親の呪縛から逃れないと精神疾患(パニック障害・うつ病)が治らない?

ブログをご覧頂きありがとうございます。浜松市はりを刺さない心身堂鍼灸院の佐野です。

不安障害(パニック障害、全般性不安障害、広場恐怖症)やうつ病などの精神疾患へのなり易さは統計的に養育環境の影響を強く受けていることがわかっています。

肉体だけの問題で症状が出ている方は別ですが、心理的な問題と合わさっている場合には、生き方(価値観)を変える必要性があります。

私の親は良い養育をしてくれたという方でも良くお話を伺っていくと適切な養育を受けていないことも少なくありません。精神疾患になってしまったら一度は自分の人生を振り返ってみることが大切です。

多くの場合、親の価値観をそのまま自分の価値観と信じて生きてきた方が、パニック障害やうつ病を長年引きずっていることが多く、この価値観を切り替えることが出来た方が大きく改善されていきます。

今回は親の呪縛から逃れないとパニック障害やうつ病が治らない理由について一緒に考えていきたいと思います。是非、最後までお読みください。

結論:親の呪縛から簡単に解放されるわけではないが、勇気をもって自分の人生を生きよう

私達の脳は先天的な遺伝子による影響を強く受けるものの、乳幼児~幼少期~成人の過程の中で、子供は親からどのような養育を受けるのかもとても重要です。

なぜなら、私達の脳は未完成な状態で生まれ外界の刺激を受けながら、外界の環境に適した脳へと発達していくからです。

例えば、生まれてすぐ親が亡くなってしまい満足な養育を受けられずに育った子供は、一人でも生きていけるような脳を発達させます。

基本的に自分のことは自分でやり、困っても自分で何とかする。助けてくれる存在を期待せずに、他人に対しても警戒を怠らない。このような交感神経優位な状態で生きていく脳へと発達していきます。

ここまで極端な環境でなくても、お世話はしてくれるけれど、○○しなさい!あなたはいつも○○ね!といつも否定的な言葉をかけられる。

逆に何をやっても良いよと一見受容的に見えるものの、単純に甘やかしているだけで、挑戦をさせず、色々親が先回りして嫌な気分になる経験を阻止されていたり、生活の世話や判断をすべて親が行って自分であまり決めずに来たなどがそうです。

また、障害を持った兄弟がいて、親はそちらにかかりっきりになってしまっているなどが脳の発達に悪影響を与えます。

常に安心感を感じられずに育ってきた方は、常に交感神経が優位の状態で、不安や攻撃性が高くなる為、交感神経が刺激されてしまうといった悪循環からストレス過多で精神疾患に罹りやすくなります。

また、親が子供が失敗をして嫌な気分にならないように過度に守られ過ぎて育ってきた方の場合は、失敗で傷つきやすく、感情のコントロールも苦手で、普通の人であれば一晩寝れば忘れてしまうような些細な出来事でも、気になって強いストレスを受けてしまう為、ストレス過多から精神疾患に罹りやすくなります。

精神疾患への罹りやすさは養育環境によって影響を受けるのはこのような理由からです。

しかし、脳が今の状態に発達したのはあなたの養育環境ではそれが生存するのに有利だったからこそそのような脳の発達をしてきたともいうことが出来ます。

つまり、あなたが無意識で取っている行動や思考は、小さい時に生き残る方法としてプログラムされた思考パターンになっています。

親の呪縛から解放されるとは、この生き残る方法を手放すことであり、それにはとてつもない恐怖が伴います。

私も多くの精神疾患の方を診させて頂いていますが、この恐怖に打ち勝って自分の生き方に切り替えていかないと精神疾患から改善していくことは難しいです。

恐怖に負けて元の思考・行動に戻って精神疾患と付き合い続ける方も少なくありません。親の呪縛から逃れ、精神疾患を克服するには、覚悟と勇気が必要なのです。

生存戦略を知る為にあなたの養育環境を知ろう

親子関係についての話は親の子育てが悪かったから、あなたが精神疾患になったのだという責任を親のせいにするような感じがありますが、親子関係について振り返る目的はそうではありません。

あなたが今の生存戦略をとっている理由を知ることで、生存戦略を書き換える手掛かりを探る為です。

親に「あなたのせいで私は精神疾患になった!」と責めてもあなたの精神疾患が治るわけではありません。

なぜ、精神疾患になり易い生存戦略をとっているのか?を理解し、その戦略をとらざるを得なかった自分を受け入れ、そのうえで精神疾患を治すための生存戦略を新たに組み直すといった改善プロセスへとつなげていくことが必要です。

あなた自身の生存戦略を理解し、その生存戦略をどういう理由からとってきたのか?そのきっかけとなったのはどのような養育が影響しているのか?自分の感情と向き合うことから生存戦略を書き換える最初のステップが始まります。

共感的応答をされてきましたか?

共感的応答というのは、子供が親の手助けを必要としている時にすぐに気が付いて反応し、子供の言葉に返事をして、子供のしていることやしたい気持ちを受容したうえで、より良い方向へと導いていくことです。

反対に子供が親の手助けをしていても気が付かない、子供の声掛けに対して無視をしたり反応しない。しつけであったとしても、子供のしていることに否定的な言葉をかけると子どもは自分は愛されていないと感じてしまいます。

子供の時に親に共感的応答をしてもらうことで、子供は自分の感情のなだめ方やストレスへの抵抗性を高めていきます。

共感的応答をして育てられると、自分の感情を受容して、なだめて冷静になり、建設的な解決策を模索するという生存戦略を獲得します。

しかし、親に共感的応答をしてもらえなかった場合には、我慢や感情の抑圧によってその場をやり過ごすという生存戦略を獲得します。

自分の感情を抑圧することでどんどん感情が溜まっていき、それが抑えきれなくなった時に精神疾患として不安やうつ症状などに苦しむことになります。

私の親は可愛がって私を育ててくれたと感じていましたか?

精神疾患が発症した人の中には親との関係が悪い方もいますが、私の親は私のことを大切にしてくれて、可愛がってくれたと、親について話される方もいます。

子供は本能レベルで、親を無条件に愛するようにできています。その為、親に愛されて育ったと感じることは子供にとって重要な自己肯定の要素の一つになります。

親に愛されなかったという感覚は心にとても深い傷を与えてしまいます。

少しややこしいのは、あなたが親に愛されていなかったということではなく、あなたがありのままの自分が親から受け入れられている、愛されていると感じるような養育をしてもらえていなかったということです。

親に愛情があっても、あなたに伝わっていなければ私はありのままの自分を受けれてもらえない、愛してもらえないという感覚を形成してしまいます。

多くの親御さんが子供を愛しているからこそ、間違った方向に行かないように、しつけをするわけですがそのしつけの方法が否定から入ってしまうことが多く、これが子供の心を傷つけてしまうのです。

親に愛されていたという感覚があまりなかったとしても、大人の自分が論理的に自分自身の感覚がおかしいのだと自分の感覚を否定し、親は私のことを愛してくれて、可愛がって育ててくれた!と思い込むことで、自分の心を守っている場合があります。

これは親子関係の非常にデリケートな問題で、親に愛されて、可愛がって育てられたという自信が持てていない方ほど、この話題については過剰反応を起こして、不快な気分になります。

ここに問題がない方は、「へぇ~そうなんだ」ぐらいで、あまり感情が動きません。

その為、私達にとって「親に愛されていなかった。」という感覚は自分の心を一瞬で破壊してしまうような危険な認識になる為、親に愛されていないと感じていた記憶を抹消し、寂しさや親に対する不満や怒りを抑圧している場合があるのです。

成人しているのにも関わらず、親に判断を仰いだり、一人の大人として心理的に自立できていない状態でいる場合には、親からの愛情不足を感じていた可能性があります。

ここで言う自立というのは、自分で生活できる自活とは違い、精神的に親と比較せずに自分独自の価値観に基づいて生きているということです。

子供は親から十分に可愛がられて育つと、親の愛情が十分で満たされた時点で、親からある程度離れていきます。

それは、自分の中に親の存在(常に味方でいてくれる存在)を感じることが出来ている為、親から離れても安心していられるからです。

しかし、ありのままの自分を受け入れてもらえなかった、愛してもらえなかったという感覚が残っている人は、親にもらっていない受容や愛情をもらおうとするため、いつまでも親のそばにいたり、いつまでも親の保護を求める。

逆に親に反発して離れて暮らしているけれど、「私は親のようにはならない」と実は親を意識して自分の生き方を決めて生きてしまっている場合があります。

不安定な愛着スタイルを形成すると精神疾患に罹りやすい

私達は動物的なレベル(本能)で、親を自動的に愛するようにできています。これは未熟な状態で生まれた人間が最初に保護してくれる他者が親だからです。

動物の世界で有名なのが鳥のインプリンティング(刷り込み)で、生まれて初めて見た動く動物を親だと思い込むのが刷り込みです。

人間の場合は生まれた時は目も良く見えていない為、世話をしてくれている人にこの刷り込みが発生し、人間の場合は愛着形成と深い関わりがあります。

赤ちゃんはまだ言葉を話すことが出来ません。その為、自分の不快(空腹、排泄、暑い、寒い、眠い、寂しいなど)を泣くことで親に伝え、親は赤ちゃんの泣き声からどのような不快を感じているのかを察して直ぐに対応します。

その為には常に赤ちゃんが助けを求めていないのかを適切な距離で見守り、適切に赤ちゃんの求めている不快を察知してすぐに手助けするといった対応が求められます。

適切な養育を受けて愛着形成がスムーズに行われると、子供は社会性が高く、交感神経と副交感神経のバランスが良いため病気への抵抗性が高く、攻撃性の低い、ストレスに対する抵抗性が高い、情緒が安定した状態の安定型の愛着スタイルを形成します。

安定型愛着スタイルを持っている人は自律神経のバランスが良く、不安から過剰に無理をするということをしないため、精神疾患に罹る可能性が低い大人へと成長します。

逆に赤ちゃんの泣き声からどのような不快を感じているのかをうまく察知できなかったり、対応を後回しにしてしまう、近すぎる距離で過剰なお世話をしてしまうなどの養育をしてしまうと、愛着形成が上手くいかなくなってしまいます。

その結果、うまく愛着形成がされなかった子供は不安定型愛着を形成することになります。

不安定型愛着は安定型愛着スタイルとは異なり、人との関係性を避ける回避型と人から自分が承認されているのか?を常に不安と戦っている不安型、この二つが入り混じったアンビバレント型に分けられます。

回避型は最初から他者を信頼しない、助けを求めないことで自分が受け入れてもらえない、愛してもらえないことに対して予め防衛線を引いて自分を守っています。

一方、不安型は自分が受け入れてもらえない、愛してもらえないことに対して不安を常に抱えており他者に何度も何度も自分を受け入れているのか?愛しているのか?を確認します。

回避型の人は自分の能力の範囲を的確につかんで生活していればストレスコントロールには成功している為、人間関係が希薄になることはあっても、対人関係からストレスを受けるほど人と関わろうとしない為、精神疾患を発症するリスクは低めです。

能力を超えたことをせざるを得なくなった状況になっても、他者に助けを求めない、そもそも他人を信頼していないので、オーバーワークによる自律神経の問題に悩まされることに注意が必要です。

不安型やアンビバレント型は他人からの承認や受容をしてもらえないと自分が存在していていいのかの存在の肯定が出来ない為、不安な感情を頻繁に感じながら生活していることが多いです。

その結果、他者に受け入れてもらえるように嫌なことも我慢し、必要以上に他人の役に立とうとしたり、受け入れてもらえる選択をし続けて、自分がどうしたいのかが良くわからないなどの悩みを抱えます。

他者に受け入れられているのか、他人からどう見られているのか、こうしなければ人は自分に幻滅するのではないか、自分のことを必要ないと思っているのではないかといったことが頭の中に浮かんでいる為、ストレス過多になり易く、情緒も不安定になります。

不安主体の人と、大切にしてくれない、愛してくれないということに対して怒りを感じやすく、イライラしやすかったり、常に何かに不平不満を感じてストレスを受け続けていることが多いです。

頑張りすぎてしまう理由

親に受け入れてもらえない、愛してもらえなかったという感覚は、人間関係の基礎になります。

友人関係でも基本的に外面が良く、意見の対立があっても我慢して仲良くしようとします。また、自分の意見を言わないけれど、不満は溜まっています。

仕事でも職場の上司や同僚から受け入れてもらえるように、人よりも頑張って仕事をこなしたり、他の人が仕事を行いやすいように先読みをして行動し続けます。

体調不良であっても、仕事上迷惑をかけることが出来ないといって、無理をしてでも仕事を継続しようとしてしまいます。

こういった受け入れてもらえない、愛してもらえないといった見捨てられ不安を抱えていることが多く、オーバーワークと不安からの心理ストレスから精神疾患を発症します。

受け入れてもらえなかった、愛してもらえなかった感覚を感じる

親にありのままの自分を受け入れてもらえなかった、愛してもらえなかった感覚を感じると悲しい、辛い、怖い気分になります。

この感情の抑圧が強い方ほど問題が根深いのですが、親の呪縛から逃れるには子供の時に辛すぎて処理できなかった抑圧された感情をもう一度感じて処理することが必要になります。

抑圧された感情が弱いものであれば、認知行動療法で正しく認知し直すだけで良いのですが、抑圧された感情が強い場合にはこの感情を処理せずに認知行動療法を行っても効果があまりありません。

しかし、この感情の処理は辛いことが多く、抑圧された感情の蓋を外す行為には恐怖が伴います。なぜなら、感情を抑圧をすることであなたは生き残ってきた為、抑圧された感情の蓋を外すことで死ぬのでは?おかしくなるのではないかという恐怖が出てくるからです。

この恐怖と向き合うことで精神疾患への改善への道が開けてくるのですが、この恐怖と向き合うぐらいなら薬を使い続けて生きていくという選択をとられる方もいます。

これはどちらが正しいとかではなく、それほどこの作業には辛さが伴うということです。精神疾患によって生活への支障が低い方ほど、向き合いずらい(辛さのトレードオフになる)為、ある程度重い状態の方の方が逃げ場がない為、改善しやすい傾向はあります。

抑圧された感情の処理が行えると今まで人との付き合いの中で湧き上がってきていた感情の乱れ、ネガティブな感情がわきずらくなっていき、冷静に人と関わることが出来るようになっていきます。

まとめ

精神疾患は過去の養育環境の影響を強く受けることがわかっています。

肉体だけの問題で精神疾患を発症している場合ももちろんある為、すべてのケースではありませんが、心理的な問題を抱えている場合には養育環境を振り返ることが必要になります。

私達の脳は未熟な状態で生まれて、外界の状況に応じて適応できるように発達のさせ方を変化するようにできています。その為、養育環境がどのような環境により適応的なのか?に強い影響を与えます。

あなたが無意識にとる行動や思考、判断のほとんどは小さい時に獲得した環境適応プログラムに沿ったものです。

親の呪縛とはこの環境適応プログラムを書き換えることですが、生き残る為に獲得した環境適応プログラムをやめるには恐怖が伴います。

あなたがとっている生存戦略を知るにはあなたの養育環境を理解することが大切です。親を責める為ではありません。

あなたが親にありのままのあなたを受容し、愛してもらえたという感覚を構築できるような接し方をして貰えていないと、親に愛情があってもそのような感覚は形成されません。

親にありのままの自分を受容し、愛されていたという感覚は子供の基本的な存在の自己肯定感に影響し、「親に愛されていなかった」という感覚は自分の心を一瞬で破壊してしまう破壊力がある為、抑圧されていることがあります。

適切な養育を受けると安定型愛着が形成され、自律神経的にも、精神的にも安定する為、精神疾患に罹りにくい大人へと成長します。

精神疾患になるまで頑張りすぎてしまったり、ストレスがたまりすぎてしまった原因が見捨てられ不安から来るオーバーワークや心理ストレスである場合があります。

改善していくためには、過去の辛かった感覚を感じ直す事が大切ですが、怖さを伴う為、生活に支障が出ていたり、強い生きずらさを抱えてきた方ほど改善がしやすい傾向にあります。

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