自律神経失調症は治らない?自律神経失調の改善が難しい理由

ブログをご覧頂きありがとうございます。浜松市はりを刺さない心身堂鍼灸院の佐野です。

自律神経失調症は正確な病名ではありませんが、正確に言うとうつ病や不安障害(全般性不安障害、パニック障害)、適応障害、機能性ディスペプシア、過敏性腸症候群、逆流性食道炎、過活動膀胱、慢性疲労症候群、摂食障害、慢性疼痛等様々な疾患のなかのどれかには分類できるはずだけれど確定できない時に暫定で使用される診断名です。

病態としては、自律神経(交感神経・副交感神経)の機能が悪くなったことによって、循環器の異常、頻尿・多尿、消化器系の異常、疲労感・倦怠感、睡眠障害、神経症状、体温調節の異常、血糖値の異常。など、いわゆる不定愁訴が主な症状となります。

今回は自律神経失調症がなかなか治らない改善の難しさについて、一緒に考えていきたいと思います。お読み頂くことで何を目標に治療に取り組むべきかがわかると思いますので、ぜひ最後までご一読ください。

結論:神経細胞のダメージによっては元の状態には戻らない

衝撃的な結論にはなってしまいますが、自律神経そのものは神経細胞の働きによって支えられている為、神経細胞の一部が破壊されたり、ネットワーク(シナプス)が破壊されたり、神経細胞自体が死滅した状態になれば、完全に元の状態に戻ることがありません。

しかし、今のあなたの辛い状態が延々に続くというわけではないので、絶望せずに希望を持ってください。

元々、自律神経失調症自体が医学的には正式な核となる病気を確定できていないときに暫定として付けられる病名の為、かなりふわっとした概念になります。

一般的に自律神経失調症によって以下のような症状に悩まされるとされていますが、症状を引き起こしている核となる病気を改善すれば症状も改善されていきます。

そして、自律神経のバランスを再び崩すようなことをしなければ、日常生活に支障をきたさなくなった状態にまで改善することは可能です。

血圧の上昇や低下、めまい、動悸、心拍数の変動、立ちくらみ、不整脈、頻尿、胃痛、腹痛、吐き気、嘔吐、下痢、便秘、食欲の増減、消化不良、逆流性食道炎、持続的な疲労感や倦怠感、活動能力が低下、不眠症、過眠症、中途覚醒、睡眠の質の低下、日中の眠気、不安感、パニック発作、うつ状態、集中力の低下、感情の不安定さ、めまい、頭痛、神経過敏、感覚過敏、発汗の増加または減少、手足の冷感、寒気、体温の異常な上昇または低下、発熱感、血糖値の上昇や低下、空腹感、めまい、倦怠感、食欲の変動etc・・・。

しかし、元々自律神経が乱れたということには、自律神経のバランスに悪影響を与えた、何らかの原因が存在している為、その原因が取り除かれた状態を今後の生活でも維持し続ける必要があります。

特に過労や夜勤など身体的な負荷は遺伝的に特殊な体質でもない限り、そういった勤務形態を何年も継続できる人の方は遺伝的に特殊です。

その負担が自律神経の症状として出る人と癌や心臓病、脳血管疾患、糖尿病など他の疾患として表面化してくるかの違いはありますが、そもそも長期間ストレスを与え続ける生活を継続することはお勧めできません。

無理をして継続した結果として発症した場合には、症状がから回復しても、同じような負荷をかけてしまうと再び同じように自律神経が乱れてきます。

特に自律神経のアンバランスの原因となる副交感神経の低下は長期的なストレスによって働きが抑えられるだけでなく、加齢によって副交感神経の働きが自然に低下してくる為、大切に使って寿命まで長持ちさせることが必要になります。

自律神経失調症は神経の機能低下と死滅や破壊の2段階がある

自律神経の働きは物理的に存在している神経細胞の働きによって支えられています。自律神経が乱れる、整えるという表現を使うことが多いのですが、神経細胞が受けたダメージのレベルによって機能が低下している状態と神経細胞自体が死滅したり破壊された状態の2段階が存在します。

神経細胞の機能低下とは?

自律神経の機能低下とは、神経細胞自体や神経同士の情報の伝達に物理的な損傷を伴わずに働きだけが低下した状態です。

自覚的には何となく調子が悪いなと感じるようなことがあったり、十分な休養を取った後は調子が良くなったりする状態です。

働きが落ちているだけなので、十分な休息をとることで回復してくることがほとんどですが、休息を十分にとらずに過ごしていると次第に神経細胞の死滅や破壊が始まってきます。

神経細胞が死滅・破壊されるとは?

私達の身体はストレスを受けるとストレス反応を引き起こし、ストレスに対抗しようとします。

しかし、その際に使われるストレスホルモン(コルチゾール)は大量に長期間脳に存在すると神経細胞を死滅・破壊してしまうことがわかっています。

神経細胞の機能が低下しただけでも、身体調節を行うことに支障が生じて色々な症状が発生してきますが、神経細胞が死滅・破壊してしまうと休んでも働く為の細胞自体が存在しなくなっている為、元に戻らなくなってしまいます。

神経細胞の機能低下は元通りに復活する

神経細胞の機能低下は、働きが悪くなっているだけなので働きが元に戻れば、身体症状も綺麗になくなり、元と何ら変わらない生活を取り戻すことが可能です。

例えば、スマホの調子が悪い時に一度電源を切って休ませたり、バックグラウンドで動いているアプリを閉じる、不要なファイルを削除してストレージを増やすなど、休ませたり、ちょっとしたメンテナンスを行うと、またサクサク動くようになるのと同じように機能が戻ってくるようなイメージです。

物理的な破壊を伴わないので、適切な休息をとらせることで自然治癒することがほとんどです。

神経細胞が死滅・破壊されると元通りになるかはわからない

神経細胞が死滅・破壊されてしまった場合、元の状態に戻るのか?といわれると、医学的にもまだまだ不明なことが多い分野の為、元に戻るかもしれないし、戻らないかもしれません。

しかし、現在の医学でわかっていることは、脳内の神経細胞が死滅・破壊されたとしても、新しく脳内で神経細胞が生まれている、神経細胞が破壊されたネットワークを再構築しようと軸索(情報を伝える神経細胞のケーブル)を延ばすことがわかっています。

ただし、新しく生まれた神経細胞は神経ネットワークに組み込まれないとそのまま死滅することもわかっており、ネットワークにうまく組み込まれるのか?そもそも死滅して不足した場所に都合よく新しい神経細胞が生まれるのかといったことが良くわかっていません。

特に脳の機能は構造や形に依存する為、神経細胞の配置が変化すると全く同じ機能を果たすことがなくなってしまいます。

神経細胞が死滅・破壊されても機能がある程度回復するという点では希望がある医学的な事実なのですが、元と同じになるのか?という問いに対しては疑問が残ります。

また、神経細胞が新たに生まれて神経ネットワークに組み込まれたり、軸索を伸ばしてネットワークを再構築するには時間がかかります。

神経細胞を死滅・破壊させない予防が大切

自律神経失調症になってなかなか治らない原因は、神経細胞の死滅・破壊といった状態までストレスホルモン(コルチゾール)に脳の神経細胞がさらされ続けたのかどうか?が一つの大きな分かれ道です。

自律神経失調症という暫定の診断名ではなく、核となっている病気を特定してその治療に特化した治療法を行うことが出来ればより改善はしやすくなるかと思います。

ほとんどの場合は、神経細胞の機能低下で症状が時々出るという状態のまま、何となく過ごしてしまうと症状自体のストレスも加わってより多くのストレスホルモン(コルチゾール)に脳の神経細胞がさらされることになり、死滅・破壊が促進されてしまいます。

医学の世界には、予防に勝る治療はなし。という言葉があります。

ごく初期であれば休息をとるだけで十分回復してくることも多くあり、医療者の立場としてはこの時点でセルフケアをしっかり行って頂くのが一番良いと考えています。

しかし、状態が悪くなるにしたがって専門家による医学的アプローチが必要になってくるなど、費用も時間もどんどんかさんできてしまいます。

自分は大丈夫だと過信せず、食事・睡眠・運動・ストレス管理をしっかりと行い予防に努めることが何よりも大切です。

神経細胞を新たに生み出す方法

神経細胞の再生にはBDNF(脳由来神経栄養因子)と呼ばれるタンパク質が重要だとされています。

このタンパク質は、有酸素運動、筋トレなどの身体を使った運動の他にもカマンベールチーズ、発芽玄米、高カカオチョコレート(カカオポリフェノール)の摂取でも増えることが知られています。

医療的な介入により、ある程度症状が落ち着いてからは地道に運動と睡眠、そして毎日の食事に気を付けることで、神経細胞を新たに生み出す手助けを行っていくことで、死滅・破壊されてしまった神経細胞が新たなネットワークにより代替されてくることが期待できます。

原理的に元の神経ネットワークとは違う構造になることも考えられるため、依然と全く同じ機能を脳が取り戻せるのかについては疑問が残りますが、私自身もパニック障害後に残存していた自律神経の症状がこのような生活習慣を気を付けることで毎年少しずつ良くなっています。

希望を持って地道な努力を続けることが大切です。

まとめ

自律神経失調症は不調を引き起こしている核となる疾患を特定できない時に暫定的に付けられる診断名です。

自律神経も神経細胞という物理的な細胞の働きに支えられています。

神経細胞の機能低下のみであれば、元通りの機能が回復することが期待できますが、神経細胞自体の死滅・破壊までダメージが及んでいる場合には、完全に元に戻らないことも考えられます。

しかし、神経細胞は新たに生まれ、軸索を新たに伸ばして新たな神経ネットワークを構築し直そうとするため、機能が回復してくることが期待できます。

新たに神経細胞が生まれるにはBDNF(脳由来神経栄養因子)というタンパク質を脳内で増やす生活習慣を長期的に行っていくことで、徐々に機能が回復していくことが期待できます。

機能が低下した時点のケアで早めに予防を行うことが最も大切です。

神経細胞が死滅・破壊されてしまった場合でも絶望せず、機能が回復するような生活習慣を地道に続けていきましょう。

当院での改善をご検討の方は自律神経失調症をご覧ください。

遠方で来院が難しいけれど、カウンセリングを受けたいという方はオンラインカウンセリングをご利用ください。

心身堂鍼灸院院長
この記事を書いた人
鍼灸師 佐野 佑介

静岡県浜松市中央区和地山で自律神経・メンタル専門のはりを刺さない心身堂鍼灸院を開業。
自身も26歳の時にパニック障害から自律神経症状に苦しんだ経験を持つ。
パニック障害、広場恐怖症、うつ病などの精神疾患領域と起立性調節障害、機能性ディスペプシア、眩暈などの自律神経疾患の専門の鍼灸師。
国家資格 はり師(148056号)・きゅう師(147820号)
医薬品登録販売者試験 合格

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