こんにちは、浜松市はりを刺さない鍼灸師の佐野です。
朝、起きられなくなってしまい起立性調節障害を疑って当院に来院されるお子さんも多いのですが、どうやって起こしたらいいのか、そもそも起こしていいのか、そのまま寝かせておいた方がいいのかについて良く質問を受けることなので、今回は朝起きられない子供の起こし方について一緒に考えていきたいと思います。ぜひ最後までご一読ください。
結論:病的な起きられないになっていないか子供の話を聞いてみましょう。
朝起きないでダラダラ寝ていると体内時計が後ろにずれてきてしまい(睡眠後退)、時差ボケのような状態になり、ひどいとそのまま徐々に昼夜逆転していってしまいます。
その為、朝起こすことは基本的には良いことです。
しかし、病的な理由で起きられなくなっている子供もいます。病的な理由で起きられなくなっている場合には、身体の状態によって起こした方が良い場合と起こさない方が良い場合がありますので、体調によってどういう対応をするかを決定することが大切です。
病的で起こさない方が良い簡単な判断としては、朝体を強くゆする、叩くなど結構強い刺激をしても全く起きる兆しがなく、起きた後に話を聞いても起こされた記憶すらない、起きられるけれど起きた後、頭痛や腹痛、気持ち悪さなどの体調不良を訴える、起きてから数時間ぼーっとしているなどの場合が該当します。
起きられないと「もっと強く起こせば起きるのではないか?、もっと早くから起こせば起きるのではないか?」と考えてしまいがちですが、病的な起きられない場合は原因を取り除いてあげることの方が大切です。
その為には、睡眠全体で考えていくことが朝起きられるようになるうえではとても重要なポイントです。
睡眠障害が起こっていませんか?
睡眠障害は眠つけない(入眠障害)、途中で起きる(中途覚醒)、早く目覚める(早期覚醒)、眠りが浅いなどが主な症状です。
子供が起きられないことに関係するのは、眠つけないか眠りが浅いのパターンが多いです。
起きてからの体調不良には注意
朝起こせば起きるのだけれど、起きてからも頭痛、腹痛、吐き気、気持ち悪さ、体がだるい、やる気が起きない(無気力)、ぼーっとして頭が回らないなどの体調不良が出ている場合には、睡眠不足から自律神経が乱れてきている可能性が高いです。
睡眠不足を解消しないと起こし方を工夫して起こせたとしても、睡眠時間が足りない生活リズムのままでは睡眠不足がどんどん進行していっていずれさらに自律神経症状がひどくなって長期目線では再び起きられなくなるのは時間の問題です。
また、成長期の子供のにとっての睡眠は、心身の成長にとても重要です。睡眠不足が疑われる場合には、まずは睡眠時間の確保が大切になります。
眠れないのか?眠らないのか?
親の立場から見るとゲームやスマホをやっていて早く寝なくて夜更かししているから睡眠不足になると見えてしまうことが多いのですが、眠れなくてゲームやスマホをやっている場合もあります。
眠れなくなってしまうパターンには大きく3つあります。
- 心理的・身体的ストレスから寝る前に緊張してしまい眠れなくなる。
- ゲームやスマホに夢中で夜更かししてしまい眠らない。
- 原因不明の睡眠障害により生活リズムが作り出せない。
3.以外は初期に気が付いて生活習慣を改善したり、ストレスを取り除けば、毎晩眠れなくなることはありません。
しかし、1や2も長期間継続してしまった場合には、脳がその睡眠周期に順応してしまい適切な時間に眠ることが出来なくなってしまいます。
その結果、眠れなくて眠りはじめる時間が遅くなり、結果的に睡眠時間が不足して朝起きられない。(睡眠相後退症候群)
起きたとしても睡眠不足の状態になる為、リラックスしずらくなり、妙に興奮して夜眠れないという不眠の悪循環が始まります。
やっと、うとうとし始めたのが明け方になってしまい、学校へ行く時間になる。最初のうちは無理して起きて学校へ行っていたけれど、睡眠不足が重なっていくとより眠りずらくなるといった具合です。
眠りたくても眠れなくなり、家族全員が寝静まって自分だけ取り残された気分をごまかす為に、ゲームやスマホをやって眠くなるまで気分をごまかしている子供も多いです。
「ベッドに入る時間に眠たくなっているのか?」
を聞いてみると、入眠障害が起こっているのかいないのかを判断できます。
この確認を十分しないまま、「夜中までゲームやスマホをやめないあなたが悪い!」っと一方的に叱りつけてしまうと、眠れない辛さを誰にもわかってもらえず孤独になってしまいます。
叱られたり、孤独感からストレスもたまりますので、さらに睡眠の質が悪くなって朝起きられなくなってしまいます。
適切な時間に眠れているのかを先入観を持たずに聞く姿勢が大切です。
眠りが浅く睡眠時間が延長していませんか?
小さい時からあまり寝ない、または長く寝るショートスリーパーやロングスリーパーでない限り、中学生ぐらいでは、おおよそ8時間ぐらいの睡眠が適切で高校生ぐらいでは若干短くなる程度です。
ショートスリーパーやロングスリーパーの傾向がなければ、平均と比べてどのぐらい睡眠時間が延びていれば、睡眠の質の低下している可能性について知ることが出来ます。
当院では体動などから睡眠の深さを調べるガジェットなどを貸出して調べるなども行っていますが、一番正確なのは睡眠専門の病院で入院して寝ている時の脳波を調べる方法があります。
原因はその子によって様々ではあるものの、睡眠時間が延長されて長くなっている場合には睡眠の質が低下している原因を探るために、専門家への相談が必要です。
睡眠時間が延長しやすい起立性調節障害の子によくみられるのですが、睡眠時間が延長するとどうしても起きる時間が遅くなります。
人の体内時計は朝、光が目に入る時にリセットされる仕組みになっている為、遅くまで寝ていることで適切な時間に眠気がやってこない入眠障害も徐々に併発してきます。
睡眠不足を解消する
睡眠不足は長く寝たから良いというものではなく、適切な睡眠時間を毎日とり続ける継続が大切になります。
目安として参考になる研究があります。1日1時間の睡眠不足を解消するためには4日必要になり、9日間十分な睡眠をとると、眠気、糖代謝、ストレスホルモンの改善がみられることが報告されています。
すべての人の睡眠不足が9日で改善可能であるという意味ではありませんが、改善がある程度変化するには9日は最低限、必要であるということです。
研究や本によっては適切な睡眠時間を確保したうえで3週間程度で元の状態に戻るとするものもあります。
いずれにしても、適切な睡眠時間を継続的に確保する必要があります。
学校か睡眠時間か?
睡眠不足だけで入眠障害がない子供であれば早く寝るという対応だけで睡眠不足が解消されてくれば体調不良によるストレスもなくなり、次第に深く眠ることもできるようになるため、睡眠時間も本来の長さになってきて、朝起きることが可能になってきます。
しかし、睡眠不足と入眠障害が併発している場合には学校と睡眠時間の確保どちらを優先させるのか?という問題が出てきます。
成長期の子供の脳にとっては睡眠不足は脳の発達に悪影響(記憶や学習に関係する海馬が小さくなる)を与えることがわかっています。
勉強や進学は同級生と比べて遅れてしまったとしても、後から取り戻すことが可能です。
しかし、脳の発達は成長期にしか出来ない重要な時期です。
進学などの問題は最悪、社会人になってから大学に通い直すなど、後から取り戻すという方法がありますが、脳の発達は後から取り戻したり、やり直したりということが現代の医学では出来ません。
その為、脳の発達に悪影響を与える睡眠不足をこの時期にしてしまうと、人生全体で考えた時に脳の機能低下や将来的にうつ病や認知症を発症するリスクを高める可能性もあります。
重度のうつ病になってしまうと、人生の長い間を療養のために社会からドロップアウトすることも必要になります。
脳が成長しきった大人でさえ睡眠不足は多くの悪影響を受けるわけですから、成長期の睡眠不足が脳に及ぼす悪影響を甘く見ない方が良いです。
入眠障害を改善する
適切な時間に眠れなくなるのは、体内時計が後ろにずれてしまうことが主な原因です。(時差ボケに近い状態です。)
睡眠についてはまだまだ研究途上でわかっていないことも多いのですが、多くの子供が陥る睡眠相後退症候群であれば、光を利用していくことで改善することが可能です。
しかし、特殊な睡眠障害(不規則睡眠・覚醒リズム障害)になる場合には、専門医による治療が必須になるので、夜中ずっと起きていたかと思うと突然夜寝て、昼間突然眠くなるなど不規則な寝方をしている時は注意しましょう。
朝、太陽を浴びる
体内時計は朝目から光が入ることで時間がセットされるようにできています。この方法は時差ボケの治し方と同じです。起こしてから15分~30分程度太陽の光を目から入れることが大切です。
しかし、1日当たり修正できる時差ボケの時間は1時間程度だと考えられています。
例えば寝る時間が夜中の2時に寝て、翌日の10時に起きている子供であれば、まずは10:00に起きた時に確実に目に光を入れて2:00就寝の10:00起床を安定させてください。
2時就寝の10時起床が安定したら9:00~9:30に起こして光を目から入れるようにしながら、1:00~1:30に寝る状態を安定させていきます。
このように
体内時計を一旦固定→そこから少し早い時間に起床して光を見る→その時間に一旦固定
を繰り返して徐々に目標の起床時国へと近づけていきます。
一度朝起こして太陽を見せて、継続して起きていられなければ二度寝させてしまって構いません。
何をしても起きれない場合には、まずはどの周期で寝起きしていることが多いのかを調べて、一番近い時間に一旦固定することから始めます。
地道ですが、だんだん体内時計が正常に近い時間へと徐々にリセットされていきます。焦って起こしたい時間へ起こそうとすると、睡眠不足を助長することがあるので、今の睡眠周期を調べることから始めましょう。
起立性調節障害を併発していたり、不登校の子供の場合は、効果が出るまでに時間がかかりますので、あまり効果を感じられなくても継続することが大切です。
睡眠不足だけれど、一度起きてしまうと眠れなくなってしまう子供の場合には、睡眠不足が解消されるまでは睡眠不足の解消を優先させることも大切です。
食事で末梢時計を調整
私達の体内時計は光に反応する脳にある体内時計(中枢時計)と内臓など体の組織が持つ体内時計(抹消時計)があります。
末梢時計は、その日の最初の食事で血糖値が上がったことに反応して体内時計がリセットされる仕組みになっています。
朝食が大切というのは、体内時計をそろえるという意味もある為、一口バナナをかじるだけでもいいので、なるべく何か朝起きたら食べるようにしましょう。
運動して肉体を疲労させる
運動すると睡眠が促進されます。誰しも運動会やプールの後など、いつもよりも早く眠くなったり、実際疲れて眠ってしまった経験はあるかと思います。
夜、副交感神経が優位になって眠るためには昼間に交感神経が十分に働く必要があります。
その為、運動をすることで疲れさせて夜疲れて眠ってしまうという周期を作ることでも入眠障害に効果的です。
お勧めはウォーキングですが、好きな運動があればそちらを優先して問題ありません。
夜は暗くしましょう
眠気は松果体というところから分泌されるメラトニンによって眠気が誘発(昼間にリズム運動をすることで分泌したセロトニンが原料)されます。
しかし、目から強い光が入るとメラトニンの分泌が邪魔されてしまいやすくなります。
日没後は部屋の明かりは基本的に暗めの暖色系に設定し、コンビニやスーパーなどは20時以降は明るすぎるので入らないようにしましょう。
TV・スマホ・ゲーム機などのバックライトからの光が刺激となって同じようにメラトニンの分泌が邪魔されやすくもなりますので、使用する場合には画面の照度の設定を変更して画面が暗くなるように工夫することも大切です。
朝の起こし方
入眠障害・睡眠不足が解消されてくると、徐々に起きる時間が早くなってくる子供もいますし、突然早起きが出来るようになる子供もいます。
朝の起こし方は特別なことは必要ありません。
しかし、そうはいってもリズムを作り出す最初は少し起こす工夫をしても良いです。
例えば、眼球がピクピク動いているタイミングは眠りが浅くなっていることが多いので、そのタイミングで声をかける、体を起こす、明るい場所まで移動させる、光治療器などで明るくするなどです。
入眠障害・睡眠不足が解消されてもなかなか起きられない子供の場合は、何らかの心理的なストレスがかかって、不登校の問題を抱えている可能性もあります。
まとめ
・病的に眠りにくくなっていないか確認しましょう。
・睡眠不足になっていないか確認しましょう。
・睡眠不足を解消しましょう。
・体内時計をそろえていきましょう。
当院での改善をご検討の方は起立性調節障害をご覧ください。
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