こんにちは、浜松市のはりを刺さない鍼灸師の佐野です。
自律神経失調症になられた方の中にはストレスがないのにいったい何が原因でこんな風になってしまったんだろう?と困られている方も一定数いらっしゃいます。
自律神経失調症は医学的に正式な病名ではありませんが、自律神経が正常に機能していない時に便宜上つけられる名称の為、病院でも丁寧な説明もなかなか受けにくいことも多いです。
今回はストレスがないのに自律神経失調症になってしまう原因について一緒に考えていきたいと思います。ぜひ最後までご一読ください。
結論: ストレス=嫌なことだけではない
一般的なストレスのイメージは、ネガティブな嫌な事を思い浮かべられる方が多いのではないでしょうか?
例えば、夫婦仲が上手くいっていない、上司や同僚に嫌な人がいる、子供がゲームばかりで将来が心配、経済的な不安があるなどです。
しかし、自律神経失調症を引き起こすような、医学的なストレスは必ずしも嫌な事ではなく、「ストレス反応を引き起こす」ことすべてを指します。
例えばマリッジブルーなど、大好きな人と一生一緒にいられることを約束する結婚という幸せがストレス原因となって鬱的になる場合もあります。
しかし、そういった方に結婚したくないのか?結婚が嫌なのか?と聞くと結婚できて幸せなはずなのになぜ・・・。といった感じで、ネガティブではない、場合によってはポジティブな出来事さえもストレスになりうるのです。
思い当たるストレスがないという方の場合は、ストレスとはどういったものか?という認識を変えて自分の生活を振り返っていくことで、自律神経失調症を引き起こした原因を特定していくことにつながります。
自律神経による症状が現在出ているということは、何らかのストレス反応が強くもしくは長期的に体の中で起こっていたことを示しています。
また、よくあるのが、元々ストレスがかかって体調が悪かったが、ストレス原因が取り除かれた後も症状だけが残り続けている場合です。
現在は特別ストレスがかかっていないけれど、症状による生物的ストレスがかかり続けている場合、自律神経の症状が負のループを形成してしまいストレスが解消されても治らない状態になってしまいます。
ストレスとは物理学の言葉。元々の意味とは?
ストレスという言葉は今や日常生活に浸透していますが、元々は物理学で用いられている言葉です。
物理学の世界では「物体に圧力を加えると生じる歪んだ状態」と定義されています。
これが心理学や医学の世界で、「外からの力に抵抗するための内部の反応」という意味を持つようになり、私達が普段口にするストレスとして広まりました。
何となく悪いものというイメージを持たれている方も多いですが、物体に圧力を加えるものから圧力が加わって歪んだ状態を指しています。
その為、圧力を加える原因となったものをストレッサー(ストレス状態を作り出す原因)と呼んでいます。こちらも、ストレスと並んで心理学や医学の世界では使われています。
物理の世界でいうストレスというのは力学的な話に限定されています。
心身におけるストレスとは?
ストレスの元々の意味について理解したところで、さらに詳しくストレスについて詳しく学んでいきましょう。
医学の世界では外部からの刺激や内部からの刺激が加わることで、ストレッサーに対抗しようとしてストレス反応が発生します。
ストレス反応をごく簡単に説明すれば、交感神経を急激に高めて、戦うor逃げるという行動をとりやすくする身体反応で、心拍数の増加、血圧の上昇、筋肉の緊張、発汗などを引き起こします。
ストレス反応により、体は必要なエネルギーを確保し、危機に対処する準備をします。
ストレス反応は進化の過程で私達が獲得した反応です。通常で考えればストレス反応は体にあまりよくない反応です。
しかし、目の前に熊が現れた時に今後の健康を優先している場合ではありません。危機が迫った時に、少々の健康を犠牲にしてでも生き残ることを優先させた緊急時専用のシステムなのです。
しかし、進化の過程では主に熊などに狙われるといった短期的な危機的状況(ストレス)に対処するために獲得した機能であるため、長期的にストレスを受け続けると本当に健康を害していってしまうのです。
自律神経失調症は本来は命を守るために獲得した緊急時専用のシステムが、頻繁に発動することでストレス反応の端緒である少々の健康を犠牲にするという短所が顕在化した結果出てきていると考えることが出来ます。
幸せなこともストレスになる?
前述しましたが、ストレスは必ずしも「嫌なこと」だけが原因ではありません。
楽しいこと、幸せなことでもストレスになることがあります。
例えば、好きな人との結婚、出産、新しい仕事、志望校への入学など、これらは一見すると幸せな出来事ですが、実は大きなストレスになりうるのです。
私達の脳がストレス反応を起こす場面は、環境の変化との関わりが強いことがわかっています。
自覚的に楽しい、嬉しい、幸せという感情と必ずしもイコールにならないのです。幸せな環境にいるのに自律神経失調症の症状で苦しまれている方というのは、意外と多くいらっしゃいます。
自覚できないストレス原因
自律神経失調症の方で、ストレスになることがありますか?と聞かれて、思い当たる節がない方の場合は高確率で自覚できていないストレスが原因になっていることが多いです。
自分の感情を認識する能力が低い方の場合はストレスを自覚しにくいという傾向が元々ありますが、それだけではありません。
例えば、部屋の温度が快適な温度に保たれていない、湿度が高くてじとじとするなど、外部環境からのストレスになりますし、肩がこる、腰痛があるなどの身体の不調もストレスになります。
短期的であれば問題ないのですが、これが持続している状態が長期ストレスとなる為、自律神経失調症を気が付かない間に引き起こす原因になるのです。
一見すると大きなストレスには見えませんが、これらが積み重なったり、入れ代わり立ち代わりダラダラと長期的にストレス反応が起き続ける状態が続いていると、大きなストレスとなります。
ストレス反応が自律神経に悪影響を与えて、自律神経失調症を引き起こしてしまいます。
短期ストレスは嫌な事でも自律神経に悪影響を与えない
長期的なストレスは自律神経を乱し、自律神経失調症を引き起こす原因となりますが、単純にストレスがすべて悪影響を与えるというわけではありません。
特に短期的なストレスは積極的に受けると心身を強化させたり、活性化させる効果があるので短期的なストレスは積極的に生活の中に取り入れていきたいストレスになります。
健康の為に運動がいいとよく言われますが、これも短期ストレスを加える行為です。しかし、毎日ナン十Kmも走るなど、超時間過度に運動をすると長期ストレスに変化してしまいます。
身体を冷やさないようにすることは大切ですが、冷水を浴びるなどはストレス反応を結果的に抑制することもわかっています。
冷水を浴びて体温が急激に下がるというのは、身体にとってはストレスとなりますが冷え切るまでではなく、短期的に水を浴びるだけであれば、むしろ健康に良いのです。
ストレスがない生活が良いのではなく、短期ストレスが適度に存在する生活が自律神経を整えていくうえでも重要になります。
長期ストレスが自律神経失調症を引き起こす
長期のストレスが続くと連続して、ストレス反応が何度も起こり続けることになります。
つまり、交感神経優位の状態が長時間続きその結果、身体が休んでいる暇がなくなってしまいます。
長期のストレスにさらされたときによく出てくる症状の代表が、不眠です。
本来であれば1日が終わり、暗くなってリラックスしてくれば眠くなって自然に眠り、眠りによって心身が回復します。
しかし、交感神経優位の状態のまま暗くなってもリラックスできない為、眠ることが難しくなってきてしまいます。
その結果、心身に疲労が蓄積し、その疲労がストレス反応を引き起こし、さらに交感神経優位の状態になり、その為眠れなくなり、といった負のスパイラルに入っていきやすくなります。
また、副交感神経が働くことでスムーズな消化吸収が行われるため、交感神経が優位で副交感神経の働きが低下すると、心身の健康を保つために必要な栄養を食べていても消化吸収できなくなり、身体のあちこちで栄養不足も発生してきてしまいます。
自覚はなくても、自律神経失調症になる方は何か、長期ストレスがかかっている可能性があるので、生活全般を振り返ったり、他の疾患が隠れていて長期ストレスをかけていることがあるので、客観的に分析していくことが、とても重要になってきます。
まとめ
ストレスは必ずしも嫌な事や心理的な事だけがストレスではありません。
楽しい事や嬉しい事、幸せな事であっても私達の身体はストレス反応を起こす場合が少なくありません。
また、心理的・社会的なストレスだけではなく、物理的・化学的・生物的ストレスなど様々なストレスがあり、それらすべてが自律神経失調症を引き起こすストレス原因となりえます。
ストレスすべてが悪いのではなく、短期ストレスは心身にとって有益な作用もあるので、ストレスをすべて避ける必要はありません。
長期のストレスがかかっていないか、客観的に振り返って分析していくことが大切です。
また、鍼灸治療は副交感神経を刺激する作用が強い施術法の一つです。長期のストレス反応を起こした結果、副交感神経の働いている時間が短く、交感神経優位な状態が継続している場合には、鍼灸によって副交感神経優位の状態になるようにサポートしてもらうことも自律神経失調症の改善には有効です。
鍼灸施術を受けながら、食事・睡眠・運動・ストレス管理を徹底して整えていくことが自律神経失調症を改善するうえではとても重要です。
当院での改善をご検討の方は自律神経失調症をご覧ください。
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