自律神経に鍼灸・整体は効きますか?治せますか?

ブログをご覧頂きありがとうございます。浜松市はりを刺さない心身堂鍼灸院の佐野です。

当院へも自律神経のお悩みで多くの方が来院されますが、鍼灸・整体が自律神経にそもそも効果があるのか?施術を受けたら治せるのか?多くの方が気になることだと思います。

今回は自律神経に鍼灸や整体は効果があるのか?を医学的な立場から忖度なく、一緒に考えていきたいと思います。ぜひ最後までご一読ください。

結論:生物的ストレッサーからくる自律神経の問題と神経の機能異常に効果が高い。

自律神経のお悩みの多くは、何らかのストレス反応が長期的に過剰に引き起こされた結果、交感神経が常に興奮し続けた結果発生してくることが多いです。

ストレスとは一般的には物理的・化学的・生物的・心理社会的の4つが存在しますが、自律神経の乱れによる症状が出ている状態では少なくとも生物的ストレスが持続的にかかっている状態となります。

※ストレスについての詳細は過去記事参照

https://shin2do.com/2023/08/05/%e3%82%b9%e3%83%88%e3%83%ac%e3%82%b9%e3%81%a8%e3%81%af%e4%bd%95%e3%81%aa%e3%81%ae%e3%81%8b%ef%bc%9f%e3%82%b9%e3%83%88%e3%83%ac%e3%82%b9%e3%82%92%e3%82%8f%e3%81%8b%e3%82%8a%e3%82%84%e3%81%99%e3%81%8f/

この他にも自律神経障害といわれる神経自体のの機能不全が原因となって表れる自律神経の問題があります。

鍼灸や整体には自律神経を整える作用があるとよく言われますが、これは生物的ストレスを改善する作用と直接自律神経に刺激を与えて機能不全を改善させる作用があるためです。

鍼灸や整体を行うことで身体にかかっているストレスが少しでも楽になり、その分の生物的ストレスが減ると、ストレス反応の総量が減って交感神経が刺激される量が少なくなります。

また、直接自律神経を刺激することで、自律神経が活動するように刺激することで機能改善を行っていきます。

どちらのアプローチでも施術が成功すると、多くの場合は、副交感神経優位になり易くなり、副交感神経優位の状態で休養することで神経系全体の機能が回復して自律神経の症状が改善され易くなります。

鍼灸・整体で改善が可能な生物的ストレスが主体であればあるほど、そして自律神経機能そのものの問題であって刺激により神経活動の活性化が可能な状態であれば鍼灸や整体での改善効果が高くなります。

しかし、生物的ストレスが主体でない場合には、かかっているストレスによって交感神経が刺激される力 VS 鍼灸・整体によって副交感神経を刺激する力のどちらが強いのかによって効果が違ってきます。

生物的ストレス以外のストレスがかかっている状態で鍼灸・整体を行った結果、自律神経が整ってくるのかどうかは以下のような関係になります。

交感神経 > 副交感神経・・・悪化していく。
交感神経 < 副交感神経・・・改善していく。
交感神経 = 副交感神経・・・現状維持。

原理上、交感神経を刺激しているストレスが少なくなるほど、鍼灸・整体の効果が得られやすくなります。

その為、生活環境を変えたり、生活習慣を整えたり、嗜好品(お酒、タバコ、カフェインなど)を調節する、心理・社会的なストレスへの対策を行うなどが重要になってきます。

注意点としては、自律神経が整ってきて体調不良が改善してきたとしても、原因となっているストレスを取り除かなければ、交感神経刺激が継続される為、いずれ再発する運命にある事です。

また、交感神経を刺激しているストレスがあまりにも強い場合には、鍼灸・整体を行っても症状からくる生物的ストレス(交感神経過剰による肩こりなど)を若干和らげ、一時的に副交感神経を刺激して交感神経の過剰をマシにする程度の効果しか得ることが難しくなります。

そのような場合には、施術を受けているにもかかわらず現状維持した状態や施術を受けた直後はちょっとだけ良いけれど、すぐに元に戻ってしまうという状態を繰り返すことになります。

原因となっているストレスへのアプローチが必要不可欠なのです。

鍼灸・整体が苦手な自律神経症状の原因

自律神経症状を引き起こす原因は、物理的・化学的・生物的・心理社会的ストレッサーのいずれかまたは複数が、強くまたは長期間かかり続けたことが原因となります。

ストレス反応が起こっているかどうかは、必ずしも嫌だ、不快だという自覚があるわけではありません。

ここでは鍼灸や整体が苦手とする自律神経の乱れを引き起こす原因について考えていきたいと思います。

物理的ストレッサー

気温・湿度・気圧・光、臭い・騒音、振動、身体が圧迫されているなどといった物理的な刺激がストレス反応を引き起こしてしまっている場合です。

例えば、空港のそばに住んでいる人などは、本人は騒音に慣れたと感じていても、ストレス反応が起こったことを示す、血液中のコルチゾールという抗ストレスホルモンの値が、空港から離れた場所に住んでいる人と比べて高いことが報告されています。

また、個人差はありますが、デジタル機器の長時間使用(1日に大人で2時間以上、未成年で1時間以上)は光刺激によるストレス反応を引き起こしやすいことが示唆されています。デジタル機器は依存性がある為、やめることが難しい物理的ストレスの一種です。

現在の生活環境で生活を続けている限り、ストレス反応が引き起こされ続けることになります。

化学的ストレッサー

公害物質や金属、アルコールやタバコ、カフェイン、食品添加物、室内の酸素欠乏、薬、サプリなど、化学物質や酸素など化学物質の過不足によってストレス反応が引き起こされるものです。

アルコールやタバコなどは比較的わかりやすいですが、依存性がある為やめることが難しかったり、神経に直接作用する化学物質の為、自律神経そのものにも悪影響を与えます。

慢性炎症を引き起こしやすい油(ω-6)の過剰摂取など、食品からの影響も化学的ストレッサーとしてストレス反応を引き起こす場合があります。

鍼灸・整体の守備範囲外の生物的ストレッサー

食生活に問題がある事による栄養不足、腸内環境の悪化や運動不足による筋力低下、自己免疫だけでは回復が見込めない感染症(ピロリ菌による慢性胃炎など)、遺伝による疾患など、鍼灸や整体の守備範囲外の身体症状による生物的ストレッサー。

また、生物的ストレッサー以外のストレッサーの影響により、症状が引き起こされているもの。例えば、夫婦関係が悪く顔を見るのも嫌、職場の人間関係が悪く仕事に行くと胃が痛いなど。

かなり難しいものでは、幼少期の育ち方からの悪影響により、感覚が過敏になっていたり、常に警戒するように神経系が発達してしまったことから、わずかな音や臭いなどの刺激でもすぐに交感神経が反応するように発達してしまい、それが原因で日常生活のストレスが過剰になっているもの。

神経系のダメージが深刻で、投薬により化学的に管理しないと改善が難しい状態。

生物的ストレッサーが二次的な理由で発生しているもの。

心理・社会的ストレッサー

自律神経は感情に連動して交感神経、副交感神経が反応するようにできています。

その為、感情の変化が大きいほど、自律神経は不安定になります。メンタル的に安定している(感情の起伏が小さい人)の方が、自律神経の問題を抱えにくい傾向があります。

人間関係(職場、家族、友人など)による悩み事、子育てや経済的な問題といったネガティブな感情だけでなく、結婚などの幸せな変化、友人とテーマパークで遊ぶ、ライブで盛り上がるなど、ポジティブな感情でも交感神経が刺激されます。

ネガティブなものは特にストレス反応を起こしますが、ポジティブな感情であっても過度になればストレス反応を引き起こす原因となります。

鍼灸・整体の守備範囲外の原因に対してどうやって対処しているのか?

ここまで読まれた方であれば、鍼灸・整体だけですべての方の自律神経の乱れが整えられないという鍼灸・整体の限界をご理解いただけたかと思います。

当院の場合はどうしているのかというと、鍼灸・整体がアプローチできる範囲を理解した上で最適な方法を提案しています。

原則としては原因となっているストレッサーに対してアプローチを行うことが必要になる為、生活習慣、食生活、生活環境など、現在置かれている環境を変える提案を行う。

また、鍼灸・整体の守備範囲外で病院の治療の方が効果的な治療法がある場合には専門領域の先生に診てもらうようにお勧めする。

心理療法が適応できそうな場合は心理療法も併用するなどです。

症状から生物的ストレスは受けることになる為、鍼灸・整体を併用した方が原理的には改善しやすくはなりますが、原因となっているストレッサーにアプローチをしながら鍼灸・整体を併用することに意味があります。

原因となっているストレッサーをそのままにして、鍼灸・整体だけ行っても穴の開いたバケツに水を入れているのと同じになります。

原因となるストレッサーへの対処が重要

鍼灸・整体の口コミを読むと施術を受けたらすぐに楽になった。施術を受ける度に改善していったなどの患者さんの声を見かけることがあるかと思います。

当院の口コミの中にもこのような声を寄せて頂くことは多いですが、このような施術にすぐに反応して結果が出るタイプの方は鍼灸・整体で改善が可能な生物的ストレスが原因or自律神経への刺激ですぐに神経の働きが活性化した方になります。

例えば、年末に忙しくてデスクワーク作業が多かったことから首肩こりがひどくなっていてうまく力が抜けないことから、年始になっても眠りずらい、すぐに目覚めてしまうというタイプの不眠症(睡眠障害)であれば鍼灸・整体のみで改善が可能です。

なぜなら、原因となっていたストレッサーは年末に忙しかったというストレスは既にが取り除かれた状態だからです。

また、特別何もストレスらしきものがないにもかかわらず、自律神経が乱れている場合にも自律神経を刺激して活性化させるだけで症状が改善してきます。

しかし、子供の不登校をきっかけに、悩んでしまい毎晩子供の将来のことを考えると不安で夜も寝ることが出来ないといった心理・社会的ストレスが原因で眠れなくなっている場合には、鍼灸・整体のみではなく、心理・社会的ストレスを取り除く(子供の不登校が解決するか、不登校を受け入れて親としてできることのみに集中していく。)必要があります。

このように生物的ストレス以外に原因がある場合には、問題そのものを解決するか、問題から受けるストレスを受けずらくなるように対処することが必要になります。

働いている職場でパワハラを受けている、一緒に暮らしているパートナーから暴言を毎日受けているなど、勇気をもってストレス環境から離れることで解消される問題もあります。

しかし、人生に関わる重要な決断になるため、ストレス環境を保持したまま改善させようとあれこれやっているうちに慢性化・悪化させていってしまうことが多いです。

医療者も患者さんの人生に関わる問題のため、最終決断は患者さん自身に最終的には決断していただく以外に、何もできないこともあります。

楽しいけれどストレス反応を引き起こしているケースは難しい

自覚的には楽しいと感じているけれど、ストレス反応を起こしてしまうものもあります。

例えば、デジタル機器の長時間使用には、脳の過覚醒による睡眠障害、報酬系を刺激されることによる依存状態、認知機能の低下、無気力・不安感の増大などメンタルヘルスへの悪影響がわかっており、ストレス反応を引き起こして自律神経を乱す原因となります。

しかし、自覚的にはデジタル機器の長時間使用が嫌だと感じる方は少ないです。

なぜなら、ドーパミンという快楽を感じさせる神経伝達物質が放出されているため、自覚できないどころかむしろ快感を感じているからです。

TVゲームを長時間させると、アンフェタミンという覚せい剤を使用したときと非常に似た脳の過活動状態が数日間継続するという研究報告もあります。

依存状態になっている場合には、デジタル機器の使用をやめると離脱症状が出て一時的に自律神経症状が悪化して生物的ストレスを一時的に強く受けることになります。

デジタルデトックスを持続することが難しい原因はこの離脱症状に耐えられないことにあります。

デジタル機器の使用時間が長い場合には使用時間の制限についてお話をさせていただきますが、依存度が高いと、デジタル機器の使用時間を制限できません。

自律神経の症状は治したいけれど、デジタルデトックスはやりたくない、代わりに鍼灸・整体を受けることで自律神経を整えたいと求められることが多いのです。

残念ながら、鍼灸・整体にはデジタル機器による脳への悪影響を相殺する作用は確認できていない為、デジタル機器の長時間使用が悪影響を与えている場合には鍼灸・整体をいくら行っても、改善は不可能です。

鍼灸・整体・東洋医学は魔法ではない

病院の治療で効果が得られず途方に暮れて、藁にも縋る想いで東洋医学に神秘的な魔法のような効果を期待されている方がいますが、残念ながら魔法ではありません。

確かに病院の治療で良くならなかったものが、鍼灸・整体などの東洋医学で劇的に改善するケースは少なくありません。

しかし、それは病院の治療よりも鍼灸・整体・東洋医学が優れているからそのような結果が出るわけではなく、単純にアプローチできる領域の違いです。

例えば、私達の身体はお酒を飲んだら酔います。これを鍼灸・整体を行うことで酔わない体にすることは出来ません。

酔わないようにするには、お酒を飲まないことしか方法がありませんが、しかし、お酒を飲まないことの方が鍼灸のよりも優れているとは誰も考えないハズです。

医学においては因果関係が成立している場合には、必ず原因を取り除く必要があります。

鍼灸は自律神経に対するアプローチが歴史的に長いため、歴代の鍼医達によって数多くのアプローチ法が考案されてきた領域であるのは確かです。

しかし、東洋医学の経典(2000年以上前にかかれた医学書)には養生(生活習慣や食生活、運動、ストレス管理)などを行うことが重要視されていますので、鍼灸・整体だけでなくより広い視点で生活そのものを見直していくことが古くから言われていたということでもあります。

現代は鍼灸・接骨・整体院の競争が激化して、産後の骨盤矯正のように歪まないものを歪むと医学的な嘘の知識をメディアを通じて広めて、強引に市場を作り出して売上を高めるという医療分野においても競争原理が持ち込まれるようになっています。

その為、各院が生き残りをかけて、鍼灸・整体を受けるだけであたかも自律神経が整うような広告がなされているのも事実です。

しかし、本当に自律神経の状態を整えるのであれば、因果関係を整理して的確な対処を行っていくことがとても重要です。

安易に鍼灸・整体を受ければよくなると考えないでください。

まとめ

鍼灸・整体は生物的ストレッサーから来る自律神経の問題と、自律神経自体なお機能異常に対して効果を発揮しやすいアプローチ法で、あらゆる自律神経の問題にアプローチできるわけではありません。

自律神経の乱れは何らかのストレスが原因になることが多いため、原則的にはストレッサーを取り除きながら、自律神経の乱れによって生じた生物的ストレッサーを鍼灸・整体を併用していくことで改善確率を上げています。

その為、原因となるストレッサーをそのまま放置した状態で、鍼灸・整体を受ければ自律神経の悩みが改善するというものではありません。

ストレッサーとなる要因は多岐にわたる為、あなたの生活の中にどのようなストレッサーが潜んでいるのかを見つけ出して一つずつ改善していくことが大切です。

その為に、生活環境の改善、生活習慣の改善、食事の改善、人間関係の改善、メンタルトレーニングなどを併用することもあります。

一方、肩こりや胃の不調などの生物的ストレッサーが原因の場合には、鍼灸・整体によるアプローチを併用していくことが有効になります。

ストレッサーの中には自覚的には楽しいと感じているものもある為、必ずしも嫌だと感じるものが原因となるわけではないので、注意が必要です。

鍼灸・整体などの東洋医学で劇的に改善される方もいますが、魔法ではありません。

その方の自律神経を乱すストレス原因が鍼灸・整体で取り除きやすい生物的ストレッサーであったということが劇的な改善をもたらしています。

自律神経による悩みの中でも、因果関係が成立する場合には必ず原因を取り除くことが重要です。

これは2000年以上前の古来より言われ続けてきたことです。

鍼灸・接骨・整体院の競争が激化により、嘘の医学情報を広めて市場を作り出そうとする動きもあり、あなたがそのような情報を信じ込んでしまうのも仕方がない面もありますが、基本的なことをしっかりと行っていくことが、自律神経改善の一番の近道になることを忘れないようにしてください。

当院での改善をご検討の方は自律神経失調症をご覧ください。

遠方で来院が難しいけれど、カウンセリングを受けたいという方はオンラインカウンセリングをご利用ください。

心身堂鍼灸院院長
この記事を書いた人
鍼灸師 佐野 佑介

静岡県浜松市中央区和地山で自律神経・メンタル専門のはりを刺さない心身堂鍼灸院を開業。
自身も26歳の時にパニック障害から自律神経症状に苦しんだ経験を持つ。
パニック障害、広場恐怖症、うつ病などの精神疾患領域と起立性調節障害、機能性ディスペプシア、眩暈などの自律神経疾患の専門の鍼灸師。
国家資格 はり師(148056号)・きゅう師(147820号)
医薬品登録販売者試験 合格

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自律神経失調症
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