休憩や寝ようとすると足がむずむずする。むずむず脚症候群(レストレスレッグス症候群:RLS)

こんにちは、浜松市はりを刺さない鍼灸師の佐野です。

休憩中や寝ようとすると足が痒い、むずむずしてくる、むずむずや痒みといった不快感が気になって眠りたくてもなかなか寝付けないという症状はむずむず脚症候群(レストレスレッグス症候群)といわれています。

原因は脳内の神経伝達物質のバランスが乱れることで起こると考えられていますが、遺伝や抗うつ薬などによって症状が発生することも知られていますが、明確な原因がわかっていません。

主にはドーパミン過不足やドーパミンの合成に必要な鉄不足を改善する薬物治療が病院では行われています。

鍼灸には神経伝達物質のバランスを整える作用がある為、当院でもむずむず脚症候群を診させて頂くことがあります。

今回はむずむず脚症候群の原因と治し方について、一緒に考えていきたいと思います。是非、最後までご一読ください。

結論:神経伝達物質のバランスを整えることが大切

むずむず脚症候群(レストレスレッグス症候群:RLS)は脳内の神経伝達物質のアンバランスが原因で発生すると考えられている為、神経伝達物質のバランスを整えることが重要になります。

神経伝達物質とは、私たちの脳や神経系で情報を伝えるための化学物質です。有名なものでいうと、セロトニン、オキシトシン、ドーパミン、アドレナリンなどは一般の方でも聞いたことがあるのではないでしょうか?

神経伝達物質は神経細胞の興奮、抑制を調整する化学物質で、それが複雑に組み合わさることで、私たちが思考をしたり、感情を感じたり、身体を動かしたりすることにつながっています。

脳内の神経伝達物質のバランスが崩れると、神経の興奮、抑制が適切に行われない為、心や身体のさまざまな問題が発生します。

その一つがむずむず脚症候群です。むずむず脚症候群の方は以下のような症状を訴えられることが多いです。

  1. 脚の不快感:「むずむず」と表現されますが、他にも痛み、悪寒、痺れ、刺すような感じ、引っ張られる感じ、燃えるような感じといったように様々な形で現れます。
  2. 休息時の症状の増悪:座ったり寝たりしているなど、じーっとしている時に症状が現れやすく、活動しているときには気にならなくなることが多いです。
  3. 夜間の症状の増悪:足の不快感を寝る前に特に強く感じることが多くなり、気になってなかなか眠れないという睡眠に悪影響を与えることも多い疾患です。
  4. 動きの衝動:動くと症状が軽くなることが多いため、不快感を軽減するために、じっとしているよりも何となく足を動かしていたいという気持ちが強くなりますが、周囲の人に落ち着きがないと思われないように日常生活では我慢を強いられることもあります。

このような症状が脳内の神経伝達物質のアンバランスによって引き起こされると考えられるため、このバランスを整えることが、むずむず脚症候群の解決策の一つとなるわけです。

現代医学でわかっているむずむず脚症候群(レストレスレッグス症候群:RLS)の原因

むずむず脚症候群は、主に休息時や寝ようとしたときに足に不快感や動かしたくなる感じがして、足を動かすことで一時的に楽になる疾患です。

これは「むずむず」という日本語の表現が非常に適している場合が多いですが、正式名称はレストレスレッグス症候群といいます。

現代医学で、この疾患の原因を完全に解明できているわけではありませんが、神経伝達物質に作用する薬を投与すると改善する方がいることから、いくつかの可能性が考えられています。

その中でも注目されているのが、神経伝達物質であるドーパミン働きが悪くなっている場合です。具体的にはドーパミンの分泌が出来なくなる病気(パーキンソン病)で使われる薬を使うとむずむずとした不快感が改善する場合があります。

むずむず脚症候群の患者さんの脳内では、このドーパミンシグナル伝達の機能低下が起こっていることが報告されています。

また、ドーパミンの生成には鉄分が不可欠な為、鉄不足がむずむず脚症候群の原因の一つと考えられています。

鉄分が不足することでドーパミンの生成が十分に行われず、その結果、むずむず脚症候群の症状が生じるというわけです。

広い意味で言えばどちらもドーパミンの不足が原因になるという意味では同じです。

また、むずむず脚症候群の方の家族・親族に同じ症状を持つ人がいる場合には、60%程度の割合で同じようにむずむず脚症候群の方がいることがわかっています。

これは、むずむず脚症候群を引き起こすドーパミン代謝が遺伝的な影響を受けることがある為だと考えられています。

むずむず脚症候群の診断法は存在しない

残念ながら、むずむず脚症候群を診断するための特定の検査法は存在しません。

つまり、一部MRIなどで脳の一部に異常がみられる症例もありますが、すべての症例で確認できるわけではない為、血液検査や画像診断などで確認することはできません。

その代わりに、主に患者さんが訴える症状などから、むずむず脚症候群の可能性が高い判断された際に診断されています。

一般的な診断基準は以下の4つに当てはまることとなっています。

  1. 脚を動かしたいという強い欲求が存在し,また通常その欲求が,不快な下肢の異常感覚に伴って生じる
  2. 静かに横になったり座ったりしている状態で出現,増悪する
  3. 歩いたり下肢を伸ばすなどの運動によって改善する
  4. 日中より夕方・夜間に増強する

これらの症状がある場合に、むずむず脚症候群の診断がなされることが多いです。

病院で行う薬物治療の種類と副作用

病院の治療では、むずむず脚症候群の治療法として主に薬物治療が用いられます。

その中でも一番よく使われるのが、パーキンソン病の治療に用いられるドーパミンを増やす薬です。

この薬は脳内のドーパミン量を増やし、神経伝達のバランスを整えることで、むずむず感を緩和します。

このようなドーパミン機能の低下を補ったり、症状を緩和する目的で、以下のようなお薬が治療として用いられています。

  1. プラミペキソール、ロピニロール、ロチゴチン:これらはドパミン受容体作動薬で、脳内のドパミン受容体を刺激してドパミンの効果を模倣します。簡単に言うとドーパミンの偽物を入れて、脳を騙して症状を改善させるお薬です。
  2. ガバペンチン、プレガバリン:抗てんかん薬に分類されるお薬です。神経系での過度な興奮を抑制する作用のあるお薬を用いることで痛みやむずむず感を軽減します。
  3. レボドパ:ドーパミンは直接脳の中に入ることが出来ない物質の為、ドーパミンの前駆体(簡単に言えばドーパミンになる主要な部品)を入れて、脳内で直接ドーパミンに変換してドーパミンの量を増やすお薬です。ドーパミン量を増加させ、症状を緩和するために使用されます。
  4. フェリックカルボキシマルトース、硫酸鉄:鉄製剤で、ドーパミンの製造に必要な鉄欠乏を補うために使用されます。

しかし、薬物治療は必ずしも全ての人に合うわけではありません。

特に神経伝達物質に影響を与える為、使用量は少なめに設定されますが、ドーパミンが過剰になりすぎてしまうなど、副作用も心配されます。

遺伝性の場合は薬物治療が必要な場合も

鉄不足などの栄養不足が主体であれば不足している栄養素を増やすことで改善されていきます。

しかし、ドーパミン伝達の機能低下を引き起こしてしまうような遺伝性のむずむず脚症候群の場合、症状は重くなりやすく、また若年の早い時期から始まることが多いです。

そのため、このタイプのむずむず脚症候群の場合、遺伝的に機能していないドーパミンの作用を薬物治療で補い続けることが必要となることが多いです。

神経伝達物質のバランスを整える鍼灸治療

明確な改善のメカニズムはいまだに解明されていませんが、鍼灸施術はむずむず脚症候群においても、症状緩和に効果的であるという報告がなされています。

当院でも夜に脚がむずむずして気なって眠れないという方が来院されてたことがありますが、成人を過ぎられてから発症された方の症例では改善されています。

鍼灸刺激により、ドーパミンの生産・分泌が促され、神経伝達物質のバランスが整うと考えることが出来ますが、詳しいメカニズムは不明です。

同じくドーパミンの不足が関係するうつ病などにも鍼灸刺激による改善効果がある症例も多いため、鍼灸刺激が神経伝達物質のバランスを整えるような刺激となり、むずむず脚症候群の症状を緩和する助けとなると考えられます。

全てのむずむず脚症候群が100%改善できるわけではない

残念ながら、薬物治療、鍼灸施術を合わせても、100%すべてのむずむず脚症候群の改善が見込めるわけではありません。

しかし、神経伝達物質に直接に働きかける薬は副作用や飲み続ける必要があるなどの問題もあるので、薬物治療を開始する前に、鍼灸を試してみるといのは副作用のリスクが低く、改善されてくれば継続する必要もない為、悪くない選択肢であると言えます。

もちろん、栄養療法やドーパミンを調整する作用のある運動療法、生活習慣の見直しも同時に行っていくことが大切です。

まとめ

むずむず脚症候群は、不快な症状を伴う厄介な疾患ですが、脳内の神経伝達物質のバランスが取れることで改善されていく可能性の高い疾患です。

原因がすべて解明されているわけではなく、100%ではありませんが、薬物治療や鍼灸治療を取り入れることで改善されるケースも多い疾患です。

遺伝性の場合には身体が正常に働いている状態で、むずむず脚症候群が出てきていることになる為、薬物治療を継続していくことの方が現実的になってしまいます。

しかし、家族に似たような症状の人がいない場合には、薬物治療を試すよりもまずは鍼灸や栄養療法、生活習慣の改善などで改善を目指すのは、薬物治療の場合には副作用の面や継続した治療が必要になってしまう点を考慮すると悪くない選択肢になります。

当院でむずむず脚症候群(レストレスレッグス症候群:RLS)の改善に取り組んでみたい方は、脳内の神経伝達物質のバランスを整えるという点で自律神経失調症に対するアプローチを行いますので、自律神経失調症ページをご覧ください。

心身堂鍼灸院院長
この記事を書いた人
鍼灸師 佐野 佑介

静岡県浜松市中央区和地山で自律神経・メンタル専門のはりを刺さない心身堂鍼灸院を開業。
自身も26歳の時にパニック障害から自律神経症状に苦しんだ経験を持つ。
パニック障害、広場恐怖症、うつ病などの精神疾患領域と起立性調節障害、機能性ディスペプシア、眩暈などの自律神経疾患の専門の鍼灸師。
国家資格 はり師(148056号)・きゅう師(147820号)
医薬品登録販売者試験 合格

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自律神経失調症
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