パニック障害の予期不安の治し方(克服方法)

こんにちは、浜松市はりを刺さない鍼灸師の佐野です。

パニック障害になると外出先でパニック発作が出たらどうしようと、パニック発作を起こす前から不安になってしまう予期不安が出てくることがあります。

ある程度慢性化したパニック障害の場合は、パニック発作そのものよりも外出や会合、外食、美容院に行こうとして不安になるなど、実際にパニック発作を起こすよりも予期不安によって生活が制限される事に悩まれることの方が多くなっていきます。

今回は予期不安の克服方法について一緒に考えていきたいと思います。

パニック発作は落ち着いているけれど、不安や恐怖で行きたい場所へ行くことが出来ない方は是非ご一読ください。

結論:予期不安は避けずにあえて行動していくことで不安への対応力を鍛えると消えてなくなる

厳密な定義でパニック障害と診断する場合には、息苦しさや激しい動機に突然、襲われるというものです。

しかし、電車やバス、レストラン、美容室、渋滞などの閉鎖空間に直面すると息苦しさ、動悸などのパニック発作に襲われるという広場恐怖症などや今回のテーマである予期不安とも合併することがあり、パニック障害という診断は範囲が広く使用されています。

基本的には使用する薬が同じであり、併発することも多い為、あえて区別しないことも多いです。その為、同じパニック障害と診断された方でも、症状の出るきっかけや何に悩まされているのかが個人個人大きく異なります。

予期不安とはパニック発作を体験したことがある人が、また、パニック発作が起こるのではないか?と、まだパニック発作が起きていないにもかかわらず、未来予測により発生する不安感のことをさします。

治療法は確立されていて、恐怖や不安を感じても恐怖や不安を感じたままの状態で行動に移すことで克服されていくことがわかっています。

怖くても怖いまま行動することが大切

怖くても怖いまま行動することが大切

パニック発作を体験したことがない方が、予期不安になっているケースは私は見たことがありません。

予期不安はPTSDほど深刻ではないものの、軽度のトラウマ体験として記憶してしまったものに近いことが多く、改善には段階的暴露療法が有効です。

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軽度の予期不安は誰にでもある

私達は新しいことや経験したことがないこと、どうなるかわからない(不確定要素が高い)未来のことを考えると不安や恐怖を感じるように作られています。

なぜなら、アフリカで誕生した私達の祖先は、不安を感じないと行動に慎重さがなくなり、簡単に肉食動物に見つかって、捕食されてしまうからです。

その生き残り戦略として行動に慎重さを持つために、不安や恐怖という感情を獲得したと考えられます。

子孫である私達の身体や脳は祖先の身体や脳の仕組みからそれほど大きく進化していない為、現在もどうなるのかはっきりしない未来のことを考えると、不安を感じるシステムが働きます。

例えば、初めての経験は不確定なことが多いため、不安や恐怖の感情が出やすいのが普通です。

初めての事、不確定なことが多いと緊張するのは健全な反応

初めての事、不確定なことが多いと緊張するのは健全な反応

つまり、軽度の予期不安は多くの人が体験しているのです。

しかし、パニック障害や広場恐怖症になると、行ったことのある場所や経験したことがあることでも、以前にパニック発作が発生した経験による軽度のトラウマや、もしかすると、パニック発作が発生するのではないか?という不確定な要素が加わる為、不安を感じるようになり、その不安に従って行動をやめることでさらに悪化するという負のループを形成した状態です。

予期不安は病気ではない?

不確定要素が高くなると、不安を感じるというのは、正常な人間の心の働きです。ですから、予期不安そのものは病気と考えるのは少し微妙なところです。

その成り立ちから考えると、病的というよりも危険に対しての学習反応が正常に機能した結果不安がパターン化したものが予期不安だからです。

心理学の有名な実験で、「パブロフの犬」というのをご存知でしょうか?

犬にベルを鳴らしてから餌をあげるということを繰り返しているとベルが鳴っただけでよだれが出てくるようになってくるという、学習によって餌がなくても脳が反応(自律神経が反応してよだれが出る)するようになるという現象です。

パブロフの犬

パブロフの犬

例えば、外出するなどの行動を起こす際に何度もパニックが出るのでは?と何度も頭の中でパニック発作をシミュレーションし、なおかつ不安だから外出しないという行動をとっていると、〇○をする行為は危険と脳が学習し、外出を意識すると反射的に交感神経を興奮させる反応パターンを脳が学習していきます。

これは本来、ライオンなどの捕食動物がうろついていた場所に近づかないように不安や恐怖という感情を発生させてすることで生き残る確率を上げていた脳の学習機能です。

特に不安になっている時は学習効率が高まることが知られていますので、より効率的に学習してしまうのです。

予期不安を克服するには?

予期不安を克服するには、予期不安を感じた際に不安をコントロールしようとするのではなく、不安を感じたまま、避けずに行おうとした行動をそのままとってしまうことが効果的です。

不安を感じた行動を避けてしまうとその場の不安は落ち着くのですが、その次にやってくる予期不安は学習効果により、さらに強いものになります。

不安という感情は命を危険にさらしている時に発せられるように発達した感情なので、不安を感じているので、かなり怖いことは間違いありません。

また、恐怖感を感じながら行動を行うので緊張でパニック発作が発生しやすい可能性も否定できません。

予期不安を強化する負のループ

予期不安を強化する負のループ

しかし、この予期不安を克服していくためには、実際に不安に感じる行動を何度もとって不安を感じながらも行動し、対処した経験を増やしていく事(小さな成功体験を積んでいく事)が唯一の克服方法です。

逆に不安に感じたので、その行動をやめてしまうと、不安をさらに学習して予期不安の感覚はどんどん強くなり、克服が難しくなっていきます。

また、私達の脳は推論を行う機能が付いている為、最初のうちはバスに乗ろうとすると不安になって怖いという予期不安があった場合、それを避けているとバスが怖いということは・・・と脳の中で推論が働き、次第に電車や飲食店、美容室、歯医者など、予期不安を感じる範囲が広がっていってしまいます。

その結果、不安で徐々に外出が出来なくなってしまうという事態に陥ってしまうのです。

予期不安はベビーステップで改善していこう

不安や恐怖をどうしても克服できない場合には、スモールステップで改善していきましょう。

スモールステップで小さな挑戦を積み重ねていく

スモールステップで小さな挑戦を積み重ねていく

例えば電車に乗るということが怖い場合には、まずは駅の方角へ向かうという行動を何度も行って慣れることから始めます。

慣れてきて不安感が出なくなったら、駅の構内に入る。そしてしばらく駅の構内に入っても不安感が出なくなるまで何度も繰り返す。

駅の構内に入ることに不安や恐怖を感じなくなってきたら券売機の前まで行く。

それにも慣れてきたら、改札を通ってみる。

ホームまで出てみるなど。

細切れにして少しずつ慣らしていき、何日、何週間、何ヶ月何年と時間をかけていいのでゆっくりと分割して慣らしていく事です。

広場恐怖症が併発している場合には注意が必要

予期不安は基本的には行動をとってしまえばほとんどの場合、あれ?なんであんなに怖かったんだろう?っと不安や恐怖は鎮まり、実際にパニック発作を起こすことはほとんどありません。

しかし、広場恐怖症と併発している場合には行動をとった先でパニック発作が誘発されやすい状態になるので改善の難易度が急激に高まります。

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広場恐怖症×予期不安の状態の場合は、広場恐怖症も併せて克服する必要があり、当然ですが難易度は高まります。

広場恐怖症にも予期不安は発症する為、実際に不安を感じた行動をとった時も不安や緊張が持続するのか?がまず広場恐怖症であるかの鑑別ポイントになります。

予期不安だけの場合は、実際に行動をとると不安感は消失するので、行動をとってからも苦しい場合には広場恐怖症も併発している可能性が高いです。

広場恐怖症の場合にはその行動を克服するにはある程度のモチベーションが必要になります。

例えば、広場恐怖症で電車に乗ることが出来ないという方でも、今の生活では車で移動するので電車に乗る機会がほとんどない。将来的に旅行に自由に行けるようになりたいなど、必要性が低い方の場合は改善が難しくなります。

このような状況の方は広場恐怖症改善に必要な暴露療法を行うモチベーションが上がらず、結局何も行わない為、改善することが出来ません。

広場恐怖症歴が長くなると、生活そのものを広場恐怖症を克服しないまま成立出来るように生活スタイルを変化させている方がほとんどです。(電車通勤をやめる、在宅勤務の仕事に変えてしまうなど)

その為、今の状態のままでも生活に支障はないということが、暴露療法をやらなくてはいけないという必要性というモチベーションを下げます。

人間はモチベーションがなければ努力できませんし、やらなければ変化しない為、途中で脱落されることになります。

しかし、広場恐怖症になったばかりで、仕事での移動が電車の為どうしても電車に乗れるようになる必要があるなど、克服する必要性が高い方の場合は、怖がりながらも積極的に暴露療法を行い、段階を踏みながら徐々に克服される方が多いです。

広場恐怖症も生活スタイルを病気に合わせて変化させる前に開始する必要がある疾患と言えます。

どちらの方が正しいという話ではありませんが、必要性が低いと効果がある暴露療法が行えず、広場恐怖症を克服することは簡単ではないのです。

どうしても克服したいのであれば、電車に乗る必要がある仕事に就くなど克服しなければ生活に支障が出る環境へ変化させる必要がありますが、これはなかなか出来るものではありません。

不安障害から生活に制限があっても、徐々に悪化していないようであればそのまま制限がある状態で上手くごまかしながら人生を生きていくという選択肢もあります。

まとめ

行動を起こす前に感じる不安を予期不安といいます。

予期不安は誰でも感じるものですが、パニック障害などの不安障害を持たれている方の場合はパニック発作を起こすかもしれないという不確定要素が大きくなるため、予期不安を感じやすい条件が揃ってしまいます。

予期不安の克服は不安を感じても避けずにその行動をとってしまうことです。

予期不安は脳の学習によって発生する為、不安になる行動を避けてしまうとさらに学習が進んでより強い予期不安に悩まされやすくなります。

いきなり行動をとるのが怖い場合には、避けずに少しずつベビーステップを踏みながら改善していく方法が有効です。

怖くても辛すぎないところまででいいので、怖さが出なくなるまで行動をとっていくと徐々に克服されていきます。

広場恐怖症が併発している場合には改善の難易度が高くなります。

広場恐怖症を克服するポイントは生活の中にどれだけ克服の必要性があるのか?に強い影響を受けます。

荒療治ではありますが、克服しないと生活に支障が出るような環境にしてしまう方が改善はされやすくなります。

しかし、克服しなくても生活に支障がないような生活スタイルが構築できており、不安症状が悪化していないようであれば一生付き合っていくという選択肢もあります。

当院での改善をご検討の方はパニック障害をご覧ください。

遠方で来院が難しいけれど、生活習慣や改善について相談したい方はオンラインカウンセリングをご利用ください。

心身堂鍼灸院院長
この記事を書いた人
鍼灸師 佐野 佑介

静岡県浜松市中央区和地山で自律神経専門のはりを刺さない心身堂鍼灸院を開業。
自身も26歳の時にパニック障害から自律神経症状に苦しんだ経験を持つ。
2012年に独立開業。
国家資格 はり師(148056号)・きゅう師(147820号)
医薬品登録販売者試験 合格

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