運転や仕事・上司を前にするとめまいがする原因と対処法
結論:パニック障害(広場恐怖症)や社交不安障害の症状なので、身体を整えて段階的暴露療法を行っていけば改善が可能
普段は平気だけれども、運転や仕事、苦手な人と関わるなど限定的な場面だけめまい症状が出てしまうというお悩みで来院される方がいらっしゃいます。
通常のめまいとの違いは、めまいを誘発する事やものから離れてしまえば直ぐにもしくは少し時間をおけばめまいが消えることです。
この通常とは異なるめまいのパターンは、耳鼻科がメインで扱っているめまいとは全く性質が異なり、パニック障害(広場恐怖症)や社交不安障害などの不安障害の症状です。
通常、パニック障害(広場恐怖症)や社交不安障害は不安感や恐怖感、動悸、息苦しさといった緊張症状が主体になることが多い疾患です。
しかし、めまいが主体の症状として先に出て、めまいで事故を起こすのではないか?など不安症状が後から出るという逆パターンになることが多いです。(めまいから不安を感じる)
人によってはめまいが出るタイミングとほぼ同じタイミングで不安感や恐怖感が出ることもあります。
このような特定の状況の時のみに出てくるめまいは、パニック障害(広場恐怖症)・社交不安障害の症状で見られます。
パニック障害・社交不安障害と同じように身体を整えて自律神経のバランスを整えてから、段階的暴露療法を行っていくことでめまいも改善していきます。
運転や仕事・苦手な人を前にすると、なぜめまいが起こるのか?
めまいが引き起こされる刺激は、運転、仕事、苦手な人に限らず、嫌な臭い、人混みなど、広範囲に及びますがその共通点は交感神経が刺激されていること(緊張している)です。
広場恐怖症は自由が制限されると感じる特定の条件(渋滞、赤信号、橋、高速道路、電車、バス、エレベーター、映画館、歯医者、美容室など)、環境で交感神経が過剰に興奮する疾患です。
社交不安障害は特定の条件が、他人の視線、人の前で話をするなど、他の人に起因することが条件となり、交感神経が過剰に興奮する疾患です。
めまいが発生する条件が異なることは多いですが、交感神経が過剰に興奮した状態という共通点がある為、副交感神経優位の状態を作り出し、その状態をキープできるように段階的暴露療法を行っていくことで改善されていきます。
交感神経が高まると脳血流が低下する
交感神経系が過剰に働くと体の正常な反応として脳への血流量を低下させて、筋肉へ血液を送ろうとします。
これは交感神経が「闘争・逃走反応」といって、ライオンなどの捕食動物に出会ってしまった際に戦うか逃げるかを効率的に行う為の神経だからです。
戦うにしても逃げるにしても、筋肉への血流を最大にして筋肉の活動が最も行いやすい状態を作り出すように全身の血液を調整して筋肉へと集中させます。
脳への血流が低下するということは、脳のすぐそばにある平衡感覚を司る三半規管への血流も一緒に低下することになります。
その結果、運転・仕事・人混み・嫌な臭い・苦手な人などのストレスで交感神経の刺激がきっかけとなり、身体が「闘争・逃走反応」を起こして脳血流が低下するのと同時に三半規管への血流が低下して、平衡感覚をうまく制御できなくなり、めまいが発生すると考えることが出来ます。
その為、交感神経の刺激をした原因から物理的に離れるなど、ストレスから解放されると短時間で再び脳への血流量が元の量まで戻り、三半規管への血流も戻ってめまいが消えるというのがこの病気のメカニズムです。
普段から交感神経優位と首こり
日頃からストレスをため込んでいる方は、普段から交感神経が既に高い状態にあり、若干脳への血流が悪くなっている場合があります。
その状態のところへ、少しの刺激が加わるだけでさらに強い交感神経の高まりが発生します。
すぐに闘争・逃走反応が引き起こされて交感神経が過剰に興奮しやすい状態になっています。
また、首から肩周辺の筋肉の多くは副交感神経の支配を受けているため、交感神経優位な状態が日常的に継続していると強い首肩こりが発生します。
この首肩こりが脳へ血液を送る総頚動脈・椎骨動脈という合計4本の血管を圧迫することより脳血流が悪い状態となり、めまいを起こしやすい状態が常態化しているのです。
ストレスでめまいが発生しないようにするには?
ストレスを受けた時にめまいが発生しないようにするには、日常的に副交感神経の刺激を行って交感神経が低いレベルでいるようにする、首こりを改善して脳への血流を改善する、ストレスに対する心理療法を行うことで改善が可能です。
通常時のリラックスレベルを高める
日常的に交感神経が高い状態にある場合には、めまいが直接誘発されないストレスも含めて生活全体からストレスコントロールを行っていくことが大切です。
心理的ストレスを抱えているのであれば、困っている人間関係からは一時的に物理的に距離をとるなどの対策も必要です。
不規則な生活、偏った食事、睡眠不足、暑い寒い、過度な運動または運動不足、夜まで明るい光を目に入れるなども体にとってはストレスになります。
散歩をする、ゆっくり入浴する、森林浴、呼吸法など積極的にリラックスしやすいように生活習慣を整えることが大切になります。
また、鍼灸には副交感神経を刺激してリラックス状態へと身体を導く作用がある為、生活習慣の改善と併用するとより効果的です。
脳血流の邪魔になる要素を取り除く
首肩こりがひどいと脳へ血液を送る血管が圧迫を受けてしまうことがあるので、首肩こりがひどい場合には専門家の施術を受けてこりを改善してもらうことが大切になります。
脳へと血液を送っている4本の血管は体の深い場所(骨のすぐそば)に通っている為、通常の施術では緩めることがかなり難しいです。
表面はクイックマッサージやセルフマッサージ、動画を見て行う首のストレッチなどでも緩めることが可能ですが、首の深い場所の筋肉は大切な神経もたくさん通っている為、首の施術に精通した専門家を探して改善してもらうことが大切です。
力づくで首周りの血管周囲の筋肉を緩めようとテニスボールやマッサージ機などでゴリゴリ刺激するのは絶対にやめてください。
めまいを誘発するストレッサーへの段階的暴露療法を行う
普段の身体をリラックス状態にして、脳血流も改善したうえで心理療法を行って誘発原因に対する抵抗力を獲得いきましょう。
リラックスできていない状態や脳血流が改善していない状態のまま、段階的暴露療法だけを行っても学習が行われにくい為、あまり効果が期待できません。
まずは生活習慣と身体を整えたうえで段階的暴露療法を行っていきます。
段階的暴露療法は症状を誘発するストレッサーに段階的に触れていくことで、危険がないことを再学習させていく治療法です。
ここで重要なのは段階的に触れていくということで、例えば橋が怖いのにいきなり大きな橋に挑戦してしまうなどはNGです。
小さな段階を踏んで少しずつ暴露していくことで安全であること、大丈夫であることを脳に学習させていきます。
また、暴露療法を行う際にリラックスする呼吸法や強制的に脳血流を上げる呼吸法を組み合わせると、暴露療法が成功しやすいのでそういったテクニックも併せて行っていくと改善率の向上が期待できます。
まとめ
運転や仕事中、上司を前にしたり、人前で話をする際にめまいが出てきてしまうのは広場恐怖症や社交不安障害の症状の一部です。
基本的には不安が主症状の病気ではありますが、人によっては不安感よりもめまいが主体で出てくることがあります。
交感神経が過剰に興奮すると闘争・逃走反応がが起こり脳血流が下がります。その結果三半規管への血流も低下し、めまい症状が出てくると考えられます。
改善していくには、広場恐怖所や社交不安障害の改善と同じアプローチを行うことで改善されていきます。
生活習慣を見直して交感神経が優位になりにくいように改善し、身体も全身の筋肉を緩めることで交感神経が刺激されにくい状態を作り出します。
また、首肩こりがあるようであればそちらも改善すると、脳への血流が良くなるため、症状が改善しやすくなります。
生活習慣の改善と身体的な改善を行ったうえで、暴露療法を専門家と一緒に行っていくことでめまい症状は徐々に改善されていきます。
当院での改善をご検討の方は自律神経失調症、社交不安障害、パニック障害をご覧ください。
遠方で来院が難しいけれど、生活習慣や改善について相談したい方はオンラインカウンセリングをご利用ください。