不登校連動型の起立性調節障害の対応方法

こんにちは、浜松市はりを刺さない鍼灸師の佐野です。

起立性調節障害には病気による体調不良だけが原因で学校へ行けていない場合と、不登校の問題を抱えている不登校連動型の起立性調節障害の場合があります。

起立性調節障害による体調不良だけが原因で学校へ行けていない場合とは別の対応が必要になることが多いので、今回はそんな、不登校連動型の起立性調節障害について考えてみたいと思います。

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結論:登校刺激をしないようにしましょう。

不登校連動型の起立性調節障害の場合、意識的、無意識的どちらであっても「学校へ行きたくない」という感情を抱えていると、体調が良くなると学校へ行かなくてはいけなくなるという体調が良くなることで、本人にとっては望まない状況が生まれます。

朝起きられなくなったことで、当院の起立性調節障害のページを読んで来院されることが多いのですが、以下の3タイプが存在します。

  1. 起立性調節障害による症状
  2. 起立性調節障害と不登校の進行期による症状
  3. 不登校の進行期による症状

1,2は新起立試験で異常値を示しますが、当院へ来院される多くは新起立試験では若干その傾向がみられれるものの正常範囲内ということが多いです。

意識的に学校へ行きたくないと自覚できている子はまだいいですが、学校へ行きたくないという感情が無意識レベルで抑圧されている場合には、「学校へは行きたい」と言いますが、強烈な体調不良で、実際に学校へは行くことが出来ません。

この不登校の問題が連動している場合には、不登校の子供に行うのと同じような対応が必要になってきます。

無理に学校へ戻るように圧力をかけてしまうと、体調不良が悪化してしまうことにもなるので慎重な対応が必要になっていきます。

症例から見てみよう

ここでは、当院で実際にあった症例をご紹介したいと思います。

症例によって改善するタイミングはばらつきがあり、一番効果的だったものが何なのかは正確に分析しずらいのですが、実際には起立性調節障害と不登校が混在している症例の方が圧倒的に多いです。

起立性調節障害の症例

14歳 男子 中学2年生
中学2年生になってしばらくしてから、朝起きられなくなり、学校に行けなくなり来院した。

朝、頭痛とだるさがあり、夕方ぐらいになると身体の症状がなくなって元気になる。

脳への血流をあげる目的で、首の筋肉を緩める施術を2回おこなった後から、朝登校時間に起きられるようになり、そのまま学校へ通うようになった。

起立性調節障害と不登校が混在していたような症例

16歳 女子 高校2年生
部活で吹奏楽に所属しており、大きなコンクールが終わった後から、頭痛とだるさで、朝起きられなくなり来院した。

施術と生活指導で頭痛とだるさは改善したが、起床時間が安定せず、学校へはいけない状態が続く。

出席日数が足りなくなり、単位制の高校への編入が決まってしまったが、その直後ぐらいから、突然朝起きられるようになり、単位制の高校へは元気に通っている。

起立性調節障害と不登校が混在していた症例

14歳 女子 中学2年生

部活と塾で毎日忙しくしており、部活の大会が終わった直後から朝起きられなくなり来院した。

後頭部にむくみが見られたため、鍼でむくみの改善を行うと同時に、眠たくても朝は体を起こすように睡眠指導を行った。

2回目の来院時に、眠気はあるが朝起きられるようになってきていると報告を受けるが、同時に部活と塾は負担になっているのではないかという親の判断でやめてきたと報告を受ける。

その後、朝起きられないことがなくなり、普通に学校へ通えるようになった。

不登校と起立性調節障害との関係性

不登校の子供の約3~4割に起立性調節障害を持っているのではないかといわれています。

起立性調節障害は元々は身体の急激な成長に心肺機能が追い付いていかないことで、血圧を維持できないなどの循環障害を基盤とした自律神経の不調を引き起こす疾患と考えられています。

しかし、血圧正常型の起立性調節障害があると報告されるなど、診断にあいまいさが多くなっていったという経緯があります。

新起立試験すら行わず、問診のみで起立性調節障害と診断されて来院されるお子さんもいる為、診断も医師によってかなり大雑把な場合もあります。

起立性調節障害は何らかのストレスが加わったことが原因で、自律神経の働きに乱れが生じて血圧異常を中心とした症状が現れる疾患です。

しかし、何らかのストレスは多岐にわたり、勉強や部活でのオーバーワークやプレッシャー生物的・心理・社会的ストレス、ゲームやスマホ依存による脳の過覚醒を引き起こされたことによる生物的ストレス、年齢相応のコミュニケーション能力が身についていないことによる心理・社会的ストレス、嫌がらせを受けるなどの心理・社会的ストレス、発達障害やその傾向による過剰適応や適応の失敗による社会的ストレス、原因不明の睡眠障害による生物的ストレス、身体不調による生物的ストレスなど、少し例を挙げるだけでもありとあらゆるストレスが関係してきます。

ストレスを受けたことで自律神経が乱れて体調不良が発生するのは、起立性調節障害も不登校も同じです。

しかし、起立性調節障害の場合は血圧に異常を数値として客観視出来るだけで、病態としてははっきり区別することが難しい病態です。

ストレスを受けて学校へ行くことが出来ないという状態が不登校であり、そこに血圧異常の症状が出ていれば起立性調節障害と診断が下りるといった感じです。

不登校の性格特性

不登校の子供の多くが、感情抑圧傾向があるといわれています。

もともと自分の感情を言葉にして表現しない、真面目、いい子や明るい陽気な子、外面が良い子を演じる子供が多く、普段から自分の感情を抑え込んでしまっています。

それが日常化している為、自分の感情を無意識に抑圧してしまって、自分が感じている嫌などの感情がわからなくなっている状態です。

学校へ行くプレッシャーを取り除き、全身の筋肉をはりで緩めて副交感神経優位な状態を作り出して、質の良い睡眠をとらせることで持続的な自律神経の乱れは改善していくことが多いです。

しかし、体調が改善しても、学校のある日だけ朝起きることが出来ない、学校のある日だけ体調不良が出るなど、学校があるなしと体調不良が連動が継続します。

子供自身もなぜ学校へ行けないのか自分でもわかっていないことが多いので、何で学校へ行けないのかを聞いても、「わからない」「学校へは行きたい」と答えます。

症状は頭痛、腹痛、だるさ、朝起きられない、ぼーっとするなど、起立性調節障害とほとんど症状は同じです。

不登校が混在している子供の場合は体調が良くなっても学校へ行くことが出来ません。不登校を引き起こしているストレス原因が取り除かれていないからです。

不登校の子供の多くは体調が回復してくると、好きなことや楽しいことは出来るけれど、苦手なことや嫌いなことを目の前にすると途端になぜか体が動かなくなる、やる気が極端になくなってしまう、頭痛や腹痛などの身体症状が現れるといったように、感情の抑圧を働かせる場面になると体調を崩します。

新型うつ病に近い特性を持っているのかもしれません。

不登校を伴う起立性調節障害の考え方

理由がわからない、なんか学校が嫌というなんとなくの原因で不登校を伴う子供の場合、今まで、感情の抑圧のし過ぎで、負の感情をため込むゴミ箱がいっぱいになってあふれてしまっている状態です。

普通は自分の感情を表に出したり、わがままを言うことで、こまめにゴミ箱の中が捨てられてクリアになっていますが、感情の抑圧傾向が強いことで、心のゴミ箱の中にゴミをため続けていってしまいます。

その心のゴミ箱の容量がいっぱいになってしまい、新たな負の感情を追加でゴミ箱にためられなくなっていきます。

負の感情を今まで抑圧して処理していたので、新たに負の感情が発生するとそれ以上抑圧出来なくなり、それが身体表現(症状として感情を表現する)として自律神経症状の乱れとして出てきます。

不登校が混在している場合、長年溜めてきた、心のゴミ箱の中をある程度綺麗にする必要があり、基本的にはまずは好きなことをして過ごさせて、短期決戦は決してしないことが肝要です。

元々いた環境へ戻ることに抵抗がある(友人や先生からネガティブなイメージを持たれていると感じる)子供の場合は、学校を変えるなどの環境を変えるだけで、再び社会へ戻っていくことが出来る場合もあります。

不登校の子供に必要な対応

不登校の原因(学校へ行きたくない感情を抱く理由)は、それぞれなので、対応は個別に変えていく必要がありますが、いじめなどの場合を除いて、なぜ不登校になっているのかわからない場合には、無理に不登校を改善させようとして登校刺激をしないという姿勢が大切になります。

人間だれしも、嫌なことや嫌いなことを避けたいですが、不登校になる子供というのは、元々いい子であったり、真面目であったりすることが多く、自分の感情を抑えて周りに合わせようとする傾向が強い子です。

今まで嫌なことを頑張って我慢し、それを継続し続けてきた結果、心が耐えられなくなって不登校になっていることが多いです。

不登校状態からまた元気に学校へ行ってもらいたいという親御さんの気持ちはわかるのですが、心が耐えられなくなって不登校になっているケースでは、登校を促すようなあらゆるアプローチは本人にとって心の負担が増えて苦しみが増えるだけで、逆効果です。

不登校は追い詰めてしまうと、部屋に閉じこもって数年間引きこもりのような生活をするケースも少なくないことから、不登校を無理に短期で解決しようとして、子供を追い詰めてしまうのは得策ではありません。

不登校連動型の起立性調節障害で大切なのは、まずは、その子にとって過ごしやすい環境を作ってあげることで、体調を改善させてあげることから始めることが大切です。

過ごしやすい環境とは?

過ごしやすい環境とは、安心して過ごすことができる環境を整えてあげることです。

不登校になっている子供は、本人も混乱していますし、脳の機能が低下して基本的に我慢が出来ない状態になっています。

感情が不安定なうちは強いストレスをかけすぎない方が良いので、あれこれ口を出しすぎないことは大切です。

普通の子はみんなやっているし、今までそんなに我慢して(ストレスにさらされて)きたように思えない親御さんも多く、単に怠けているように思えてしまうかもしれません。

しかし、ストレスに対する抵抗力は遺伝的にある程度決定されるため、何もしないでただ座っているだけであっても、非常に強いストレスを受けている場合もあるので、体調不良が出ているうちは子供が安心して過ごせる環境を整えることを意識していきましょう。

安心して過ごすことが出来る環境

不登校になっているということは、少なくとも子供にとって、学校は安心して過ごせる環境ではない可能性があります。

これがいじめ、学業、先生など、明確な理由があって安心して過ごせないとなっている場合もありますし、何となく集団が苦手であったり、循環器系の問題から長時間座っていることが辛かったり、疲れやすいといった体調の問題で認識しずらい安心できないが理由になることもあります。

まずはストレスを受ける安心して過ごすことが出来ない環境から、保護してあげる必要があります。

その保護の役割を果たすのが家庭になるわけですが、親御さんから何で学校へ行かないの?食事食べたら?ゲームしすぎじゃない?など、あれこれ口を出されると安心して過ごすことが出来ず、部屋に引きこもってしまったりします。

子供は親御さんに自分の話を聞いてもらうことで安心します。アドバイスはせずに子供と一緒に過ごす時間を多くとることが大切です。

自由にさせて堕落していかないか?

子供の自由にさせると、昼夜逆転したり、ゲームばかりして生活するようになるので、本当にそんな生活をさせて大丈夫なのか?ダメになっていくのではないか?など、不安になるかと思います。

これはステージにもよるのですが、体調不良がひどい時は体調が悪いので、ゲームばかりしているなどは出来ないことが多いです。

体調が落ち着いてきた段階に入ってからは、ゲームやスマホの使用時間や生活習慣については話し合って決めていくことが大切です。

前述したように、心が耐えきれなくなって不登校になっているので、自由を奪ったり、行動を制限したり、ゲームを話し合いもせずに取り上げたりという行為は、子供にストレスを与えて悪化させることもあります。

医学的に自律神経を整える生活習慣はありますが、自主的にその行動をとれるようにサポートしていくことが必要です。

ゲームも動画もやりたい放題で快適にしすぎると、不快なことがある社会へ戻っていきたくなくなるのは普通の事なので、安心できる環境ではありますが、快適過ぎる環境にしないようにしていきましょう。

甘やかすのではなく、大丈夫感、安心感を与える

自由にさせるというのは、何をやっても叱られない、許される環境を作ることではありません。

親は自分を愛してくれている、守られている、存在そのものを受け入れてくれているという大丈夫感、安心感を子供に与えることが自由にさせる目的です。

しかし、子供が将来困らないように、あれこれ口を出してしまうのが親心だと思います。

残念ですが、多くの子供はその親心からくる言葉の裏を理解するほど精神が成熟しているわけでも、大人でもありません。

口を出されるのは、自分がダメだから口を出される(否定されている)、学校へ行けない自分は親に愛してもらえない、親の言うことを聞かないと親は愛してくれない、親は自分の心配ではなくて自分の思い通りにならないことを怒って叱っている、親や周囲の人のの期待に応えないといけないといった、誤った認識で自分を肯定できなくなっています

俗にいう自己肯定感が低いという状態ですが、そういった間違った自己認識を、休ませている間に学校へ行けなくても愛されている(存在だけで受け入れられている)という感覚を育て、自己肯定感を高めていく事がとても大切になります。

そういった安全な環境が家にあると認識できるようになっていくことで、いつでも避難できる安全な場所があると感覚的に理解できると、安心して外界とのつながりに挑戦していけるようになります。

元気になっても、学校へ行くとは限らない

体調が回復すれば、元気になれば学校へ戻るわけではありません。

不登校の改善にはステージがあるので、そのステージごとに合ったサポートをしていくことで社会へ復帰していきますが、同じ学校へ戻る子供ばかりでもありません。

自主性がなければ、我慢して学校へ通ったとしても、消耗してまた学校へ行けなくなるを繰り返します。

自主性が育つまでそっと待ってあげることがとても大切です。

当院での改善をご検討の方は起立性調節障害不登校をご覧ください。

遠方で来院が難しいけれど、お子さんについて相談したい方はオンラインカウンセリングをご利用ください。

記事の投稿者
心身堂鍼灸院 院長
鍼灸師 佐野 佑介

静岡県浜松市中央区和地山で自律神経専門のはりを刺さない心身堂鍼灸院を開業。
自身も26歳の時にパニック障害から自律神経症状に苦しんだ経験を持つ。
2012年に独立開業。
国家資格 はり師(148056号)・きゅう師(147820号)
医薬品登録販売者試験 合格

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