出産後に妻が変わってしまったのはなぜか?
結論:出産により女性の脳は大きく変化するので、産前と能力や興味の対象が変化します。
出産は単に子供が生まれるだけではなく、女性の脳に物理的な変化を引き起こすことが脳科学研究により明らかになっています。
自然分娩の場合は、わずか数時間の間に女性の脳が大きく変化します。(帝王切開の場合は子育て中に徐々に変化していきます。)
男性にも子育てをしていくうちに徐々に子育てに適した脳やホルモンバランスへの変化が起こりますが、変化の幅は女性ほどダイナミックに脳が変化することはない為、出産により大きな変化をした女性についていけないことが多くなります。
出産により女性の脳に生じる変化を理解しておくことで、良きパートナーシップを維持しやすくなり、奥さんの産後のうつ病や不安障害などを発症リスクを下げる事にもつながりますので、一緒に学んでいきましょう。
出産を契機に女性の脳に起こる変化
出産を行った産後の女性の脳は7%ほど萎縮することがわかっています。
一方で共感をつかさどる脳の部位は拡大して、子供への思いやりなどが芽生えやすくなるなど、子育てに適した脳へと構造が変化します。
脳全体の萎縮の影響から、物忘れが増える、ボーっとする、集中力の低下、時間管理が苦手になる、言葉がうまく出てこないなど、産前にできていたことができなくなることもあります。(マミーブレイン)
このような症状が出てきた場合でも、半年程度で脳の機能が戻り始めます。萎縮の回復には2年程度はかかるといわれています。
生活に支障が出るような能力の低下はある程度回復しますが、脳が元のサイズまで回復しても構造的な変化は残る為、子育てに用いる能力が高くなり、子育てに関係のない能力が低下したり、興味や関心事が変化します。
(※)参考文献: 平成27年度国際交流助成(海外渡航) 公益財団法人中山人間科学振興財団活動報告書 2015
「社会脳のヒューマンサイエンス」 中川 秀紀 東京電機大学工学部
変化した女性の脳はどうなるのか?
産後の脳の変化は子育てへの適応です。
一緒に生活していると今まで通り家事をやっているのに、叱られるようになったり、今までやってくれていたことをしてくれなくなる、あなたへの愛情がなくなったように感じる、場合によっては人が変わってしまったと感じてしまうこともあるかと思います。
変化した女性の脳は子育てに特化した脳へと変化します。産前の奥さんと同じように接しているとすれ違うことが出てきてしまうので注意しましょう。
神経質・不安・心配性になる
子育て中は常に子供が安全なのか?を気にかけるように脳が変化します。子供に気を配っておくというマルチタスクが得意になりますが、その分集中力は低下します。
不安や恐怖を感じやすくなることで、子供への脅威をいち早く気がつけるようになりますが、同時に些細な事から子供が死んでしまうのではないか?と想像して感情的になりやすくなります。
手を十分に洗わずにミルクをあげただけで、悪いウィルスに感染してしまうのではないかと不安になってしまうなど、神経症な行動が増えやすくなります。(強迫神経症になってしまう方もいるので、ひどい場合は早い段階で専門家に相談しましょう。)
子供への細心の注意が太古の子育て環境では有効に働いたのですが、現在のように安全で清潔な衛生環境になり、衛生学の知識が一般化したことで、過度にやりすぎてしまう傾向が出てきます。
女性は不安なことを人とのつながりによって安心を得ようとします。些細な事で感情的になっていたとしても、不安に寄り添い話をよく聞いて共感することで支えていきましょう。
男性は問題解決型の脳を持っていますので、解決法を示したくなりますが、女性が求めているのは繋がりであることを意識してください。
細かな事が気になりやすくなる
神経質になりやすくなる原因の一つに、情報収集能力が高くなることが挙げられます。
女性は男性に比べて周囲の情報収集能力が高いのですが、マルチタスク能力が高まることで産後はさらに高くなります。
女性同士であれば前髪を少し切った、アイシャドウの色を変えたなど、男性からすると微妙すぎてわからない変化にもすぐに気が付くのは情報収集能力の高さのなせる技です。
産後によく見られるのが、掃除や食器の汚れに敏感になることです。
気をつけたいのはちょっとした汚れや子供に触れる前に手をしっかり洗って消毒できているか、子供に使用するタオルが使用前に汚染されていないかなど、神経症的になっている場合には専門家に相談が必要です。
指摘を受けたことを一つずつ穴埋めしていく努力が必要ですが、男性の脳の情報収集能力では完璧に満足いくほどのクォリティにならないことが多いので、やっているのに叱られてイライラして喧嘩にならないように注意しましょう。
また、神経症的になって病的な場合には治療が必要なため、過度に潔癖になっていないかを冷静に判断することも大切です。
子どもの泣き声に敏感になる
男性は真夜中に子供の泣き声に気がついて目覚める事ができないことが多いですが、女性は子供の泣き声に敏感になるため、すぐに目覚めて子どものお世話をすることができます。
奥さんが子供の泣き声に敏感になっていることそのものに気がついていないため、子供がこんなに泣いているのにどうして起きてくれないの!っと怒られることも多くなります。
また、子供は成長に伴って泣き方を変えることで自分の意志を伝えるようになってきますが、男性は僅かな泣き方の違いを見分けられないことが多く、見当ハズレのお世話をして余計に泣かせてしまうということにもなりやすいです。
奥さんからすると余計なことをして子供の機嫌を損ねて余計に手間がかかってしまうと思われてしまいやすくもなります。
あなたへ求めることが変化する
出産前の女性はパートナーのお世話や自分が魅力的であるかを気にすることで、パートナーから愛されることを優先します。
しかし、産後の興味の中心は子供に集中するようになる為、あなたに愛されるではなく、あなたが「子育てしやすい環境を整える事」を求めるようになります。
子供にリソースが割かれるため、あなたの為に今まで行っていたすべてのお世話は二の次になりますし、あなたが子育てに参加しなかったり、自分で自分のことをしないと子育ての邪魔をされていると感じます。
奥さん自身の情報収集能力が高まっていますが、本人に自覚はない為、あなたが色々と細かなことに気が付かないことに対して腹を立てたり、「言わないでもやってほしい」という感情も高まりやすくなります。
わからない場合には、子供が寝ているときに奥さんが子育てしやすい環境をどうやって作っていけばよいのか、あなたがどうたち振る舞うのが助かるのかを話し合ってください。
あなたは戦友という立ち位置に変化する
女性の脳は小さいときからおままごとが好きなど、お世話が好きなようにできています。
産前はあなたをお世話するということに意識が向いている事が多いのですが、産後からはあなたのお世話に関することで手を煩わせないようにしてあげてください。
産前、あなたに向いていたお世話や優しさはすべて子供に向かい、あなたは子育てという一大プロジェクトを成功させるために背中を預ける戦友になります。
産前は母親のようにあなたへ愛情をかけてくれていたと感じていた場合でも、対象が子供に変化します。
産前と同じように生活の世話をするように言ったり、不平不満を言うと、夫婦関係を悪くしてしまうだけなので注意してください。
敵とみなされてしまうと攻撃性が増す
オキシトシンという人とのつながりに作用するホルモンの作用が強くなるのですが、このホルモンは仲間に対しては友好的になりますが、敵に対しては攻撃性が増すことが知られています。
あなたが子育てに協力的でなかったり、子育ての方法が子供にとって危ないことをされている、戦友として不適格と感じると、敵としてみなされてしまいあなたを攻撃対象としてみなしてしまう危険性が高まります。
協力して子育てを行っていくためには、味方であることが伝わる立ち振舞を意識しましょう。
仕事やキャリアへの情熱が低下する
もともと仕事やキャリア形成に興味があった方でも、人生における優先順位のトップに子供がやってくるようになります。
産前は共働きでやっていくつもりだと言っていたとしても、少しでも長く子どもとの時間を取りたいと考えるようになる方も少なくありません。
オキシトシンの分泌は競争心を和らげる作用があるため、社会的に成功することに対しての欲求が低下します。
仕事をやめたい、パートにしたいなどの希望をいってくることもあります。経済的に問題なければ叶えてあげたほうが揉めることも少ないです。
しかし、現代社会は共働きでないと経済的に厳しいことも少なくありませんから、子供に良い教育を施したい、子供がやりたいことをやらせてあげたいなど、子供を守ることを意識させて冷静にさせることも大切です。
まとめ
出産を契機に奥さんが変わってしまったと感じる男性は多くいますが、出産そのものが女性の脳に大きな変化を与えるため、変わってしまったと感じることは珍しいことではありません。
出産をすると女性の脳は子育てに適した脳へと変化します。その結果、価値観の優先順位や能力に変化が起こります。
子供が全てにおいて優先するようになるため、あなたに求める役割も変化します。
子供が寝ているときなどにあなたがどのように振る舞えばよいのかをよく話し合って良い協力関係を築いていくことが重要です。
産後の女性は産後うつ病や不安障害になりやすい為、様子がおかしくないか冷静に判断できるのもあなたです。
必要があればすぐに専門家に相談しましょう。
産後の奥さんとの関係性でのご相談ご希望の方はお問い合わせよりご予約ください。
遠方で来院が難しいけれど、カウンセリングを受けたいという方はオンラインカウンセリングをご利用ください。