ブログをご覧頂きありがとうございます。浜松市はりを刺さない心身堂鍼灸院の佐野です。
当院へはパニック障害や広場恐怖症で来院される方が多い為、暴露療法を行なって頂くことが多いです。暴露療法を行なった際の状態についてお話を伺うのですが、不安感、ソワソワ、動悸などが出てしまった。とがっかりした様子で報告される方が多いです。
その後、急激に体調が悪化したなどの場合は暴露療法として適切ではなかったと判断できますが、そうではない場合、どうしても辛いため失敗と誤解されてしまう方が多いです。
今回は不安・恐怖が出た暴露療法がなぜ成功なのか?について一緒に考えていきたいと思います。是非、最後までお読みください。
結論:暴露療法の最中は苦しくなるのが正解。
暴露療法は簡単に言えば、不安や恐怖を感じる環境や状況、人に接触することで、不安や恐怖に慣れさせていく療法です。
慣れとは「たびたびまたは長く経験して、何とも感じなくなる。」ことを言います。
つまり、「不安や恐怖に慣れ」を生じさせるためには、不安や恐怖を感じる必要があり、不安や恐怖が全く出ていない状態は、暴露療法そのものが失敗しているといっても良いです。
もちろん、非常に強い不安や恐怖が出てきてしまうと、その経験そのものが恐怖体験としてPTSD(心的外傷後ストレス障害)になってしまうので、暴露療法が終わった後も体調不良が継続してしまうような強い不安や恐怖に耐えるという暴露療法も失敗です。
暴露療法を行なって、不安や恐怖を感じなかった場合は、基本的には暴露する強度が弱いことを示しています。その場合には暴露する強度を調整して不安や恐怖を感じる強さにする必要があります。
暴露療法によって不安や恐怖に支配されなくなっていく為には、適切な強度の不安や恐怖を感じる状態をたびたび経験することが必要ということになります。
言語化が難しいですが、そのほかにも細かなポイントがありますので、今回は細かなポイントについて解説させて頂きたいと思います。
適度な強度の暴露とは?
適度な強度の暴露というのは、ケースバイケースのため、必ずこうすれば良いという誰にでも当てはまるものはありません。
しかし、まずは強すぎる暴露にならないことが大切です。
強すぎる暴露とはパニック発作を起こして手足が痺れる(過換気症候群)、不安や恐怖で暴露後も思い出して恐怖を感じてしまうような状態。
暴露により、交感神経が過剰に興奮しすぎた結果、不眠や動悸が治らないなど、体調不良が継続してしまう場合です。
このような強すぎる場合を除いて、ソワソワ、不安、恐怖、動悸がするなどのような反応が出ているけれど、パニック発作を起こしておらず、体がこわばってきているぐらいの範囲内であれば、暴露療法としては適切な強度になります。
治療の目的と方法が矛盾してしまう
暴露療法は正しく行えば、薬物治療と同程度の高い効果がある心理療法です。
もちろん、自律神経が反応して交感神経が高まり、不安や恐怖も出るため、不快な感覚を感じることに間違いありません。
しかし、この不快な感覚に慣れて冷静でいられるようになることこそ、暴露療法の本質的な効果になります。
そもそも暴露療法を行う目的は不安・恐怖を感じたくない。という理由であることがほとんどです。
しかし、それを改善する方法が不安・恐怖を積極的に感じることを行うことであるという点に多くの方が抵抗感を感じるポイントです。
正しく暴露療法を繰り返し行なっていけば、ほとんどのケースで改善されてきますが、明確に何回暴露療法を行えば不安・恐怖が何%減少するといった明確な指標があるわけではありません。
暴露療法の効果を実感して、不安や恐怖を感じなくなっていくまでにはタイムラグが存在し、そのタイムラグの期間、暴露療法をを継続する行為そのものがこのまま続けても良いのか?と暴露療法を継続することが不安になっていってしまう方も多いです。
100%の効果を期待する白黒思考から不安障害を発症しているのですが、ここでも白黒思考によって改善が邪魔されてしまうのです。
暴露療法を行なう心持ちと解釈
臨床をしていて暴露療法の効果が出やすい方は、不快感を感じる程度の刺激を受けていることが、症状の改善につながっていると理解できている方が多いです。
一方、暴露療法を行なっていても、単純に不快感に耐えて過ぎ去るのを我慢しているだけの方は効果が出てくるまでに時間がかかる印象です。
暴露療法を行う目的をしっかりと理解し、感じた不快感に対して正しい解釈を与えると効果が出やすい傾向があります。
暴露療法を行うことで脳(神経)に発生すること
適度な強さの暴露の場合、不快感を発生させてそのまま置いておくと、自然と不快感は軽減されていきます。
これは脳内で不快感を感じさせる交感神経の興奮を徐々に抑制する機能が働くからです。
しかし、強すぎる刺激の場合は抑制する機能をはるかに上回る交感神経の興奮が起こる為、交感神経がなかなか静まらなくなってしまいます。
適度な強さの正しい暴露療法を行うと、交感神経を興奮ある程度興奮させてから鎮めるという、抑制系の神経を使うトレーニングを行うことになります。
神経系は使えば使うほど、その神経ネットワークを形成するシナプスが物理的に大きくなり、その結果神経伝達がよりスムーズになるという特性があります。
つまり、交感神経を抑制する神経系を何度も使うことで、交感神経を抑制する神経ネットワークの伝達力が強くなり、結果的に容易に交感神経の興奮を抑制することが出来るようになります。
暴露療法は神経学的に言えば、交感神経を抑制する神経系のシナプスを物理的に大きくするために何度も抑制系を使用することにその効果のかなめがあります。
不安・恐怖を出して、それを抑制する神経系を使用する。その繰り返しによって不安・恐怖が抑制されて出ずらくなっていく治療法なのです。
その為、軽くてもよいので、不安・恐怖を感じる状態まで暴露することが治療効果に大きく影響します。
耐えるだけの暴露療法の問題点
耐えるだけの暴露療法の改善が遅い理由は、「辛かった」という記憶ばかりを強く意識することに原因があると考えられます。
暴露療法は繰り返していくうちに、「徐々に」不安・恐怖が弱くなっているのですが、辛かったという判定基準は、不安・恐怖があるか、ないかといった白黒で判断しているのと同じであるため、なかなか効果を実感することはできません。
不安・恐怖の強さが10段階中〇ぐらいといった感じで、不安・恐怖の強さ、持続時間などを評価していくことで、効果を実感することが出来ます。
ただ単に耐えるという単純なものではありません。
体調の影響を理解しておく
暴露療法を繰り返し実践していて多くの方がぶつかる壁が、前やった時は大丈夫だったのに今日は不安・恐怖が強く出たというものです。
神経の働きは体調に非常に強い影響を受けるため、抑制系の神経の調子が良い日と悪い日が存在します。
その為、一度全く不安・恐怖が出なかった暴露であっても、今日はなぜか落ち着かないといったことは珍しくありません。
一度クリアできたものが、また出来なくなるとショックを受けますが、体調が悪い日も問題なくクリアできるまでにはさらにトレーニングが必要になります。
段階的に徐々に暴露していくということが暴露療法では重要とされるのは、この体調の影響により段階がある程度前後するからです。
まとめ
パニック障害や広場恐怖症の改善に用いられる暴露療法を行っていく最中には、どうしても不安・恐怖、ソワソワ、動悸などの症状が出ます。
しかし、これは暴露療法が正しく行えているという指標の一部です。
症状が出たからといって失敗ではありません。
暴露療法を行っている最中はある程度の症状が出ているのが正解です。
なぜなら、暴露療法は不安や恐怖に慣れを生じさせるための治療法であるためです。
もちろん、強すぎる暴露を行うことはお勧めできません。
適度な強度の不安や恐怖に暴露することを何度も経験することで効果を発揮していきます。
適度な暴露とは暴露時に不安や恐怖を感じるけれど、そのあと引きずったりせずにすぐに改善する状態です。
不安・恐怖を感じなく生活できるようになりたいことで、治療をするのですが治療には不安・恐怖を感じる必要がある為、抵抗感を感じられる方が多いです。
途中このまま暴露療法を続けていいのか不安になりやすいのは、白黒思考が関係している場合があります。
暴露療法を行うと神経レベルではシナプスが増大する変化が起こります。この変化を起こすための刺激に不安・恐怖を感じる暴露が必要になります。
効果は10段階中〇ぐらいといった感じで、段階で評価していくことが大切になります。
体調により暴露する強度が日によって変化することを理解しておきましょう。
当院で改善を希望の方はパニック障害をご覧ください。
遠方で来院が難しいけれど、暴露療法のカウンセリング・アドバイスを受けたいという方はオンラインカウンセリングをご利用ください。