ストレス性高体温症(心因性発熱)|自律神経失調症・起立性調節障害で原因不明の微熱が続くのはなぜ?
結論:ストレス性高体温症(心因性発熱)はストレスを取り除いて神経系を休ませることで回復します
一般的に発熱は体内で炎症が発生した際に発熱が起こります。
例えば風邪を引いたというのも喉や気管支の炎症ですし、骨を折った、大きな切り傷を負った、傷口から細菌感染した、食中毒になった、蜂や蛇などの毒も炎症が起こす為、発熱します。
ストレス性高体温症は直接炎症が関わらない特殊な状態です。
医学的に血液検査や全身の画像検査などの精密検査をいくら行っても、発熱を引き起こしている炎症が全身のどこにも見当たらないことから、原因がわからない発熱となります。
多くの場合、37.5~38度の微熱が継続している事が多く炎症を抑えて熱を下げる作用のある解熱鎮痛剤を使用しても、ほとんど効果はありません。
薬が効かない原因不明の微熱が続くことになります。
原因がわからない、薬が効かないことから、何か悪い病気が見落とされているのではないか?と不安になってしまう方も多いですが、微熱が続く他の要因(炎症以外にも甲状腺機能の亢進など)がないことをまずは確認することが検査の重要な役割です。
他に微熱につながるような要因がないことがわかって初めて、「ストレス性高体温症(心因性発熱)」であるという診断が出来ますので、原因が医学的な検査でわからないことは重要なのです。
ストレス性高体温症はストレス反応が継続的に身体に起こることで視床下部の体温調節中枢に悪影響を与えて微熱を引き起こす為、ストレスの原因が必ずしも心因性(心理的ストレス)である必要はない点には注意してください。
回復にはストレス原因を取り除いて神経の機能が回復するように休息することが何よりも大切になります。
体温調節中枢は視床下部にある
自律神経の命令を下す中枢は主に脳幹(脳の後方)と視床下部(脳の中心部)にありますが、体温調節中枢は視床下部の視索前野という場所に存在します。
体温調節中枢がどのぐらいに体温を保持するのかを決定して、発熱量と放熱量を調整するように全身に命令を出すことで体温を調節しています。
何らかのストレスが加わったことが原因で体温調節中枢が乱れることで本来の体温よりも高い体温に調節が行われるようになり、解熱剤の効かない微熱が続いてしまいます。
ストレス性高体温症を引き起こすのは交感神経の過剰
ストレス性高体温症は交感神経の過剰興奮状態が持続している時に起こる症状です。交感神経は運動しやすい体の状態にセットする神経です。
運動をするとき身体が冷え切っていたら動きにくいですよね。
ウォーミングアップは体温を高めて動きやすい体の状態にしますが、緊張状態になると心拍と呼吸を速め体温を高めます。
具体的には、体内で脂肪を燃焼させて熱の生産(エネルギーを生産)を促進して、血液を全身に送り込んで体温を上昇させます。
軽いウォーミングアップをして軽く交感神経優位の状態になった時に一時的に体が熱くなった状態がが一時的ではなくなってしまったのが、ストレス性高体温症の状態です。
ストレスが長期化した際、必ずストレス性高体温症になるわけではなく、人によっては熱を生み出せずに冷え性や低体温(基礎体温が低い)になる方もいます。
結局体温は上がるの?下がるの?どっちなの?ということにはなりますが、どちらも交感神経の過剰興奮で起こるので、交感神経が刺激された際に身体がどういう反応をしたのか?の差です。
どちらかというと、交感神経過剰では長期的には低体温傾向になっていく方(筋肉が緊張してこり固まり、血液循環が悪くなり、エネルギーが作り出せなくなっていく)方が多いです。
何年も微熱が続くという状態の方を私自身診させて頂いたことがないので、最初は微熱が続き途中で熱を作り出せなくなって冷え性になっていくのかもしれません。
冷え性の相談に比べて、微熱が続いているという相談のほうが圧倒的に少ないのが実際のところです。
その為、原因がわからない微熱に対しての情報も少なくより不安にさせてしまう原因にもなっています。
ストレス性高体温症の治し方
ストレス性高体温症を治すためには、交感神経過剰を引き起こしているストレスを取り除いてストレス反応を止めたうえで、体温調節中枢の神経細胞の機能を回復させる必要があります。
ストレスには、大きく物理的、化学的、生物的、心理・社会的、があります。
ストレス反応は必ずしも心理的ストレスが原因ではない為、例えば残業が多く睡眠時間が短い生活が長期間続いても、ストレス反応を引き起こして微熱が継続するという状態が起こります。
熱中症や感染症、食中毒などの後から微熱だけがいつまでも下がらないという場合には、身体が十分に回復していない生物的ストレスが継続していると考えられるので、生物的ストレスを改善させることが大切です。
ストレス原因を突き止めてストレス原因を取り除き、そのうえで体温調節中枢の機能が戻るようにしていくことで体温調節中枢が正常に機能し始めると微熱が治まっていくようになります。
体温調節中枢への血流不全
首肩こりがひどい場合には、視床下部へ血液を送る動脈(総頚動脈、椎骨動脈)が筋肉の圧迫を受けることで血液の流れが悪くなり、十分な酸素と栄養の供給不足から、体温調整中枢が正常に機能しなくなり、微熱が発生してしまうことがあります。
ストレッサーを取り除いて休息していても、脳への血流が悪いと休息の効率が悪いため休んでいる割になかなか改善しないといったことが起ってきます。
自覚できない場合もありますが、血管に近い首の骨際の筋肉のコリを改善しておくことが大切です。
神経に必要な栄養素の不足
神経が正常に機能するためには、神経自体のエネルギー源が安定供給されていること。
神経同士の情報の伝達を行う為の神経伝達物質の原料(アミノ酸)が十分供給されていること。
この二点が重要です。
微熱が出ていると食欲も低下していることがあり、その場合には栄養不良も重なるため胃腸への負担が少ないアミノ酸を利用するなど、栄養を補っていく必要があります。
胃腸の機能が弱っている場合には先に胃腸への血流を上げて胃腸の機能を取り戻す対処も大切になります。
睡眠不足の解消
神経細胞の回復は原則的には眠っている時に起こりますので、睡眠時間を十分に確保することが大切です。
不眠症などの傾向がある場合には、先に不眠症の治療が必要になります。
運動不足の解消
微熱があっても炎症が起こっているわけではないので、運動を行うことで、心拍数や血圧をあげて脳への血流量を改善することも有効です。
また、運動することで神経細胞の新生・再生を促すBDNFというタンパク質が脳内で増えることがわかっていますので、有酸素運動を行うことをお勧めします。
慢性的に発熱していると息が上がりやすい、疲れやすいなどの状態になりますので、過度な運動にならないように専門家と相談しながら運動強度を設定することが大切です。
まとめ
発熱には炎症性のものとストレスによって体温調節中枢が乱されて発熱する場合の二つがあります。
炎症性の発熱であれば解熱剤で発熱を抑えることが出来ますが、ストレス性の場合には炎症を抑えて解熱させる解熱剤は効果がありません。
ストレス性の発熱はストレスを取り除き、十分な休息をとることで改善されてきます。
体温調節中枢は視床下部にあり、その設定温度がストレスによって乱されてしまうことでストレス性高体温症という状態になります。
基本的にはストレス反応により、交感神経が過剰になった状態が持続したことで微熱が続く状態です。
ストレス反応を引き起こしているストレス原因を見つけて取り除き、十分な休息をとることで回復してきます。
脳血流が悪い、栄養状態が悪い、睡眠不足、運動不足の状態では神経細胞の回復効率が下がる為、休息に必要な期間が延長される傾向があります。
首こりや胃腸の不具合、不眠症などがある場合には鍼灸や整体などの力を借りて回復効率を高めておくことも大切になります。
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