ブログをご覧頂きありがとうございます。浜松市はりを刺さない心身堂鍼灸院の佐野です。
普段は普通に過ごしているけれど、本当の自分がわからなくて一人で悩まれている方というのは多いです。
アイデンティティ(自我同一性)が確立されていない思春期ぐらいからこのような悩みを持たれている方は多いですが、大人になってもこの悩みを引きずっている方がいらっしゃいます。
今回は心理学的な視点ではなく脳科学的な視点から、本当の自分がわからない、素の自分とは何なのかについて一緒に考えていきたいと思います。是非、最後までお読みください。
結論:人間の脳は外部環境の影響を強く受けるので、本当の自分は確認できない。
現代科学では私達の心を作り出しているのは脳だと考えられています。
私達の脳は外部環境の影響を強く受けて、反応が変化することがわかっています。
外部環境というと少しわかりずらいですが、例えば、家、学校・職場、食事、睡眠、運動、触れている情報、言語、友人、家族など、あなたが普段いる環境全てです。
少し機械的に感じられるかもしれませんが、脳は身体の感覚器からの情報を集めて、情報を分析して予想し、このあとどのようにふるまえば生存率が上がるのか?を決定する臓器です。
その為、原則的に外部環境によって脳の活動の反応は変化します。
その結果として例えば、家族と一緒にいる時、親友と一緒にいる時、学校や職場にいる時、知らない人ばかりのところにいる時など、私達は無意識的に若干性格が変化したり、友達といる時はテンションが高くなって楽しいのに家に帰ると落ち込んで、性格が暗くなるなどの違いが出てきます。
このような変化を感じて、本当の自分はどっちなんだろう?と悩まれることもあるかもしれませんが、これは外部環境の影響を受けた結果なので、どちらもあなたであることに変わりはありません。
それでは、私達の脳の反応が外部環境とどのような関係性にあるのか一緒に考えていきましょう。
精神科の薬は人格を変えるのか?
精神科・心療内科のお薬を使用することに抵抗感を感じる方は少なくありません。
これは当然で、心を生み出している脳の反応の仕方に影響を与えるのが、抗不安薬や抗うつ薬など外部から入ってきた異物の影響を脳が受ける為、薬を飲んだ時と飲まない時のあなたの脳の活動の仕方が変化するからです。
つまり、薬が効いている間はノーマルなあなたの脳の反応ではなくなるというのは事実です。
特に抗うつ薬や抗不安薬は神経を標的として開発されていますので、与える影響が大きくなります。
しかし、心を標的としていない薬、例えば痛み止めとして使われる解熱鎮痛薬を使用すると感情の反応が抑制されることが知られています。
進化的に痛みを感じる脳内の回路と心理的な痛みを感じる脳内の回路は共通していることがわかっているため、感情が抑制されて心の痛みを鈍らせる作用があるのです。
肉体的に痛みを感じていなくても心の痛みは肉体の痛みと同じ神経が興奮する為、肉体の痛みを抑える薬が心の痛みにもある程度聞いてしまう可能性があるのです。
食べ物でも影響を受ける
薬のように強力に影響を与えないまでも、どのような食べ物を日頃から食べるのか?によって脳の反応は変化します。
例えば、GI値が高い食べ物(血糖値が上がりやすい食べ物)は、その反動として低血糖を引き起こしやすい食べ物です。
神経細胞は血液中のブドウ糖をエネルギー源としている為、低血糖になると神経細胞の働きが低下します、そこで低血糖状態を改善する為にコルチゾールというホルモンを分泌して血糖値を正常値に戻そうとします。
コルチゾールは別名抗ストレスホルモンとも呼ばれ、交感神経を刺激し、不安感情を引き起こしたり、イライラ感を引き起こします。
低血糖を起こすとイライラしやすくなる、感情の抑制が効かなくなったり、コルチゾールの作用により不安になり易いなどの感情の変化が起こりやすくなります。
薬ほどでないにしても食事内容により、神経がどのような動きをするのかに影響が出る為、その結果として、出てくる感情が変化します。
どのような食生活をしているのか?(どのような食べ物が手に入りやすい環境にいるのか?)という外部環境によって心の発言の仕方が変化するのです。
外部環境と相互に影響を及ぼす
どんな人のそばにいるのか?によっても、私達の脳の反応は変化します。
「あなたの周りにいる5人の年収の平均値があなたの年収」などと言われますが、思考の仕方や判断、行動、言動など、私達の脳は周囲の人からの影響を受けてどのように脳が反応するのかが決まります。
面白いのが、あなた自身はあなたの周囲にいる人の影響を受けているのですが、あなた自身もあなたの周囲にいる人に影響を与えている為、外部環境から影響を受けていると同時にあなた自身が外部環境に影響を与えて変化させています。
周囲に影響を受けながら、周囲に影響を与えて変化させ、変化させた外部環境の影響を受けるという相互に影響を与え合った関係にあります。
素の自分はどう言う人なのか?というのは、常に変化し続けるということです。
外部からの影響を取り除けば本当の私にであえるのか?
ここまで理解できたあなたであれば、今、あなたが自分と認識しているあなたは外部環境との相互に影響しあった結果であることがわかって頂けるかと思います。
では、外部環境と隔絶した世界であれば、私達は本当の私に出会えるのではないでしょうか?
現代では倫理的な観点から行われていませんが、1950年代にカナダの大学で行われた感覚遮断実験があります。
実験では外部世界と隔絶した世界で過ごしてもらうという実験が行われました。
白い防音の部屋にベッドだけがあり、そこでひたすらに過ごしてもらうのですが、最初のうちは自分で歌を歌ったり、妄想したりして過ごすのですが、徐々に幻覚をみるなど、2~3日程度で精神に異常が出てくるようになりました。
つまり、私達は外部環境の影響を受けて脳の活動が決定する一方、外部環境の影響がなくなってしまうと自分として機能できなくなってしまうようなのです。
本当の私とは?
脳科学的に考えると本当の私とは今のあなたの外部環境との相互関係で一時的に固定された私しか確認が出来ないことになります。
その為、本当の私はどんな人なんだろう?という疑問を持つことは良いのですが、本当の自分がわからないと悩んでいくということは意味のない事ということになります。
人間の脳は外部環境によって反応を変えるので、その場その場の外部環境に応じて行動をとった結果一貫性がない矛盾した行動をとることもあります。
本当の自分がわからない。というのは脳科学的にはごくごく当たり前のことで、ある程度一貫性を持たせるのであれば、原理的には変化の少ない外部環境に身を置くようにすることが有効です。
また、どういう外部環境の影響を受けた時にどのような反応を脳がしやすいのか?ということはある程度脳の神経回路によってパターンがある為、自分の行動を記録してパターンを理解しておくと、自分のコントロールがしやすくなります。
まとめ
人間の脳は外部環境の影響を受け、外部環境に影響を与えて変化させ、その外部環境からの影響をさらに受けるので、本当の自分を確認することは基本的には出来ません。
人間関係、職場や住環境、温度、湿度、気圧、食事、睡眠、運動、情報など様々なものが外部環境としてあなたの脳の動きに影響を与えます。
一緒にいる人によって気分が異なったり、判断や行動が変化するのは自然なことです。
薬や食べ物といった異物は化学的に私達の脳の反応に影響を与えるものになります。神経に作用する抗うつ薬や抗不安薬だけがそのように作用しているわけではありません。
外部環境の影響を取り除いてしまうと、私達の脳は正常に機能することが難しくなるようにできている為、外部環境の影響を取り除いた自分がどういう人なのかを知ることは出来ません。
その為、本当の私はどんな人だろう?という答えは原理的に出すことが出来ません。
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