パニック発作を起こしたあとにひどく疲れて、眠くなる。だるさがひどくて動けなくなる。ぼーっとして頭が回らなくなるといった症状が出てくる方も少なくありません。私自身もパニック発作後は強いだるさに襲われていました。この疲れやだるさによってパニック発作が出ていない時も活動が制限されてしまうと困りますよね。
今回はパニック発作後の疲れ・だるさが出る原因と対策について一緒に考えていきたいと思います。是非、最後までお読みください。
結論:交感神経の過剰興奮と過換気症候群(過呼吸)が影響している
パニック発作はストレス反応によって闘争・逃走反応が引き起こされ、交感神経が過剰に興奮した状態に突然または、何らかのきっかけによって誘発されたときに引き起こされます。
交感神経が興奮すると心拍数・呼吸数の増加、筋肉の緊張、血管収縮、瞳孔散大、汗の分泌、膀胱弛緩、腸の運動低下、粘液分泌低下といった反応とともに、血糖値の上昇、エネルギー消費量の増加が起こります。
過換気症候群(過呼吸)は、交感神経が興奮したことによって呼吸数が増加したことによって二酸化炭素を過剰に吐き出してしまった結果、細胞呼吸ができなくなり、細胞での酸素欠乏が起こる状態のことです。
パニック発作後の疲れやだるさは交感神経の興奮によって大量のエネルギーを消費したことや過換気症候群により引き起こされた細胞の酸素欠乏により、細胞がダメージを受けた結果生じるものであると考えることができます。
そのほかにも、交感神経が過剰に興奮した際に緊張した筋肉の緊張が持続したり、過呼吸の際に過剰に呼吸筋を使用したことで肩こり、首こりが発生したり、筋肉の緊張により十分リラックスして休息できなくなった結果、体力がなかなか回復しない為、不調が長期化する場合があります。
交感神経の興奮によりエネルギーを大量に消費する
交感神経が興奮すると、代謝をあげてエネルギー消費に備えます。
具体的には心拍数や心拍出量を上げたり、呼吸数を上げたり、血管を収縮させて血流量を増加、発汗を増加させて体温の上昇に適応する、胃腸への血流を低下させて筋肉へ血液を集中するなどです。
また、分子レベルではホルモンを分泌して、細胞が蓄えているエネルギー(ブドウ糖)を血液中に放出させ(血糖値が上昇)、酸素とブドウ糖からエネルギーを大量に生産できる状態を作り出します。
エネルギーの生産力が上がりますが、細胞に蓄えていたエネルギーを放出してしまうため、パニック発作後はエネルギー不足が生じます。
具体的には逆に血糖値が低下して低血糖気味になるため、今度はエネルギーを作り出しづらい状態となります。
パニック障害の方が甘いものの過食に陥りやすいのは、低血糖状態を改善しようとして、糖分を欲するようになる為ですが、血糖値が上がりやすい食べ物で低血糖を補うと即効性はあるものの、中長期的な血糖値が不安定になる為、お勧めできません。
血糖値が下がって利用できるエネルギーが少なくなる為、それが疲れやだるさとしてより強く感じられることになります。
過換気症候群(過呼吸)による細胞のダメージ
パニック発作を起こした際に過換気症候群(過呼吸)も起こしていると、発作を起こしている間の数分間、細胞呼吸が低下して細胞が酸素が不足した状態に置かれていた可能性が出てきます。
細胞呼吸とは、血液中の赤血球から酸素を細胞が受け取り、細胞でエネルギーを作り出す際に発生した二酸化炭素を血液中に排出する作用です。
しかし、過呼吸を起こした状態は赤血球から酸素を分離して細胞に渡すために必要な二酸化炭素が少なくなっている為、細胞呼吸が十分行えない状態になり、赤血球に酸素はあるのに細胞に渡されない為、細胞では酸素欠乏が起こるという状態になります。
特に脳は酸素消費量が多い細胞のため、酸素の欠乏に非常に弱い細胞であり、例えば心停止等で完全に酸素の供給が途絶えると10〜15秒で意識を失い3〜4分で死滅を始めてしまいます。
過呼吸により細胞呼吸が全くできなくなってしまっているわけではないので、神経細胞が死滅してしまうほどのダメージではありませんが、細胞自体は低酸素状態になる為、細胞がダメージを受けてしまいます。
その為、細胞が十分に回復するまでしばらくだるさが抜けない、頭がボーッとして思考がうまくできなくなるといった問題が生じやすくなります。
パニック発作の前後の記憶が思い出しにくいと感じられる方も多いですが、低酸素が脳に与える影響として、記憶が飛んでしまうことがあるためです。
パニック発作後の疲れ・だるさを回復させる方法
パニック発作後の疲れ、だるさはリラックスして適切な休息を取ることで数日で回復してきます。
しかし、パニック発作後から自律神経系の体調不良が持続してしまったり、パニック発作が頻発するようになってしまう方がいます。
これはパニック発作そのものによるものではなく、パニック発作の時に受けたダメージがもとでリラックスして休息が出来なくなり、疲労がたまって自律神経に悪影響が出るために生じてくる問題です。
パニック発作後の疲れ、だるさが回復しないまま、ずるずると体調不良が1週間以上続くようであれば、早期に専門家による治療介入を考えることが大切です。
ここまでご説明させていただいたように、パニック発作を起こしたあとに体に残っている問題は、低血糖と低酸素による神経のダメージです。
この他にも交感神経の興奮による筋緊張や胃腸への血流低下による食欲低下や消化・吸収の低下、過呼吸時に何度も呼吸した事による呼吸筋のコリが残ってリラックスして休息しにくくなっていたり、こりから呼吸がしづらくなっていたりする場合があります。
低血糖を改善するために、まずは胃腸への負担が低く、GI値の低い食べ物を1日の中で数回に分けてこまめに食べるようにして過ごすことで、低血糖状態を改善を行うことが大切になります。
葛湯やアカシアのはちみつなどを1日に捕食として摂取することが大切です。
胃腸の状態が悪く食欲がない場合、鍼灸で強制的に胃への血流を手助けする必要がある場合もあります。
食事療法で低血糖状態の改善と並行させながら、酸素欠乏によるダメージの回復にも着手しましょう。
神経細胞の回復にはエネルギーと酸素、栄養素が必要になります。
エネルギーは低血糖に対するアプローチを行えばある程度安定しますので、後は脳の神経細胞に十分な酸素を供給してあげることが必要になります。
過呼吸を起こした後、呼吸中枢の二酸化炭素の設定値が上昇してしまって、呼吸過多気味になって細胞呼吸が低下している方が多い為、呼吸法を使って体内の二酸化炭素濃度を高めることが重要です。
体内の二酸化炭素濃度が高まることで、細胞呼吸が促進されますので、脳の神経細胞が利用できるエネルギーが増加します。
その結果、神経細胞が受けたダメージを回復するためにエネルギーを利用できるようになるのです。
具体的な呼吸法は過去記事をご覧ください。
原理的には炭酸水を飲む方法でも、細胞呼吸の促進効果が期待できますので、プレーンの炭酸水を飲むのも効果的ですが、胃が冷えて胃腸にダメージを与える恐れがある為、なるべく呼吸法を行うほうが良いです。
パニック発作後は全身の筋肉がこわばってしまっている方が多く、特に肩こりや首こりがひどくなってしまうと、脳への血管が圧迫を受けて血流量が低下してしまいやすくなります。
そうすると、低血糖や二酸化炭素を増やすというアプローチをしても、十分な効果が得られにくくなる場合がありますし、タンパク質など他の栄養素も運ばれにくくなってしまいます。
その場合には、首こり、肩こりを改善して脳への血流をよくしてあげることが効果的です。(いわゆる頸筋症候群の改善)
そこまでこりが強くなければ、お風呂や軽い運動などで血液循環を良くするだけで十分な場合もあります。
ここまでのことを行い、十分リラックスできる状態で十分な睡眠をとれば基本的には回復してきますが、体が緊張した状態のままや低血糖状態、呼吸過多の状態のまま休んでもなかなか回復してこないだけでなく、むしろ疲労が蓄積して徐々に悪化していくこともあります。
そうならないように、パニック発作後1週間様子を見て症状が改善してこないようであれば、専門家による介入を検討してみてください。
まとめ
パニック発作後の疲れやだるいといわれる方は多くいらっしゃいます。
パニック障害そのものの治療を正しく行って、パニック発作を起こさないことが一番良いのですが、パニック発作を起こしてしまった場合には、しっかりと回復させることがとても大切です。
パニック発作後は、低血糖・過呼吸による神経細胞の酸素欠乏によるダメージ、首肩こりによる脳血流の低下などが残ったままになるとなかなか回復してこない場合があります。
その為、低血糖を改善させるための食事。体内の二酸化炭素濃度を正常に戻すための呼吸法。脳血流を正常にするために首肩こりの改善や運動を行うことがとても重要になります。
セルフケアで1週間程度様子を見て疲れやだるさが改善してこない場合には早めに専門家に介入してもらうようにすることで、疲労が蓄積して悪化していくことを予防することが出来ます。
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