こんにちは、浜松市はりを刺さない鍼灸師の佐野です。
呼吸をしないと私達は数分以内に命の危険が及ぶにもかかわらず、正しい呼吸というのを誰にも習ったことがありません。
私達が最初に呼吸をするのは生まれてから産声を上げる時にこの世に生まれて初めての肺呼吸が始まります。
赤ん坊の呼吸を見ていると、誰に教わったわけでもないのに赤ちゃんは正しい呼吸が出来ています。しかし、大人になるにしたがって徐々に正しい呼吸が行えなくなってしまい、それが積もり積もって自律神経の問題へつつながっていくことも少なくありません。
今回は正しい呼吸について一緒に考えていきたいと思います。
正直、文字だけでは正確にお伝えすることに限界があるので、出来れば専門家にチェックしてもらいながら日々練習する事をお勧めします。
呼吸は生命を維持するだけでなく、代謝や自律神経を整えるなど、呼吸をコントロールすることで多くの効果を狙うことが出来ます。この記事では基本の呼吸についてですが、ぜひ最後までご一読ください。
結論:正しい呼吸とは、お腹だけでゆっくと小さな呼吸
今回でお伝えする正しい呼吸とは、自律神経を整えていく際に、24時間365日無意識に体に任せても行い続けてくれるように練習を続けていくことが望ましい呼吸です。
正しい呼吸に求められる5条件
- 呼吸の速度がゆっくりであること
- 主に横隔膜を使った腹式呼吸であること
- 呼吸の際に空気を吸い過ぎず、吐きすぎないこと
- 吸気が鼻呼吸であること
- 舌の位置が適切であること
この条件を満たす呼吸が正しい呼吸です。
その他の呼吸が絶対にダメだというわけではありませんが、通常の生活を送る上ではこの呼吸を24時間365日出来るように訓練して癖づけることが大切です。
脳は呼吸数(速さ)をモニタリングしている
私達の脳は自ら指令を出すと同時に、身体からの情報を集めて今どういう状況にあるのかを分析して、身体の状態に合わせて全身に送る命令を調節するフィードバック機構をもっています。
特に呼吸数は脳にとっては、今緊張状態にあるのか?リラックス状態にあるのか?の重要な指標になります。
呼吸数は成人で通常11~20回/分が正常範囲内とされていますが、これよりも呼吸数が少なめであればよりリラックスする命令(副交感神経を刺激)を、これよりも多めであればより緊張する命令(交感神経を刺激)を全身に送ります。
呼吸が早いから緊張し、緊張するから呼吸が早くなる。
呼吸がゆっくりだからリラックスし、リラックスするから呼吸がゆっくりとなる。
呼吸にはこのような呼吸数が次の呼吸数に影響を与えるという関係性があります。
呼吸する速度がゆっくりになると、副交感神経が刺激されて穏やかな状態で過ごすことが出来ます。
逆に呼吸が早いと緊張状態を常にキープしますが、緊張状態が継続すると体調を崩してしまいます。
運動時などは呼吸が早くなっても大きくなっても問題はありませんが、リラックスになってよい時まで緊張状態が継続するのは良くありません。
胸式呼吸と腹式呼吸を理解しましょう
一般的に呼吸は胸式呼吸と腹式呼吸に分けられます。簡単に言えば胸式呼吸は運動・緊急時用ブースターのような役割を持った呼吸方式で、腹式呼吸は常用する呼吸方式になります。
それぞれの呼吸方式について理解を深めてみましょう。
胸式呼吸の特徴とメリット、デメリット
胸式呼吸は重力に逆らってろっ骨を持ち上げることで肺に空気を取り入れる方法です。
胸式呼吸のメリットは運動時など酸素をより多く必要とし、二酸化炭素を早く排出したい時により早く呼吸を行いたい時に向いた呼吸方式が胸式呼吸になります。
主な利用目的は運動時です。よく胸式呼吸が激しくなってきたことを「肩が上がってきた」と呼吸が早くなってきて余裕がなくなってきた時に現れる兆候としていわれる場合も多いです。
より酸素を多く取り込み二酸化炭素を早く吐き出したいという状態になった際に胸式呼吸は活躍しますが、簡単に言えば追い詰められたときに使う緊急時用の呼吸方式なのです。
重力に逆らって空気を取り入れる為、空気を肺に取り入れる為にエネルギーを消費する為、エネルギー効率が悪く、その割に換気量自体もそれほど多くありません。
運動時に発動するようになっている為、交感神経を刺激してより活動しやすいモードに入りますが、リラックスするにはこの呼吸法は向きません。
短時間使用を前提とした方式の為、長時間使用していると、肋骨を持ち上げる為に使っている筋肉が凝ってきてしまう点などのデメリットがあります。
運動時に限って使う緊急用の呼吸方式を日常生活で使用するとデメリットが多いのは当然と言えば当然です。
胸式呼吸は運動時に使ってこそその特性を引き出すことが出来る呼吸方式ですが、常用する普段使いの正しい呼吸法としてはあまりお勧めできません。
腹式呼吸の特徴とメリット、デメリット
腹式呼吸は横隔膜を下に下げることで肺に空気を取り入れる呼吸方式になります。
重力と同じ方向に横隔膜を下げて、空気を肺に取り込むので非常に合理的な呼吸方式になります。
また、横隔膜を使った呼吸の方が肺が拡がる為、呼吸効率が良くなります。
腹式呼吸は運動時以外の時に活躍する呼吸方式で、常用する正しい呼吸は腹式呼吸を基本となります。
横隔膜には副交感神経線維が多く分布している為、横隔膜を使った呼吸を繰り返しているだけでも副交感神経が刺激されて、リラックスしやすくなります。
また、横隔膜を下に下げることで胃腸をマッサージする効果があり、胃腸が刺激を受けることでも胃腸に分布する副交感神経が刺激されます。
腹式呼吸は適度なリラックス状態と体を休める状態、冷静になる為に非常に効果的な呼吸法です。しかし、早く動かすことが苦手で交感神経を刺激するような作用が少ない為、運動時に腹式呼吸だけでは酸素の取り込みや二酸化炭素の排出が追い付かなくなってしまうことがある呼吸方式になります。
適正量の呼吸が良い
より多くの空気を吸いより多くの二酸化炭素を吐き出すことにはいくつかの問題点があります。
自律神経とかかわりの深いところで言うと、大きな呼吸は体内の二酸化炭素の不足を招くという点です。
二酸化炭素は私達の身体にある程度存在することでより効率的に代謝を促してくれたり、血管を拡張して全身の血流を良くする作用がある物質です。
大きな呼吸をしていると二酸化炭素が体内から排出され過ぎてしまってこのようなメリットを受けられなくなるだけでなく、少なくなることで逆に代謝の低下、血管の収縮による血流の悪化などを招くことになります。
「深呼吸をして酸素を体の隅々まで取り込みましょう」などと呼吸法の際に声掛けがされますが、COPD(慢性閉塞性肺疾患)でもない限り、普通に呼吸していれば100%にかなり近い量の酸素を取り込むことが出来ています。
指につけて酸素の量を図るパルスオキシメーターを付けたことがある方はご存知だと思いますが、通常の状態であればほぼ100%に近い値を示します。
息を止めていた、運動中など、低酸素状態になっている場合には別ですが、通常の方であれば酸素は適量呼吸によって取り組めれば十分です。
吸うときは必ず鼻から
口は呼吸器ではなく消化器に分類される臓器です。
その為、呼吸を口から行うことを想定した呼吸に必要な機能がいくつかついていない為、肺などに余計なダメージを与えるだけでなく、消化器を呼吸器の一部として利用することで消化器としての口の機能が阻害される原因になります。
鼻から空気を取り込むことで、肺に行く空気に適度な湿度、温度を調節する、大量の空気が通り過ぎないように調節する、鼻毛によって空気中のゴミや細菌・ウィルスをろ過して気管支や肺に入りにくくなるようにするなど、呼吸器を守る入り口としての機能を果たすことが出来ます。
しかし、口から呼吸をしてしまうとこれらの機能がついていない為、気管支や肺にダメージを与えやすくなってしまうのです。
また、口腔内は唾液により守られていますが、空気が通ることで乾燥すると口腔内で細菌の繁殖が進み、歯周病などを悪化させる原因となります。
世界中に健康増進のための色々な呼吸法がありますが、鼻から吸うということだけは全世界共通しています。
それだけ鼻呼吸は重要なのです。
舌ベロの位置に気をつけましょう
下ベロは舌先が前歯に触れるか触れないかの位置にくっついた位置が本来の下ベロの定位置になります。
これがなぜ呼吸に重要なのかというと、下ベロが下に垂れ下がってしまっていると口腔内に空間が出来てしまい、鼻を通った空気が一部口腔内に流れ込む無駄な気流が発生してしまうからです。
もちろん、下の長い人短い人がいるので、多少前歯に当たってしまうなどはありますが、常に舌先が前歯の付け根に触れるか触れないかぐらいの位置に収めてあげると良い呼吸を行うことが出来、鼻呼吸しているのに、口腔内が乾燥して歯周病の悪化を招くなども引き起こしにくくなります。
正しい呼吸法の練習法
ここまで学んだことを踏まえながら、正しい呼吸法を練習していきましょう。
最初から座って呼吸を練習すると難しいので最初は仰向けに寝た姿勢で手をみぞおちと胸において練習をしていきましょう。
手は正しく呼吸が出来ていればみぞおち側だけが動き、胸においてある手は一切動かないハズです。大きく吸い過ぎても胸が動き始めてしまいますので、胸が動かない程度の小さな呼吸をゆっくり行っていきましょう。
1.仰向けに寝て膝を立てます。
2.舌を上あごにくっつけて鼻からゆっくり息を吸います。
3.息を吸うときは、みぞおちのあたりだけが軽く膨らむ程度までゆっくり吸います。
4.軽く膨らんだら、今度はゆっくり鼻から息を吐き出していきます。
1~4を繰り返します。
チェックとして、みぞおちと胸に手を置き、
みぞおちが動いていること。胸が動いていないことを確認します。
これが出来るようになったら、鏡を見ながら座っている姿勢、立っている姿勢でも練習します。
気を付けたいポイント
正しい呼吸とは本来、生まれた時は無意識に行っている呼吸です。
その為、特別な技能がなくても誰でもできるはずですが、交感神経が優位で緊張状態が強い人や、胸や肩を使った呼吸が癖になってしまっている人は、最初どうしても胸が動いてしまう、お腹を動かす動かし方がわからない、胸が動かないように力んでしまう場合があります。
特に首や肩こりがひどい方は、コリでお腹周りをうまく動かせないことが多いので、自律神経の調整を専門としている先生や呼吸器を専門としている先生に、呼吸筋を緩めてもらうと練習がしやすくなります。
どのぐらいの秒数吸ったり吐いたりすればいい?
正しい呼吸法の難しいところは、どれぐらい空気を吸えばよいのか?が判断しずらいところです。(そういう意味でも、一度は専門家に正しい呼吸が出来ているのかを判断してもらうことは大切です。)
今回はあえて秒数を書いていませんが、秒数を指定してしまうとその秒数吸おうとして、空気を吸い過ぎてしまうからです。
あくまでも目安ですが、1呼吸に3秒以上かけられると早すぎる呼吸ということはありません。
専門家に診てもらえない場合は、力を入れずに出来る若干息苦しい呼吸であれば、正解であることが多いです。
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