セロトニンが不足すると自律神経が乱れる原因

ブログをご覧頂きありがとうございます。浜松市はりを刺さない心身堂鍼灸院の佐野です。

自律神経を整える際のポイントとして必ずと言っていいほど登場するのが、セロトニン。

うつ病もセロトニン、パニック障害(不安障害)もセロトニン、片頭痛もセロトニン、胃腸障害もセロトニン、痛みへの敏感さもセロトニン。

セロトニンは身体の色々なところで使われる神経伝達物質の為、セロトニンの不足は全身で様々な症状を引き起こします。神経伝達物質の一種で神経同士が情報をやり取りする為に必要な物質の為、自律神経が関わる全ての疾患でセロトニンの不足は問題になってきます。

今回はセロトニン欠乏が自律神経を乱す原因について一緒に考えていきたいと思います。是非、最後までお読みください。

結論:適正量のセロトニンが適正な場所に存在することが大切。

神経細胞は電気信号によって情報を伝えますが、神経細胞と神経細胞の間はシナプスといわれるわずかな隙間があり、そこは電気信号ではなく神経伝達物質を放出することで情報を伝えます。

神経伝達物質には数多くの種類が存在しますが、大きく役割の違いをざっくり分けると以下の3つのタイプが存在します。

  1. 次の神経細胞を興奮させるように働きかける(グルタミン酸)
  2. 次の神経細胞を抑制させるように働きかける(GABA)
  3. 上記二つの神経伝達物質の作用を調整する(セロトニン、ドーパミン、ノルアドレナリン)

今回取り上げるセロトニンは3の興奮や抑制を調整する為の神経伝達物質です。

特にセロトニンは全身の様々なところで使われている為、セロトニン不足は多種多様な症状を引き起こします。

また、セロトニンの過剰も問題があり、適切な場所に適正量のセロトニンが存在して初めて身体は正常な活動を行うことが出来ます。

脳と脳以外(肉体側)のセロトニンは別々に合成される

脳は大切な臓器であることから、脳内に入ることが出来る物質を制限することで脳を守る為の関所のような機能がついています。これを血液脳関門といいます。

腸など脳以外で合成されたセロトニンは血液脳関門を通過することが出来ない為、脳内にあるセロトニンは血液脳関門を通過できる前駆物質(トリプトファン)の状態で脳内に運び込まれ、セロトニン細胞で合成・分泌する必要があります。

過去記事で紹介した内容も脳内で合成・分泌してセロトニンを増やす方法について執筆したものです。

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体内に存在するセロトニンの90%は腸と腸内細菌叢の共同作業により合成されます。

肉体側のセロトニンは腸の運動や血管の拡張収縮を調節する為に使用される為、不足すると腹痛、便秘、血行不良による肩こり、腰痛、冷え性など、全身の色々な場所に悪影響を及ぼします。

脳内で合成されるセロトニンも原料は腸内でタンパク質が細かく分解されたアミノ酸であるトリプトファンである為、腸と腸内細菌叢の共同作業によって原料が作り出されます。

全身のセロトニン量を安定的に保つには、胃腸の状態が安定して良いということがとても重要になります。

脳内のセロトニンの役割

セロトニンは別名幸せホルモンなどと呼ばれることもありますが、ベースの安心感を感じるように感情の安定に働き掛けてくれる神経伝達物質です。

情動が安定していると自律神経の働きも安定しやすくストレス反応の誤作動も起こりにくくなる効果が期待できます。

脳内の自律神経の中枢は視床下部と脳幹に存在し、主には視床下部が重要な役割を果たしていると考えられています。

視床下部は全身の情報と外界の状況の情報を分析して、交感神経・副交感神経のどちらを優位にさせるのか各臓器へそれぞれ指令を送ります。

セロトニンはこの交感神経と副交感神経のバランサーの役割を果たしていると考えらえています。

交感神経過剰であれば、副交感神経の働きを高め、副交感神経が過剰であれば交感神経の働きを高めるといった具合です。

必ずしも副交感神経を高めるという役割がセロトニンにあるわけではありませんが、自律神経の問題を抱える方の多くが、交感神経過剰から体調不良を引き起こしていることが多いため、セロトニンを使って調整すると副交感神経を高める作用となることが多くなります。

セロトニンは夜になると酵素の働きにより、メラトニンという神経伝達物質に変化します。メラトニンは眠気を起こして睡眠を誘発するだけでなく、体内時計を調整して日内リズムを形成したり、免疫系を抑制することで炎症反応を鎮める作用があると考えられています。

朝になるとメラトニンの分泌量が低下すると同時に、朝日を目から入れることでセロトニンのメラトニンへの変換酵素の働きを止め、再びセロトニンの合成・分泌を促します。

メラトニンが低下して、セロトニンが増加してくることで覚醒が促進されるため朝日を浴びると眠気が冷めて交感神経が高まり活動的になってくるのです。

朝日の効果は太陽光に含まれるブルーライトによるものだと考えられています。

その為、夜にスマホやタブレット、TV、ゲーム機などの電子機器から発せられるブルーライトを目から入れてしまうとセロトニンをメラトニンに変換する酵素の働きが阻害され、セロトニンの合成と分泌も再開してしまう為、覚醒してしまい睡眠障害を引き起こす原因となります。

また、朝日を見てから14~16時間後にメラトニンの分泌量が増加してくるため、体内時計のリズムを大きく乱してしまうことになります。

脳内のセロトニンが不足するとこのようなメラトニンの作用にも悪影響が出る為、睡眠のリズムが乱れたり、深い睡眠がとれなくなってしまいます。

脳内のセロトニンの不足(欠乏)が起こると情動が不安定になり、自律神経系のバランスが悪くなり、睡眠障害になってしまいます。

つまり、自律神経系の機能を低下させてしまう条件がすべてそろってしまうのです。

肉体側のセロトニンの役割

セロトニンは腸では腸の活動を促進する神経伝達物質として作用します。

その為、腸内のセロトニンが不足すると腸の活動が低下し便秘になってしまいます。

便秘になると腸内環境(セロトニンの生産に関わる腸内細菌叢が乱れる)が悪くなることでセロトニンの合成が低下し、セロトニンの前駆物質であるトリプトファンの合成も阻害されるため全身のセロトニンの不足につながります。

逆のことも言えて、腸内でのセロトニンが多すぎると今度は過剰に腸が動いて下痢や腸のけいれんによる腹痛を引き起こしてしまう場合があります。

下痢をすると腸内細菌も流されて排出されてしまう為、最終的には腸内環境が悪くなり、セロトニンの合成に悪影響が出ます。

血管におけるセロトニンの作用は血管内皮細胞では収縮に、血管平滑筋細胞では拡張に働きます。(血管は内側から内皮、弾性膜、平滑筋、弾性膜(静脈にはない)、外皮という構造になっています。)

適度にセロトニンが働いて血管を収縮させている時は片頭痛など、血管が拡張することで起こる症状を発生させずらくする作用が期待できます。

しかし、適切な量のセロトニンバランスが崩れた場合にはセロトニンが不足しても、過剰になっても血管が拡がっていってしまう為、片頭痛を引き起こす原因になることになります。

現在日本で承認されている片頭痛の特効薬はセロトニンの過剰に有効なものだと考えられますが、セロトニン不足が原因で出ている片頭痛に対しては効果があまり期待できません。

腸や血管も脳の自律神経中枢からの指令の影響を受けますが、脳内のセロトニン量が安定していて問題ない状態であっても、肉体側のセロトニン量に過不足があると胃腸の問題や片頭痛などの自律神経症状が出てきてしまうことになります。

特に胃腸の状態が悪いと、最終的に脳内で利用するトリプトファンの生産に悪影響が出る為、脳内のセロトニンの合成にも悪影響が出て、遅かれ早かれ自律神経の機能が低下してきてしまいます。

まとめ

自律神経の関わる疾患を考える時にはセロトニンはとても重要な要素になります。

セロトニンは神経細胞と神経細胞の情報伝達に関わる情報伝達物質の一種で、神経の興奮・抑制の調節を行っています。

脳内と脳以外(肉体側)の場所にあるセロトニンはお互いに流用することが出来ないような仕組みになっています。

その為、一般的にセロトニンの増やし方を説明しているものの多くは脳内のセロトニンを増やす場合についての説明が多いです。

セロトニンは胃腸の動きや血管の収縮・拡張に作用する物質の為、内臓の機能や血流に大きな影響を与えます。

脳内のセロトニンも脳以外のセロトニンも合成される場所が異なるだけで、原料は食べ物から得られるタンパク質が元となる為、胃腸の状態が良いというのは自律神経を整える上でとても重要な要素になります。

脳内でのセロトニンは自律神経の調節、睡眠や体内時計の管理、情動の安定などに関与していると考えられています。薬など特殊な事情がない限り過剰になることはあまりありません。

肉体側はセロトニンのバランスが絶妙に保たれていないと、胃腸の不調や血流障害、片頭痛など血管性の症状の原因となります。

当院での改善をご検討の方は自律神経失調症パニック障害うつ病をご覧ください。

遠方で来院が難しいけれど、カウンセリングを受けたいという方はオンラインカウンセリングをご利用ください。

心身堂鍼灸院院長
この記事を書いた人
鍼灸師 佐野 佑介

静岡県浜松市中央区和地山で自律神経・メンタル専門のはりを刺さない心身堂鍼灸院を開業。
自身も26歳の時にパニック障害から自律神経症状に苦しんだ経験を持つ。
パニック障害、広場恐怖症、うつ病などの精神疾患領域と起立性調節障害、機能性ディスペプシア、眩暈などの自律神経疾患の専門の鍼灸師。
国家資格 はり師(148056号)・きゅう師(147820号)
医薬品登録販売者試験 合格

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