寝ようとすると動悸がする、横になると息苦しくなる原因
結論:副交感神経が睡眠モードに入っていないことが原因
眠る時には、基礎代謝が下がり、深部体温が低下して、呼吸や心拍数も少なくなります。
これらはすべて副交感神経の働きですが、ストレスなどの影響から自律神経の働きが正常に機能しなくなってしまうと、十分に副交感神経優位の睡眠モードに入れなくなり、このような症状が出てきてしまいます。
ウトウトしかかったタイミングで、動悸がしたり、喉が詰まって呼吸が止まるような感覚がしたりして、入眠がし辛いというお悩みで来院される方も少なくありません。
動悸の苦しさや胸苦しさから入眠が妨げられて睡眠が十分にとれなくなると、不整脈も発生しやすくなり動悸を更に感じやすくなります。
眠れないことで自律神経が乱れ、自律神経が乱れたことで動悸を感じて、さらに眠りずらくなってしまうという悪循環が発生します。
また、動悸や息苦しさから死を連想して眠ることそのものが怖くなってしまう方もいらっしゃいます。
そうなると眠ろうとすると死ぬかもしれないという恐怖や不安感が出てくるようになり、恐怖や不安感によって交感神経が刺激されて更に動悸や息苦しさが誘発されるようになります。
睡眠モードを乱す原因
睡眠にうまく入れない原因は様々あり、原因不明なものもありますが、睡眠モードにうまく入ることが出来ない原因は体内時計の乱れや悩み事、身体的な緊張などのストレスが多いということが最もよく見られます。
体内時計(中枢時計)の乱れ
以前は人間の体内時計は25時間にセットされていると考えられていましたが、近年になってから研究が進み個人差はあるものの24時間10分程度を中心に正規分布していることがわかっています。
特殊な方を除き、多くの人がこの10分程度の時間のずれを毎朝光を目から入れることで調整しています。
体内時計が乱れてしまう原因は朝起きてから体内時計を補正するために光を目から入れるという行為が不十分で時間の補正が行われずに徐々にズレていってしまったり、夜に目から強い光を入れてしまっている事があげられます。
毎朝決まった時間に光を目から入れることで体内時計(中枢時計)をセットしていくことが体内時計を整える基本で、自律神経を整える際に朝に太陽を浴びるように指導されるのもこのためです。
しかし、朝光を浴びて体内時計を補正しても、夜暗くなっているにもかかわらず明るい光が目から入ってきてしまうことでも体内時計が乱れてきてしまいます。
夜になったらなるべく照明を暗くする、スマホやタブレット、TVなどの光を目に入れすぎない(基本的には使用しない)などの対策が必要になります。
iPhoneの方は「機能→アクセシビリティ→ズーム→ズームフィルタ→低照度」の設定でバックライトを標準の明るさよりもさらに下げることが出来ますので、夜になってもスマホの画面をやむを得ず見る場合は最低限この設定は行いましょう。
コンビニの店内などはかなり明るい照明をしていますので日が落ちてからは基本的にはお店の中には入らないことが大切です。
光によって体内時計(中枢時計)がずれていってしまうことで、体が睡眠モードに入る時間帯がずれてしまいます。
内臓時計(末梢時計)の乱れ
前述した中枢時計は脳にある自律神経中枢が持っている体内時計です。
私達の身体にはもう一つ内臓やホルモンを時間帯によって調節することで活動しやすくしたり寝やすくするための体内時計である末梢時計があります。
末梢時計は目から光を入れることでは時刻合わせをすることが出来ません。時刻合わせに使われるのは血糖値の変化です。
睡眠中は成長ホルモンが分泌され体を休眠モードにしていきますが、成長ホルモンには血糖値を上昇させる作用がある為、高血糖の状態では分泌されない為、睡眠が浅くなりがちです。
極端に血糖値が上昇するとその後に逆に低血糖を起こして神経系に負荷(自律神経など)をかけてしまうことになるので、GI値orGL値の低い食品を食べられることがお勧めです。
基本的には規則正しく3食食事をとることが基本です。
特に朝食は末梢時計を整える上で重要な役目を果たしていることがわかっていますので、忙しくても軽くなにか口にするようにしましょう。
眠る前に考え事をして交感神経を刺激してしまう
ベッドで横になって目をつぶった際に、不安に思うことや悩み事などが頭によぎったり、翌日に気乗りしない用事がある場合などにも発生しやすいです。
ネガティブなことを考えることで交感神経が刺激された状態になり、動悸や不安感、息苦しさなどが出てきてしまう場合があります。
寝るときに動悸や息苦しさを経験してしまうと、今夜も動悸や息苦しさがまた出るのではないか?といった不安から交感神経が刺激されてしまい悩み事がなくなった後も継続してしまう場合があります。
不安や悩み事はカウンセリングを受けたり、紙に書きだして思考を整理するなど、起きている時間帯に対策をしておくことも大切です。
体が疲れていない
私達は適度な運動により肉体疲労をすると睡眠の質が向上することがわかっています。
早く眠くなったり、横になってから一気に眠りに落ちたりと肉体疲労がある程度あることが睡眠には必要です。
デスクワーク中心の仕事で、神経疲労を感じることはありますので疲れたという疲労感はあるものの、肉体はほとんど使っていないため、肉体疲労はそれほど多くありません。
職種にもよりますが、あまり体を使っていない仕事をされている方は、普段から階段を多く利用する、お店に車で行った際は、入り口から離れた駐車スペースに止めるなど、体を動かすための工夫をすることから始めてみましょう。
もちろん、ウォーキング、筋トレ、自転車、水泳等の運動を行うのもお勧めです。
脳の情報過多
私達の脳は1日の間に処理できる情報量にある程度の制限があります。
ダラダラとスマホやTV、ゲームを長時間使用していると脳へ入る情報量が多くなりすぎる上に、入ってきた情報を整理する為に必要なデフォルトネットワークモードの時間が確保できません。
デフォルトネットワークモードとはぼーっとしている時間に、脳が情報を整理しているモードだと考えられており、常に何かの情報にさらされている人では、情報が整理されず情報過多の状態が継続すると考えられています。
情報過多になってしまっている状態は神経に疲労が蓄積した状態になる為、自律神経系にも悪影響を与えることがわかっています。
スマホのスクリーンタイムを1日3時間以内にして、ぼーっと何もしない時間を作ることが重要になります。
また、感覚に意識を集中することでも脳の機能回復が期待できますので、食事中はすべてのデジタル機器をオフにして味覚、嗅覚に集中するなども有効です。
身体がこわばって緊張していて副交感神経が十分に働かない
鍼灸や整体の適応となるのが、全身または首周辺の筋肉がこわばっており、横になっても力が抜けなくなってしまっている場合です。
人間は身体がこわばっていると交感神経が高まりやすく、副交感神経が高まりにくくなります。(リラックスしにくくなる。)
その結果、交感神経と副交感神経の入れ替えを行う入眠の際に本来は高まるはずの副交感神経が高まらず、低下するはずの交感神経の働きが維持されていたり、高まってしまって動悸や息苦しさが出てきてしまいます。
まとめ
・寝るタイミングで十分副交感神経が高まってこないと、寝ようとすると動悸や息苦しさといった症状が出てきます。
・中枢時計と末梢時計の2つの体内時計の時間を正しくセットすることが大切です。
・悩み事などは昼間の起きている時間帯にカウンセリングなどを利用して解消しておきましょう。
・有酸素運動で肉体疲労がある状態を作りましょう。
・情報過多の場合は脳の神経細胞が疲労している為、情報量を制限し、ぼーっとする時間を作りましょう。
・身体がこわばったり、緊張している場合には鍼灸や整体で緩めてもらいましょう。
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