朝起きられなくて学校へ行けない。起立性調節障害は親のせいなのか?
結論:起立性調節障害は親御さんが悪いわけではありません。しかし、養育環境が起立性調節障害を誘発している症例もあります
医療現場では、起立性調節障害は自律神経の不具合による身体疾患とされていますので親の育て方の問題ではないので親御さんは自分を責めないでください。という声掛けを行うのが一般的です。
実際に養育環境は全く変化しておらず、はり施術を行うだけで元気になって、朝起きられるようになり、毎日学校へスムーズに登校する症例も多くあります。
起立性調節障害は何らかのストレスが原因で自律神経に負担がかかって発症する疾患です。原因となるストレスに養育環境が関わっていることもあれば、無関係なこともあります。
養育環境が原因なのか、原因でないのかはどのようなアプローチをした結果改善したのか?でわかることもありますが、多くの場合色々なアプローチを同時並行で行っていきますから、完全に犯人を見つけ出すことなどできません。
一番避けなくてはいけないことは、親御さんが自分のことを責めてそのストレスから体調不良になってしまうことです。
起立性調節障害を治していくために養育環境を見直していくことはとても大切なことですが、親御さんが自分を責める必要などありません。
養育環境を見直すポイント
養育環境を見直していくうえでのいくつかのポイントについて一緒に考えていきましょう。
夫婦関係は良好ですか?
父親、母親のそれぞれの教育方針が異なると、片方の言うことを聞くと片方の言うことを破ることになります。
この状態はダブルバインドといわれ、子供にとってはどちらの話を聞いてもどちらかに対して申し訳ない気持ちを持つ状態であり、心理的に負荷が大きい状態です。
例えば、父親は子供のうちはなるべく多く遊ぶことが大切だから友達と遊ぶことに時間を使うように言っていても、母親は友達とゲームばかりするな、遊んでばかりいるなと叱るなど、両親の教育方針が真反対の方向へ向いているなどがそうです。
両親の教育方針が一致していても、気分によって言うことが変わることもダブルバインドとなり、子どもの発達に悪影響を与えます。「あなたの好きにしていいよ」といいながら「スマホ、ゲームをやめなさい」という矛盾した態度も子供を混乱させます。
夫婦喧嘩が頻繁に発生したり、お互いに無視しあっている状態はもちろんよくありません。
また、子供に妻や夫、祖父母など他の家族の愚痴や悪口を言うことは子供が成人するまではやめましょう。
親御さんの抱えている苦しさは友人やカウンセラーなど、子どもとは関わりのない大人に話すようにしてください。
親の情緒が不安定で、意見が変わりやすい
親の情緒や意見が不安定な場合もダブルバインドが発生しやすくなり、子供は家庭内に安心感を得ることが出来ません。
親御さんの言われたとおりにしていたのに1時間前とは違うことを言われて叱られる。やっていいよと言われたのにやっぱりダメといわれる。
ちょっとしたことで、怒り出す、泣き出す、機嫌が悪くなる、嫌な顔をする、不安がる、心配な顔をするなどもよくありません。
子供は親のことが大好きです。
親に嫌われないように、好かれるように、親が喜ぶように一生懸命努力していますが、情緒が不安定な親の機嫌を取るために自分自身の感情を押し殺して親のご機嫌を取るように生活していると、ストレス過多になり起立性調節障害を発症しやすくなります。
また、そういった他人の顔色を常に窺うというコミュニケーションがベースになるので、他の対人関係でもストレスを抱えやすくなります。
自分のことを自分で決めさせてもらえない
小さい時は親が代理で判断してあげる必要はありますが、命に関わらないことは徐々に子供の意思で判断させることで失敗しながら、子供は判断力を高めていきます。
反骨精神の強い気質の子であれば親に対して自分で判断できることを伝えてきてくれますが、大人しい性格や優しい性格の子は親に反抗しません。
ご飯食べなさい、勉強しなさい、片付けなさい、時間を守りなさい、早く寝なさい、ゲームばかりやめなさいなどの生活上の指示だけでなく、○○はこれが好きだからこれにしておきなさい。こっちにしておいた方がいいんじゃない?など食べるものや着るものの好みまで本人に代わって意思決定してしまったり、親の望む方向へ誘導したりすることの弊害を自覚する必要があります。
子供は自分は何も決めさせてもらえない状態が続くと
どうせ何を言っても自分の意見など聞いてもらえない、自分がダメだから口うるさく言われる
と、自分の自己肯定感を失い、無力感を強くしていきます。
自己肯定感が低く、無力感が強い子供がストレスを抱えやすい心を形成していきます。
失敗しないように先に口出ししてしまう
子供は失敗を積み重ねることで様々なことを学んでいきます。
しかし、子供が失敗しないように、恥をかかないように、嫌な気持ちにならないようにと、親があらかじめうまくいく方法をアドバイスしてしまうと子供にとっての学びの機会を奪うことになります。
失敗体験には2つの意味があります。
一つは実際に失敗することとその失敗から立ち直る(リカバリー)する過程で、何がいけなかったのか、どうしていけばいいのか問題を見つける力との改善する為に思考する力を学びます。
もう一つは、致命傷以外はやり直すことが出来るということです。自分や他人の体や命に関わることは親が止める必要がありますが、それ以外の失敗はやり直すことが出来ます。
異性に振られた、受験に失敗した、テストの点が悪かった、そういった失敗や挫折は生きていれば誰の身にも降りかかることです。
勉強をしないことを叱るよりも、悪い点数を取って自分の学力を自覚する経験も大切です。
失敗だけでも問題ですが、成功ばかりで失敗した経験が少ない子は心理的に打たれ弱い為、すぐに自分の存在意義を見失ってしまったり、失敗するのが嫌だからと挑戦することを最初からあきらめてしまいます。
そして完璧思考に陥りやすくなってしまい、自分・他人の失敗に対しての寛容さも少ないです。
人はミスもするし、失敗もしますが、アドバイスをして失敗を避けさせることは、失敗はいけないことだ、失敗は危険なことだ、失敗は怖いことだと子供に刷り込んでいってしまいます。
完璧思考・失敗回避型の子供のメンタルはちょっとした失敗をきっかけに簡単に崩壊してしまいます。
親の不安を解消を目的としていませんか?
子供が学校へ行けなくなると、勉強が遅れて進学が大丈夫なのだろうか、子供の将来が不安になるのは親として当然の気持ちです。
しかし、子供にかける言葉、行動、態度が親の不安を解消することが目的になっている場合には今すぐやめてください。
「今日の体調どう?」という何気ない会話も気遣いであるなら問題ありませんが、親が安心したいから聞いているのであれば、体調を子供に聞いてはいけません。
起立性調節障害になるお子さんはとても敏感です。親が自分のことを気遣っての言葉なのか、親が安心したいから聞いているのかぐらいはすぐに見破ります。
親が自分が安心したいから聞いているだけだと感じると、自分には本当に自分のことを理解しようとしてくれる存在はいないと感じます。
過干渉または無関心
親自身が過干渉や期待をかけられて育った場合には子供に対して無関心に、逆に無関心な子育てをされた場合は過干渉になり易くなります。
どちらも子供の心の成長にはよくありません。
自分の親が行った子育てが自分が嫌だった記憶があるため、自分がして欲しかった子育てを自分の子供にしようとしてしまうのです。
自分が愛情をあまり受けられなかったから、自分の子供にはたくさんの愛情をかけて育てたいと思って子育てするのですが、それが過干渉になります。
親が自分に期待したり過保護な愛情をかけてきたために、もう少し放っておいて欲しかった。自分のことを自分で決めたかったなどの想いが強いと放任主義になろうとして無関心になります。
大切なのは子供がどういう子育てを望んでいるかであって、親がどういった子育てをしたいのかではありません。
親としての周囲の評価に焦っていませんか?
子供がいい子に育てば親としての評価が上がり、子供が悪い子に育てば親としての評価が下がる。
子どもの出来・不出来=親の評価のような感覚は大なり小なり感じられている方も多いかと思います。
特に親の自己肯定感が低い方の場合は、自分の自己肯定感を子供で代用してしまう場合があります。
しかし、思ったように子供が出来ないと自分がダメだと自己否定されているような感覚になるため、過度に口うるさくしてしまいます。
その結果、子供が上手く出来ないことを責め立てたり、他の子と比べてダメだとしかりつけたり、良くなって欲しいという大義名分のもとに、しつけを通り越して人格を否定するような言葉を子供に言って、子供を思い通りに動かそうとしてしまっていることもあります。
子供の出来が親の通信簿だという価値観の方は確かにいますが、子供の出来不出来は遺伝的な要因も強く受けるので、そういった価値観に合わせないでください。
親御さんとお子さんは別の存在です。
子供に尽くしているのだからわかってほしい
毎日子供のために、家事に育児に仕事に頑張っている親御さんも多いと思います。
しかし、一生懸命頑張っていても、親の心子知らずという言葉があるように、親の愛情や苦労は子供にはなかなか通じず、子供は無頓着に勝手なふるまいをするものです。
残念ですが、親の愛情や苦労を子供が理解するのは子供自身が親になったときです。
子育て中は子供が親に子供の気持ちを受け止めてもらう期間です。
子供が親の気持ちを理解する期間ではありません。
また、親自身が自分の親の愛情や苦労を理解する期間でもあります。
子供に対して、こんなに私達は頑張っているんだからあなたももっと頑張りなさい!あなたの為にこんなに苦労しているのだから、少しは理解しなさい!など、子供に親の気持ちを理解してもらおうとしないでください。
子供に親の気持ちを理解してもらうよう求めるのは子供にはあまりにも酷です。
養育環境が起立性調節障害の原因となる場合には親御さんの心の問題を解決しましょう
子育てが起立性調節障害の原因になってしまう症例の場合は、根底的には親御さんの心の問題が関係していることが多くあります。
子供とどう接するのが正解ですか?という、どういう言葉をかければいいのかなどの正解に意識が向きがちですが、子供が苦しんでいる原因は親と情愛的な絆を築けておらず、心の交流が出来ていないことにあります。
子供のありのまま、そのままを受け入れて、見守り、寄り添い、なだめ、そのままを愛してあげることです。
そうはいっても、親自身が愛着の問題を抱えていると、途中で怒りが沸き上がってきてしまったりするのは仕方がないことです。
もし、今回ご紹介したような考えで子育てをしてしまっている場合には、親御さん自身が抱えている心の問題と向き合っていくことが必要になります。
どうすればよいのかわからない場合には専門家の力を借りることも大切です。
当院での改善をご検討の方は起立性調節障害をご覧ください。
遠方で来院が難しいけれど、お子さんのことについて相談したい方はオンラインカウンセリングをご利用ください。