不安との付き合い方
結論:不安を解消する行動をやめよう
不安になることそのものは悪いことではありません。不安になると人は慎重になり、思慮深くなり、記憶力が向上して、感覚が鋭敏になり、準備をしっかりと行うからです。
しかし、不安が強くなりすぎると今度は不安で頭がいっぱいになり、何も手につかなくなって動けなくなってしまうこともあります。(日常生活に支障をきたした段階で全般性不安障害となります。)
不安を消す必要はありませんが、適度な不安レベルまで不安をコントロール出来るようになると、不安と上手に付き合っていくことが出来ます。
不安になり易い方は不安を消してしまおうとしてしまいがちですから、不安とうまく付き合っていくうえでは適度な不安を残すことが大切です。
不安な気持ちはもちろん気持ちが良いものではありませんが、不安を消し去ろうとしないことで不安をコントロールする脳の部位が発達していきます。
不安は解消してはいけない
不安なことがあると、その不安を解消するための行動をとろうとするのは自然なことですが、不安感が強い方は不安を完全に解消してしまおうとする傾向があります。
例えば、出かける際にあれもこれも必要になるのではないかと気が付くとカバンの中が荷物でいっぱいになっている。
カバンの中にはその人の不安が詰まっているといわれることもあるぐらい、カバンのサイズとその方の不安の大きさには関係性があります。
もしかしたら必要になるかもしれないという不安の解消のためにどんどん荷物が多くなっていくのです。
1日の終わりに、あなたがのカバンの中身を一度出してみて、その日に使ったものだけをカバンに戻し、翌日に必ず使うことが確実なものだけをカバンに入れてください。
もしかしたら必要になるものはカバンの中に入れないようにすることで、何日かすると適正な荷物量に戻ります。
もちろん、荷物を減らせばそれだけ対応できる不測の事態は増えますが、不測の事態の発生頻度がそれほど多くないことにも気が付くと思います。
予め不安にならないように不安を原動力に行動をすると次の不安感を引き起こしてしまいます。
不安障害の多くが最初は正常な不安であったものを過剰に取り除こうとした行動を繰り返していくうちに不安感がどんどん増強されていき極端に不安を抱くようになって病気にまで進んでいるという過程をたどります。
病気と正常の境目は存在しません。
不安を解消するための行動は多少の不安を残す状態で終わらせておきましょう。
自分に出来る影響力の範囲を明確にする
不安になり易い方は、自分の影響力の範囲を大きく見積もる傾向があります。
以下のイギリスの諺をご存知でしょうか?
馬を水辺に連れて行くことはできても、水を飲ませることはできない
自分にできる影響力の範囲というのは馬を水辺に連れていくことまでですが、不安になり易い方は馬に水を飲ませようと一生懸命になってしまうことが多いです。
その結果、水を飲ませることが出来なくてこのままでは馬が死んでしまうどうしよう~っと不安に陥るのです。
コントロールできないことをコントロールしようとしてしまうと、ストレス反応が起こる為、不安感や恐怖感を感じやすくなります。
自分に出来る影響力の範囲はどこまでなのか?自分の影響力を大きく見積もりすぎていないか?もう一度振り返ることが大切です。
日頃から自分を脅迫している
不安になり易い方の多くは、「○○しなくてはいけない」「○○出なくてはダメ」という強要、強制、脅迫する時に使う言葉を頻繁に使っています。
買い物に出かけるだけでも「買い物に行かなくてはいけない」
洗濯をするだけでも「洗濯しなくてはいけない」
など、自分の行動を「○○しなくてはいけない」と自分自身を脅迫する言葉を使って自分を動かしている方が多いです。
私達人間の思考は言語によって行われると考えられているので、どのような言葉を使うのかはとても重要です。
時々、不安障害で来院された方の中にはバイリンガル(2か国語話せる)の方がいらっしゃるのですが、頭の中で考える言語を変えてもらうと不安感が和らぐなどはよく見られる現象です。
~するべき、~であるべきというべき思考で常に自分を脅してしまうと不安になり易くなってしまいます。
まずは「やる、する、いく」など、自分を脅すようなニュアンスのない言葉を言い直していく、不安になりにくい言葉遣いへと変化していきます。
不安について頭の中だけで考えない
不安なことで頭の中がいっぱいになってしまう方は自分が何について不安に思っているのかを紙に書きだすようにしましょう。
言語化して、視覚的に自分が抱えている不安がどれくらいあるのかをまずはしっかりと把握することです。
頭の中は論理的に考えているようですが、標準的な人の脳はそこまで優秀ではありません。
ほとんどの人の頭の中は同じことがぐるぐるとループして考えてしまっていることが多く、実際の不安な要素が3つだとしても、頭の中では10個ぐらいあるような感覚がしてきてしまっていることがあります。
心理療法の多くがカウンセラーに話すことを主体とするのは、言語化することでなるべく具体化させるということが、自分の問題を理解して不安に対して有効な方法だからです。
紙に書きだすことがめんどくさければ、スマホのメモ帳に書き出していくという方法でも構いませんが、デジタル機器の使用時間が多いと不安を感じやすくなるので注意しましょう。
不安なことを考えないようにはダメ
不安なことを考えないようにというのは、正しいようで実はうまくいかない不安対策です。
そもそも、不安なことを考えないようにできるのであれば、最初から不安になどならないからです。
不安なことを考えたくもないのに頭の中で不安なことがぐるぐるしてしまうから不安になってしまうわけです。
頭から離れない不安な気持ちは、共感することで和らげることが出来ます。
出来れば、パートナーや親などの親しい信頼できる人間から不安をなだめてもらうということを何度も何度も行ってもらうと、次第に不安のなだめ方が上手になっていきます。
しかし、不安になり易い人ほど信頼できるパートナーや親に恵まれていないことも多い為、その場合には自分で自分に共感する声をかけてあげることです。
ここで大切なのは、「自分の心が本当に欲している言葉」をかけてあげること。
本当に欲している言葉で共感されると感情は落ち着きます。しかし、本当に欲している言葉とは違う言葉で共感されても感情は落ち着きません。
ここは共感の難しいところなのですが、心が求めている言葉を当てはめる為に、自分に声掛けをしても落ち着いてこないときは共感の言葉を変えていくことが大切です。
睡眠不足に注意
睡眠不足になると認知能力(正しく外界の状況を把握する力)が低下し、不安感など感情のコントロールがしにくくなることがわかっています。
睡眠時間を確保する事、夜に強い光を見たり、飲酒をしないなど睡眠の質を低下させて睡眠不足にならないように生活を整えることが大切です。
デジタル機器の使用時間を制限しましょう
スマホやタブレット、TVなどのデジタル機器を1日2時間以上(子供の場合は1時間以上)使用すると不安感を鎮める為に機能している前頭前野という部分の活動が抑制されることがわかっています。
また、デジタル機器は過覚醒状態を引き起こしやすく睡眠の質が低下する為、時間的には眠っているのに睡眠不足になっていて不安感が出やすくなってしまいやすくなります。
運動を行いましょう
多くの研究から運動をすると不安感情が低下することがわかっています。
特に有酸素運動を毎日行うことで不安な気持ちになりにくくなります。1日8,000歩ぐらいを目標に歩くと良いですが、継続が何よりも大切ですからまずは毎日歩く習慣を身につけましょう。
また、運動を行うと肉体的に疲労する為、良い睡眠に入りやすくなりますので不安感に悩まされたくない方は必ず運動を行うようにしてください。
まとめ
不安を解消しようとする行動をとると、私達の脳は不安感が増強するようにできている為、注意が必要です。
不安を解消するよりも、ある程度の不安感と共生することを目指しましょう。
自分にできる影響力の範囲を明確にして、どうしようもないことはどうしようもないと明確にしましょう。
ストレスを受けずらくなり不安感を感じにくくなります。
~するべきなど、べき思考からくる発言を言い直しすようにしていきましょう。
不安なことを考えないように努力すると、不安なことを考えるのでそのアプローチ法は辞めましょう。
睡眠不足、デジタル機器の長時間使用、運動不足は不安を感じやすくさせますので、生活習慣から見直していきましょう。
当院での改善を検討されている方は全般性不安障害、社交不安障害をご覧ください。
遠方で来院が難しいけれど、相談したい方はオンラインカウンセリングをご利用ください。