起立性調節障害、不登校の子供が抱えている愛着の形成不全

こんにちは、浜松市はりを刺さない鍼灸師の佐野です。

起立性調節障害や不登校で来院されるお子さんと話をさせて頂くと愛着の形成不全が根底に問題として抱えていることが多いです。

今回はそんな愛着について一緒に考えていきたいと思います。

起立性調節障害・不登校で苦しむお子さんを持たれている方はぜひ最後までご一読ください。

 結論: 4つのSが愛着を育み人生の困難に立ち向かう心の基盤になる

子供は特定の人との情緒的な絆を持つこと(愛着の形成)で、心を健全に発達させて人生におこる様々な困難に立ち向かい、乗り越える心の基盤を獲得します。

愛着形成に失敗するとストレスに弱く、不安感が強く、困難に立ち向かうこともできず、人を信頼できない、自分の感情をコントロールできない、人間関係でトラブルを起こす、うまく自分の気持ちや考えを伝えられない、助けを求めることが出来ない、人の目を気にしてばかりで疲れるなどの不具合を起こしてしまいます。

うつ病・適応障害やパニック障害で来院される方の多くが愛着形成不全の兆候があり、子供の場合には起立性調節障害や不登校の悩みを持つという形で愛着形成不全の問題が出てきます。

愛着形成不全の子供は、学校への適応がうまくできず、そのストレスが原因になって起立性調節障害を発症したり、不登校になっている場合があります。

生物学的には半年から一歳半までの乳幼児期が最も愛着形成に重要だと考えられていますが、人間の場合はその後も愛着形成をやり直すことが可能であることが近年の脳科学によって明らかになってきました。

愛着形成を行うには以下の4つのSが大切であると考えられています。

  1. 安全である(Safe)
  2. 見守られている(Seen)
  3. なだめられている(Siithed)
  4. 安心している(Secure)

子育てを行う養育者(必ずしも血縁者である必要はありません。)によって、子供がこの4つのSを安定して感じ取れていることが安定型愛着を形成していきます。

犬や猫にもある愛着形成

生後56日未満の犬や猫を親から離してはならないという法律があることをご存知でしょうか?

愛着形成という仕組みは私達人間を含む多くの哺乳動物も持っています。簡単に言えば、養育者との心の絆の形成によって社会性の心の基盤を身につけることです。

生後56日未満で親元から引き離されてしまった犬や猫は人を噛む、他の犬と仲良くできない、病気にかかりやすい、体が弱いなど、社会に適応しずらい状態になることがわかっています。

愛着形成不全になってしまうと、恐怖感や不安感が強い為、攻撃的になったり、常に警戒しているためそのストレスから病気になり易い、体が弱いといった身体的な弱さにつながってしまうのです。

子育てに4つのSを学ぼう

愛着形成不全になってしまう原因はいくつかありますが、1~3のようにやむを得ない場合も存在します。

  1. 子供自身の遺伝的特性(親が子供を理解しずらいこだわりが強いなどの性格)があるために愛着の形成が困難な場合。
  2. 障害を持つ兄弟や家族がいる為、そちらの世話で子供に労力を割くことが出来ない場合。
  3. 親自身が精神疾患や発達障害などを持っており、努力しても適切な子育てが難しい場合。
  4. 親自身が4つのSを子供に与える方法がわからない場合。

解決可能なのは4です。やり方がわからないだけなので4つのSを学び子育ての際に応用していくことで、子供が愛着を形成することが可能です。

しかし、親自身が愛着形成不全を持たれている場合には、親自身も情緒が不安定なことも多い為、親自身がメンタルコントロールを学んで自分を安定させる努力が必要になります。

それでは、4つのSについて一緒に学んでいきましょう。

安全であること

子供にとっての安全は親に確保してもらうしか方法がありません。子供の安全を確保することがとても大切ですが、親が子供の安全を脅かさないことがとても重要です。

身体的に安全でない環境とは、しつけと称して暴力を振るわれたり、家庭内に暴力がある(子供を殴っていなくても夫婦間でDVがあるなど)、家から閉め出される、留守番できる年齢になっていないにもかかわらず放置される、食事を与えられない、すぐに抱っこやおむつ交換をしてもらえないなど適切な世話をしてもらえていないなどのネグレクトもしくはそれに近い扱いを受けている場合です。

身体的に安全でない環境でいる子はそもそも病院に連れて行ってもらえないことも多い為、なかなか臨床では見かけることはありません。それよりも精神的に安全な状態を確保できていないことが多いです。

精神的に安全でない環境としては、夫婦・嫁姑など家族間で頻繁に険悪なムードが発生している、子供に他の家族の悪口を話す、仕事で疲れて親の機嫌が悪い、暴言や罵声を浴びせられる、子供を拒否したり、良い子にしていない子はうちの子ではない、捨てるなどの言葉を使ったり実際に怒って謝ってくるまで無視をする。

親の情緒や体調が不安定で突然怒り出したり、泣き出したり、不安な状態でいたり、パニックになったり、気分が落ち込んでいたり、頻繁に意見が変わり親の発言に一貫性がなかったり、良く体調不良で動けないなどの状態になるなどがあります。

子供が心理的に危険を感じる環境に家の中がなっていないことが安全です。

また、言うことを聞かない子供に対して一方的に大きな声で叱りつけるなども安全を脅かす行為です。

しつけだと思ってやっている行動や声掛けが、子供に恐怖感を与えて安全な環境を奪ってしまっていないかしつけの方法を振り返ることが大切です。

親ももちろん人間ですから、疲れていたり、機嫌が悪いことももちろんありますし、夫婦げんかもあると思います。

完璧にこのような行動や声掛けをしないということではなく、間違った行動や声掛けをしてしまった際には

「さっきはひどいことを言ってしまったね。ごめんね。」

など、子供と向き合って早期に子供との関係修復をすれば、子供は関係は修復できるものだということを学びながら、安全は確保されているのだと認識してくれます。

見守られていること。

子供が親に見守ってもらえていると感じられるのはとても大切なことです。

なるべく長い時間を子供と一緒に過ごす時間的なことももちろん大切なことです。しかし、ここでいう見守られているとは、子供の心の中で起こったことに親が興味を向け、子供の行動の下にある心の中の出来事を知ろうとすることまで含まれます。

嬉しい、楽しいというポジティブな感情はもちろん、悲しい、寂しい、怒りなどのネガティブ感情にも一緒に分かち合い、共感することで親に見守られていると感じると同時に、子供自身も他者の心に寄り添う能力を獲得していきます。

子供のお世話はしているけれど、親の興味は子供の心ではなくスマホに向いていたり、親が周囲から親としての評価を気にして、自分が良く見られるように自分の評価が上がるような教育方針をとってしまわないように注意しましょう。

子供は親の関心が自分ではなくスマホや親がどう見られているかにあると感じますから、見守られていると感じられずらくなってしまいます。

子供の心の動きに関心を持ち、心の中でどんなことが起ったのかに興味・関心・注意を向けてあげることです。

石に躓いて泣いている子供に対して、「足元に気を付けないから転ぶんだ!」「男の子なんだから泣くんじゃない!」「人がたくさんいるところで泣くんじゃない!」という声掛けをされても見守られているとは感じられません。

「足元の石が見えなかったんだね。転んで痛かったね。」と声をかけながらハグするなど、子供の心の世界に寄り添った声掛けや行動をとってあげることが見守ることです。

なだめられること。

子供にとってつらい時になだめてもらうことは感情のコントロールを学ぶ最初の段階です。

子供は少しのことで傷つき、苦しみ、辛い気分で頭の中がいっぱいになります。そういった感情に寄り添い、受け止めてもらい、なだめられることを通して、辛い、苦しい、悲しい、寂しい、怒りなどのネガティブな感情のコントロール方法を身につけていきます。

しかし、子供が嫌な気分にならないように先回りして防いでしまうと感情をコントロールする練習が不足する為、大きくなってからも感情のコントロールが上手くできません。

例えば、食べているアイスクリームを落として泣くのを防ぐために、アイスを落とさないように持ち方に口を出したり、代わりにアイスを親が持っているなど、手はかかりませんが、子供が感情的になるのを予防するのは良いことではありません。

アイスを落として辛いという感情を親になだめてもらうという体験こそが子供の感情コントロール技術の練習になります。

また、アイスをしっかりと持っておかなかった子供のミスであったとしても、「あなたがしっかり持っておかなかったから悪い」「だから、落とさないように気をつけなさいと言ったでしょ!」と自己責任を持ち出して、叱りつけてしまうのは間違いです。

辛い感情を叱りつけられた子供は、辛い時、苦しい時であっても誰も助けてくれない、守ってくれない、誰もわかってくれない、この世に味方なんで誰もいないという世界観を持ちます。

その結果、基本的に人は信頼出来ない、自分の感情を人に伝えても無駄、辛い感情は我慢するか見なかったことにするという技術や価値観を身につけていってしまいます。

それが結果的に辛くても周囲に相談できない・相談するのは怖いという感覚になり、自分で処理できないほどのストレスにさらされたとしても、誰にも助けを求められず、相談できずに心身が破綻するまでひたすらにストレスを溜めていくことにもつながります。

大人になってから自分のことを他人に相談できない、感情表現があまりない人というのは親になだめられた経験が少ないことが原因です。

自分のことを他人に話すことが苦手というのは、辛い時に助けてもらうという人間の生存戦略である助け合いを行うことが出来なくなってしまう為、社会に適応できなくなるのは当然といえます。

安心を感じられていること。

安全、見守られている、なだめられる状態が継続していると子供の心の中心に安心感が感じられる状態になります。

安心感があるからこそ、新しいことにも挑戦することが出来るし、他人の考えと自分の考えが違っても相手の意見も尊重しつつ、自分の意見もそれでいいとお互いに認め合える。自分は自分でよいという自己肯定感を高く持つことが出来ます。

親が常に味方でいてくれること、そばに寄り添ってくれること、守ってくれると思うからこそ、新しい人間関係を構築する際に他者から否定されるかもしれない怖さや今までやったことがないことに挑戦して失敗しても、自分は大丈夫だと思うことが出来ます。

愛着の形成不全で起立性調節障害や不登校になってしまう子供は、心の中心に安心感がありません。だからこそ、他人の目が気になるし、叱られないように人の顔色を伺い、自分の感情や意見を言えず、今の自分はダメだと自己否定的になっています。

親として完璧である必要は無い

4つのSをご紹介しましたが、完璧にこの4つのSを実践できなくても愛着形成は可能です。

しかし、大きく4つのSから離れた子育てを持続的にしてしまっている際に、愛着形成不全を起こしてしまいます。

親も人間ですから感情的になって怒鳴りつけてしまうことも時々あるでしょう。

しかし、そのあとにすぐに自分の感情をぶつけてしまったことを謝り、子供を愛していること、味方でいることを伝えて関係修復をすれば愛着は形成されていきます。

時々、不完全な親の姿を見せることは悪いことではありません。不完全であっても受け入れてもらい、愛されていいんだと子供が学ぶことになるからです。

頻繁に怒鳴りつけていたり、関係修復をしない、ルールで子供を縛り付けるなどは子供を傷つけているだけの行為ですので愛着形成不全を引き起こすきっかけになります。

当院での改善をご検討の方は起立性調節障害をご覧ください。

親御さんが愛着を育てる方法について学ばれたい方向けにカウンセリングを行っておりますので、ご希望の方はお問い合わせよりご連絡ください。

遠方で来院が難しいけれど、子供について相談したい方はオンラインカウンセリングをご利用ください。

お勧め参考書籍

心身堂鍼灸院院長
この記事を書いた人
鍼灸師 佐野 佑介

静岡県浜松市中央区和地山で自律神経専門のはりを刺さない心身堂鍼灸院を開業。
自身も26歳の時にパニック障害から自律神経症状に苦しんだ経験を持つ。
2012年に独立開業。
国家資格 はり師(148056号)・きゅう師(147820号)
医薬品登録販売者試験 合格

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心理・脳科学起立性調節障害
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