こんにちは、浜松市はりを刺さない鍼灸師の佐野です。
胃の不快感、吐き気、腹痛、膨満感、胃が重い、すぐにお腹がいっぱいになる、胃酸逆流、食欲不振などの症状が慢性的にあり、胃カメラなどの検査では訴えられているほどの異常が見つからない際に機能性ディスペプシアと診断されます。
整体や鍼灸で改善される方も多いのですが、あまり効果的ではない場合もあります。今回はどういったケースで整体や鍼灸が適応なのか?について一緒に考えていきたいと思います。ぜひ最後までご一読ください。
結論:効果がある状態と効果がない状態がある
機能性ディスペプシアの概念は、少し前まで慢性胃炎として診断されていました。
胃の痛み、不快感や胃もたれ、げっぷが良く出る、すぐにお腹がいっぱいになるなどの胃の不快症状が胃炎の症状と同じ症状であり、胃薬などで若干和らぐ方もいる為、慢性胃炎とひとくくりにされてきました。
しかし、胃カメラなどで胃炎の状態を確認するとそれほど強い胃炎所見が見られない方が相当数いることがわかるようになり、慢性胃炎とは別の病態が存在し、炎症ではなく機能の不具合で胃の不調が発生しているのではないか?ということで機能性ディスペプシア(胃腸症)と名付けられました。
慢性胃炎の場合はしっかりと炎症所見(胃粘膜が赤くただれるなど)が見られるため、区別することが可能なのですが、胃の炎症所見がなく慢性胃炎ではないが胃炎と似たような症状が出ているといったかなり大雑把な病態を表す言葉です。
おそらく機能性ディスペプシアにもいくつかパターンがあり、将来的には別の病名が機能性ディスペプシアから発生してくると思われます。
鍼灸や整体を行うと機能性ディスペプシアの症状が良くなる方が一定数いらっしゃるのも、自律神経の問題や胃そのものが上手く動かない原因が鍼灸や整体の施術によって機能を取り戻す場合があるからです。
鍼灸や整体で対応できる機能性ディスペプシア
鍼灸や整体が得意な機能性ディスペプシアは大きく2つのタイプです。
一つは自律神経の乱れや自律神経の中枢からの命令を胃腸へ伝える神経伝達に問題が出て発生してしまっていることで、胃腸への指令が伝達されなくなっている自律神経の問題。
もう一つは胃を作っている平滑筋がこり固まってしまうことで胃が思うように動けなくなってしまったことで発生する胃そのものの物理的な問題です。
自律神経の乱れが原因となる機能性ディスペプシア
自律神経が乱れる原因は、
・首肩こりなどが原因で自律神経の指令を出す脳への血流低下で正しい命令が送れなくなる。
・胃に命令を伝える神経が途中で圧迫されて命令が上手く伝わらない。
・心理的・身体的ストレスが長期間続くことによって脳から胃へ正しい命令が行われなくなる。
といったことが影響を与えます。
自律神経の乱れは胃の動きそのものや胃酸の分泌や胃を保護する粘液の分泌に悪影響を与え、胃の動きが悪いことで起こる症状と胃酸や粘液の問題で起こる症状が異なってきます。
胃の動きに関係する症状
胃に食べ物が入ると胃酸と混ぜながら胃が動くことで胃酸と撹拌(混ぜる)しておかゆ上のドロドロの状態にしてドロドロになったものから十二指腸へと送っていきます。
しかし、自律神経から適切な命令が胃へと伝わらないと、胃を膨らませて食べ物を受け取り、胃酸と食べ物を混ぜながら撹拌して十二指腸へ送る運動(蠕動運動)がスムーズにいかなくなります。
・胃が膨らまないことですぐにお腹いっぱいになる。
・胃での消化がなかなか進まない。
・消化できても十二指腸の方へと送る動きが起こらない。
などお腹の膨満感を感じやすくなったり、長時間食べ物が胃に残っていることで胃もたれや胃の不快感として感じられると考えられます。
胃酸と胃粘液に関係する症状
ストレスを受けると胃酸の分泌が増加し、胃酸から胃を守る粘液の分泌が低下します。通常であれば胃酸が多く粘液が減るので胃が胃酸によって傷つけられ胃炎が起こります。
しかし、機能性ディスペプシアの場合は胃炎所見がない為、おそらく粘液の分泌はそれほど低下しておらず、胃酸が増えたことによる胸やけやムカムカした感じが症状の主体になります。
胃から胸のあたりにかけて逆流性食道炎と似たような症状を訴えられる方が多いです。
胃そのものがこり固まることによる機能性ディスペプシア
胃は平滑筋という筋肉で作られている臓器です。
筋肉である為、食べ物が入ることで柔軟に伸びて食べ物を受け取り、伸び縮みして胃酸と食べ物を混ぜながらすりつぶす運動(蠕動運動)やおかゆ状になった食べ物を十二指腸へ送ることが出来ます。
しかし、胃そのものを作っている平滑筋がこり固まってしまうと、
・胃が膨らむことが出来ない。
・食べ物をすりつぶすことが出来ない。
・食べ物を十二指腸へ送ることが出来ない。
など、の問題が発生してきてしまいます。
その結果、すぐにお腹がいっぱいになる、腹部の膨満感、胃もたれ、胃の重さ、胃がこり固まっていることによる痛みなどが生じてきます。
鍼灸・整体では改善が難しいタイプの機能性ディスペプシア
簡単に言えば上記の原因以外のことが原因で発生している機能性ディスペプシアは鍼灸・整体では改善が難しいことが多いです。
当院で診させて頂いている方で改善が難しかった機能性ディスペプシアの例をご紹介していきます。
胃そのものが不可逆な変化を起こしている
元々強いストレスがかかった状態で何年も生活して慢性胃炎を続けており、胃の壁がダメージを受けて胃が薄くなってしまったり、胃を胃酸から保護するために細胞の性質が変化してしまうことがあります。
ストレスが取り除かれて胃酸の分泌が正常化しても慢性胃炎は改善しても、元の状態へ細胞の性質が回復しない場合に問題が起こります。
似たような変化は体のあちこちで起こりますが、例えば足裏の皮が固くなる角質化も皮膚の細胞の性質が変化する典型例です。
しかし、足裏の皮膚が固くなるのと違うのは胃が固くなってしまうと本来の働きである伸び縮みすることが難しくなってしまう点です。
このような変化が起こってしまった場合には、鍼灸や整体での改善が難しくなります。
胃の動きを決める神経系に問題が発生している
胃腸はかなり神経細胞が多い臓器です。
大雑把に胃を動かすか止めるかといった命令は自律神経の命令によって決まりますが、細かな胃の動きは隣り合う細胞との情報交換によって胃は動いています。
しかし、隣り合う細胞への情報伝達のネットワークに何らかのトラブルが発生すると、協調して動く場面でおかしな動きをする細胞が出てくるようになり、それが結果的に胃全体での協調的な動きを邪魔してしまいます。
血流の問題で一時的に情報の伝達にトラブルが発生している場合には改善されますが、神経ネットワークが損傷している場合には鍼灸や整体での施術は効果がありません。
ストレス性だが対策が立てられない
胃の不調を引き起こしている強いストレスを自覚しており、そのストレスから離れることが出来ればよくなることはわかっているが、その為にかかるコストや犠牲が大きすぎて我慢するという選択をするしかなくなってしまっている場合の改善は非常に難しくなります。
例えば、現在の職場の人間関係が嫌だけれど生活していくことが出来ない為、仕事をやめることが出来ない。家族のお世話で睡眠時間を十分に確保できないが、自分以外に家族のお世話をできる人がいない。離婚したいが経済的な理由から離婚できない。
などです。
分類的には改善可能な自律神経の乱れによる機能性ディスペプシアではありますが、心理療法などで対応できるレベル範囲を超えていて、ストレス原因を取り除かない限り、ストレスからの悪影響が続いてしまう場合には、鍼灸や整体だけでは改善が難しいケースになります。
まとめ
・機能性ディスペプシアは慢性胃炎といわれていたもののうち、胃炎所見がない胃の不調全般の疾患を指す疾患です。
・鍼灸や整体は自律神経の問題、胃そのものの固さが問題の場合に有効
・胃が物理的に不可逆変化を起こしてしまっていると難しい。
・胃の動きを決める情報ネットワークに不具合があると改善が難しい。
・ストレス性であれば改善は可能だが、ストレス原因の解消が条件。
当院での改善を希望される方は、機能性ディスペプシアをご覧ください。
遠方で当院への来院が難しいけれど、心身の問題について相談したい方はオンラインカウンセリングをご利用ください。