ブログをご覧頂きありがとうございます。浜松市はりを刺さない心身堂鍼灸院の佐野です。
私自身もパニック障害に苦しみましたが、当院ではパニック障害で悩まれている方をよく診させて頂いています。7~8回程度の通院で日常生活に支障がなくなってしまう方も多いですが、パニック障害は治るという情報もあれば治らないという情報もあり、え?どっちという方も多いかと思います。
今回はそんなパニック障害の治る治らない論争についてパニック障害になった経験を踏まえながら一緒に考えていきたいと思います。お読み頂くことで、なぜ治る派と治らない派にわかれるのかについて理解できるようになりますので、ぜひ最後までお読みください。
結論:パニック障害はパニック発作をコントロールできるようになることがゴール
パニック障害の苦しさはなった本人しかなかなかわからないところがあります。
急に動悸がしてきて、凄まじい息苦しさに襲われパニックが治まった後も全身なんかだるく、人によっては普段も手汗や胸の痛み、不眠や過眠、すぐに疲れる、気分が落ち込むなどの自律神経症状に苦しみます。
パニック発作を起こさない限り元気な人でも、外出先でパニック発作を起こさないか不安になるといった予期不安に苦しんだり、運転、バス、食事、歯医者、電車、エレベーター、会議、映画館などの自由が効かないと感じるとパニック発作が出やすくなる広場恐怖症も併発するなど、パニック障害はなかなかパニック障害単独だけの疾患に収まりません。
私自身もパニック障害の改善に取り組んできた経験と、多くのパニック障害の方を診させて頂いた経験から、パニック障害が治るとはパニック発作に対処できるようになることだと考えるようになりました。
パニック障害が治るのにパニック発作に対処できるようになると聞くと何か矛盾しているように感じますが、どういうことか詳しく説明させて頂きます。
パニック発作を起こさないようにすることでパニック障害が治らない
パニック障害は交感神経が急激に興奮することで、息苦しさ、動悸、手足の発汗、めまいなどのパニック発作が引き起こされる自律神経の疾患です。
パニック発作はとても苦しいので、一度発作を体験するとパニック発作を起こしたくないという気持ちになるのはとても自然なことです。
しかし、パニック障害は交感神経が興奮することで引き起こされる疾患ですから、パニック発作を起こさないように常日頃から警戒すると、それが交感神経を刺激してしまってパニック発作を引き起こしやすくしていることになります。
禅問答のようになってしまいますが、パニック障害を治すにはパニック発作を起こしても、自分は大丈夫だと思えるようになること。
パニック障害を治そうとしない開き直りによって、結果的にリラックスすることが出来るようになるため、パニック発作を起こしにくくしていくことが必要になります。
その為に、パニック発作になった時に自分でパニック発作を鎮静化させるスキルを身につけたり、少し怪しい症状が出てきた時に適切な対処を行える、そもそも症状が出やすい状態まで心身を疲れさせないなどの管理がとても重要になります。
一生付き合っていく必要がある基礎疾患
パニック障害の改善に取り組まれたけれど、いつまでもパニック発作を鎮静化させるコントロールが出来ない、少し怪しい症状が出てきた時に対処ではなくどんどん不安になっていってしまう、慢性的に疲れていてパニック障害が起こりにくい状態まで体調を安定させることが出来ない方の場合は一生付き合っていくことが必要になる場合があります。
このような状態になってしまう原因は、疾患の基盤にストレスを受け続ける環境からどうしても離れることが出来ない(例えば、ストレスを与えるパートナーがいるが経済的に縛られていて離れられない)、発達障害やうつ病など他の問題を持っていてパニック障害は二次的な症状として出てきている、小児逆境体験により成長期に過酷な環境で育ったなどが影響しており、後天的に発達に悪影響を受けている。
大半の人は薬がなくても生活が可能になるが・・・
前述したような複雑化した状態でなければ、大半の人は薬がなくても日常生活に支障がないレベルまでパニック障害の症状は安定してきます。
しかし、薬をやめる段階に入った際に抗不安薬を持ち歩かないようにするなど、心理療法的なアプローチも必要になる場合にそれを行えるか行えないかというのは一つの大きな分かれ道になることがあります。
特に医師も抗不安薬を徐々に持ち歩かないようにしていきましょうなど、しっかりと指導しないことも多く、「お守り代わりに抗不安薬を持ち歩くこと」についてしっかりと説明をしてもらえないこともあります。
お守り代わりに抗不安薬を持ち歩く行為は、心理学的には薬に頼らなくても自分は大丈夫だという自己効力感(自信)を無くさせる作用がある心理行動になります。
良くなってきたら、抗不安薬が必要になるような状態にならないように自己管理をし、抗不安薬がなくても自分は普通の生活が送れるという自信(自己効力感)を育てていくことが大切です。
この過程は自然に発生するのではなく、あなたの努力(心理療法的なアプローチと身体管理)によって達成されていきます。
人間は行動により自分を定義していく生き物なので、薬を持ち歩くという行為をしている限り、普段意識しなくなっているという自覚があったとしても、無意識レベルで本当の意味でパニック発作におびえた生活はなくなりません。
予期不安や広場恐怖が併発してきた時にどうするか?
パニック障害によるパニック発作を体験すると、外でパニック発作を起こしたらどうしようと感じてパニック発作を起こしそうな環境を避けてしまうのが予期不安です。
また、閉鎖空間など自分の自由が効かない環境になるとパニック発作の症状が出てきてしまう広場恐怖症が併発してきてしまうことが多いです。
どちらも専門家と一緒に徐々に暴露療法を行っていくことで克服していくことが出来、予期不安は放置するとパニック障害が悪化する可能性が高くなるため、改善しておくことが大切です。
しかし、広場恐怖症については、例えば洗車機だけが不安・怖いといった限定されている場合については、洗車機に乗ったまま入らなければ特別問題にならないこともあり、その方の生活の質を低下させておらず、普段から不安になって警戒していることがないのであれば、必ずしも改善しておく必要がない場合もあります。
薬でごまかしながら生きていくということも一つの人生
パニック障害を治していく過程では、恐怖突入といって怖いものや不安を感じるものや場所、人など不安対象に自ら突き進んでいく認知行動療法が必要になります。
不安感が出なくなってそういったものに触れても平気になるのではなく、不安感や恐怖感を感じた状態のまま不安対象に自ら突き進んでいくことで、平気になっていくという過程をたどります。
つまり逃げるから不安なのであって、不安だから逃げるわけではないというのが、現在の医学の考え方です。
しかし、とにかく恐怖突入だけをしていくと辛さでトラウマになってしまうこともある為、必ず専門家の指導を受けながら認知行動療法を行っていくことが大切です。
医学的にはお勧めできませんが、恐怖突入を行わず、薬を使い続けながらパニック障害と生きていくというのも、一つの選択肢として、人生の生き方として間違っているわけではありません。
パニック障害は治る、治らないという論争は、このような病気の特性と共存する道を選ぶ方もいる為どちらでも間違っていないのです。
統計的には薬を持続して使用し続けている、不安感が残る、頓服薬はお守りとして手放せないなどが残っている方の再発のリスクは上昇することがわかっていますが、再発リスクと治療の辛さを天秤にかけたうえで人生の選択をしていくことになります。(Yonkers KA、et al, Am J Psychiatry 1998; 155:596)
人生に正解はありません。あなたが行きたい人生を生きることが大切です。
まとめ
パニック障害はパニック発作を起こしても私は大丈夫という開き直りや安心感、自己効力感を感じられるようになることで、治っていく疾患です。
その為には、パニック発作を起こさないことを目標にするのではなく、パニック発作をコントロールするスキルを身につけることが大切です。
ストレス原因となる人間関係、環境、他の病気、発達障害などがあり、そこからパニック障害が発症している場合にはそちらの状態を改善しない限り、パニック障害とは付き合っていくことが必要になる場合があります。
大半の人は薬がなくても生活できるようになっていきますが、心理療法を組み合わせていくことがとても大切になります。
しかし、心理療法には不安や恐怖に自ら進んで飛び込むという恐怖突入が必要になる為、辛さを乗り越えてでも改善するモチベーションが必要になります。
医学的には心理療法まで行っていけばパニック障害に悩まされることは基本的になくなっていきますが、その過程の心理療法がどうしてもつらい場合には、一生付き合っていくという選択肢があっても問題ありません。
あなたの人生は、あなたが決めましょう。
当院での改善をご検討の方はパニック障害、広場恐怖症、全般性不安障害をご覧ください。
遠方で来院が難しいけれど、生活習慣や改善についてや心理的アプローチ法について相談したい方はオンラインカウンセリングをご利用ください。