<初診時のカウンセリング>
2カ月ぐらい前から歩きずらくなり、次第に歩けなくなったとのことで、母親に支えられながら来院した。
現在は一人で歩く事はかなり困難な状態で、誰かに体を支えてもらい何とか歩いているような状態とのこと。
病院でMRI・CTなど脳や神経に異常がないかなど精密検査を受けるが、特別原因がわからないとのこと。
今回、初めて鍼灸を受ける。
<施術内容と経過>
原因不明ではあるが、動かせない足の筋肉に委縮が発生していないところをみると脳から筋肉への神経伝達は来ている(筋トーヌス)が、脳内の神経伝達に何か異常が起きて体の支え方、歩き方がわからなくなっているものと思われる。
その為、神経学的な検査では何も異常がないのではないかと思われる。
初回
直接の原因ではないと思うが、首こりがひどくなっていたので全身調整で全身の筋肉を緩めたうえで、首のこりに対してはりを行った。カウンセリングをしていた時に、大学を中退したことなど、ネガティブな感情を繰り返し考えているようなので、心理療法を行った。施術前は徒手筋力テスト1であったが、仰向け姿勢で力は弱いが自分の意志で足が若干動かせるようになった。(徒手筋力テスト2に改善)
2回目(一週間後)
施術後からだんだん一人で立てるようになって、院にはゆっくりではあるが母親に支えられずに入ってきた。徒手筋力テスト4。全身調整と心理療法を行った。
3回目(一週間後)
足は前回よりもさらに動くようになり、不安定感はあるものの何かにつかまったりということは日常生活ではなくなってきている徒手筋力テスト4。全身調整と心理療法を行った。
4回目(一週間後)
徒手筋力テスト5で走るなどの高負荷なものでなければ、日常生活で困ることはなくなってきたとのこと。動いていなかった間の筋力低下を補う目的で筋トレをすすめる。全身調整と心理療法を行った。
5回目(二週間後)
歩けるようになったため、新しいバイトを始めたそうではあるが、問題なく過ごせている。走るのも小走りぐらいであれば出来るようになってきている。
6回目(三週間後)
問題なく元気に過ごせており、走ることも出来るようになってきた。
7回目(一ヶ月後)
元気に過ごせていたため、今回で卒業とした。
<まとめ>
非常に珍しい症例ではあるが、心因性の歩行障害とでもいうような症例。
心理ストレスで声帯筋が動かせなくなって声が出なくなる失声症という疾患があるが、心理療法を行ったことで急激に改善が見られたため、声帯筋ではなく足の筋肉に発生したのではないかと思われる。
心理的な問題というのは不可解な症状を引き起こすことが多く、精密検査でも原因が特定できない場合には心の問題といわれてしまうが、今回行った心理療法はひたすらに好きなものについてひたすらに語ってもらい、家にいるときも好きなものにべったり使ってもらうという楽しい気分でいる時間を増やすということを狙った、あまり一般的ではない心理療法を用いたが良い結果が得られた。
こういう症例をみると人体の不思議さを改めて実感するが、脳や神経系の進行性病変でも同じ症状になることがある為、安易に決めつけてしまうことがないように注意が必要である。
※こちらの記事は症例であり、全ての方に効果を保証するものではありません。効果には個人差があります。
自律神経の症状改善について詳しく解説していますので、ご興味がある方は是非ご覧ください。