不登校のお子さんが、なぜ保健室登校ができない、嫌がるのか?

こんにちは、浜松市のはりを刺さない鍼灸師の佐野です。

休みの日は元気だけれど、学校へ行こうとすると体調不良が出ていくことが出来ない。大人であれば適応障害の症状ですが、子供の場合は不登校や起立性調節障害として扱われることが少なくありません。

いじめなどがなく、クラスメイトに合うこともない保健室であれば行けるのでは?と思いますが、保健室登校ができなかったり、本人が嫌がる場合が少なくありません。

今回は保健室登校ができない・嫌がる理由について一緒に考えていきたいと思います。

※一部の方にとっては不快になる可能性がありますので、現実を直視したくない方はこのままページを閉じてください。純粋な血圧症状を伴う起立性調節障害の子供とは関係がありません。

 

結論:『周りに合わせるのが得意なタイプ』の子ほど(定型発達)、『普通』にこだわる

不登校のお子さんの中には神経発達症(発達障害)・グレーゾーン(以下非定型)が原因でストレスから適応障害になって学校へ行けなくなっている子も多いですが、そういった発達の影響から不登校になっている場合は、体調が落ち着けば、比較的保健室登校を受け入れやすいことが多いです。

しかし、定型発達の子供(以下定型)の場合は、保健室登校や別室登校、フリースクールといった形での登校もできない・嫌がる子が多いです。

この記事ではなぜそうなるのかを深堀していきたいと思います。

非定型の子供が不登校になる理由

非定型の子供が不登校になる原因が感覚の過敏性や学校の納得のいかないルールに従うことがストレスになって、学校へ行けなくなったり、適応障害を起こしてしまっているため、ストレス原因を取り除く対応で学校へ復帰しやすくなります。

非定型の子の基本戦略は「自分に合う環境を選んでいくこと、軋轢を生む環境を避ける」ことにあるため、保健室やフリースクールが自分に合う環境であれば、適応していくことが出来ます。

『周りに合わせるのが得意なタイプ』の子(定型発達)が不登校になる理由

一般的に定型発達は適応能力が高いとされますので、本来は非定型の子供に比べて不登校や適応障害にはなりにくいとされています。

しかし、定型の子供であっても現代の複雑化・高度化した学校に適応できるだけの体力や能力を備えていない子が、少なからずいます。

また、家でも学校でもトラブルを未然に防ぐ(先回りして回避させる)ことが徹底されるようになったため、子供が傷ついてそこから立ち直るという経験が少なくなり、経験不足から心のレジリエンス(回復力)が育たないまま思春期に突入してしまっていることも要因です。

昔と比べてSNSの発達などもあり、裏で悪口が回っているのではないかという警戒もしなくてはいけないことが増え、人間関係が複雑化している為、普通の立ち回りの難易度が上がり、定型の子供でも適応能力が比較的低めの子にとってはかなりハードな環境になっています。

その結果、上手く適応できずに不登校や適応障害になってしまう子供がいます。

保健室登校がなぜ行えないのか?

定型の子にとって、周りと同じであること、「普通」であることは、自分を守るための本能に近い感覚です。

その為、保健室やフリースクールといった別の登校方法は『普通ではない自分』を強烈に意識させる行為になります。

周囲から見れば「もう学校に行けていない時点で、普通も何もないのでは?」と感じるかもしれません。

しかし、本人にとっては「病気(起立性調節障害)だから行けないだけ。治れば普通に戻れる」という設定が、自尊心を保つための最後の砦(とりで)なのです。

それは本人がプライドや普通であるというアイデンティティを保つための、精一杯の防衛線として機能しています。

これが定型の子ほど保健室登校ができない・嫌がる理由です。

それでも急性期を過ぎる4ヵ月目からが重要

学校へ行けなくなってすぐの急性期は一般的に言われている、見守って、登校刺激をせずに寄り添うという対応が重要になります。保健室登校を検討する時期ではありません。

  • 1〜3カ月目(急性期): ストレスによる脳の「炎症」を鎮める期間。この時期は休息に意味があります。

  • 4カ月目(慢性期への移行): ここを超えると、脳は「不登校」の状態を「異常事態」ではなく、「これが自分にとっての通常モード(コンフォートゾーン)」だと認識し始めます。一度この認識が固まると、そこから引きずり出すには急性期の数倍のエネルギーが必要になります。

4ヵ月目以降は、保健室登校が出来ない、本人が嫌がったとしても以下のような対応を行うことが大切です。

時間的拘束: 朝8時までに着替えと食事を済ませる(親が許さず、従わない場合は生活の利便性を制限する)。
物理的負荷: 1日30分程度の外出(散歩や買い物)を「日課」として課す。
デジタル・デトックス: 脳の報酬系を狂わせるスマホやゲームを制限し、現実の不快感(退屈さ)に直面させる。

4ヵ月目以降も何もしなかった定型の子ほど打つ手がなくなることが多い

定型の子で不登校・適応障害になってしまう子供は、発達上の問題はないが体力・能力や心のレジリエンスが高度化した現代の学校についていけるほど高くない傾向にあります。

その事実自体が「普通」からはみ出してしまうため、本人も事実を事実として認めることが非常に難しくなってしまいます。

合理的に考えるのであれば、なるべく正確な自分の体力や能力・心のレジリエンスを把握して、出来ることから始めて少しずつ経験を積んで身につけられることは身に着けて再度適応していくのが正解です。

しかし、その為には現時点で「普通ではない自分を受け入れる」という、本人が最も受け入れがたい事実を直視する必要があります。

心のレジリエンス(回復力)が低いため、現実を突きつけすぎるとそこから引きこもりやうつ病になっていく場合もあるので、結局、二次障害が怖くて本質的な部分に手を加えることが出来ないことがほとんどです。

臨床の中で診ていると、多くの子供は卒業や出席日数不足からやむを得ず転校などで環境が強制的に変わるのを待つことになります。

高校生であれば出席日数が足りなくなって転校せざるを得なくなり、単位も引き継げることも多いので、○○高校卒の名称が変わる程度の損失で済みます。

大変なのは義務教育のお子さんです。

「普通」にこだわって適応できそうな環境も拒否し続けることが多いので、卒業して環境が強制的に変わる(普通の子の環境が変わるタイミング)まで、そのまま過ごすことになります。

だからこそ、固定化する前の対応が重要になります。

高校は出席日数が足りず、通信などに絞られてしまうので、比較的問題なく適応できるケースが多いです。

中学までにできうる最大の損失回避は、勉強が遅れないように代替の教育(塾や家庭教師)を施してあげることです。(これすら嫌がる可能性はありますが・・・)

結局のところ、本人が動かなければ変わらない

酷な言い方ですが、どれほど親や周囲が「環境を整えよう」と動いたところで、本人にその環境を受け入れる意思がなければ、打てる手は何一つありません。

本人が「普通」にすがり、自分に合わない環境を「唯一の正解」だと信じ込んでいる限り、周囲の助言はすべて「自分を否定する言葉」、攻撃として跳ね返されます。

こうなると、残念ながら「時間が解決してくれる」のを待つしかありません。

しかし、その「時間」とは、本人が現実とのギャップに疲れ果て、自分への期待を完全に諦め、ようやく「今の自分にできること」を直視せざるを得なくなるまでの、長く苦しい停滞の時間を指します。

積極的に何か親が出来ることは?

それでも親が出来ることは、心のレジリエンス(回復力)を育てなおすという方法があります。

定型発達の子供で年齢に応じて、小さな挫折や感情の不快感などをしっかり感じてそれを乗り越えてきた経験をした子であれば、ここまで「普通」に固執せずに提案を受け入れて保健室登校やフリースクールに行くことが可能です。定型の子の特徴である心の柔軟性があるからです。

しかし、このような経験が少ないと、傷つくことがひたすらに怖くて立ち直ることが出来ません。明らかな経験不足です。

愛情として、お子さんの為に守るために行ってきた、先回りしてトラブルの芽を摘み、傷つかないようにし過ぎたことが少なからず不登校の停滞の持続性の原因になります。

子供は本来、小さな失敗や他者との摩擦を乗り越えることで、自分の足で立つための「心の筋肉」を鍛えます。

今から少しずつでもこの心の筋肉を鍛えさせることです。

いきなり大きな挫折に、ぶつかっているから不登校や適応障害になってしまっているだけなので、今から小さな挫折とそこからの立ち直りを何度も経験させることを少しずつ経験していくことで、等身大の自分を受け入れられる心のレジリエンスを育てなおすこと。

非常に手間がかかりますし、既に幼稚園児ではないのでおもちゃを取られた悲しみを体験させるなど難しい面もあります。

そういった一つ一つが心の筋肉をつけて、現実の自分を受け入れる土台を作り上げていきます。

非常に地道で骨の折れる養育ですから、環境の変化がやってくる方がはるかに早くやってくるでしょう。

しかし、この再養育をせずに通り過ぎてしまうと、自分で責任を持つことを嫌がり他人や環境のせいにして逃げる、大人になってからも自分と向き合うべきシーンでも逃げまわる、言い訳ばかりで何もしない。結果的に周囲の人からの信頼を失う。

そして、心のレジリエンスが低いことから、精神疾患への罹患リスクをあげてしまうという問題を残すことになります。

今日から家庭でできる「心の筋肉」を鍛える10のリスト

定型発達タイプのお子さんが「等身大の自分」を受け入れ、現実と向き合う力を取り戻すためには、日常の中に「小さな不快」と「自分の責任」を取り戻すことが大切です。

まずは、以下のリストの中から、お子さんが「これなら(文句を言いながらでも)できそう」なものを1つ選んで始めてみてください。

  1. 「自分のことは自分でする」の徹底
    脱いだ服を洗濯カゴに入れる、食べた食器をキッチンへ運ぶ。
    親が先回りして片付けるのをやめ、放置された不便さ(着る服がない、テーブルが汚い)を本人に経験させます。

  2. 日常の「選択」を本人に任せる
    「今日のおかずは何がいい?」ではなく、「AとB、どっちにする?」と聞き、自分で決めた結果(味の好みなど)を自分で引き受けさせます。

  3. 小さな「不便」をあえて放置する
    探し物が見つからない時、すぐに親が探してあげない。「どこだろうね」と一緒に困る程度に留め、本人が見つけ出すのを待ちます。

  4. 外部とのコンタクトを本人にさせる
    宅配便の受け取り、美容院の予約、店員さんへの質問。「緊張する」「面倒」という心理的な壁を、自分の言葉で突破する経験を積ませます。

  5. 「退屈」な時間を共有する
    スマホやゲームがない状態での「手持ち無沙汰」に耐える練習です。脳の報酬系をリセットし、現実の時間の流れに慣れさせます。

  6. 家の「役割」を固定する
    ゴミ出し、風呂掃除、植物の水やりなど。「自分がやらないと誰かが困る(=自分は社会に必要な存在である)」という実感を持たせます。

  7. 「失敗」を笑いに変える環境づくり
    親自身が自分の失敗(料理の味付けミスなど)を隠さず、「あちゃー、やっちゃった!」と明るく見せることで、「失敗しても世界は終わらない」ことを伝えます。

  8. 感情の言語化を助ける
    イライラしている時、「何に怒っているのか」を冷静に言葉にさせます。「普通」という盾に隠れた本音(怖さ、情けなさ、悔しさ)を出す練習です。

  9. アナログな作業を取り入れる
    パズル、読書、工作など、結果がすぐに出ない(報酬が遅れてやってくる)作業に従事させ、忍耐力を養います。

  10. 「NO」と言われる経験をさせる
    親がすべての要求に応えるのをやめ、正当な理由で「今はダメです」と断ります。思い通りにならない不快感を、家という安全な場所で処理する練習です。

最後に

この再養育は、親にとっても身を削るような作業です。

今まで守ってきた我が子が、小さな失敗に打ちひしがれる姿を、手を出さずに見届ける。

それは、ある意味でこれまでの自分の子育てを否定することにもなるからです。

しかし、今ここで『普通』という幻想を親子で一緒に守り続けても、待っているのはさらなる深刻な生きづらさです。

私は臨床の場で多くの自律神経症状や不安障害で悩まれている方を診ていますが、心が未成熟な定型発達の人は、すべて周りや環境のせいにして自ら動かないため、かなりの難治性であると感じています。

むしろ、軽度のグレーゾーン(非定型)の方のほうが、論理的な説明だけで改善に取り組める分、救いがあるケースが多いのです。

記事を読んで耳が痛い、腹が立つと感じた方もいるでしょう。でも、その痛みこそが、現実の地面に足を下ろすための第一歩なのだと、私は信じています。

当院での改善をご希望の方は不登校をご覧ください。

遠方で通院が難しいが、相談されたい方はオンラインカウンセリングをご利用ください。

 

心身堂鍼灸院院長
この記事を書いた人
鍼灸師 佐野 佑介

静岡県浜松市中央区和地山で自律神経・メンタル専門のはりを刺さない心身堂鍼灸院を開業。
自身も26歳の時にパニック障害から自律神経症状に苦しんだ経験を持つ。
パニック障害、広場恐怖症、うつ病などの精神疾患領域と起立性調節障害、機能性ディスペプシア、眩暈などの自律神経疾患の専門の鍼灸師。
国家資格 はり師(148056号)・きゅう師(147820号)
医薬品登録販売者試験 合格

鍼灸師 佐野 佑介をフォローする
不登校起立性調節障害適応障害