
人との会話や公の場面で過度の不安や恐怖を感じ、震える、動悸がする、声の震えや出しづらくなってしまう、体が震えてしまうなどの社交不安障害による不安発作は適切な治療を行うことで、90%程度が治癒するといわれています。
しかし、90%という高確率で改善できる疾患にもかかわらず、多くの方が医療機関を受診しても慢性化させたり、二次的な精神疾患としてうつ病やパニック障害などを併発させてしまうことが多いのが現実です。
今回は社交不安障害は治癒率90%なのに実際にはより多くの方が慢性化、悪化させてしまう原因について一緒に考えていきたいと思います。
この記事を読むことで、社交不安障害の改善の難しさの原因が理解できるようになり、慢性化やうつ病やパニック障害の併発を予防に役立ちます。
スピーチ(プレゼン)恐怖症: 人前での発表や話すことを極度に恐れる。
赤面恐怖症: 人前で顔が赤くなることを過度に恐れる。
電話恐怖症: 電話での対応を極度に恐れる。
視線恐怖: 他人の視線を過度に気にする。
震え恐怖症: 人前で手や体が震えることを恐れる。
会食恐怖症:人前で食事をすることに対して強い不安や恐怖を感じる。
結論:不安発作が限定的な為、改善の動機づけが弱くなりやすく、慢性化・悪化するまで、治療に取り組むことを避けてしまう
社交不安障害は他の不安障害と異なり、不安発作を引き起こす場面がある程度限定されていて、回避すれば不安発作が誘発されない為、うまく誤魔化しながら生活しているうちに慢性化・悪化させてしまう方も多い疾患です。
自己流の対処法として自然に不安発作を引き起こさないために回避行動(不安発作が出る状況を避ける)を繰り返していると、脳が回避した行為が危険な行為であると強く学習し、さらに強い不安感を引き起こすようになっていきます。
回避行動は不安症状の誘発を避ける効果がありますが、同時に社交不安障害の慢性化・悪化を引き起こす原因にもなる諸刃の剣です。
社交不安障害は初期の対応が重要で、他の人に相談できずに一人で恐怖に怯えながら生活していてもストレス過多や回避行動の繰り返しにより、悪化します。
また、学校や会社などに相談して人前で話しをしなくてもよいように取り計らってもらう、そもそも人前で話をする必要の全くない環境へ移動(転校・転職など)するなど、生活環境を変えることで対応すると、日常的な苦しさは一時的に取り除かれますが、悪化して今まで大丈夫だった場面にも不安を感じるようになり、徐々に生活が制限されていきます。
回避行動をとることで、とりあえずの不安発作の苦しみからは解放されるため、悪化して日常生活に大きな支障が出るまで治療に取り組むことを避けてしまう傾向があります。
回避できる環境が作れると治療は困難を極める
病気を周囲の人に理解してもらうように働きかけることそのものは治療を行なっていく上でも大切なことですが、過剰に回避できるように配慮を周囲の人がしすぎてしまうと、治療が滞る原因になります。
よくあるのが、会社の朝礼で社訓などを順番で人前で音読するなどの社内の習慣があり、自分に順番が回ってくるたびに不安発作が出て困っていた方でも、上司に相談して朝礼への出席を免除・人前に立つ仕事を免除といった特別待遇を受けることができれば、とりあえず社交不安障害による不安発作を日常的に感じることはなくなります。
一時的ではありますが、不安発作に怯える状況からは脱出できるため、今の環境が維持できればとりあえず困ることがないので治療をする動機が弱くなります。
治したいとは思っているけれど・・・
他の精神疾患との併存率が高い
社交不安障害はセロトニンの低下により発症すると考えられています。
セロトニンの不足はうつ病、パニック障害、依存症など他の精神疾患の原因ともされるため、セロトニン不足が深刻になっていくことで他の精神疾患が発症しやすくなると考えられます。
困っていなければ放置して良いのか?
まとめ
この慢性化・悪化の主な原因として以下が挙げられます:
- 回避行動による一時的な症状緩和
- 治療への動機づけの弱さ
- 過度な環境調整による治療機会の喪失
治療には段階的暴露療法が必要ですが、不安を誘発する状況に直面することへの抵抗が大きいため、一時的な回避に成功している場合には、悪化するまで治療が困難になることがあります。