号)・きゅう師(147820号)
医薬品登録販売者試験 合格

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