「やりたいことがない」のは、あなたが「普通」である証拠。

ブログをご覧いただきありがとうございます。

浜松市のはりを刺さない鍼灸師の佐野です。

当院でお悩み相談を受けていると、中高生から老年の大人まで、幅広い世代から共通して寄せられる切実な声があります。それは、「自分には、心の底からやりたいことがない(見つからない)」というお悩みです。

SNSを開けば、好きなことに没頭して輝いている人が目に入り、「自分はなんて空っぽなんだろう」と自分を責めてしまう。そんなモヤモヤを抱えていませんか?

今回は、定型発達(平均的な感覚を持つ方)にとっての「正しい情熱の育て方」について一緒に考えていきたいと思います。

結論:約8割の人は「やりたいことがない」のが普通です

まず、声を大にしてお伝えしたいのは、「やりたいことがないのは、生物学的に見てごく自然で正常な状態である」ということです。

世の中で言われる「寝食を忘れて没頭する」「誰に止められてもやりたい」という強烈な内発的な動機は、実は「非定型発達」特有の、ある種、偏りのある「こだわりの強さ」が必要とされる領域です。

一方、いわゆる「定型発達」と呼ばれる、周囲と調和して生きる力に長けた方々にとって、そこまでの熱狂を持てないのは当然のことです。

やりたいことが見つからないと嘆く必要は全くありません。

定型発達の人にとっては、やりたいことがない、みつからないのが「普通」なのです。

定型発達の「生存戦略」:なぜ「好き」を無視してしまうのか

なぜ定型発達の人は、自分の中から湧き出る「好き」を見つけにくいのでしょうか。そこには、人類が進化の過程で身につけた高度な「生存戦略」が関わっています。

定型発達の方の脳は、「集団と同化し、協調すること」に最適化されています。

かつて集団から孤立することが「死」を意味した時代、私たちは個性を消して周囲に溶け込み、自分がいかに集団にとって有益な存在かを示すことで、自分の立ち位置を確保してきました。

  • 非定型の戦略: 周囲の反応を気にせず、「好きだから」という理由だけで突き進む。

  • 定型の戦略: 常に周囲のレーダーを張り、集団の和を乱さない「正解」を選ぶ。

定型発達の人にとって、周囲を無視して「自分の好き」だけを追いかける行為は、本能的に「集団からの逸脱」=「死」を連想させます。

そのため、無意識に自分の本音(内発的な好き)を無視し、ブレーキをかけてしまう傾向があるのです。

無理なく「やりたいこと」を見つける2つのルート

「内発的な情熱が持てない」と悩む定型発達の方が、人生を充実させるための近道は、自分の内側ではなく「外側(社会)」に目を向けることです。

1. 三大欲求(食・睡眠・性)に根ざした「安心できる趣味」

食欲・睡眠欲・性欲といった本能に直結する分野は、人類共通の価値観です。これらは多くの人がやっている(協調している)ため、不安を感じることなく没頭できます。

  • 食欲: 食べ歩き、料理、釣り、狩猟
  • 睡眠・休息: サウナ、リラクゼーションマッサージ、森林浴
  • 性・美: ファッション、美容、恋愛

「みんながやっているから」という理由は、定型発達の方にとって強力な安心材料になり、それが結果として「楽しい」という感情に繋がります。

2. 「社会的報酬(評価)」をセットにする

定型発達の人にとって、やりたいことは「集団から評価される(社会的報酬)」ものである必要があります。ここが非定型の人の「好きだからやる」と根本的に違うところです。

例えば「野球」を例に挙げると:

  • 非定型の人: 周囲の良し悪しに関わらず、野球そのものに純粋に熱中できる。(今のスライダーはこういう持ち方を○○選手が独自に開発することで可能になったみたいな、所謂ウンチクに興味があることが多い。)

  • 定型の人: 野球を通じて仲間ができる、試合で活躍して褒められる、野球好きな人との会話ができる、といった「集団とのつながりやメリット」があって初めて、好きなものになります。

周りの人の目が好意的になるものを、好きなものにしましょう。それが定型発達の方にとって最も持続可能な好き・やりたいの戦略なのです。

SNSの「キラキラ」も立派な社会的報酬

ここで一つ、現代ならではの視点についても触れておきましょう。

よくSNSで見かける「キラキラした日常」や「充実した趣味」の発信。これを見て「自分はあんな風に発信できる何かがなくてダメだ」と焦る方も多いですが、実は「発信すること自体」が定型発達の方にとっての重要な報酬になっています。

  • SNSで「いいね」をもらい、集団からの称賛を得る。
  • 「充実している人」としてコミュニティ内での価値を高める。

これらはすべて、生存戦略に基づいた「社会的報酬」を受け取るための行動です。

「見せびらかすためにやっている」とネガティブに捉える必要はありません。

「誰かに見てもらい、認められることで、自分のやりたいことが初めて形になる」

それが定型発達の特性を最大限に活かした、現代における「好き」の育て方なのです。

「純粋な好き」という呪縛を解き放とう

「それ自体を無条件に好きにならなければならない」という考えは、一旦脇に置いてください、そういう「純粋な好き」は非定型の才能のなせる業です。

ちょっと挑戦してみて、社会的報酬が得られないと「これは好きじゃない」と感じてしまうのは、脳の戦略が正しく働いている証拠です。

もし今、あなたが熱中できるものを探しているなら、

  • 「これをやれば、誰かに『すごい』と言ってもらえるか?」
  • 「これをきっかけに、集団とのつながりが増えるか?」 という基準で選んでみてください。

社会的報酬(他者からの承認や繋がり)を手に入れた先で、それはあなたにとっての「かけがえのない大好きなこと」に変わっていくはずです。

最後に

「純粋な好きややりたい」ことがなくてはいけない、という思い込みは捨ててしまってOKです。

あなたから「純粋な好き・やりたい」と追いかけている人がまぶしく見えているかもしれませんが、それは非定型発達なのか、定型発達で「それっぽく」見せているだけかのどちらかです。

定型発達の人は、内発的な「純粋な好きややりたい」は起こりにくい脳の仕組みになっています。

これはパートナー選びでも同じです。「パートナーを好き」という感情も、少なからず「社会的に認められる相手である」「自分のことを必要としてくれている」「パートナーがいるという状態」といった社会的報酬があって初めて成り立つのが定型発達の方のリアルなのです。

「私はこの人のことを本当に愛しているのだろうか?」と真剣に悩まなくていいのです。

定型発達の方の脳にとっては「この人をパートナーにしていて社会的報酬が得られているのか?」が大切だからです。

定型発達の脳の特性を理解することで、○○という理由で悩むことがわかりやすくなり、悩む自分は普通で実はほとんどの人は、みんな同じだという開き直り、やすくなります。

心身堂鍼灸院院長
この記事を書いた人
鍼灸師 佐野 佑介

静岡県浜松市中央区和地山で自律神経・メンタル専門のはりを刺さない心身堂鍼灸院を開業。
自身も26歳の時にパニック障害から自律神経症状に苦しんだ経験を持つ。
パニック障害、広場恐怖症、うつ病などの精神疾患領域と起立性調節障害、機能性ディスペプシア、眩暈などの自律神経疾患の専門の鍼灸師。
国家資格 はり師(148056号)・きゅう師(147820号)
医薬品登録販売者試験 合格

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心理・脳科学